ブラシレスモーターとは? 選び方と活用のメリット・事例、おすすめのメーカー5社を比較
  • 最終更新日:2024年11月14日
ブラシレスモーターは、機械的なブラシとコミュテーターを使用せずに電気エネルギーを機械的エネルギーに変換する電動モーターの一種です。モーターの動作は電子的に制御され、磁場を生成してローターを回転させます。この設計により、ブラシレスモーターは高効率、長寿命、低メンテナンス、そして高速回転が可能となります。

ブラシレスモーターを選定する上で、性能とコストのバランスや静粛性、寿命、トルクなど考慮する点が多く、適切なブラシレスモーターの種類やサプライヤーの選定に悩む方が多いです。

そこで、この記事ではブラシレスモーターの特徴、導入のメリット・デメリット、選び方として比較ポイントとおすすめのメーカーをご紹介します。

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ブラシレスモーターとは? 構造と用途を解説

ブラシレスモーターの概要

ブラシレスモーターは、その名の通りブラシを使用しないモーターで、主に以下のコンポーネントで構成されています。

  • ローター(回転子)
  • 永久磁石で作られ、モーターの回転部分
  • ステーター(固定子)
  • 電磁コイルが巻かれており、電流が流れることで磁場を生成し、ローターを回転させる
  • 制御装置(ESCやドライバー)
  • ブラシレスモーターの回転速度やトルクを制御するために、電流の流れを精密に制御
  • センサー(位置センサーなど)
  • ローターの位置を検出し、制御装置にフィードバックすることで、適切なコイルに正確なタイミングで電流を供給

ブラシ付きモーターとの最大の違いはブラシの有無で、ブラシがないことからブラシレスモーターは摩擦損失が少なく、高効率かつ低ノイズで、長寿命が見込まれます。高速回転と高トルクを実現するため、性能面で厳しい条件を求められる場合に活躍します。

薄型(小型)ブラシレスモーターと一般的なブラシレスモーターの違い

一般ブラシレスモーターの薄型(小型)の違い

薄型(小型)ブラシレスモーターは、設計と構造が工夫され、厚さ(または全体的なサイズ)が20mm以下と非常に小さいブラシレスモーターです。これらのモーターは、限られたスペース内での使用や、軽量化が特に重要視されるアプリケーション向けに開発されています。

一般的なブラシレスモーターと比べると、以下のような違いがあります。

  • サイズと重量
  • 小型かつ軽量で、装置全体の小型化や軽量化が可能
  • 設計
  • 内部構造や磁石の配置が効率的で、限られたスペースでも高い性能を実現
  • 冷却効率
  • 熱管理や冷却効率が一般的なモーターよりも低く、課題になりやすい

これらの特性から、以下のような用途で活用されることが多いです。

  • ウェアラブルデバイス
  • スマートウォッチやフィットネストラッカーなど
  • 医療機器
  • 携帯型の医療診断装置や、体内に挿入される医療デバイスなど
  • モバイル機器
  • スマートフォンやタブレットなどのモバイル機器内の振動モーターや、フォーカス調整用モーター
  • ドローン
  • 小型でありながら効率的な推進力を提供する必要があるため

他のモーターとブラシレスモーターの比較

ブラシレスモーターと他のモーターの違い

モーターには、ブラシレスモーター以外にもサーボモーターやACモーターもありますが、用途や目的によって使い分ける必要があります。このセクションでは、それぞれのモーターとの特徴や用途の違いを解説します。



サーボモーターとの違い

サーボモーターは、特定の動作を正確に制御するために設計された、フィードバック制御システムを備えた電動モーターです。位置、速度、加速度などのパラメータを正確に制御できるため、非常に精密な動作が求められる用途に適しています。

このモーターには以下の特徴があります。

  • 高精度な位置制御
  • エンコーダやリゾルバなどのフィードバック装置を利用して、非常に正確な位置制御が可能
  • 高効率と高トルク
  • 小型でも高いトルクを提供し、効率的に動作
  • 速度制御と加速度制御
  • サーボモーターは、速度や加速度の精密な調整が可能で、非常に滑らかな動作を実現
  • 即応性
  • 応答速度が速く、短時間で指令に応じた動作が可能

ブラシレスモーターとの違いは、その制御システムにあります。ブラシレスモーターはフィードバック制御システムを必ずしも備えていませんが、サーボモーターシステムはフィードバックを利用して、モーターの動作を精密に制御します。

つまり、サーボモーターはブラシレスモーターを基にしている場合が多いものの、より高度な制御性能を持つシステムの一部として機能します。

以上を踏まえて、サーボモーターは以下のような用途で活用されます。

  • 工業用ロボット
  • 複雑な動作と高い精度が求められる産業用ロボットの関節部
  • CNC(コンピュータ数値制御)機械
  • 精密な加工に必要な工作機械の動きを制御
  • 航空宇宙
  • 衛星の姿勢制御や航空機の各種制御システムで、高精度な動作が必要とされる場合
  • 自動車
  • 電動パワーステアリングシステムやアクティブサスペンションなど、精密な制御が求められる自動車の部品
  • エンタテインメント業界
  • アニマトロニクスや特殊効果で、リアルタイムで精密な動きを再現するために使用

サーボモーターについて詳しく知りたい方は、以下の記事をお読みください。サーボモーターの種類や特徴を押さえたうえで、選び方やおすすめのメーカーまでご紹介しています。



ACモーターとの違い

ACモーターは、交流(AC:Alternating Current)を動力として動作する電動機です。電流の方向が周期的に変わる交流を利用して、ロータ(回転子)を動かし、機械的エネルギーを生み出します

単純な構造、堅牢性、およびメンテナンスの容易さから、多岐にわたる産業で広く利用されています

ACモーターには、以下のような特徴があります。

  • 単純な構造
  • ACモーターは比較的単純な構造をしており、生産コストが低い
  • 耐久性
  • 少ない可動部品を持つため、耐久性が高く、長期間の運用が可能
  • 効率と性能
  • 特に三相交流を使用するACモーターは、高効率で滑らかな運転が可能
  • 速度制御の難しさ
  • 速度制御が直流モーターよりも複雑かつ限定される場合がある

一方でブラシレスモーターは、主に直流電源(DC)を使用し、電子制御を介してコイルの電流の方向を切り替えることによって動作します。ACモーターとの主な違いは以下の通りです。

  • 電源の種類
  • ACモーターは交流を、ブラシレスモーターは直流を使用
  • 構造と制御
  • ブラシレスモーターは電子制御が必要であり、その制御システムが複雑化する一方で、高精度な速度やトルク制御が可能
  • 効率と寿命
  • ブラシレスモーターはブラシを使用しないため、効率が高く、メンテナンスが少なくて済み、寿命も長い

以上を踏まえて、ACモーターは主に以下のような用途で活用されます。

  • 産業用機械
  • 製造業での様々な機械や装置で使用されます。例えば、ポンプ、ファン、コンベヤーなど
  • 家電製品
  • エアコン、冷蔵庫、洗濯機など、多くの家庭用電化製品に内蔵
  • 交通機関
  • 特に電車や地下鉄での利用が見られます。インバーター制御により、高効率で正確な速度制御が可能
  • 発電所
  • 風力発電や水力発電など、発電装置の駆動

ブラシレスモーターを活用するメリット・デメリット

ブラシレスモーターの強みと弱み

メリット

ブラシレスモーターを活用するメリットには、主に以下が挙げられます。


高効率で高いトルクを得られる

ブラシレスモーターは他のモータータイプ、特にブラシを持つDCモーターと比較して効率が高く、高トルクを提供でききます。以下ではその理由とそれによって生まれる強みをご紹介します。

  • ブラシの不在
  • ブラシとコミュテーターを使わないため、全体の効率が向上
  • 精密な制御
  • 電流の供給を最適化し、ローターの位置に基づいて正確に調整することで高トルクを実現
  • 熱管理
  • 熱による性能低下が少なくなり、継続的に高トルクを提供

高効率、高トルクを実現したブラシレスモーターは、以下のようなメリットを得られます。

  • エネルギー消費の削減
  • 効率が高いことで、同じ仕事量をこなすために必要なエネルギーが少なくて済む
  • 長寿命と低メンテナンス
  • 長期間にわたり安定した性能を維持し、メンテナンスの手間とコストを削減
  • コンパクトな設計
  • 装置全体の小型化が可能

高効率、高トルクという特性は、以下のような機械や設備で活躍します。

  • 電動自動車
  • 効率的な駆動システムが重要であり、高トルクにより迅速な加速とエネルギー効率の良い運転が必要
  • 産業用ロボット
  • 精密な動作と強力なトルクが必要
  • ドローンや遠隔操作可能な航空機
  • 軽量で高出力なモーターが必要
  • 家庭用電化製品
  • 洗濯機やエアコンなど、効率的な運転と耐久性が必要

柔軟な設計が可能

ブラシレスモーターは、他のモータータイプと比較して非常に柔軟な設計が可能です。以下に、その理由とメリット、および役立つ機械や場面をご紹介します。

  • 電子制御
  • 微細な速度、トルク、位置制御が可能で、多様なアプリケーションに合わせた制御が実現可能
  • ブラシの不要性
  • 構造が単純で小型化や形状の自由度が高くなり、効率が向上
  • カスタマイズ可能性
  • モーターの設計は、特定の用途や性能要件に合わせて容易にカスタマイズ可能

柔軟な設計を実現したブラシレスモーターは、以下のようなメリットを得られます。

  • 高効率と省エネルギー
  • 消費電力を減らし、運用コストを削減可能
  • 精密な制御
  • 特に位置決めや速度制御が要求されるアプリケーションで、優れたパフォーマンスを発揮
  • 長寿命と低メンテナンス
  • ブラシがないため摩耗が少なく、長寿命でメンテナンス頻度が低い

ブラシレスモーターの設計に対する高い柔軟性は、以下のような機械や設備で活躍します。

  • ロボット工学
  • ロボットの関節やアクチュエータに使用され、精密な動きや位置決めが求められるため
  • 無人航空機(ドローン)
  • ドローンの推進システムに使用
  • 医療機器
  • 手術用具や診断機器など、高精度かつ静かな運転が要求される医療機器に最適
  • 電動自転車や電動車
  • 長距離走行や坂道でのパフォーマンスが求められる電動自転車や電動車で活用

長寿命

ブラシレスモーターは他のモーターと比べると寿命が非常に長いです。これには、いくつかの重要な要因があります。

  • ブラシの不在
  • ブラシとコミュテーター間の摩擦がないため、摩耗が生じない
  • 発熱の低減
  • ブラシの摩擦がないため、過熱による損傷のリスクが減少
  • 電子制御
  • 運転条件を最適化して過負荷や異常運転を防ぎ、内部の部品へのストレスを削減
  • 効率的な設計
  • 同じ動作に必要な電力が少なく、部品への負担を軽減

これにより得られるメリットには、以下があります。

  • メンテナンスコストの削減
  • 定期的な交換やメンテナンス頻度が低く、運用コストが低い
  • 信頼性の向上
  • 機械のダウンタイムが減少し、生産性が向上

ブラシレスモーターが役立つ機械や活かせる場面には、以下が含まれます。

  • 電動自動車
  • モーターの寿命が車両全体の寿命に直結し、メンテナンスの手間とコストを削減
  • 産業用ロボット
  • 高い信頼性と低メンテナンスが生産ラインの効率を実現
  • 再生可能エネルギーシステム
  • 風力発電や太陽光発電の追尾システムなど
  • 家庭用電化製品
  • 消費者にとっての初期投資の価値を高め、メーカーのブランド信頼性を向上

デメリット

一方で、ブラシレスモーターを活用するデメリットには、以下のようなものがあります。


コストが高くなりやすい

ブラシレスモーターは他のモータータイプ、特にブラシを用いた直流モーター(DCモーター)と比較して高価になりがちです。その一番の理由は、その設計と機能性の複雑さにあります。これにより、一部の用途ではコストが導入の障壁になることがあります。

コストが高くなりがちな主な理由は、以下の通りです。

  • 電子的な速度制御や位置制御を実現するには、高価な制御回路や電子部品が必要なため
  • 高精度の組み立てと素材が必要であるため
  • 高度な技術知識と研究開発が初期投資を必要とするため

コストが導入に不向きとされるケースや場面として、以下のものが挙げられます。

  • おもちゃや手頃な価格の家庭用電化製品など、コスト削減が重要な場合
  • 扇風機やヘアドライヤーのように単純な機能を必要とする製品
  • 製品単価を少しでも下げることが競争力に直結する市場

制御が複雑

ブラシレスモーターはブラシ式DCモーターと比較して、動作原理と制御方式が原因で制御が複雑になりやすいです。

  • ローターの位置を正確に検出し、適切なタイミングでステーターのコイルに電流を供給するために、センサーと電子回路が必要
  • モーターを精密に制御するために、ホールセンサーやエンコーダなどの装置からの情報を利用
  • PWM制御を含む効率的な制御には、設計と実装が複雑になる電子回路が必要
  • 精密な制御のためのアルゴリズム開発が、開発コストと時間を増加

これらの理由により、ブラシレスモーターは以下のような用途や事例では不向きとされます。

  • 基本的な換気扇やポンプのように、単純なオン/オフ制御や一定速度での連続運転で十分な場合
  • 予算が限られている、または製品価格を低く抑える必要がある消費者向け製品
  • 開発時間が制約されるプロジェクトや素早いプロトタイプ開発が必要な場合

初期設定と調整が難しいことがある

ブラシレスモーターの初期設定は他のモータータイプ、特にブラシを持つDCモーターより難しいです。その理由は、構造と制御メカニズムの複雑さにあります。

この複雑さは以下の要因からきます。

  • 電子スピードコントローラ(ESC)を使用してモーターの磁場を制御し、位相、速度、位置を監視し適切なタイミングで電流を供給する高度なプログラミングが必要
  • ホール効果センサーやエンコーダーなどのフィードバックメカニズムが必要で、これらの設定と調整には技術的知識と経験が必要
  • 特定のアプリケーションに合わせた細かいカスタマイズが可能であり、用途に応じた最適なパフォーマンスを引き出すための調整が複雑

これにより、以下のようなケースでブラシレスモーターの導入が不向きとされます。

  • 低コストが求められる消費者向け製品や産業用機器
  • DIYツールや教育用キットなど、専門的な知識や設定スキルを必要としない製品での使用
  • 単純な開閉動作や一定速度での連続運転のみが求められる場合

12個の比較ポイント | ブラシレスモーターの選び方

ブラシレスモーターの選び方と比較方法

ブラシレスモーターは用途が幅広く、用途にあわせて適したものを選ぶ必要があります。このセクションでは、最適なブラシレスモーターを選ぶ上で考慮すべき項目をご紹介します。


用途

ブラシレスモーターの選定において用途を考慮することは非常に重要です。用途に応じて、モーターの特性が性能、効率、寿命、コストなどに直接影響を与えるためです。適切なモーターを選定することで、製品やシステムの最適な性能を確保し、運用コストを削減し、製品の信頼性を高めることができます。

用途を考慮すべき理由は以下の通りです。

  • 性能要求
  • トルク、速度、効率などの性能が用途によって異なる
  • サイズと重量
  • 空間制約や重量制約がある場合、コンパクトで軽量なモーターが必要
  • 耐久性と信頼性
  • 運用環境(温度、湿度、振動など)により、耐久性や信頼性の要求レベルが変動
  • コスト
  • 初期コストと運用コストを考慮して、最もコスト効果の高い選択をする必要がある

逆に、用途を考慮したブラシレスモーターを選定しないと、必要な性能や求められるサイズ・重量、耐久度やコストが見合わなくなってしまいます。

以下が用途例と活用される理由です。

用途 理由
ドローン 軽量で高トルクを提供し、コンパクトな空間に適しているため
AGV
(自動搬送車)
高いトルク密度と耐久性が求められ、長時間の運用に適しているため
ロボット 精密な制御と高トルクが必要で、内部空間が限られているため
電気自動車 高効率と高トルクが要求され、耐久性が重視されるため
医療機器 コンパクトで高精度な制御が可能で、静かな運用が求められるため
ディスクローター型は特に薄型でスペースが限られている場合に適する
※スマホはテーブルをスクロールできます。

エネルギー効率

ブラシレスモーターにはエネルギー効率というものがあり、効率が高いほど、入力エネルギーを無駄なく機械的エネルギーに変換できます

エネルギー効率が高いと、以下のメリットがあります。

  • 電力消費が減り、運用コストとなる電気代を節約
  • 発熱も少ないため、冷却装置がなくともモーターや装置の寿命が長い

一方で、エネルギー効率が高いと、性能が高いために精密な設計や高品質な材料が必要になり、高額になりやすかったり、オーバースペックなブラシレスモーターで必要以上にコストがかかるケースもあります。

このようなケースを避けるためにも、モーターが使用される具体的な条件や要求を理解することが重要です。また、コストに対して必要な性能を整理し、トルク、速度範囲、制御性など、必要な性能要件を満たしつつ、エネルギー効率と初期コストのバランスを取ることが重要です。

寿命

ブラシレスモーターの寿命は、性能低下や故障なく運用できる期間を指し、設計、使用条件、保守の頻度によって大きく異なります

寿命が長いブラシレスモーターのメリットは以下の通りです。

  • 定期的なメンテナンスや部品交換の必要性が少なくなり、運用コストを削減可能
  • 運用中の信頼性が高く、計画外の停止時間が減少
  • 初期投資に対して長期的な利益が大きく、コストパフォーマンスが向上

しかし、寿命が長いとコストが高くなりやすく、新たな技術の導入が遅れる可能性もあります。

不要なリスクを避けるためにも、用途に対応した寿命、対応したコストの整理をしておく必要があります。

ハウジングの外観形状やサイズ

ブラシレスモーターの選定において、ハウジングの外観形状やサイズは製品やシステムの設計における重要な要素です。ハウジングはモーターを保護し、熱放散と装置全体の構造的強度に寄与します。

適切なハウジングの外観形状やサイズを選定するメリットは以下の通りです。

  • デザインの自由度が増し、スペースを効率的に利用可能
  • 製品に組み込みやすく、組立て工程を簡素化し、コストを削減
  • 適切なサイズや形状により、運用時の熱放散が改善され、モーターの性能や寿命が向上

一方、デメリットとしては、特定のサイズや形状の要求によるコスト増、カスタムデザインのための開発時間の増加、供給の複雑化が挙げられます。

用途に対して、必要な形状のブラシレスモーターを選定することがおすすめです。

ローター直径

ブラシレスモーターの選定において「ローター直径」は、モーターの性能と適用範囲を大きく左右する要素です。ローター直径はモーター内部の回転部分の直径を指し、モーターの設計と動作特性に直接影響します。

ローター直径が大きいと、以下のようなメリットがあります。

  • 磁場と作用するアーム長が長くなり、高いトルクを生み出せる
  • 低速でも滑らかに動作しやすい
  • 一定の出力を得るために必要な電流が少なくて済む場合があり、効率的な動作が可能

一方で、ローター直径が大きいと、モーター全体のサイズと重量が増加し、設置スペースや搭載環境に制約を受けやすくなります。また、サイズが大きなローターはより多くのエネルギーを消費し、結果として発熱量が増加する可能性があります。

コストも高くなる傾向にあるので、全体のコストパフォーマンスと冷却能力を踏まえてブラシレスモーターを選定する必要があります。

ローター溝数

ブラシレスモーターを選定する際、ローター溝数は重要な考慮事項のひとつです。ローター溝数はモーターの効率、トルク、および制御性に影響を及ぼします。

ローター溝数が多いブラシレスモーターのメリットは、以下の通りです。

  • より精密な制御が可能
  • 低速での滑らかな動作や高トルクを実現

これらの特徴は、精密機器や高精度を要求されるアプリケーションで有利です。

一方で、ローター溝数が多いことのデメリットには、製造コストの増加や複雑性の向上があります。これは、より多くの溝を持つローターの製造が難しく、高価になるためです。また、多溝のローターは、重量が増加する傾向があり、一部のアプリケーションでは不利になる場合があります。

適切なローター溝数を持つブラシレスモーターを選定する際には、必要な用途や目的に対して、適切な溝数と重量を検討することがおすすめです。

マグネット配置の種類

ブラシレスモーターにおける「マグネット配置の種類」は、その性能、用途、およびコストに大きな影響を与えます。主に、表面磁石型(Surface Mounted Magnet)と埋込磁石型(Interior Permanent Magnet; IPM)のふたつのタイプがあります。

表面磁石型のメリットは以下の通りです。

  • 磁気回路が効率的で、モーター全体の効率が上がる
  • 構造が比較的単純でなのでコストが抑えやすい
  • 高速回転時の安定性が高い

一方で、表面磁石型は磁石が表面に露出しているため、高温下での使用に向いておらず、衝撃や進藤に弱いことがあります。

埋込磁石型の場合は、以下のようなメリットがあります。

  • 磁石がローター内部に埋め込まれているため、高いトルクを生み出せる
  • 外部からの熱や物理的な衝撃に対して保護され、耐熱性が向上
  • 回転速度が上がっても効率が低下しにくい特性がある

しかし、埋込磁石型は製造プロセスや設計自体が複雑になるのでコストが高くなりやすく、扱いに気を配る必要があります。

磁石の配置を選ぶ際は、必要な性能と運用環境(温度、振動、衝撃など)を考慮して選定する必要があります。

出力回転数

ブラシレスモーターの選定における「出力回転数」は、モーターが供給することのできる最大の回転速度を指します。これは、特定のアプリケーションが必要とする動作速度を満たすために重要な要素です。

出力回転数が大きいことのメリットは以下の通りです。

  • 高速での運転が可能だと生産性を向上させるアプリケーションに適している
  • より小さなモーターで同じ作業を行うことが可能
  • 減速機を搭載する必要がなく、システム全体のコストと複雑さが下がる

一方で、出力回転数が低いモーターは高度な制御技術が必要になったり、大きな発熱を抑制する冷却装置の対応が必要になるため、設計段階で考慮すべき点が増えます。

適度な出力回転数のブラシレスモーターを選定する際には、用途やアプリケーションに必要な出力回転数と全体設計とのバランスを取ることが重要です。

トルク(パワー)

ブラシレスモーターを選定する際、トルクは重要な性能指標の一つです。トルクはモーターが提供できる回転力を示し、モーターの動作性能を理解する上で不可欠です。

トルクが大きいブラシレスモーターは、以下のメリットがあります。

  • 重い負荷を動かし始めたり、速度を迅速に上げたりする能力が高い
  • 負荷変動に対しても安定して動作し、精密な動作が要求される機械や設備でも安定して動作する
  • 低速でも高い性能を発揮する

一方で、トルクが大きいとブラシレスモーター自体のサイズと重量が上がるので、設計の柔軟性が落ちます。また、トルクを上げる上で高価な素材や複雑なプロセスも発生するので、導入コストが上がることが多いです。

適切なトルクのブラシレスモーターを選定するには、やはりアプリケーションの負荷要件や動作範囲を考慮する必要があります。

位置決め精度

ブラシレスモーターを選ぶ際、位置決め精度はモーターがどれだけ正確に希望の位置に停止できるか、または指定された位置を維持できるかという点で非常に重要です。

特に自動化された産業機械やロボティクス、精密機器などで重視される性能指標です。

  • 精密加工や組み立て、検査などの作業で必要な正確な動きを実現
  • 製品の品質が向上し、製造過程での誤差による不良品の発生率が低下
  • 自動化された生産ラインでは、高い位置決め精度により、速度と効率を犠牲にすることなく、精度を保てる
  • 同じ操作を繰り返す際に、毎回同じ位置に正確に戻ることができるため、一貫性と再現性が確保できる

しかし、一方で高い位置決め精度を実現するためには、より精密な製造技術や高品質な部品が必要となり、コストが高くなりやすいです。また、高精度な位置決めを達成するための制御は複雑となりがちで、高度なアルゴリズムやフィードバック制御システムが必要になる場合があります。

適切な位置決め精度のブラシレスモーターを選定するには、用途に対して必要な精度と対応できるコスト、全体設計のバランスを考える必要があります。

静粛性

ブラシレスモーターを選定する際、「静粛性」は特に住宅用アプリケーションやオフィス環境、医療機器など、使用者の快適性や性能に直接影響を与える場面で重要な考慮事項です。静粛性はモーターが運転中に発生する騒音の少なさを指し、デシベル(dB)で測定されます。

  • 特に家電製品やオフィス機器では、静かな運転音は使用者の快適性を大幅に向上
  • 騒音規制が厳しい環境や、図書館、病院など静けさが求められる場所に最適
  • 高品質で洗練された印象を与え、製品のブランド価値が向上

しかし、静粛性を高めるためには、特別な設計や高品質の素材、追加の防音処理が必要になり、これらはコスト増加の要因となります。また、設計の複雑化や性能上の妥協が必要になることもあります。

コスト

ブラシレスモーターの選定における「コスト」は、初期投資だけでなく、運用中のメンテナンス費用、エネルギー消費量、そして最終的な寿命を含む総所有コスト(TCO)を考慮することを意味します。プロジェクトの予算や経済的な制約は必ずあるため、選定プロセスで重要な要因です。

コストが高いブラシレスモーターには以下のメリットがあります。

  • より高い性能と信頼性を提供
  • 長期間にわたって安定した性能を維持
  • エネルギー効率の向上や高度な制御など、多くのアプリケーションでの性能要求を満たす

しかし、必要以上にコストを掛けてもオーバースペックなブラシレスモーターを導入することになるため、必要な性能と予算、資金回収期間のバランスを考慮する必要があります。

ここまで、ブラシレスモーターを選ぶ上で考慮すべきポイントをご紹介しました。次のセクションでは、ブラシレスモーターを製造するおすすめのメーカーをご紹介します。貴社に最適なモーターを製造する企業をお探しの方は、このまま読み進んでください。

ブラシレスモーターを製造するメーカー5社

ブラシレスモーターを製造する企業

ブラシレスモーターを製造する企業はいくつかあります。今回は、その中でも特にメジャーな企業をご紹介します。


マブチモーター(Mabuchi Motor)

マブチモーターは、創業以来、小型直流モーターのリーディングカンパニーとして、小型・軽量・高効率なモーターを提供してきました。同社のモーターは自動車や家電機器、電動工具、精密機器など様々な分野で幅広く採用されています。

メーカーとブラシレスモーターの特徴は以下の通りです。

  • 自動車電装機器用の小型直流モーターにおける世界No.1ブランドとして培ってきた高い品質と技術力
  • 小型、軽量、高効率の三拍子揃ったラインナップを提供
  • AGV・AMRやパーソナルモビリティ、産業機器、医療機器まで幅広く活用可能
  • グローバルな調達・生産ネットワークにより安定供給を実現

自動車電装機器用モーターの分野では世界シェアNo.1を誇り、中でもドアミラー用で80パーセント以上、ドアロック用では70パーセント以上のシェアを獲得しています。現在では、培った技術を移動体や産業機器、医療機器用のブラシレスモーター開発に応用し、付加価値の高い製品を市場に送り出しています。

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マブチモーターのブラシレスモーター導入事例を3つご紹介

マブチモーターは、用途に合わせたさまざまなブラシレスモーターを開発・販売しています。ここでは特に3つのブラシレスモーター導入事例をご紹介します。

事例1:移動体用


移動体用のブラシレスモーターについて詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。


事例2:産業機器用


産業機器用のブラシレスモーターについて詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。


事例3:医療機器用


医療機器用のブラシレスモーターについて詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。


ニデック (NIDEC)

ニデックは、小型プレシジョンモーターを中心とした多岐にわたるモーター製品を製造・販売している世界的な企業です。1973年に創業され、以来、革新的な技術開発と積極的な海外展開を通じて、世界のモーター市場でのリーダー的存在に成長しています。

同社はブラシレスモーターを始めとする幅広い種類のモーターを開発・製造・販売しており、電子機器、自動車、産業機械、家電製品など、幅広い分野においてその製品が用いられています。

ミネベアミツミ(MinebeaMitsumi)

ミネベアミツミは、主に小型ベアリングの製造からスタートし、その技術を基盤として電子部品や精密部品の分野へと事業を拡大してきました。特に、小型で高精度なベアリング技術には定評があり、世界的にもその名を知られています。

2017年には、ミツミ電機をグループに迎え入れ、ミネベアミツミとして新たなスタートを切りました。

同社はボールベアリング、航空機用ロッドエンドベアリングやピボットアッセンブリーなどの機械加工品事業からスタートしており、ブラシレスモーターを含むモーターも製造しています。

これらの技術を使い、ミネベアミツミはモーター、センサー、半導体デバイスなど、さらに幅広い製品ラインナップを持つ企業へと進化しています。

オリエンタルモーター(ORIENTAL MOTOR)

オリエンタルモーターは、1885年に日本で創業されたモーター製造企業で、電動モーター及びその関連装置の開発、製造、販売を行っています。

同社は創業当時から電動機を製造していて、開発を進めていく中でモーターの小型化を進めてきました。特に小型モーター市場においては、世界的なリーダーの一つとして認知されています。

オリエンタルモーターの製品は、自動化技術、精密機械、情報通信機器など、多岐にわたる産業分野で利用されています。

シチズン千葉精密(CITIZEN CHIBA PRECISION)

シチズン千葉精密は1979年に創業して以来、小型精密モーターの専門メーカーとして活躍しています。

同社はブラシレスモーターや小型ACサーボモーターなど、幅広い種類のモーターを製造販売していて、技術は三菱重工やニデック、キヤノンなど名だたるメーカーにも評価されています。

そのため、シチズン千葉精密のモーターは半導体製造装置、医療機器、レーザ応用製品など、最先端技術の応用分野で広く活用されています。

この記事を読んで、ブラシレスモーターが気になった方は、以下のボタンよりお気軽にお問い合わせください。

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