分注機とは?6種類の分注機とおすすめの企業5社をご紹介
  • 最終更新日:2024年9月13日
分注機とは、液体を一定量や一定割合で計量分取する装置のことです。分注装置、自動分注機と呼ばれることもあります。

この機械は、試料や試薬を高速に高精度で各ウェルや容器に送るリキッドハンドリング系、ノズルのついたヘッドやプレートの移動を行う搬送系、そしてこれらを制御するコントローラーで構成されていて、化学、分子生物学、医学など自然科学全般の実験から食品検査や臨床検査まで、幅広く利用されています。

今回の記事では分注機とは何か、種類と選び方、おすすめの製造メーカーをご紹介します。

分注機とは?6種類の分注機の種類

分注装置の概要と6種類の特徴.

分注機は、試料や試薬を迅速かつ正確に各ウェルや容器に分配するリキッドハンドリングシステム、移動可能なノズル付きヘッドやプレート搬送システム、およびこれらを管理するコントロールユニットから成り立っています。

この器具は、化学、分子生物学、医学などの自然科学研究や食品検査、臨床検査など、多岐にわたる分野で広く使用されています。分注機にはマイクロピペット、ディスペンサー、自動分注機、卓上型多機能機器などがあります。

主な特徴としては、耐薬品性、滅菌可能性、UV耐性、有機溶剤耐性、高耐久性、操作時の負荷軽減が挙げられます。

分注機には、液体の吸引吐出に様々な方式がある。特に使われているのは以下に挙げる種類です。

  • エアーディスプレイスメント方式
  • シリンジ方式
  • プランジャーポンプ方式
  • ペリスタポンプ方式
  • 加圧バルブ方式
  • 超音波方式

エアーディスプレイスメント方式

エアーディスプレイスメント方式の分注機は、ピストンがシリンダー内を動くことで空気の層を作り、その空気の層を使って液体を吸引または排出します。ピストンが上昇すると、シリンダー内部に負圧が生じ、液体が吸い上げられます。

ピストンが下降すると、その空気が液体を押し出して排出します。この方式は特に、クロスコンタミネーションを避ける必要がある実験や、クリーンな操作が求められる場面で利用されます。

この方式の分注機には、以下の特徴があります。

  • 直接液体に触れる部分が少ないため、異なるサンプル間での汚染のリスクが低い
  • 液体がピストンやシリンダーに直接触れないため、部品の洗浄や交換が比較的簡単
  • 液体の性質に左右されにくく、精度良く一定量の液体を繰り返し分注することが可能

一方で、エアーディスプレイスメント方式の分注機には以下の弱みもあるので、注意が必要です。

  • 揮発性が高い液体や粘性が高い液体の取り扱いに不向きで正確な分注が難しい
  • 空気の体積が温度に依存するため、温度変化が大きい環境では分注の精度が低下する
  • 構造が複雑な場合が多く、製造コストが高い

シリンジ方式

シリンジ方式分注機とは、ピストンが液体を直接吸引・排出するポジティブディスプレイスメント式の分注機で、固定の容量を複数回分注するのに適しています。

このタイプの分注機には、以下のような強みが挙げられます。

  • 粘性や密度の高い液体の分注に適している
  • エアーディスプレイスメント式では誤差が生じやすい液体に対して、精度の高い結果を出せる
  • 複数回の分注が連続してできるため、作業時間を短縮することが可能
  • シリンジの先端が長いため、バイアル瓶などの底まで届く
  • シリンジの容量によって、様々な分注量に対応可能
  • 一部のシリンジはオートクレーブ滅菌が可能

一方で、この方式の分注機には以下のような弱みがあるので、注意が必要です。

  • シリンジは専用のものを使用する必要がある
  • 分注量はシリンジの容量とダイヤルの設定によって決まり、設定が手間になりやすい
  • シリンジは液体に直接触れるため、洗浄や滅菌が必要

プランジャーポンプ方式

プランジャーポンプ方式分注機とは、プランジャーと呼ばれる円筒状のピストンがポンプ筐体内を往復運動することで生じる容積変化を利用して、液体を一定量や一定割合で計量分取する装置のことです。プランジャーポンプは、容積式ポンプの一種で、高圧や高粘度の液体の分注に適しています。 プランジャーポンプ方式分注機の強みは、以下のとおりです。

  • 分注精度が高く、吐出量の正確な調整が可能
  • 分注制度が液体の温度や粘度の変化にも影響されにくい
  • 高圧や高粘度の液体の分注に対応可能
  • 油やゲルなど、エアーディスプレイスメント式では誤差が生じやすい液体にも適する
  • プランジャーの容量やストロークによって、様々な分注量に対応可能

この方式の分注機には以下のような弱みもあるので、注意が必要です。

  • プランジャーは専用のものが必要
  • 分注量はプランジャーの容量とダイヤルの設定によって決まり、設定が手間になりやすい
  • プランジャーは液体に直接触れるため、洗浄や滅菌が必要

ペリスタポンプ方式

ペリスタポンプ方式分注機とは、シリコンなどの軟質チューブをローラーでしごいて送液するポンプ(チューブポンプ・ローラーポンプ・ペリスタルティックポンプ)を活用した分注機です。溶液と接する箇所はチューブ内のみのため、汚染されず、無菌的に送液することができる。使用後はチューブの交換または洗浄のみで済みます。

ペリスタポンプ方式の分注機の強みは、以下のとおりです。

  • チューブの種類や長さ、回転数などによって、様々な分注量に対応可能
  • 液体の種類を選ばない
  • 粘性や密度の高い液体や有機溶媒、酸・アルカリ溶液など誤差が生じやすい液体にも適する
  • 液体の汚染や漏れのリスクが低い

一方で、この方式の分注機には以下のような弱みもあるので、注意が必要です。

  • チューブの劣化や伸び、気泡の発生などによって、流量にバラツキが生じる
  • チューブの変形や摩擦によって、回転数に制限がある
  • ローラーによる圧力や摩擦があるため、チューブの寿命が短い

加圧バルブ方式

加圧バルブ方式分注機とは、液体の入った密閉空間を加圧し、バルブの開閉により液体を飛ばす方式の分注機で、微量から多量までの分注に対応できます。

この方式の分注機の強みは、以下のとおりです。

  • 分注精度が高く、分注量の設定が簡単
  • 液体の温度や粘度の変化にも影響されにくい
  • 液体の汚染や漏れのリスクが低い

一方で、加圧バルブ方式の分注機には以下のような弱みもあるので、注意が必要です。

  • バルブの開閉に時間がかかるため、高速な分注には不向き
  • 高圧なので分注ノズルの詰まりや破損のリスクが高い
  • 分注ノズルは専用のものを使用する必要があり、ノズル交換が手間になりやすい

超音波方式

超音波方式分注機とは、超音波を液体に当てて微小な液滴を飛ばす方式の分注機です。非常に微量の分注が可能で、液体の種類や粘度に影響されません。

この方式の分注機の強みは、以下のとおりです。

  • 分注量が非常に小さく、25 nLから5 µLまでの範囲で分注できる
  • 液体の汚染や漏れのリスクが低い

一方で、超音波方式分注機には以下の弱みもあるので、注意が必要です。

  • 超音波の発生に時間がかかるため、高速な分注には不向きである
  • 超音波による振動や衝撃によって、分注ノズルが損傷することがある

ここまで、分注機の種類をご紹介してきました。次のセクションからは、分注機を選定する上で重要な6つの選定基準をご紹介します。貴社に最適な分注機をお探しの場合は、次のセクションに読み進んでください。

6つの比較基準 | 分注機の選び方

分注装置を選定する6つの基準

分注機は様々な場面で活用することができ、種類も豊富です。そのため、貴社に最適な分注機を選定するには、以下の6点を検討しておく必要があります。

分注する液体

液体の性質(粘度、揮発性、腐食性など)によって、分注機の機能性や効率に大きな影響を及ぼすため、適切な分注機の選定が必要です。不適切な機種を使用すると、分注誤差が生じたり、機器の故障を招いたりする可能性があります。

以下に、分注機の種類に対してそれぞれ適している液体を記載するので、分注機を選定する際の参考にしてください。

方式 適した液体例
エアーディスプレイスメント方式 水やバッファ溶液
シリンジ方式 生体サンプル、細胞培養液
プランジャーポンプ方式 高粘度のオイルやグリース
ペリスタポンプ方式 汚水や汚染された液体
加圧バルブ方式 化学薬品や高揮発性溶剤
超音波方式 精密なクリーニング液体

分注量

分注機の分注量は、その機械が一度に吐出できる液体の量を指します。これはマイクロリットル(μL)から数リットルに及ぶ幅広い範囲で設定されることがあります。適切な分注量の選定は、液体の使用目的、処理速度、精度要求などに基づいて行われます。

分注量が多いと、以下のようなメリットがあります。

  • 大量の液体を迅速に処理できるため、大規模な実験や生産プロセスの時間短縮に寄与
  • 大量に分注することで、単位あたりのコストを抑えることが可能
  • 少ない回数での操作で済むため、作業の単純化が図れる

しかし、分注量が多いと微小な誤差も積み重なって大きな誤差につながったり、高価な機器が必要になることがあります。少量の液体を正確に分注する必要がある場合、大量分注に特化した機器では対応しづらくなるので、注意が必要です。

その一方で、分注量が少ないと以下のようなメリットがあります。

  • 非常に少量を分注するための技術が進んでおり、微量での正確な分注が可能
  • 高価な試薬やサンプルの無駄遣いが少ない
  • バイオテクノロジーや医薬品開発など、精密な液体処理が求められる分野で広く利用可能

しかし、分注量が少ないと少量ずつの分注するため分注に時間がかかり、大量処理の効率が悪くなる可能性があります。また、機器のコストが高くなることがある他、より複雑な操作手順や校正が必要になる場合があります。

分注精度

分注精度は、分注された液体の量が目標量からどれだけ偏差があるか、または一貫性があるかを示す指標です。この精度は、液体の性質、機械のメカニズム、操作条件などによって影響されます。高精度な分注機は非常に小さな誤差範囲で液体を分注する能力があります。

分注精度が高い場合のメリットとしては、以下が挙げられます。

  • 実験や製造プロセスの結果の一貫性と信頼性が向上
  • 正確な分注により、高価な試薬や材料の無駄遣いが減少
  • 厳格な規格と基準が設けられている業界、特に医薬品製造で高い分注精度が活躍

しかし、高い分注精度の分注機は高価で、精密な部品や高度な技術、初期投資及びメンテナンスコストが必要です。また、複雑な設定や校正、操作に専門的な知識が必要だったり、定期的な校正やメンテナンスが求められる点に注意が必要です。

一方、分注精度が低いことのメリットには以下があります。

  • 製造コストが低く、購入や維持が経済的
  • 機器の操作や設定が簡単で、多くの操作者にとって扱いやすい

しかし、分注精度が低いと実験結果に一貫性がなく、再現性が低下することがあります。他にも必要以上の試薬や材料の使用が発生したり最終的な製品の信頼性に影響を及ぼす可能性があるので、注意が必要です。

分注速度

分注速度とは、分注機が一定時間内に液体を分注できる速さを指します。

分注速度が高いと、以下のようなメリットがあります。

  • 大量のサンプルを短時間で処理可能であり、全体の生産性が向上
  • 需要の増加や大規模な実験に迅速に対応する能力がある

しかし、分注速度が高いと特に微量分注の場合、精度が犠牲になったり、故障やメンテナンスの頻度を高める可能性があります。高粘度の液体や揮発性の高い液体など、特定の液体は高速で正確に分注することが困難な場合もあるので、注意が必要です。

その一方で、分注速度が低いと以下のようなメリットがあります。

  • 特に微量を扱う際により高い精度を提供
  • 長期間にわたる機器の耐久性を向上
  • 粘度が高い液体や複雑な化学的性質を持つ液体の分注に適する

しかし、分注速度が低いと全体の作業効率が低く、時間に敏感なプロジェクトや大規模な生産ラインや需要の急増やスケールアップへの対応が難しくなることがあります。

分注温度

分注温度は、分注機が操作される温度範囲を指し、液体の種類に応じて高温または低温で分注する必要があります。特に、液体が温度に敏感な場合や特定の化学的または物理的性質を持つ場合、適切な温度制御が重要です。

分注温度が高いと以下のようなメリットがあります。

  • 高粘度の液体が流動しやすくなり、スムーズな分注が可能
  • 特定の化学反応を効率良く進められる
  • 液体中の微生物を不活化させ、無菌状態を保てる

しかし、分注温度が高いと揮発性化学物質を扱う際には誤差や危険性が増したり、機械部品に負担をかけ、耐久性問題やメンテナンス頻度の増加を引き起こすことがあります。また、高温状態を維持するためには追加エネルギーが必要で、運用コストが上がるので、注意が必要です。

その一方で、分注温度が低いと以下のようなメリットがあります。

  • 揮発性が高い液体の分注時に揮発を抑え、より正確な分注が可能
  • 特定の化学物質は低温で安定し、望ましい化学的性質を保持できる
  • エネルギー消費が少なく、運用コストを抑えられる

しかし、分注温度が低いと多くの液体の粘度を増加させる他、極端に低温の環境では液体が凍結するリスクがあり、機械の損傷や分注エラーを引き起こす可能性があります。

また、低温は化学反応の速度を遅くし、特定のプロセスでの効率が悪くなる可能性もあるので、注意が必要です。

価格

分注機の価格はその機能、精度、耐久性、ブランド、サポートサービスなどによって大きく異なります。価格と性能のバランスを取ることが、購入決定において重要です。

価格が高い分注機には、以下のようなメリットがあります。

  • より高い精度と再現性を提供し、複雑な液体や厳しい実験条件でも正確な分注が可能
  • 自動化機能、プログラム可能な設定、エラー検出などの高度な機能で操作の容易さや柔軟性が向上
  • 長期にわたって安定した性能を維持し、頻繁な修理や交換の必要が少ない
  • メーカーからのサポートや保証が充実していることが多い

一方で、目的に対してオーバースペックな分注機は予算の無駄遣いになってしまうので、分注機を導入する目的を明確にする必要があります。

なお、価格が安い分注機には、以下のようなメリットもあります。必ずしも安かろう悪かろう、というわけではありません。

  • 予算が抑えられる分、他の機器や実験材料への投資が可能
  • 万が一の失敗や方針転換の際の損失を抑えられる
  • 異なるタイプの液体や多様な実験条件に対応することが可能

重要なのは、目的に対して必要なスペックを持った分注機を選定することです。

ここまで、分注機を選定するためのポイントをご紹介しました。次のセクションでは、具体的に分注機を製造する企業をご紹介します。

分注機を製造するメーカー5選

分注装置を製造する会社

分注装置を製造する企業はいくつもありますが、今回の記事ではその中から5社ピックアップしたものをご紹介します。

  • ベックマン・コールター
  • バイオテック
  • ニチリョー
  • エルメックス
  • エムエステクノス

ベックマン・コールター

ベックマン・コールターは、米国の医療機器メーカーで、臨床検査や生命科学研究における自動化ソリューションを提供しています。日本では、ベックマン・コールター株式会社として、自動分注機やフローサイトメーター、血球計数器などの製品を販売しています。

同社は、超音波を用いた非接触・微量自動分注機(Echoシリーズ)とチップを用いた自動分注機(Biomekシリーズ)の2種類の分注機を取り扱っています。

特にEchoシリーズは、最少分注量が2.5ナノリットルと非常に小さく、NGSや創薬研究などに適しており、Biomekシリーズは、分注量が0.5~5,000マイクロリットルと幅広く、ジェノミクスやプロテオミクスなどに適しています。

バイオテック

バイオテックは、日本のライフサイエンス機器のトータルプランナーで、分注装置やウォッシャーなどの国産メーカーです。

同社は、世界最高水準のリキッドハンドリング技術により、バイオ・臨床・創薬・遺伝子分野でライフサイエンスの発展に貢献しています。 バイオテックは、96/384/1536ウェルプレートに対応したシリンジ方式分注装置や、可変ピッチ分注装置など、様々なタイプの分注装置を取り扱っています。また、分注装置に組み込めるオプション類や、ウォッシャー、ミキサー、温調ユニットなどの関連装置も提供しています。

ニチリョー

ニチリョーは、分注機やピペットなどの医療理化学分野の検査実験用機器を製造・販売している会社です。国内外に多数の販売代理店を持ち、世界各国に製品を提供しています。

同社は、シリンジ方式やプランジャーポンプ方式など様々なタイプの分注機を扱っており、以下のようなものが例として挙げられます。
  • ディスペット:ハンディータイプの分注機で、直接手に持って試験管に分注可能
  • ニチメイト:可変式の連続分注機で、一度の吸入で一定量を連続的に分注可能
  • ボトルトップディスペンサー:ボトルタイプの分注機で、試薬瓶に直接取り付けて使用可能

エルメックス

エルメックスは、1986年にバイオ関連機器の研究開発型メーカーとして設立された企業です。微生物検査用品を中心に、分注機、ピペット、送液ポンプ、ディスペンサ、自動分注システムなどの製造・販売を行っています。

同社は自動秤量分注装置、ホモジナイザ、ペリスタポンプ方式の簡易分注機、コロニーカウンティングシステム、E-ピペットなどを取り扱っていて、それぞれの分注機は、液体の粘度や吐出量、用途に応じて選択できるようになっています。

エムエステクノス

2006年に設立されたメーカーで、分注装置や自動検体処理装置など、ライフサイエンスや臨床の分野で活躍する装置を製造するメーカーです。

幅広い分注容量や系列分注も可能で、分注機を含め、様々な場面に対応した以下のような製品ラインナップを取り揃えています。

  • 同時自動分注装置
  • 自動分注希釈装置
  • オートドロッパー