2種類のコンバインと特徴、おすすめのメーカー4社
  • 最終更新日:2024年9月13日
農作物収穫の際に「収穫・脱穀・選別」を同時におこなえるコンバインを適切に運用することで、収穫効率が大幅にアップします。人手不足が深刻化する農業でもDX化が進んでいくことが予想されます。

最新機にはデジタル技術で自動運転が可能になるコンバインも発売されています。進化し続けるコンバインが販売され「どれが自身に合ったコンバインなのかわからない?」と感じる人も少なくありません。

頻繁に購入するものではないからこそ、事前情報が必要です。そこで本記事では、コンバインの種類や選び方、おすすめするメーカーを解説します。

コンバインとは

コンバインの概要

コンバインは、稲・麦・大豆・トウモロコシなどの農作物を効率的に収穫できる農業機械です。刈取機(バインダー)と脱穀機を組み合わせた構造で「収穫・脱穀・選別」の3工程を同時に行えます。

元々、コンバインはアメリカやヨーロッパが発祥で、大規模農業地に適合するように設計されていました。しかし、輸入当時は国内の農業地事情には適さないことが多く、すぐには普及しなかったようです。

その後、各メーカーが改良改善を加えて、コンバインは国内独自の進化を遂げました。従来、各工程を手作業でおこなっていた作業時間を大幅に削減し、現代の農業にはなくてはならないツールになっています。

2種類のコンバイン

ンバインの種類と特徴

国内では、汎用農作物用の「普通型コンバイン」と水田用の「自脱型コンバイン」が普及しています。ここでは、コンバインの種類や特徴について解説していきます。

  • 普通型コンバイン
  • 自脱型コンバイン

普通型コンバイン

大規模農場で効果を発揮しやすい普通型コンバインの魅力は、汎用性の高さです。コンバイン正面の刈取部を変更することで、稲・小麦・大麦・トウモロコシ・大豆などさまざまな農作物にも対応できます。広い農場で多品種の作物を栽培する農家にとっては、非常に重要な農作機械です。

万能で扱いやすい普通型コンバインはデメリットもあります。選別機能が自脱型コンバインと比較すると劣ってしまう点です。また、サイズが大きく、日本の狭い水田では効果が発揮できないことも多いです。

しかし、シンプルな機械構造ゆえに耐久性が高く、メンテナンスが容易です。年間に使う時期が限られているからこそ、使わない時期にはメンテナンスがしやすいほうが長期的な運用に向いていると言えます。

自脱型コンバイン

稲作に特化した機能を求めているのであれば、日本独自の「自脱型コンバイン」が適しています。刈取・脱穀・選別を一度におこなえるのは普通型コンバインと同様ですが、自脱型コンバインは選別機能が優れています

茎や葉を一緒に脱穀する普通型コンバインとは異なり、自脱型コンバインは刈取後に穂先だけを取り込んで脱穀と選別を同時におこないます。籾を傷つけずに効率的に作業を進められるため、高品質の米を収穫したい場合には重宝します。

コンバインの構造

一連の流れで収穫作業をおこなうコンバインは、大きく分けて下記の5つの要素によって構成されています。

  • 刈取部:作物を刈り取る
  • 輸送部:刈り取った作物を機械内部に搬送する
  • 脱穀部:茎や籾殻が外され、穀粒が分離される
  • 穀粒処理部:穀粒を貯める ※グレンタンク式と袋詰方式があります
  • 排藁処理部:収穫後の藁を処理する

普通型コンバインは、シンプルな構造で茎や葉も脱穀部にかけられます。一方、自脱型コンバインで脱穀部にかけられるのは稲や麦の穂先だけです。水稲収穫時に籾の損傷が少ないメリットがありますが、構造が複雑になります。

コンバインの語源・歴史

コンバインの歴史

コンバインの語源は、結合・合体を意味する英語「combined」といわれています。手作業でおこなわれていた収穫・脱穀・選別をひとつにまとめた機能を有していることから「コンバイン」と呼ばれるようになりました。

日本には1960年代に導入されましたが、国内の農業事情に適しておらず定着しませんでした。

ところが「井関農機」が1967年に発表した「HD50型フロンティア」が、国内の農業事情に考慮した性能と評価され大ヒットに繋がります。その後、コンバインは各メーカーの改善改良を加えて、国内の農業に大きな変革をもたらしています。

4つの比較基準 | コンバインの選び方

コンバインの選定基準

コンバイン選定のコツは、農地に適したスペックを見極めることです。効率的に作業ができるコンバインを選べば、燃料などの経費や人件費などの運用コストを削減できます。ここでは、コンバイン選定時のポイントを紹介します。

  • 刈り取り面積を確認する
  • 作業スピードを考慮する
  • ランニングコストを考える
  • コンバインのサイズ

刈り取り面積を確認する

刈り取り面積とは、コンバインが一度に刈る作物の広さを示します。効率的な収穫作業に直結するため、選定の際には優先順位が高い要素です。

カタログ上では、推奨される使用面積や適用面積が記載されているため、参考にしてください。また、関連要素として、条数(一度に刈り取れる列の数)と刈幅(一度に刈り取れる幅)も併せて確認しておきましょう。

ただし、刈り取り面積が広いコンバインだからといって最良とは限りません。大型のコンバインは狭い農地では扱いにくく、作業性が落ちる要因にもなります。農地に合わせて適切な刈り取り面積を持つコンバインを選定してください。

作業スピードを考慮する

収穫効率を上げるには、コンバインの作業スピードにも着目する必要があります。カタログの「搭載エンジン」の項目を確認すれば、出力や馬力の能力が把握できます。

出力の高いエンジンは馬力があり、条数や刈幅にも影響を与えます。馬力が高ければ、運用時の安定感が違うだけではなく、1時間あたりの刈り取り面積(ha/h:ヘクタール/時間)が大きくなる傾向です。快適に作業を進めたい場合には、出力が高いエンジンが搭載されたコンバインを選ぶことがおすすめです。

また、作業スピードに大きく影響するタンク容量も重要です。一時的に収穫物を貯蔵するタンクが大きいほど、収穫作業の中断回数を減らします。選定の際には注目したいポイントです。

ランニングコストを考える

イニシャルコストも大切ですが、長期的に運用する場合にはランニングコストも考慮してください。手頃な価格のコンバインを購入しても、ランニングコストが高くなってしまえば収益に影響する可能性があります。長期的な運用を考慮し、農地に合ったコンバインを選ぶことがおすすめです。

また、故障時には多額の修繕費がかかります。ランニングコストを低くするためにも、故障時のサポートが手厚いメーカーを選びたいものです。購入前には、アフターサービスについて確認してください。

コンバインのサイズ

農地や車庫のサイズに合ったコンバインを選ぶことも大切です。日本の農地は狭い場所や曲がりくねった道が多いため、コンバインのサイズが適していないと取り回しが困難です。また、トンネルや低い建物の下を通る場合には、サイズが小さいコンバインのほうが適しています。

コンバインの性能は大切ですが、農業全体の作業効率を考えたうえで最適なサイズのコンバインを選びたいものです。購入時には、実物を確認して決断することをおすすめします。

コンバインのおすすめメーカー4選

コンバインを製造する会社

国内の農業事情を考慮したコンバインを各メーカーが販売しています。ここでは、国内のトップシェアを獲得しているメーカー4つを紹介します。

なお、国内シェアは、農林水産省が報告した「第17号特別分析トピック:我が国と世界の農業機械をめぐる動向」の調査結果を参考にしています。

  • クボタ
  • ヤンマー
  • 井関農機
  • 三菱マヒンドラ農機

クボタ

農業機械で国内外含めて非常に高いシェアを獲得しているのが「クボタ」。業界でも最大級の規模があります。農作業の効率化に貢献する革新的な技術を持ち、国内外で高く評価されているのが特徴です。

IoTやICTに踏み込んだ次世代スマート農業の実現に注力しているのも魅力です。AIカメラやレーザーセンサーを搭載する無人運転可能なコンバインや、自動運転アシスト機能付コンバインが販売されています。

コンバインは熟練した技術や経験が必要になる農業機械です。スマート農業に特化したコンバインを活用すれば、未熟練者でも熟練者と同様の刈り取り作業が期待できます。

ヤンマー

創業からディーゼルエンジンの分野で世界にも通用する高い技術力を持っているヤンマー。コンバインでは小型~中型モデルに力を入れていて、国内の農場事情にあったラインアップが特徴です。使用者の経験に関係なく籾のロスを最小限に抑え、効率的な収穫を可能にしています。

また、農業機械とデータ取得・運用を考えた「ヤンマースマート農業」が、ヤンマーの掲げるDX戦略と謳っています。さまざまな農業機械とデジタルを結びつけ、生産性の向上・作業負荷の軽減・農業経営の効率化を図ります。

井関農機

井関農機は100年以上の歴史を持つ日本の農業機械メーカーで、国内シェア第3位を誇ります。1966年に日本の農地に適した独自のコンバインを開発。さらには、業界初の「7条刈りコンバイン」の開発など、農業機械技術の革新に大きく貢献しました。

業界を牽引してきた井関農機のスマート農業にも注目です。コンバインに充実したアシスト機能や、収穫時に収量と水分を計測するシステムを搭載。Bluetoothによりタブレットへ情報を即座に伝達し、収穫状況の記録を残せます。

作業効率や分析効率が著しくアップし、生産性向上や省人化に大きく貢献できます。

三菱マヒンドラ農機

三菱マヒンドラ農機は、日本唯一の外資系農機メーカーです。1914年創業の三菱農機が、インドの大手企業「マヒンドラ&マヒンドラ社」の資本参加を受けて誕生しました。グローバルな視野と三菱農機の技術力を融合させ、革新的な農機具を開発しています。

三菱マヒンドラ農機のコンバインは、耐久性と安全性を重視したラインアップが多く、新車だけではなく中古車でも人気があります。多彩なオプションがあり、自分好みのコンバインにカスタマイズすることが可能です。

よくある質問

多種多様に渡るコンバインが市場に出回っているため、購入時にはなにを重視したらいいかわからなくなるものです。ここでは、コンバイン購入時によくある質問について触れていきます。

販売価格はどれくらいですか?

コンバインにはさまざまな種類があり、価格も相応になっています。一般的には、小型の新車では150~300万円程度。大型でハイスペックなものは600~2,300万円程度で販売されています。費用対効果を考慮したうえで、購入を検討してください。

耐用年数は何年ですか?

平成20年度の改正で法定耐用年数の見直し等がおこなわれました。国税庁の報告によれば、農業機械(普通型コンバイン、自脱型コンバインを含む)の耐用年数は「一律7年」です。

必要な免許は何ですか?

コンバインを公道で運転するには、道路交通法によって免許が必要になります。小型コンバインでは小型特殊免許と普通免許の2種類です。大型コンバインでは大型特殊免許が必要です。

大型特殊免許を取得すれば、小型・大型コンバインの両方に対応しています。どちらも運転するケースでは大型特殊免許を取得することがおすすめです。

なお、私有地のみで運転する場合には、免許は不要です。

税金はかかりますか?

コンバインには、地方税である軽自動車税が課税されます。課税のタイミングは毎年4月1日で、税額は年間2,400円です。コンバイン所有者は公道走行の有無と関係なく課税しなくてはいけません。

整備料金はどれくらいですか?

各メーカーやJA(農業協同組合)でコンバインの整備を請け負ってくれます。整備内容は、標準点検・足回りの確認・ベルト調整などさまざまです。

整備料金は内容やコンバインのサイズによって決まり、軽微な整備・修理であれば数千円程度。大がかりな整備・修理であれば5万円~20万円程度が相場です。

まとめ

各メーカーから多種多様なモデルが販売されています。ここ最近では、コンバインにもAIやIoTに対応する車種も増えています。 スマート農業を駆使すれば、作業効率は著しく向上します。農地に最適なコンバインを選び、農業を成功させてください。