6種類のコンプレッサーと特徴、比較基準とおすすめのメーカー5社
  • 最終更新日:2024年9月13日
コンプレッサーは、産業界で欠かせない装置の一つです。空気やガスを圧縮して動力源として活用することで、さまざまな作業を支えています。しかし、コンプレッサーにはいくつかの種類があり、それぞれに特有の強みや適した用途があります。

この記事では、代表的な6種類のコンプレッサーの特徴やメリット、比較方法を詳しく解説します。

6種類のコンプレッサーと特徴

コンプレッサーの種類と特徴
*2 コンプレッサーは、気体を圧縮して圧力を高め、連続的に送り出す装置です。主に工業分野で使用され、空気やガスなどの気体を圧縮するために設計されています。

圧縮された気体は、さまざまな産業プロセスで動力源として利用される。コンプレッサーは、取り扱う気体の種類や圧縮方式、構造によって分類されます。

主なコンプレッサーとして、以下の6種類が挙げられます。

  • 容積式コンプレッサー
  • ターボ式コンプレッサー
  • 往復式コンプレッサー
  • 回転式コンプレッサー
  • 軸流式コンプレッサー
  • 遠心式コンプレッサー

容積式コンプレッサー

容積式コンプレッサーは、気体を一定の空間に閉じ込めて体積を減少させることで圧力を高めるタイプのコンプレッサーです。この圧縮方式には、ピストン式、スクロール式、スクリュー式などがあります。

容積式コンプレッサーには、以下のような強みがあります。

  • 高圧を生成するのに適しており、特にピストン式は高圧空気を得るのに最適
  • 圧力変化に対して流量の変動が少なく、一定の流量を維持可能
  • スクロール式は静音性に優れており、低振動・低騒音が求められる環境に最適

容積式コンプレッサーは、流量が一定で、圧力が変動する特性を持ち、低速でも高い圧力比を発生させることができます。また、小規模から中規模の空気需要に適しており、特にピストン式は高圧を必要とする用途に、スクロール式は静音性が求められる用途に最適です。

ターボ式コンプレッサー

ターボ式コンプレッサーは、インペラ(羽根車)の遠心力を利用して気体に運動エネルギーを与え、そのエネルギーを圧力エネルギーに変換する装置です。インペラの中心から流れ込んだ空気は、インペラの空気通路部に沿って内側から外側に流れ、大きな遠心力を受けて圧縮されます。

ターボ式コンプレッサーには、以下のような強みがあります。

  • インペラによる圧縮が非常に効率的で、空気の流速が350-500m/sまで増速されること
  • ディフューザによって効率よく圧力に変換されること
  • インレットガイドベーン(IGV)を使用し、空気量を調整しながら、効率よく省エネ運転が可能であること
  • ティルティングパッドジャーナルベアリングの採用により、負荷変動に対する追従性が高く、非接触で寿命が長いこと
ターボ式コンプレッサーは、大きな空気流量に対応するように設計されており、低圧で大量の空気を必要とする用途に適しています。また、運転圧力のわずかな変化で流量が大きく変化する特性を持っています。

往復式コンプレッサー

往復式コンプレッサーは、ピストンの往復運動により気体を圧縮するタイプのコンプレッサーです。この動作はクランクシャフトを介して行われ、シリンダー内の気体を圧縮して吐出します。

このタイプのコンプレッサーには、以下のような強みがあります。

  • 他のコンプレッサーに比べて高圧を生成するのに適していること
  • 構造がシンプルで、小型化が可能であり、故障が少ないこと
  • 機械的なロスが少なく、高効率で動作すること

往復式コンプレッサーは、高圧を必要とする用途や、小容量の空気を必要とする場合に適しています。また、静音性や振動が少ない環境での使用にも向いています。

回転式コンプレッサー

回転式コンプレッサーは、ケーシング内の回転するローターにより、ケーシングとローター間の容積を変化させることで気体を圧縮する装置です。このタイプのコンプレッサーは、特にスクリュー式が一般産業用途で最も普及しています。

回転式コンプレッサーには、以下のような強みがあります。

  • 音や振動が小さく、中形クラスでも効率が高いこと
  • 非接触の回転部分により摩耗が少なく、寿命が長いこと
  • 過負荷保護装置を設けており、始動時に無負荷でスムーズな運転を行うため安全であること

回転式コンプレッサーは、往復式とターボ式の中間的な特性を持ち、一般産業用途での使用に適しています。特にスクリュー式は、中形クラスで効率が高く、音や振動が小さいため、工場エアとして最も普及しています。

軸流式コンプレッサー

軸流式コンプレッサーは、気体を軸方向に流して圧縮するタイプのコンプレッサーです。この方式は、回転する翼と静止する翼を交互に配置し、気体がこれらの翼を通過する際に圧縮される仕組みになっています。 軸流式コンプレッサーには、以下のような強みがあります。

  • 数十万~数百万立方メートル/時以上の大流量に対応可能であること
  • 遠心式コンプレッサーに比べて小型でありながら、同等以上の流量を扱え、消費電力も低いこと
  • 小径であるにも関わらず、高圧縮率と高効率を実現できること

軸流式コンプレッサーは、大流量の処理に適しており、気体を軸方向に流して圧縮するタイプのコンプレッサーです。

遠心式コンプレッサー

遠心式コンプレッサーは、インペラ(羽根車)の遠心力を利用して気体に速度エネルギーを与え、そのエネルギーを圧力エネルギーに変換して気体を圧縮する装置です。このタイプのコンプレッサーは、特に大量の圧縮空気供給を必要とする産業用途に適しています。

遠心式コンプレッサーには、以下のような強みがあります。

  • インペラによる圧縮が非常に効率的で、ディフューザーによって効率よく圧力に変換されること
  • 耐久性が高く、信頼できる24時間体制の運転が可能であること
  • エネルギー効率に優れており、特に多段遠心式コンプレッサは、各段で最適な速度を実現するマルチスピード機能により、電力要件を削減できること

遠心式コンプレッサーは、軸流式に比べて小型化に適しており、運転領域が広いため、マイクロガスタービンやホンダジェットの高圧圧縮機に採用されることがあります。

コンプレッサーのメリット・デメリット

コンプレッサーの強みと弱み

コンプレッサーには、導入する上でのメリットとデメリットが両方あります。このセクションでは、これら両方をご紹介します。

メリット

コンプレッサーには、主に以下のようなメリットがあります。

  • 多様な用途
  • 連続使用時間が長い
  • 耐久性に優れる

多様な用途

コンプレッサーは幅広い産業で使用され、幅広い場面や用途で活用できます。

以下で、その一部をご紹介します。

  • スプレーガンやエアブラシを使用した精密な塗装作業に必要な均一な塗布を実現し、自動車や家具の塗装に活用
  • 工場や作業場の機械のほこりを吹き飛ばす清掃作業でも活用

連続使用時間が長い

特に給油式コンプレッサーは連続使用時間が長く、長期間にわたる作業に適しています。これにより、さまざまな産業での使用が可能です。

以下に、給油式コンプレッサーの活用例をご紹介します。

  • 土木工事や建設現場での重機械の動力源として使用され、エアハンマーやドリルなどの動力源として活用
  • 工場の製造ラインでのエアツールを使用する連続作業に対応し、長時間稼働が必要な場面で活用

耐久性に優れる

給油式コンプレッサーは耐久性が高く、長期間の使用に耐えることができるため、過酷な環境でも信頼して使用できます。

以下に、給油式コンプレッサーの活用例をご紹介します。

  • 船舶や鉄骨の製造、橋脚の建設など、過酷な環境下での錆落としや塗装落としに活用
  • 鉱山での掘削作業や爆破作業において、厳しい環境に耐えるコンプレッサーとして活用

デメリット

一方で、コンプレッサーには以下のようなデメリットもあります。

  • 熱による影響
  • 湿度の影響
  • フィルターの詰まり

熱による影響

高温環境下ではコンプレッサーの潤滑油が劣化しやすく、故障の原因となることがあります。

このデメリットを回避するには、コンプレッサーを正常に使える温度範囲内で使用し、過度な高温・低温を避けることが重要です。

湿度の影響

高湿度環境ではコンプレッサーの性能が低下し、オーバーヒートを起こしやすくなります。

このデメリットを軽減するには、稼働中のコンプレッサーの周囲の温度・湿度を下げるために、換気を徹底することが重要です。

フィルターの詰まり

空気中のゴミがフィルターに詰まると、空気の吸引効率が悪くなり、余分な負荷がかかることがあります。

このデメリットを軽減するには、オイルの交換やフィルターの清掃を定期的に行い、異物の混入を防ぐことが重要です。

5つの比較基準 | コンプレッサーの選び方

コンプレッサーの選び方

貴社に適切なコンプレッサーを選ぶには、以下の5つのポイントを抑えることが重要です。

  • 使用空気量
  • 必要な圧力
  • 必要な出力
  • 電圧
  • 周波数

使用空気量

使用空気量によって、コンプレッサーの性能や適用範囲が変動します。

使用空気量とは、コンプレッサーが1分間に供給できる空気の量を指す。この数値が変動すると、エアツールの種類や数、作業の連続性などに影響を与え、選定するコンプレッサーのサイズやタイプが変わってきます

使用空気量が多い場合のメリットは、以下のとおりです。

  • 複数のエアツールを同時に使用することが可能で、作業効率が向上
  • 長時間の連続作業に適しており、生産性の高い作業が可能

一方で、使用空気量が少ないと、以下のメリットがあります。

  • 消費電力が少なく、運用コストの削減に貢献
  • 小型であり、設置スペースを節約可能
  • メンテナンスが容易で、運用の手間が少ない

必要な圧力

必要な圧力によって、コンプレッサーの適用範囲や使用できるエアツールが変わります。圧力が高いほど、より多くのエネルギーを気体に与えることができ、強力なエアツールの使用が可能です。逆に、圧力が低い場合は、より繊細な作業やエネルギー消費が少ない作業に適しています。

必要な圧力が高い場合のメリットは、以下のとおりです。

  • 高圧力を必要とするエアツール、例えば大型のインパクトレンチやサンドブラスターなどが使用可能
  • 高圧力により、より速く、より効率的に作業を行うことができる
  • 高圧コンプレッサーは、より堅牢で頑丈な構造を持ち、冷却装置やフィルターなどの付属品も多く、高い圧力を維持可能

一方、必要な圧力が低い場合のメリットは、以下のとおりです。

  • エネルギー消費が少なく、運用コストを削減可能
  • エアツールへの負担が少なく、メンテナンスの頻度を減らせる
  • 塗装やエアブラシなどの繊細な作業に適しており、塗料の詰まりを防ぐことができる
  • 構造が簡素でコンパクトな作りになっており、設置スペースを節約可能

必要な出力

必要な出力は、コンプレッサーが供給できる空気の量と圧力を決定し、コンプレッサーの性能や使用できるエアツールの種類、作業の効率に影響を与えます。出力が高いほど、より多くの空気を高い圧力で供給でき、重い作業に対応可能です。

必要な出力が高い場合のメリットは、以下のとおりです。

  • 大規模な工業用途や重機械の動力源として使用できる
  • 同時に複数のエアツールを使用することが可能で、作業効率が向上
  • 長時間の連続運転に耐え、生産ラインなどでの使用に適している

一方で、必要な出力が低い場合のメリットは、以下のとおりです。

  • 消費電力が少なく、運用コストを削減できる
  • 小型であり、設置スペースを節約可能
  • メンテナンスが容易で、運用の手間が少ない

電圧

電圧が変動すると、コンプレッサーの動作効率や安定性に影響を及ぼします。電圧が適切でないと、モーターの性能が十分に発揮されず、過電流や過熱、始動障害などの問題が生じる可能性があります。

電圧が高い場合のメリットは、以下のとおりです。

  • 長距離にわたる送電中の電力損失を減少させ、電力をより効率的に供給可能
  • 電流が少なくなるため、細い配線で済み、配線工事費用が安価
  • 大規模な工業施設で必要とされる大電力を効率良く供給可能

一方で、電圧が低い場合のメリットは、以下のとおりです。

  • 安全性が高く、取り扱いが容易
  • 機器への負担が少なくなり、機器の寿命を延ばすことが可能
  • エネルギー消費が低く、運用コストの削減に貢献

周波数

周波数の変動は、コンプレッサーのモーターの回転数に直接影響を与えます。周波数が変わると、モーターの速度が変わり、それによってコンプレッサーの性能や効率が変化します。

周波数が高い場合のメリットは、以下のとおりです。

  • モーターの回転数を高速で制御でき、リアルタイム制御による高品質な出力電力を実現
  • スイッチング周波数が可聴周波数領域を超えることで、低騒音化が実現
  • インダクタンスやキャパシタンスなどの受動素子の小型・軽量化が可能

一方で、周波数が低い場合のメリットは、以下のとおりです。

  • モーターの回転数が安定しやすく、一定の性能を維持しやすい
  • エネルギー消費が少なく、運用コストを削減可能
  • 振動を低減でき、機器の耐久性に寄与し、メンテナンスの頻度を減らすことが可能

コンプレッサーを製造するメーカー5社

コンプレッサーを製造する企業

コンプレッサーを製造する主なメーカーには、以下の5社が挙げられます。

  • 三菱重工コンプレッサ
  • 日立産機システム
  • アネスト岩田
  • 富士コンプレッサー製作所
  • デンヨー

三菱重工コンプレッサ

三菱重工コンプレッサは、三菱重工業株式会社の100%出資の事業会社で、プロセス用大型コンプレッサの設計、製作、販売からアフターサービスまでを一貫して行っています。MCOは、お客様のプラント稼働率を最大限に保ち、長期にわたる安定した運転を可能とする最新鋭の圧縮機システムを提供し続けることを経営方針としています。

同社は、遠心式のコンプレッサーを主に製造しています。

日立産機システム

日立産機システムは、多岐にわたる産業用途に対応した空気圧縮機を提供しています。特に、アモルファスモータ一体型オイルフリースクロール圧縮機や、IoT対応で遠隔監視が可能なラインアップを揃え、省エネルギーと環境負荷の少ない製品を提供することに力を入れています。

同社は、往復式や回転式のコンプレッサーを主に製造しています。

アネスト岩田

アネスト岩田は、空気圧縮機、真空機器、塗装・塗布機器を製造・販売する企業で、創業から95年以上の歴史を持っています。グローバルに展開しており、海外20カ国以上に30以上の拠点を配置しています。

同社は、往復式や回転式のコンプレッサーを主に製造しています。

富士コンプレッサー製作所

富士コンプレッサー製作所は、奈良県大和郡山市に本社を置く企業で、空気圧縮機および周辺機器の製造販売を行っています。創業は昭和21年3月で、環境と省エネに対応した製品を提供し、国内外に広く製品を送り出しています。

同社は、容積式のコンプレッサーを主に製造しています。

デンヨー

デンヨーは、エンジンコンプレッサを中心に、土木・建設現場の動力源として欠かせない製品を提供しています。建設現場以外にも、スキー場の人工降雪機やエア工具の動力源としても使用されており、圧縮空気を自由にコントロールする技術で、エンジンコンプレッサのニュースタンダードを目指しています。

同社は、回転式のコンプレッサーを主に製造しています。