単相・三相やかご型・巻き線型など5種類の特徴や用途を押さえることで、効率的な選定が可能です。
本記事では、それぞれの種類の詳細な特徴や比較、適切な選び方を解説するとともに、おすすめメーカーを紹介。貴社の設備に最適なモーター選びをサポートする実践的な情報を提供します。ぜひご参考ください。
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目次
インダクションモーターとは? 要点と5つの種類
インダクションモーターは、交流電源を使って電磁誘導の力で回転するモーターの一種です。このため、「ACモーター」や「誘導モーター」とも呼ばれています。一般的に価格が安く、構造が単純でメンテナンスが容易なため、家庭用や産業用の機械、自動車、電車、風力発電など多くの分野で広く使用されています。
インダクションモーターには、以下の5つの種類が挙げられます。
- 単相インダクションモーター
- 三相インダクションモーター
- かご型インダクションモーター
- 巻き線型インダクションモーター
- コンデンサ始動型インダクションモーター ※クリックすると該当箇所まで飛びます
単相インダクションモーター
単相インダクションモーターは、単相交流電源を使って動作するインダクションモーターです。主巻線と補助巻線のふたつの巻線によって回転磁界を発生させ、回転子に電磁誘導の力で回転トルクを与えることで動きます。この種類のインダクションモーターには、以下の強みがあります。
- 単相交流電源があれば運転できる
- 家庭用や産業用の機械に広く利用可能
- 構造が単純でメンテナンスが容易
三相インダクションモーター
三相インダクションモーターは、三相交流電源を使って動作するインダクションモーターです。固定子に三相の巻線を配置し、それに流れる電流によって回転磁界を発生させます。三相インダクションモーターの強みには、以下の点があります。
- 始動トルクが大きい
- 始動電流が小さい
- 構造が単純でメンテナンスが容易
- 長寿命
- 速度制御や逆回転の制御が容易
三相交流電源がある場合や、出力が大きい場合には、三相インダクションモーターが効率的です。
かご型インダクションモーター
かご型インダクションモーターは、三相交流電源で動作するインダクションモーターです。回転子は、棒状の導体の両端を短絡環で接続した「かご型」の構造になっており、固定子に三相の巻線を配置し、それに流れる電流によって回転磁界を発生させます。回転磁界によって回転子に誘導された電流によって回転トルクが発生し、電動機が回転します。この種類のインダクションモーターには、以下の強みがあります。
- 構造が単純で安価
- 回転子にブラシや整流子などの部品が不要
- メンテナンスが容易
- 長寿命
- 始動トルクが大きい
- 始動電流が小さい
- 速度制御や逆回転の制御が容易
三相交流電源がある場合や、出力が大きい場合には、かご型インダクションモーターが効率的です。
巻き線型インダクションモーター
巻き線型インダクションモーターは、三相交流電源で動作するインダクションモーターです。回転子にもコイルを巻いており、スリップリングとブラシを使って外部に電流を取り出すことができます。回転子に流れる電流を二次抵抗器で調整することで、始動特性や速度制御を改善することが可能です。この種類のインダクションモーターには、以下の強みがあります。
- 始動トルクが大きい
- 過熱を防げる
- 回転子で生じる損失を外部の二次抵抗器で放出可能
- 二次抵抗器の値を変えることで回転数を変化させることができる
始動トルクがさらに大きく必要な場合や、速度制御が頻繁に必要な場合には、巻き線型インダクションモーターが適しています。
コンデンサ始動型インダクションモーター
コンデンサ始動型インダクションモーターは、単相交流電源を使って動作するインダクションモーターです。主巻線と補助巻線のふたつの巻線によって回転磁界を発生させ、回転子に電磁誘導の力で回転トルクを与えます。始動時には補助巻線にコンデンサを介して電流を流し、定速に近づくと遠心力スイッチなどで補助巻線を切断します。その後は、回転子の誘導電流によって回転磁界が維持されます。この種類のインダクションモーターには、以下の強みがあります。
- 単相交流電源があれば運転できる
- 家庭用や産業用の機械に広く利用可能
- 始動トルクが大きい
- 始動電流が小さい
単相交流電源がある場合や、出力が小さい場合には、コンデンサ始動型インダクションモーターが適しています。
インダクションモーターのメリット・デメリット
インダクションモーターには、メリットだけではなくデメリットもあります。活用する際は、メリットだけでなくデメリットも比較することがおすすめです。
メリット
インダクションモーターには、以下のメリットが挙げられます。- 構造が単純で安価である
- 寿命が長く、メンテナンスが容易である
- 効率が高く、始動トルクが大きく、始動電流が小さい ※クリックすると該当箇所まで飛びます
構造が単純で安価である
インダクションモーターはほかの電動機と比べて構造が非常にシンプルであるため、低コストで活用できます。固定子と回転子の2つの主要な部分だけで構成されており、ブラシや整流子といった摩耗しやすい部品がありません。- ポンプ 工業用の水や油を送るポンプで広く使用
- コンプレッサー エアコンプレッサーや冷凍機などで使用
- エアコン 冷却と暖房のためのコンプレッサーやファンの駆動に使用
- 電動車両 低コストで信頼性の高いモーターとして、電動自転車や電動スクーターにも使用
- 灌漑システム ポンプ駆動に使用され、広範囲の農地への効率的な水供給を実現
寿命が長く、メンテナンスが容易である
インダクションモーターは構造がシンプルな上に摩耗しやすいブラシや整流子を持たないため、摩耗部分が少なく、故障しづらいです。これらのメリットにより、インダクションモーターは以下のような用途で使用されています。
- ポンプ 高い信頼性と耐久性を持ち、長時間の連続運転が必要なポンプに最適
- クレーン 長寿命で高信頼性のモーターが必要なため、重機の駆動に最適
- 水処理プラント 連続的に稼働する必要があり、メンテナンスが容易
- エレベーター 長寿命で信頼性が高いモーターが必要なエレベーターの駆動に活用
効率が高く、始動トルクが大きく、始動電流が小さい
インダクションモーターは高効率、始動トルクが大きく、始動電流が小さいため、総合的にコストパフォーマンスが良いです。同じインダクションでも、負荷が大きなコンベアシステムから空調システムの電力供給設備まで、幅広く使用されます。
- 加工機械 効率の高い運転と高い始動トルクにより、精密な加工と高い生産性を実現
- ポンプと圧縮機 高効率でエネルギーを節約し、信頼性の高い運転が求められる場所に最適
- 空調システム 始動電流が小さいため、電力供給設備に負担をかけずに運転を開始可能
デメリット
インダクションモーターには、以下のデメリットもあるため、注意が必要です。- 三相交流電源が必要である場合が多い
- 変速運転にはインバータなどの制御装置が必要
- 繊細な位置決めや角度制御には向かない ※クリックすると該当箇所まで飛びます
三相交流電源が必要である場合が多い
インダクションモーターは、特に産業用として一般的な三相交流電源(200Vや400V)が必要です。そのため、設備コストが増加したり、三相モーターが使えない場所や、家庭用では使えないデメリットがあります。このデメリットを軽減するには、インバーターを使って単相交流電源でも活用したり、単相インダクションモーターを活用する必要があります。
変速運転にはインバータなどの制御装置が必要
インダクションモーターは、定格の回転速度で動作するのが基本であり、回転速度を自由に変えることはできません。変速運転を行うためには、インバーターで電圧や周波数を変える必要があります。インバーターを活用できない環境の場合は、一体型モーターを活用したり、そのほかで活用できるモーターを選定することがおすすめです。
繊細な位置決めや角度制御には向かない
インダクションモーターは回転速度の制御が比較的簡単ですが、正確な位置決めや角度制御を行うことが難しいです。これは、インダクションモーターが一般的にフィードバック制御を持たないためです。その結果、精密な動きが苦手です。このモーターで精密な動きを実現したい場合は、位置センサーを活用してインダクションモーターの位置や角度を正確にフィードバック制御する必要があります。また、インバータを使用して速度制御を行い、フィードバック制御を組み合わせることも考えられます。
3つの比較ポイント | インダクションモーターの選び方
インダクションモーターは、選定する上で以下の3つのポイントを比較することがおすすめです。
電圧
インダクションモーターは、電圧によってトルクが変動します。電圧が高いインダクションモーターはトルクが大きく、小さいとインダクションモーターはトルクも小さくなります。インダクションモーターのトルクが大きいと、重い負荷に対応し、期待通りの運転が可能になることが多いです。一方で、電圧が高いインダクションモーターは発熱しやすく、モーターとしての寿命が短くなるデメリットもあります。
一方で、トルクが小さいモーターは発熱しづらく、長寿命であることが多いです。一方で、負荷がかかると耐えられず、停止してしまうことがあります。
周波数
インダクションモーターの周波数が変動すると、モーターの回転速度が変わります。周波数が高いほど回転速度が速くなり、周波数が低いほど回転速度が遅くなります。周波数が高いと回転数は上がり、電流とトルクは小さくなります。そのため、高速回転が必要な用途に適しています。また、電流が小さくなるので、発熱が小さくなり、モーターの寿命が長くなります。
一方で、周波数が低いほど回転数が減る代わりに電流とトルクが大きくなります。そのため、トルクが大きくなり、重い負荷に対応できます。また、振動や騒音が減少し、オイルシールの寿命が長くなることがあります。
極数
インダクションモーターの極数が変動すると、同期回転速度が変わります。極数が多いほど同期回転速度が遅くなり、極数が少ないほど同期回転速度が速くなります。極数が多いほど始動トルクが小さくなり、極数が少ないほど始動トルクが大きくなります。極数が多い場合、同期回転速度が遅くなるため、低速運転に適しています。また、振動や騒音が減少することがあります。
一方で、極数が少ない場合は、始動トルクが大きくなるため、重い負荷に対応できます。また、効率が高くなるため、電力損失が小さくなるほか、モーターのサイズを小さくできます。
インダクションモーターを製造するメーカー4社
インダクションモーターを製造する主な企業には、以下の4社が挙げられます。
- オリエンタルモーター(ORIENTAL MOTOR)
- 富士通ゼネラル(FUJITSU GENERAL)
- エスコ(ESCO)
- 草津電機(KUSATSU ELECTRIC) ※クリックすると該当箇所まで飛びます
オリエンタルモーター(ORIENTAL MOTOR)
オリエンタルモーターは、1885年に創業し、1950年に設立された電気機器製造業の会社です。精密小型モーターや制御用電子回路などの開発・製造・販売を行っており、産業用のメカトロニクス分野における動力源として世界中に製品を提供しています。オリエンタルモーターが取り扱っているインダクションモーターは、単相インダクションモーター、三相インダクションモーターです。
富士通ゼネラル(FUJITSU GENERAL)
富士通ゼネラルは、1936年に設立された電気機器メーカーで、富士通グループの一員です。空調機、情報通信、電子デバイスなどの分野で製品やサービスを提供しています。同社が取り扱っている三相モーターは、インバータによる速度制御に最適な特性を持ち、省エネルギーを可能にしています。また、エアコンやファンなどの用途に合わせて、DCモータやACモータなどの種類も豊富にそろえています。
エスコ(ESCO)
エスコは、小型モータやアクチュエータ、デバイスなどの開発・販売を行っている会社です。創業から30年以上、国内有数企業との取引を通して培った開発力・製造力はもちろん、大手メーカー並の大量生産から、大手メーカーにはできない小ロット・短納期まで、柔軟な対応力がエスコの強みです。エスコのインダクションモーターは、電圧、特性、シャフト形状等用途に合わせてカスタマイズしています。特に、三相インダクションモータは産業分野で幅広く使用されている汎用的なインダクションモータで、出力や取り付け穴形状などの各種カスタマイズが可能です。
草津電機(KUSATSU ELECTRIC)
草津電機は、1948年に滋賀県で創業した小型モータ・ポンプのメーカーです。お客様のニーズに合わせてカスタムメイドのモータを提供しており、家電から産業機器、医療・健康分野、インフラ分野において、モータの新技術探求や新商品開発に取り組んでいます。同社のインダクションモーターは、開発から資材調達、部品製造、生産ラインの構築まで、モータ製造に関する経験や知識の蓄積しているほか、グループネットワークを生かした全工程の内製化による、スピーディーな生産とリードタイムの短縮も可能です。
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