DC-DCコンバータとは? 昇圧・降圧設計原理と4タイプの特徴・使い方
  • 最終更新日:2024年11月7日
DC-DCコンバータは、エネルギー利用の効率化と入力電圧に対する柔軟性から、現在様々な製品に使用されています。

しかし、DC-DCコンバータはいくつかの種類があり、それぞれの特徴が異なってくるため、使用を考えている製品に最適なものを選ばなければ、思ったようなパフォーマンスを発揮してくれません。

この記事では、DC-DCコンバータの設計原理と種類、適切な使い方とそれぞれのコンバータの特徴、他の回路部品との比較、そして選ぶ際の基準を、メーカー情報とともに詳しく解説します。

この記事を読み終えると、DC-DCコンバータの選定基準の大枠が把握できます。一番最後にはDC-DCコンバータを製造しているおすすめの企業が掲載されているので、気になった企業があれば是非調べてみてください。

今すぐ選び方のポイントを見る
監修者プロフィール
山本真義

山本 真義(やまもと まさよし)
名古屋大学 未来材料・システム研究所 教授

2003年山口大学理工学研究科博士取得後、サンケン電気株式会社、島根大学総合理工学部講師を経て、2011年より島根大学総合理工学部准教授着任。2017年より名古屋大学未来材料・システム研究所教授着任。パワーエレクトロニクス全般 (磁気、制御、回路方式、半導体駆動)に関する研究に従事。博士 (工学)。
IEEE、電気学会、電子情報通信学会会員。応用は航空機電動化、自動車電動化、ワイヤレス給電の三本柱。日本の大学研究室としては珍しく、共同研究企業は40社を超え、海外の完成車メーカーとも強いコネクションを持つ。
産学連携活動を強力に推進しており、企業との共同特許出願数も多数。共同研究だけでなく、各企業の戦略コンサルタントも請け負い、技術顧問としての活動も幅広い。

HP画像 名古屋大学 パワーエレクトロニクス研究所 HP


DC-DCコンバータとは? 設計原理と4タイプの特徴

DC-DCコンバータ?設計原理と4種の特徴・使い方

コンバータにも種類がいくつかありますが、DC-DCコンバータとは、直流電圧を別の直流電圧に変換する装置のことです。DC-DCコンバータは、電子機器の中で様々な電圧レベルを必要とする部品に適切な電力を供給するために重要な役割を果たします。

2種類の基本構造

DC-DCコンバータは基本的に絶縁型と非絶縁型の2つに分けられます。絶縁型は、入力と出力の間にトランスを用いて電気的に絶縁することで、高い昇降圧比や安全性を実現します。非絶縁型は、トランスを用いないことで、小型かつ低コストで高効率な電力供給を実現します。

DC-DCコンバータの回路技術は、スイッチング素子やインダクタ、コンデンサなどのパッシブ部品を用いて、電圧や電流を制御する方法によって様々な種類があります。

絶縁型と非絶縁型の差異をテーブルとして簡潔にまとめると、次のようになります。

概要 用途
絶縁型DC-DCコンバータ トランスを用いて入出力を絶縁しながら
電圧を変換する方式
入出力間の絶縁が可能で、
ノイズ対策や安全性が向上する
非絶縁型DC-DCコンバータ トランスを用いず
電圧を変換する方式
回路がコンパクトで
入出力間の絶縁が不要な場合に適する

絶縁型DC-DCコンバータ

絶縁型DC-DCコンバータの代表的な回路は、フライバック回路、フォワード回路、プッシュプル回路、ハーフブリッジ回路などがあります。これらの回路は、トランスの一次側にスイッチング素子(MOSFETやトランジスタなど)を配置し、高周波のパルス電流を発生させます。

このパルス電流がトランスの一次巻線に流れると、トランスの二次巻線に電圧が誘導されます。この電圧は、整流素子(ダイオードやMOSFETなど)と平滑コンデンサによって直流に変換され、出力電圧となります。

絶縁型DC-DCコンバータは、その特性から特に安全性や信頼性が重要視される機械に使用されることが多いです。たとえば、医療機器(患者の安全確保のため)や制御システム(センサーシステムなど)、通信機器(ノイズの分離と安全な電力供給のため)などに用いられています。

非絶縁型DC-DCコンバータ

一方で非絶縁型DC-DCコンバータの代表的な回路は、バック回路、ブースト回路、バックブースト回路、セプティック回路などがあります。これらの回路は、トランスの代わりにチョークコイルを用いて電圧を昇降圧します。チョークコイルは、電流の変化に対して電圧を発生させるという性質があります。

スイッチング素子がオンになると、入力電圧がチョークコイルに印加され、チョークコイルに電流が蓄えられます。スイッチング素子がオフになると、チョークコイルに蓄えられた電流が放出され、整流素子と平滑コンデンサによって直流に変換され、出力電圧になります。

非絶縁型DC-DCは、コンパクトさ、コスト効率の良さ、シンプルな設計から、様々な機械で用いられています。たとえば、ポータブル音楽プレーヤーなどの一般的な消費者電子製品や、コンピュータの電力供給装置、自動車のナビゲーションシステムなどに使用されているます。

ここまで、DC-DCコンバータの基本的な仕組みと基本構造を紹介しました。次の章では、機能的特徴で捉えたときの代表的なDC-DCコンバータと概要、用途などの基本情報をテーブルにして紹介します。

基本的な情報を捉えた上で、下記各「DC-DCコンバータのメリット・デメリットと使い分け」を読むと、深い理解を得られます。ぜひ続けてお読みください。

2種類の機能的特徴

構造的特性とは別の側面で、機能的特性の違いからDC-DCコンバータを考えることもできます。リニアレギュレータ型とスイッチングレギュレータ型はその代表的な2例です。

前者はデュアルトラッキングレギュレータ、後者は共振型など、それぞれの派生型も存在しますが、基本型はこの2つになります。

両者の違いを平たく述べると、電圧の変換方法が異なります。以上の構造や機能と特徴の関連を把握しているか否かで、貴社の製品に使用した際のメリット・デメリットに対する理解度も変わってきます。テーブルにまとめると次のとおりです。

概要 用途
リニア
レギュレータ型
入力電圧から必要な電圧を
抵抗によって降圧する方式
回路がシンプルで、
入出力間の絶縁が不要な場合に適する
スイッチング
レギュレータ型
入力電圧をスイッチング素子でパルス化し、
インダクタやコンデンサで平滑化する方式
変換効率が高く、入出力電圧の比によらない

リニアレギュレータ型DC-DCコンバータ

リニアレギュレータ型とは、必要な電圧を入力電圧から抵抗によって降圧する方式のことを指します。

その他の特徴として、回路がシンプルであり、入出力間の絶縁が不要という場合での使用に適しています。

スイッチングレギュレータ型DC-DCコンバータ

スイッチングレギュレータ型とは、入力電圧をスイッチング素子でパルス化し、インダクタやコンデンサで平滑化(ノイズを平均化処理によってなくすこと)する方式のことを指します。

その他の特徴として、変換効率が高いため、入出力電圧の比に関係なく使用できることが挙げられます。

ここまで、DC-DCコンバータの設計原理と種類、特徴、そして使い方を説明してきました。次の章では、DC-DCコンバータとインダクタなど他の回路部品との比較を説明します。DC-DCコンバータがなぜ必要なのかがわかるので、次の章も是非お読みください。

ICなど他の回路部品とDC-DCコンバータのメリット・デメリット比較

DC-DCコンバータと他の回路部品とのメリット・デメリット比較

前章では、DC-DCコンバータの設計原理と種類、特徴、使い方を説明しました。ここからは、インダクタやコンデンサ、ICなど、他にも数多くある回路部品とDC-DCコンバータを比較することで、DC-DCコンバータ一般のメリットとデメリットを解説します。

メリット

DC-DCコンバータを使用するメリットは以下の3つです。

  • 電源効率の向上
  • 電源の小型化・軽量化の実現
  • 電源の多様化・柔軟化の実現

電源効率の向上

DC-DCコンバータは、入力される電力を必要な電圧に効率的に変換します。これにより、エネルギーの損失が減り、たとえばバッテリー駆動の機器では使用時間を長くすることができます。

また、効率的な電力変換は、発熱を減らし、機器の安全性を向上させる効果もあります。たとえば、データセンターのサーバーは、高い稼働率と大量のデータ処理に伴い、電力消費が大きくなるため、効率的な電力供給が可能なDC-DCコンバータが求められます。

電源の小型化・軽量化の実現

現在のDC-DCコンバータは、高度な半導体技術と小型コンポーネントを使用して設計されています。そのため、従来よりもはるかに小さく軽量な電源ユニットが製作可能で、結果として機器自体も小型化、軽量化ができます。

これは特に、ポータブルデバイスやウェアラブルテクノロジーにおいて重要な特徴です。たとえば、スマートウォッチやフィットネストラッカーなど、身につけるデバイスでは、こうした軽量化や小型化が重要になってきます。

電源の多様化・柔軟化の実現

DC-DCコンバータは、異なる入力電圧で安定して動作し、必要な出力電圧を提供できます。これにより、様々な入力電源を使っても、安定した性能を維持することができます。

異なる国の電源規格や太陽光発電といった再生可能エネルギーにも対応可能です。特に自動車や車載機器は、稼働状況によって車両の電圧状況が変わるため、こうした柔軟性が求められることが多いです。

デメリット

DC-DCコンバータを使用するデメリットは主に以下の3つです。デメリットの把握は、DC-DCコンバータを製品に使用するとなったときに悪影響を与えないかを検討するための重要な情報です。

  • 高周波ノイズやスイッチングノイズの発生
  • 電源設計・開発の複雑化
  • 電源コストの上昇

高周波ノイズやスイッチングノイズの発生

DC-DCコンバータは、電力を高速でオン/オフすることによって動作します。この高速スイッチングは高周波ノイズやスイッチングノイズを発生させる可能性があり、これが周囲の電子機器に干渉、場合によっては故障する原因となることがあります。

対策として、追加のフィルタリングやシールディングを必要とする場合があります。

電源設計・開発の複雑化

電源設計・開発の際にノイズの低減、効率の最適化、熱管理など、多くの要素を考慮に入れる必要が出てきます。これにより、設計プロセスが複雑になり、場合によっては開発期間が長くなることがあります。

対策としては、コンバータを使用したプロトタイピングと広範なテストを行い、コンバータの特性を早い段階で把握し修正することが挙げられます。また、以上を踏まえて、DC-DCコンバータの基礎的な知識と、製品の電源に使用する場合考慮しなければならない事項を把握する必要もあります。

電源コストの上昇

小型で高性能なコンポーネント、高度な制御回路、ノイズ対策などを含むDC-DCコンバータの製造には、コストがかかります。特に最先端の技術や材料を使用する場合、製品の全体のコストを上昇させる要因となることがあります。

ただし、大量生産によるコスト削減や技術進歩により、このコストは時間とともに低下する傾向にあるのも事実です。

ここまで、DC-DCコンバータ一般の使用メリット・デメリットを説明しました。次の章では、DC-DCコンバータ各種のメリットとデメリット、そして使い分けをどうすれば良いかについて説明します。ぜひ続けてお読みください。

各DC-DCコンバータの強み・弱みと使い分け

DC-DCコンバータ 強み・弱みと使い分け

前章では、DC-DCコンバータ一般の使用メリット・デメリットを紹介しました。ここでは、上記で説明したコンバータ各種の強み、弱み、そしてそれぞれどのように使い分ければ良いのかを解説します。

この章の要点は以下の通りです。

Point

  • 絶縁・非絶縁:電力変換の安全性や効率性に関わる
  • リニア・スイッチングレギュレータ:電圧の制御や安定性に関わる

まず、DC-DCコンバータ全般に関係する、電圧ごとの設置場所の違いについて説明します。

DC-DCコンバータは出力電圧がどれほどになるかによって、コンバータを設置したほうが良い場所が異なります

低電圧(5V以下)

出力リップル電圧やノイズの影響を受けやすいため、出力側の負荷に近い場所に設置することが望ましいです。また、入力側の電源にも近い場所に設置することで、入力リップル電流を低減できます。

中電圧(5V~12V)

出力リップル電圧やノイズの影響を適度に抑えることができるため、出力側の負荷から遠くても問題ない場合が多いです。ただし、出力電流が大きい場合は、出力側の配線抵抗やインダクタンスによる電圧降下を考慮する必要があります。

高電圧(12V以上)

出力リップル電圧やノイズの影響を受けにくいため、出力側の負荷から離れた場所に設置しても問題ない場合が多いです。しかし、出力電流が大きい場合や、絶縁型DC-DCコンバータを使用する場合は、出力側の配線抵抗やインダクタンス、漏れ磁束などに注意する必要があります。

以上に加えて、種類によって強みと弱み、そして使い分け方が異なるので、それを説明します。

絶縁型

絶縁型DC-DCコンバータは、入力と出力の間に電気的な絶縁を持つDC-DCコンバータのことです。絶縁は、トランスやフォトカプラなどの部品を用いて実現されます。

強みと弱み

絶縁型DC-DCコンバータの強みは以下の3点を挙げられます。

絶縁型の強み

  • 入力と出力の電位差が大きくても、絶縁によって回路の保護やノイズの低減ができる
  • 出力側に正と負の両方の電圧を生成できる
  • 高い絶縁耐性や高速スイッチングに対応できる

反対に弱みは以下の3点を挙げられます。

絶縁型の弱み

  • 絶縁に必要なトランスやフォトカプラなどの部品が増えるため、コストやサイズが大きくなる
  • 効率が非絶縁型DC-DCコンバータよりも低下する
  • 絶縁の品質や安定性によって、絶縁の劣化や破壊が起こる可能性がある

他のコンバータとの使い分け

強みと弱みを踏まえた上で、次のような場合には、絶縁型DC-DCコンバータを選ぶのがおすすめです。

絶縁型の使い分け方

  • 入出力間の電位差が大きい場合
  • ノイズに敏感な回路に電源を供給する場合
  • 出力側に正と負の両方の電圧が必要な場合


非絶縁型

非絶縁型DC-DCコンバータは、入力電圧を切り替えるスイッチング素子と、出力電圧を平滑化するインダクタやコンデンサなどのパッシブ素子で構成される電気回路です。入力と出力は電気的に接続されており、トランスなどの絶縁素子は使用されないのが特徴です。

強みと弱み

非絶縁型DC-DCコンバータの強みは以下の3点を挙げられます。

非絶縁型の強み

  • 小型で低価格である
  • 出力電圧が低圧であるため、感電の可能性が低い
  • 負荷の近くに配置することで、伝送ラインの影響を軽減できる

反対に弱みは以下の3点を挙げられます。

非絶縁型の弱み

  • 入力と出力が電気的に接続されているため、ノイズや干渉の影響を受けやすい
  • 出力電圧は入力電圧よりも低くなるため、昇圧や反転などの用途には適さない
  • 出力電圧の安定性や精度が低い場合がある

他のコンバータとの使い分け

強みと弱みを踏まえた上で、次のような場合には、非絶縁型DC-DCコンバータを選ぶのがおすすめです。

非絶縁型の使い分け方

  • 入出力間の電位差が小さい場合
  • コストやサイズを重視する場合
  • 出力側に正または負の一方の電圧だけが必要な場合


リニアレギュレータ型

リニアレギュレータ型DC-DCコンバータとは、入力された直流電圧を別の直流電圧に変換する回路の一種です。入力と出力の関係が線形動作していることから、リニアレギュレータと呼ばれます。

入力と出力間に直列に制御素子が入っており、そのON抵抗を制御することで必要な電圧を得るのが特徴です。

強みと弱み

リニアレギュレータ型DC-DCコンバータの強みは以下の3点を挙げられます。

リニアレギュレータ型の強み

  • 回路が簡単で外付け部品が少ない
  • ノイズが少ない
  • 製品数が多く、最適な製品を選定しやすい

反対に弱みは以下の3点を挙げられます。

リニアレギュレータ型の弱み

  • 入力電圧と出力電圧の差が大きいと、損失が大きくなり効率が悪くなる
  • 発熱が大きくなり放熱対策が必要になる
  • 降圧動作しかできない

他のコンバータとの使い分け

強みと弱みを踏まえた上で、次のような場合には、リニアレギュレータ型DC-DCコンバータを選ぶのがおすすめです。

リニアレギュレータ型の使い分け方

  • ノイズが問題となる場合
  • 省電力向けの電源の場合
  • 入力電圧が低い場合や入力間電位差が小さい場合(入出力間電位差を低くしたLow Dropoutタイプがある)


スイッチングレギュレータ型

スイッチングレギュレータ型DC-DCコンバータは、直流電圧を高効率で別の直流電圧に変換する電源装置です。

スイッチング素子を高速でON/OFFさせてパルス波を生成し、インダクタやコンデンサなどのパッシブ素子で平滑化して出力電圧を得るのが特徴です。

強みと弱み

スイッチングレギュレータ型DC-DCコンバータの強みは以下の3点を挙げられます。

スイッチレギュレータ型の強み

  • 電圧変換効率が高い
  • 昇圧、降圧、昇降圧、反転など、様々な電圧変換が可能
  • 大出力電源の構成に適している

反対に弱みは以下の3点を挙げられます。

スイッチングレギュレータ型の弱み

  • スイッチングに伴う電磁ノイズが発生する
  • 出力電圧の周期変動が発生する
  • 回路設計や部品選定の難易度が高い

他のコンバータとの使い分け

強みと弱みを踏まえた上で、次のような場合には、スイッチングレギュレータ型DC-DCコンバータを選ぶのがおすすめです。

スイッチングレギュレータ型の使い分け方

  • 電力変換効率が重視される場合
  • 広範囲な電圧調整が求められる場合
  • 熱発生の低減を求める場合


以上、各DC-DCコンバータごとの強みと弱み、そして使い分けの仕方を紹介しました。次の章では、DC-DCコンバータ一般から選ぶ際に重要となる機能基準を5点説明します。

種類別の強みと弱み、使い分け方を把握することは重要ですが、実際に数多あるDC-DCコンバータ一般の中から、貴社の求めているものを一つ選択するという、難しさが残ります。その際に着目すると良い機能基準を解説しますので、次の章も併せてお読みください。

何を軸に選べば良い? DC-DCコンバータの選定基準5点

DC-DCコンバータ 選ぶ際の機能基準5点

前章では、DC-DCコンバータ各種の強みと弱み、そしてそれぞれの使い分け方を説明しましたが、実際市場には様々なDC-DCコンバータが存在します。貴社が購入するとなった場合、その途方もなさに圧倒されないためには、選ぶ基準を押さえることが重要です。

ここでは、DC-DCコンバータを選ぶ際に検討すべき事項を以下5点確認します。

DC-DCコンバータを選ぶ際に検討すべき事項5点


貴社で求められている用途を把握した上で、下記情報を参照してください。

リスク対リソースバランス

単に安いものを買い求めたり、反対に安全性だけを重視すると片手落ちになってしまいます。使用環境に応じて求められる安全性を特定し、その上でコストを把握し絶縁型または非絶縁型を選択しましょう。

安全性重視 コスト削減重視
絶縁型
非絶縁型

安全性やノイズの分離が重要な場合は絶縁型を選択するのが良いです。絶縁型DC-DCコンバータは、入力と出力の間にトランスを用いることで、電気的に絶縁するものです。これにより、入力電圧と出力電圧が接触しても電気的ショックは受けません。

安全性やノイズ対策の観点から人体などへの影響を考えて、医療機器やスマートフォン、タブレットなどの携帯機器で、絶縁型のDC-DCコンバータが採用されるケースが多いです。

コストやサイズが重要な場合は、非絶縁型を選択するのが良いです。非絶縁型DC-DCコンバータは、入力と出力の間にトランスを用いないことで電気的には絶縁しないものです。これにより、小型化や低コスト化、高効率化を実現することができます。

小型化や高効率化の観点から、電気自動車やハイブリッド車などの車載機器で非絶縁型DC-DCコンバータを採用するケースが増えています。

効率対ノイズバランス

DC-DCコンバータの用途が効率重視か低ノイズ重視かで、選択する型がリニアレギュレータ型かスイッチングレギュレータ型に分けられます

効率重視 低ノイズ重視
リニア
レギュレータ型
スイッチング
レギュレータ型

リニアレギュレータ型DC-DCコンバータに比べて、スイッチングレギュレータ型DC-DCコンバータは高効率という特徴があります。これは、スイッチング動作によって、入力電力のうち、より多くの電力を出力電力に変換できるためです。

例えば、ノートパソコンやサーバなどの高効率化が求められる機器では、スイッチングレギュレータ型DC-DCコンバータがよく使用されています。

スイッチングレギュレータ型DC-DCコンバータに比べて、リニアレギュレータ型DC-DCコンバータは低ノイズという特徴があります。これは、スイッチング動作を行わないことから、スイッチングノイズが発生しないためです。

例えば、オーディオ機器や無線機器、医療機器などでは、ノイズに敏感な機器が多く使用されます。そのため、これらの機器では、リニアレギュレータ型DC-DCコンバータがよく使用されています。

入力電圧

入力電圧が変動すると、出力電圧の安定性が変わります

たとえば、入力電圧が低くなると、コンバータのオン・デューティ(スイッチング素子がONになる時間比)が大きくなります。このオン・デューティが変化すると、フィードバック回路との関係で、出力電圧の安定性が低下するなど影響が及びます。

また、入力電圧の変動によって、効率と発熱も変わります

たとえば、入力電圧が低くなると、スイッチング素子に流れる電流が大きくなります。スイッチング素子に流れる電流が大きくなるほど、スイッチング素子の損失が大きくなります。これが原因となり、コンバータの効率が低下、発熱が増加することがあります。

入力範囲は通常最大電圧と最小電圧の比率で表されることが多いです。一般的な絶縁型DC-DCコンバータは、2:1または4:1の入力電圧範囲で動作します。業界によって異なりますが、産業用途の場合は高い入力電圧(24V-72V)を扱うこともあれば、小型デバイスなどには低い入力電圧(1V-5V)が求められることもあります。

貴社で扱う製品の入力電圧はどれほどを想定しているのかを確認しましょう。そして、どのDC-DCコンバータであれば安定性やコンバータの寿命を損なうことなく、かつ効率的に電力変換が行えるのかを検討すると良いです。

出力電圧

出力電圧が変動すると、DC-DCコンバータの性能や信頼性に影響が出る可能性があります。出力電圧の変動は、主に入力電圧の変動、負荷電流の変動、スイッチングノイズ、温度変化などによって引き起こされます。

DC-DCコンバータは電流の変換を行いますが、この変換によって出力電圧には微妙な上下の波が生じます。リップル電圧は電気が安定していないというサインで、この波が大きいほど、電源の品質に悪影響を及ぼします。

一方で、出力電圧が高いということは、同じ出力容量の場合、出力コンデンサの容量は小さく済ませられるので、回路の実装面積やコストは削減できます。

設計と用途によって異なりますが、消費者向け電子機器や産業用機器、車載機器などで使用されるDC-DCコンバータの一般的な出力電圧範囲は、1V-24Vになります。特定の工業用途になると、48Vなどより高い電圧出力が求められることもあります。

どれほどの出力電圧を要しているか、そしてどれほど出力の安定性・精度を求めているかによって、検討すべきDC-DCコンバータの種類は変わってきます。

出力抵抗

出力抵抗とは、DC-DCコンバータの出力側に接続される負荷抵抗値のことです。出力抵抗が変動すると、出力電圧や出力電流、効率などのコンバータの性能は変わります

出力抵抗が高いと、出力電流が小さくなるため、スイッチング素子の損失や発熱が減少し、寿命や信頼性が向上しますが、出力電圧が入力電圧に近づくため、降圧率が低下し、目的の出力電圧を得られない場合があります。

出力抵抗の範囲は、性能が高いものだと約10ミリオーム(0.01オーム)以下、低コストの場合だと約100ミリオーム(0.1)以上のことが多いです。

たとえば、精密な測定機器や高品質のオーディオ機器などは、出力電圧に安定性が求められることもあり、出力抵抗の値が重要になってきます。

特に変換効率と安定性についてどれほどのアウトプットを求める必要があるのかを確認しましょう。逆に絶対に超えてはいけない閾値(しきいち)があるのかを確認し、それが検討中のDC-DCコンバータに適合しているのかを把握するも重要です。

専門家コメント

山本真義

山本 真義(やまもと まさよし)
名古屋大学 未来材料・システム研究所 教授

この記事には医療用等の使用環境ではDC-DCコンバータは低ノイズ性能が求められると指摘されていますが、熱の視点においても使用環境によっても選定戦略が変わってきます。
使用環境が高温である場合、他の冷却系が使用できる場合、その冷却系が空冷か水冷か等によって、許容できる損失がどのくらいになるかが決まり、それによって大まかな効率の仕様も決定されることになります。
もちろん、コストをかければ高効率なDC-DCコンバータを選ぶことができますが、外部環境での冷却を上手く使えるのなら、コストを抑えながら安定したDC-DCコンバータの性能を獲得することができるかも知れません。
使用条件における温度環境を想定して、余裕を持った設計のDC-DCコンバータを選定することが肝要です。



ここまで、DC-DCコンバータを選ぶ際に検討すべき5点を確認しました。次の章では、DC-DCコンバータを製造しているメーカーを一覧で紹介します。この章で紹介した選び方の大枠を踏まえて次の章を読むと、貴社にとって適切なメーカーの判別がつきますので、是非ご一読ください。

DC-DCコンバータを製造しているおすすめのメーカー5選

DC-DCコンバータ おすすめ企業5選

前章では、DC-DCコンバータを選ぶ際に検討すべき5点を紹介しました。貴社の導入条件を整理して、5点を確認した後は、実際にDC-DCコンバータを製造している企業を探しましょう。

ここでは、DC-DCコンバータの代表的なメーカーを紹介します。気になるメーカーがあれば、是非実際に問い合わせていただけたらと思います。


RECOM Power(レコム・パワー)

レコム・パワーは、1974年に設立されたオーストリアとドイツに拠点を置く電源メーカーです。0.25Wから960Wまでの電力範囲で最新のコンバータ技術の開発と製造に豊富な経験を持ち、計測、医療、FAなどの少量多品種のし上で豊富な採用実績があります。

レコム・パワーは主に絶縁型DC-DCコンバータと非絶縁型DC-DCコンバータを扱っています。非絶縁型DC-DCコンバータは効率97%以上を誇り、全ての製品で国際安全認証を得ているのもポイントです。計測機器や医療、FA業界で製品がよく用いられています。

サイズ、ピンオプション、動作温度範囲、1/4ワットから3キロワットまでの入出力電圧組み合わせなど、市場の中でも幅広いラインナップを揃えています。

選択に困った場合、そして非絶縁型のスイッチングレギュレータDC-DCコンバータをお探しの方はまずレコム・パワーのDC-DCコンバータを確認するのがおすすめです。

ベルニクス(Bellnix)

ベルニクスは、1978年に創業された、埼玉県さいたま市に本社を置く、先端電源技術の製品開発を行う電源メーカーです。電源モジュール、電源システム、非接触給電製品、電源関連機器の開発、製造、販売を事業として行っています。

ベルニクスは主に非絶縁型DC-DCコンバータと絶縁型DC-DCコンバータを扱っています。小型、低ノイズ、高絶縁、高動作温度範囲など様々な種類の絶縁型DC-DCコンバータがあり、多様なニーズに対応が可能です。たとえば、医療、通信、防衛、航空宇宙などの産業に納入されています。

海外の企業も多い中、ベルニクスは日本に本社を置いているのがポイントです。また、安定して高品質、高性能、高信頼性の電源製品を提供しているのが強みです。

電源供給インフラのあり方に長年向き合ってきたその実績から、安心してラインナップから製品を選択できます絶縁型リニアレギュレータのDC-DCコンバータをお求めの方は、ぜひ問い合わせてみてください。

MINMAX TECHNOLOGY(ミンマックス・テクノロジー)

ミンマックス・テクノロジーは、1990年に台湾に設立された電源モジュール専門メーカーです。DC-DCコンバータやAC-DCコンバータなど、様々な電源製品を提供しています。国際規格に準拠した製品をグローバルに展開しており、各国に代理店やサポートセンターを持っています。

ISO 9001やISO 14001などの品質管理システムを導入しつつ、RoHSやREACHなど環境規制にも準拠しているため、環境に配慮した製品を提供しています。最新技術によって小型化や高密度化を実現し、かつ競争力ある価格で製品を提供しているのもポイントです。

様々な納入実績があるミンマックス・テクノロジーですが、特に鉄道業界での実績が多いです。たとえば、鉄道EMC(EMI+EMS)規格 EN 50121-3-2に準拠している、かつ鉄道安全規格EN 50155(IEC 60571)認証を取得しているパッケージも存在します。

貴社が鉄道業界であれば、ミンマックス・テクノロジーは要チェックです。また、非絶縁型リニアレギュレータのDC-DCコンバータは世界トップレベルの製品数、シェアを誇っています

ローム(ROHM)

ロームは、1958年に創業した日本の電子部品メーカーで、本社は京都市にあります。半導体、パッシブコンポーネント、LEDなどの製品を提供しています。ロームはDC-DCコンバータの分野でも高い技術力と豊富なラインナップを持っており、様々なアプリケーションに対応できる製品を開発しています。

ロームは多様なスイッチングレギュレータ型のDC-DCコンバータを扱っているのが特徴です。たとえば、降圧型、昇圧型、昇降圧型/反転型が挙げられます。他にも、FET内蔵タイプとFET外付けタイプのDC-DCコンバータもあります。

高い変換効率と安全性を両立しながら、FET内蔵タイプなど外付け部品を減らして基板面積を削減することで、小型の製品にも対応可能なDC-DCコンバータを扱っています。

貴社の採用対象が小型製品の場合、ロームのDC-DCコンバータ、特に絶縁型スイッチングレギュレータのDC-DCコンバータがおすすめです。

TDK(ティーディーケイ)

ティーディーケイは1935年に創立された、主に電子部品の製造と販売を事業として行っている企業です。創立当初は「東京電気化学工業株式会社」という名称で、フェライト磁石の商業生産を行っていました。

その後、電子部品の製造に特化し、現在はコンデンサやインダクタなどのパッシブコンポーネントやACアダプタやDC-DCコンバータなどの電源供給装置、ハードディスクドライブの磁気ヘッドや磁気センサなどの磁気関連製品を扱っています。

DC-DCコンバータは絶縁型と非絶縁型の両方を扱っており、端子形状もDIP、SIP、SMDなど様々な形状に対応しています。

情報通信技術業界や自動車業界、エネルギー業界など様々な納入先がありますが、ティーディーケイは鉄道業界での実績が豊富です。鉄道車両と地上設備のどちらでもDC-DCコンバータを必要としています。

たとえば超小型DC-DCコンバータのCCGシリーズやオンボードタイプのCC-Eシリーズなどが使用例に挙げられています。高い安全性を求める方におすすめです。

この記事を読んで、DC-DCコンバータが気になった方は、以下のボタンよりお気軽にお問い合わせください。

JET-Globalに問い合わせる

このページの目次まで戻る