本記事では、アクチュエータの種類ごとの用途や特徴、さらには選び方や主要メーカーの比較まで徹底解説します。
この記事を読めば、自社のニーズに合ったアクチュエータ選定のポイントが明確になり、最適な製品選びができるようになります。効率的で信頼性の高い機械運用のために、ぜひ最後までお読みください。
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目次
アクチュエータの特徴|5種類の動作原理
アクチュエータは、主に電気エネルギーを運動エネルギーに変換する装置で、産業機械やロボットなどの精密駆動を必要とする機械装置に広く使用されます。エンジンのバルブ開閉制御など、一部の動力装置にも部品として組み込まれています。
アクチュエータには、主に以下の5つの動作原理が挙げられます。
- 電気アクチュエータ
- 油圧アクチュエータ
- 電磁アクチュエータ
- 空気圧アクチュエータ
- ピエゾアクチュエータ ※クリックすると該当箇所まで飛びます
電気アクチュエータ
電気アクチュエータは、高効率かつ高精度な制御が可能で、小型軽量化が容易なため、多岐に渡る製品に組み込まれています。近年、パワーエレクトロニクス技術の進化により、品質と信頼性が向上しています。電気アクチュエータには、以下の特徴があります。
- 高効率かつ高精度な制御
- 小型軽量化が容易
- 低速でも安定した動作
電気アクチュエータは、産業用ロボットや精密加工機械での位置決めや制御に多く使用されます。また、家庭用電化製品においても、高精度で安定した動作が求められる箇所に活用されています。
油圧アクチュエータ
油圧アクチュエータは、ポンプのピストン運動によって油を循環させ、流体エネルギーを駆動力に変換する装置です。少ないエネルギーで大きな力を発生させることができ、高精度な位置決めや速度制御が可能です。油圧アクチュエータには、以下の特徴があります。
- 大きな駆動力を発生可能
- 高精度な位置決めと速度制御
- 堅牢性が高く、過酷な環境でも使用可能
油圧アクチュエータは、パワーショベルなどの建設機械で大きな力が必要な場面で多く活用されます。また、製造現場での重い物体の移動や方向転換にも使用されています。
電磁アクチュエータ
電磁アクチュエータは、電磁石の磁力を利用して動作する装置で、代表的なものに「ソレノイドアクチュエータ」や「ボイスコイルモーター」があります。電気を流して磁力を発生させることで、精密で高速な動作が可能です。電磁アクチュエータには、以下の特徴があります。
- 精密かつ高速な動作が可能
- 前後運動や回転運動に適応
- 比較的小型で軽量な設計が可能
電磁アクチュエータは、自動車の燃料噴射システムや医療機器での精密な動作が求められる場面で多く利用されています。また、製造ラインでの細かい位置決めや高速な動作が必要な工程でも活用されています。
空気圧アクチュエータ
空気圧アクチュエータは、エアコンプレッサによる空気圧を利用して動作する装置で、低負荷かつ柔軟な操作が可能です。小型軽量化が容易で、高速・大出力が得られるため、幅広い用途で使用されています。空気圧アクチュエータには、以下の特徴があります。
- 低負荷かつ柔軟な操作が可能
- 小型軽量化が容易
- 高速・大出力が得られるが安全性が高い
空気圧アクチュエータは、自動車の組立ラインでの迅速な動作が求められる工程や、食品加工機械での繊細な操作が必要な場面で活用されています。
ピエゾアクチュエータ
ピエゾアクチュエータは、圧電素子を利用して動作する装置で、圧力を加えることで電圧を生じさせる特性を持ちます。高速動作に優れ、非常に小型であるため、ウェアラブルデバイスや医療機器に広く利用されています。このアクチュエータには、以下の特徴があります。
- 高速動作に優れている
- 非常に小型で設計可能
- 圧電効果を利用した精密な動作
ピエゾアクチュエータは、精密な動作が求められる携帯電話やウェアラブルデバイスに多く使用されています。また、人体に埋め込む医療機器など、小型かつ高精度な操作が必要な場面で活用されています。
アクチュエータの2つの動作方向
アクチュエータは、主に以下の2つの方向に動作します。
- 回転方向(ロータリーアクチュエータ)
- 直線方向(リニアアクチュエータ) ※クリックすると該当箇所まで飛びます
回転方向(ロータリーアクチュエータ)
ロータリーアクチュエータは、回転運動を利用して回転角度を制御するアクチュエータで、電動モーターによって駆動されます。代表的なものにステッピングモーターがあり、精密な回転制御が求められる分野で広く利用されています。ロータリーアクチュエータには、以下のような特徴があります。
- 高精度な回転角度の制御が可能
- 電動モーターによる駆動
- 精密な制御が必要な場面での使用に適応
ロータリーアクチュエータは、医療機器や検査装置などの精密な動作が必要な機器で多く使用されます。また、半導体製造装置など、高度な精度が求められる産業分野でも活用されています。
直線方向(リニアアクチュエータ)
リニアアクチュエータは、直線運動を利用して伸縮を実現するアクチュエータで、高精度な位置決めや力の制御が可能です。医療機器、自動車産業、航空宇宙産業など、幅広い分野で利用されています。 リニアクチュエータには、以下のような特徴があります。- 高精度な位置決めが可能
- 直線運動に特化した設計
- 多様な機構が利用可能(リニアモーター、ボールねじ、油圧・空圧など)
リニアアクチュエータは、手術台や検査機器の精密な動作に使用されています。また、自動車の座席調整機構や航空機のフラップ制御など、精密で強力な動作が求められる場面でも広く利用されています。
使い道は? アクチュエータの3つの用途例
アクチュエータには、様々な用途が存在します。本セクションでは、その中でも以下の3つの用途をご紹介しまう。
自動車
自動車では、エンジン制御やブレーキ、ステアリングなど、多くの機能がアクチュエータによって制御されています。自動車のアクチュエータは、エンジンのスロットルバルブの開閉やブレーキ制御、ステアリングの方向転換に欠かせない要素です。特に、ブレーキやステアリングのアクチュエータは、車両の安全性に直結しており、その信頼性が極めて重要です。これにより、安全な走行を支えるだけでなく、運転の快適性も向上させます。
万が一、これらのアクチュエータが故障すると、重大な事故を引き起こす可能性があるため、耐久性と精度が厳しく要求されます。
ロボット
ロボットのアクチュエータは、関節部分の駆動を担い、ロボットが正確に動作するために欠かせない部品です。高精度な動作が要求される産業用ロボットの関節部分で特に重要な役割を果たします。例えば、組立ラインでの精密なパーツの配置や溶接作業では、ミリ単位の動作が求められます。
また、医療用ロボットにおいては、手術中に極めて細かい動きを行うために、アクチュエータの正確な制御が不可欠です。これにより、ロボットが人間の代わりに作業を行い、安全性と効率を高めることができます。
医療機器
医療機器のアクチュエータは、正確で迅速な診断・治療を支える重要な部品で、自動化された医療機器の正確な動作を実現します。MRI診断装置やCTスキャナーのテーブル位置決めにおいて、その高精度な制御能力が特に重要です。これにより、患者の位置をミリ単位で調整し、正確な画像診断を可能にします。
また、手術用ロボットに搭載されたアクチュエータは、細かな手術操作を行うために不可欠で、手術中の医師の負担を軽減し、患者の安全性を高める役割を果たします。これらの場面では、アクチュエータの信頼性と精度が、医療の質を大きく左右します。
5つの比較ポイント | アクチュエータの選び方
アクチュエータを選定する際は、特に以下のポイントを抑えておく必要があります。
用途
アクチュエータを選ぶ際は、用途に対して適しているアクチュエータを選ぶ必要があります。用途に対して適したアクチュエータを使用しないと、想定した通りの動きをせず、製品不良が起きる可能性が上がります。
以下の表を参考に貴社が想定している用途に対して適したアクチュエータを選ぶことがおすすめです。
種類 | 用途 |
---|---|
電気アクチュエータ | 産業用ロボット、精密加工機械、家庭用電化製品 |
油圧アクチュエータ | 建設機械、製造現場での重量物移動、方向転換 |
電磁アクチュエータ | 自動車燃料噴射システム、医療機器、製造ラインでの精密位置決め・高速動作 |
空気圧アクチュエータ | 自動車組立ライン、食品加工機械 |
ピエゾアクチュエータ | 携帯電話、ウェアラブルデバイス、医療機器 |
必要な動力や動作
アクチュエータを選定する際は、必要な動力と動作速度をまず考慮することが重要です。機械の要件に合わせ、適切な動力と速度を選ぶことで、効率的かつ安定した動作が可能になります。動作速度は、機械の動作に大きく影響するため、精度と速度のバランスを考慮して選ぶ必要があります。速度が適切でないと、生産効率や製品品質に悪影響を与える可能性があります。
また、作動する荷重の大きさと動作方向も重要です。不適切な動力を選ぶと、アクチュエータの性能が発揮できず、機械全体の信頼性が低下する恐れがあり、注意が必要です。
使用環境
アクチュエータを選定する際、温度、湿度、振動などの環境条件を考慮することが重要です。これにより、設置場所や使用環境に適したアクチュエータを選び、信頼性の高い運用を確保できます。温度や湿度などの環境条件は、アクチュエータの性能や寿命に大きな影響を与えます。例えば、高温環境ではモーターが過熱しやすく、性能が低下する可能性があります。湿度が高いと内部の錆びや絶縁不良が発生しやすく、故障の原因となります。したがって、設置環境に応じた耐熱性や防湿性を持つアクチュエータを選ぶことが、長期的な運用の信頼性を高めるために不可欠です。
振動が発生する環境では、振動に耐える構造や耐久性を持つアクチュエータを選ぶ必要があります。振動が過剰だと、内部の部品が緩んだり摩耗したりして、精度が低下するリスクがあります。特にステッピングモーターは、正確な位置制御が求められるため、振動によりステップがずれると、全体の動作に悪影響を及ぼします。そのため、振動対策が施された設計や、振動を抑制するマウントが必要です。
制御装置
制御装置は、種類や制御方式、通信方式に応じてアクチュエータに適切な選択が重要です。例えば、ステッピングモーターを使用する場合、その特性に合ったドライバーやコントローラーを選ぶことが重要です。適切な制御装置を選択しないと、モーターの性能を十分に引き出せず、動作が不安定になったり、位置精度が低下したりするリスクがあります。
制御方式の選定も重要で、特に位置決めが求められる場合は、位置決め制御が可能な装置を選ぶ必要があります。ステッピングモーターの精度を最大限に活かすには、精密な位置決めが可能な制御装置の導入を検討することが必要です。
また、通信方式の選択は、設置環境や運用条件に応じて決定すべきです。例えば、ノイズの多い工場内では信頼性の高い有線通信が推奨されますが、設置の自由度や管理のしやすさを重視するなら、無線通信の導入も考慮する必要があります。
コスト
アクチュエータを選定する際には、コストとメンテナンス性のバランスを考慮することが重要です。高性能で信頼性の高いアクチュエータはコストが高くなる一方、メンテナンス性に優れており、長期的な運用コストを抑えることができます。逆に、低コストなアクチュエータは初期費用を抑えられますが、寿命や信頼性が低く、頻繁なメンテナンスや交換が必要になる可能性があります。そのため、選定時には使用環境や運用期間を踏まえた慎重な判断が求められます。
アクチュエータを製造する主なメーカー3社
アクチュエータを製造する主なメーカーとして、以下の3社が挙げられます。
- フエスト(Festo)
- SMC(エスエムシー)
- アールエスコンポーネンツ(RS Components) ※クリックすると該当箇所まで飛びます
フエスト(Festo)
フエストは、自動化分野において世界をリードする企業です。長年にわたり培われた技術とノウハウを基に、電気や空気圧式など、多様なアクチュエータを開発・製造しています。同社のアクチュエータは、その高い精度、信頼性、そして幅広いラインナップが特徴です。産業用ロボットから精密機器まで、様々な分野で活躍しており、お客様のニーズに合わせて最適なソリューションを提供しています。
SMC(エスエムシー)
SMCは、空気圧機器のリーディングカンパニーとして世界的に知られています。アクチュエータをはじめ、空気圧シリンダ、バルブ、チューブなど、空気圧システムに必要なあらゆる製品を幅広く取り揃えています。同社のアクチュエータは、その高い品質と信頼性が特徴で、自動車産業や食品産業など、様々な分野で採用されています。特に、小型・軽量でありながら高出力な製品が多く、省スペース化や高効率化に貢献します。
アールエスコンポーネンツ(RS Components)
アールエスコンポーネンツは、電子部品や工具などを幅広く取り扱うグローバルなサプライヤーです。その製品ラインナップの中でも、空圧シリンダ・アクチュエータやメンテナンス用アクチュエータアクセサリは、高いコストパフォーマンスと幅広い品揃えが特徴です。同社のアクチュエータは、産業用オートメーションの現場において、汎用性が高く、手軽に導入できる製品として知られています。標準的な仕様の製品から、特殊な用途に対応できるカスタム製品まで、幅広いニーズに対応可能です。また、メンテナンス用アクセサリも充実しており、装置の稼働率向上に貢献します。
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