7種類の産業用ロボットと活用例、おすすめのメーカー7社
  • 最終更新日:2024年9月13日
国内では少子高齢化が進み、製造業ではこれまでにないほど人材不足が加速しています。作業者が減り続ければ、製造ラインが稼働できなくなる可能性があるため、事態は深刻です。産業用ロボット導入による工場自動化(FA)への対応が、多くの企業で急がれています。

そんな中、以下のようなことを考える企業が、昨今増えてきています。

  • 新規設備の開発で最適な産業用ロボットを探している
  • 保守・保全、管理に特化したロボットを検討している
  • 社長に稟議書を提出するために、産業用ロボットの情報を集めている

産業用ロボットを上手く導入できれば、生産性を大きく向上でき、省人化はもちろん、安定した品質を確保できるでしょう。

本記事では、数多くある産業用ロボットの種類を紹介し、各ロボットの導入メリットにも触れていきます。目的に応じた産業用ロボットをぜひ検討してください。

産業用ロボットとは?

産業用ロボットの概要と構造

産業用ロボットとは、主に工場で搬送・加工・組立・検査などをおこなうロボットです。作業者に代わってさまざまな作業を自動化できることから、生産性向上が期待できます。

多種多様に渡る産業用ロボットに明確な定義はありませんが、経済産業省・JISでは、次のように定義付けしています。

経済産業省による定義

「センサー、知能・制御系、駆動系の3つの要素技術を有する、知能化した機械システム」として、広く定義することとする。
(引用:経済産業省「ロボット政策研究会報告書~RT革命が日本を飛躍させる~」

JISによる定義

自動制御され、再プログラム可能で、多目的なマニピュレータであり、3軸以上でプログラム可能で、1か所に固定して又は移動機能をもって、産業自動化の用途に用いられるロボット。
(引用:「JIS規定 ロボット及びロボティックデバイス−用語」

産業用ロボットの構成

産業用ロボットは、以下のユニットにより構成されています。

  • マニピュレータ/ロボット本体
  • コントローラー/制御ボックス
  • ティーチペンダント

マニピュレータ/ロボット本体

産業用ロボット(ロボットアーム)はマニピュレータとも呼ばれており、対象物を持ち上げたり動かしたりします。一般的なマニピュレータには4〜7の回転軸があり、サーボモータと減速機で可動させています。それぞれの軸を回転することで、3次元的に旋回・伸縮が可能です。

ロボット先端に取り付けられるハンドピース・チャックを交換すれば、さまざまなワークに対応できます。

コントローラー/制御ボックス

コントローラーとは、DC電源・サーボアンプ・基盤などが収納された制御装置です。サーボモータの加減速や、現在位置から次の地点までの座標を計算して産業用ロボット(マニュピレータ)の動きを制御します。

基本的にコントローラーを使い回すことはできません。同じメーカーのロボットだとしても、ロボットの種類が異なれば対応していない場合があります。

ティーチペンダント

ティーチペンダントは、プログラムの作成やティーチング作業のために使われる入力・操作装置です。

ティーチングとは、産業用ロボットに可動条件を教える作業で、プログラムを入力していないとロボットは動きません。ロボットの主要な機能は、ティーチペンダントひとつで扱え、データ教示、プログラミング、パラメータなどを設定できます。

ティーチペンダントに求められる要素は、直感的で操作しやすいことです。プログラミングなどの複雑な操作では作業効率は低下し、作業者への教育コストが増えてしまうでしょう。不慣れな方も簡単に扱えるものがおすすめです。

7種類の産業用ロボット

産業用ロボットの種類と強み

用途に合わせてさまざまな産業用ロボットが、各メーカーより販売されています。生産効率を上げるためには、適切なロボット選定が必要です。ここでは、代表的な産業用ロボットの特徴や、導入時のメリットなどを紹介します。

  • 垂直多関節ロボット
  • スカラロボット
  • パラレルリンクロボット
  • 直交ロボット
  • 円筒座標ロボット
  • 極座標ロボット
  • 協働ロボット

垂直多関節ロボット(ロボットアーム)

垂直多関節ロボットは、複数の関節が一直線上に配置されていない産業用ロボットです。ベースについた腕は4〜6軸で制御され、人の腕のように動かせます。自由度の高さが特徴で、複雑な動きや高度な作業が可能です。

垂直多関節ロボットのメリット

このタイプのロボットは、人間の腕のような複雑な動きを得意とします。アームを伸ばすこともでき、多方向かつ広範囲にわたる作業が可能です。狭い場所や障害物の周りでも、プログラムさえ組めれば対応できることがメリットでしょう。

高性能なサーボモータや部品を使用している垂直多関節ロボットであれば、溶接・組立・品質検査など精密な作業が可能です。生産効率を大きく向上させ、製造コスト低減に大きく貢献できます。

垂直多関節ロボットの用途・活躍できるシーン

垂直多関節ロボットは非常に複雑な動きができるため、多くの製造ラインに導入されています。組立、搬送、物流、梱包、溶接作業などで活躍するでしょう。人が作業するのが困難な場面や、狭いスペースでの作業でも活躍が期待できます。

例えば、物流センターでのピッキング・梱包作業が最たる例です。異なる形状や大きさの商品を正確に扱う能力が求められるため、垂直多関節ロボットの自由度の高さと高い精度が重宝されます。

スカラロボット(水平多関節ロボット)

スカラロボット(水平多関節ロボット)は、水平多関節のアームを持つ産業用ロボットです。平面は3軸の位置決めと、先端部は上下運動の計4軸で成り立っています。一般的にロボットの精度は関節数と反比例する傾向です。スカラロボットは可動軸が少なく、高精度を出すのに適したロボットといえるでしょう。

スカラロボット(水平多関節ロボット)のメリット

可動範囲は限定されますが、精度の高さがスカラロボット(水平多関節ロボット)の強みです。スカラロボットの構造は単純です。部品点数や複雑な機構が少なく造られているため、ロボットの軽量化と高剛性が実現できます。高速で可動しても、ワークを正確に配置可能です。

また、構造がシンプルゆえに、ロボットサイズをコンパクトにできます。クリーンルームや、狭い作業場所など限られた作業スペースにおいても設置が容易です。

スカラロボット(水平多関節ロボット)の用途・活躍できるシーン

スカラロボット(水平多関節ロボット)は、高速の作業速度や狭いスペースでも可動できることから、半導体・電子部品メーカー、食品メーカーなどで導入実績があります。

例えば、非常に精密な作業が求められる電子部品メーカーでは、ピッキング・配置・検査作業で使われています。また、食品メーカーでのパッケージングでは、食品を速やかにかつ衛生的に包装する作業にスカラロボットが使われます。

非常にコストがシビアな食品メーカーでは、高速可動ができるスカラロボットの活躍の場面が増えることでしょう。

パラレルリンクロボット

パラレルリンクロボットは複数の軸でひとつの軸を制御し、各リンクの先端にサーボモータを搭載しています。ひとつの軸を複数のモーターで制御しているため、高速で正確な動作が可能です。

さらに、複数のリンクが支え合う構造で、非常に高い剛性を持っています。高い出力で可動させてもリンク部分に変形が起きにくく、安定した動きが特徴です。

パラレルリンクロボットのメリット

高剛性・低振動なパラレルリンク構造のため、驚くほど速く動き、非常に高精度です。デリケートな製品の取り扱いや、高品質な製造プロセスが求められる場合に有利です。吊るされた範囲でしか可動できませんが、有り余るほどの性能を発揮できるでしょう。

パラレルリンクロボットの用途・活躍できるシーン

高い精度と速度が求められる業界であれば、どのようなシーンでも活躍できるでしょう。特に、画像認識機能のロボットビジョンと組み合わせれば、ランダムな方向を向いているワークでも正確に配置することが可能です。

パラレルリンクロボットは、コスト低減が求められる食品メーカーでは選別・パッケージング作業で活躍しています。その他にも、精度の高さが求められるエレクトロニクス分野の組立・配置作業や、医薬品メーカーの精密な量の液体を扱う試験などで活用しています。

直交ロボット(単軸ロボット)

直交ロボット(単軸ロボット)は、平面と垂直(XYZ軸)を直線的に動作するロボットです。シンプルな構造と直線的な動きしかできませんが、シンプルな構造ゆえ、高剛性で高速可動ができます。メンテナンスも容易のため、コストパフォーマンスに優れた産業用ロボットといえるでしょう。

直交ロボット(単軸ロボット)のメリット

高剛性のため、高出力のサーボモータで高速可動しても振動が起こりにくく、高精度な動作を繰り返しおこなえることがメリットです。可動範囲は直線に限られますが、単軸ロボットとの組み合わせ次第では自由度が高く、幅広い活用ができます。

垂直多関節ロボットのような3次元的に可動するロボットと比較すると、軸数が少ないことも特徴です。複雑な制御がなく扱いやすいため、作業変更時間の短縮が期待できます。

さらに、価格面にも注目です。シンプルな構造ゆえにロボットの製造コストが低く、他の産業用ロボットと比べて価格は控えめの傾向です。導入コストを厳しく管理している企業でも、比較的導入しやすいロボットといえるでしょう。

直交ロボット(単軸ロボット)の用途・活躍できるシーン

導入コストの低さや扱いやすさから、物流メーカーなどのピッキング作業で活躍しています。加えて、精度の高さを活かし、部品のズレが許されない電子部品の組込作業、製品寸法を測定する検査システムにも用いられます。

円筒座標ロボット

円筒座標ロボットは旋回、伸縮、昇降を得意とする産業用ロボットです。動作は円筒座標系に基づき、垂直軸(Z軸:上下運動)、ラジアル軸(R軸:伸縮運動)、そして回転軸(θ軸:回転運動)の三つの主軸を持ちます。円筒形の作業領域内で効果的に使用可能です。

円筒座標ロボットのメリット

円筒座標ロボットのメリットは、広範囲の作業領域をカバーできることです。伸縮可能なアームと組み合わせれば、作業対象に対して多角的なアプローチが加わります。

ロボット自体は基底部が固定されています。ほかのロボットと比較しても狭い場所に設置が可能で、作業効率の向上が見込めるでしょう。

円筒座標ロボットの用途・活躍できるシーン

コンパクトな設置が可能な円筒座標ロボットは、半導体メーカーでの活躍が有名です。シンプルな構造で、高い搬送速度と動作不良の少なさが評価されています。コンパクトでクリーンロボットが多い円筒座標ロボットは、狭いクリーンルームの中でも十分な能力を発揮するでしょう。

そのほかにも機械部品の積み込み・荷降ろし作業や、自動車や大型機器の塗装作業にも円筒座標ロボットが使用されるケースがあります。円筒形の作業領域を生かし、効率的に作業がおこなえます。

極座標ロボット

産業用ロボットの元祖といわれる極座標ロボットは、球形の作業領域をカバーするロボットです。マニュピレータを設置する土台部に旋回軸があり、土台から伸びた腕に上下回転する軸と伸縮するアームが搭載されています。

中心点からの距離を調整しながら、対象物にアプローチでき、非常に広範囲な作業が可能です。複雑な機械や装置の点検作業に使用されることが多く、狭い空間や困難なアクセスポイントがある場合に有効です。

極座標ロボットのメリット

球形の作業エリアを効率的にカバーできることが、極座標ロボットのメリットです。中心点を基点とする運動は、中心から等距離にある作業点に対して効率的にアクセスできます。極座標系の動作は、複雑な形状のオブジェクトや障害物が存在する環境下でも、高い精度を発揮するでしょう。

極座標ロボットの用途・活躍できるシーン

航空宇宙・自動車業界の大型で複雑な組立作業や、大型パイプやタンクなど曲面を持つ物体の溶接作業に極座標ロボットが使用されています。特に溶接作業は、物体の形状に対して自然にフィットするため、品質と作業効率アップが見込めます。

協働ロボット

協働ロボットは、人と一緒に可動しても安全なように設計されているロボットです。通常、ロボットは強い力で可動しているため、安全扉や柵などで人が入れないようにしなくてはいけません。

しかし、協働ロボットは安全性、柔軟性および使いやすさを重視して設計されています。作業者の存在を検知し、衝突を避け、あるいは安全に動作を停止させる機能を備えていることが特徴です。

協働ロボットのメリット

人と一緒に単純作業や反復作業をおこなえることが、協働ロボットのメリットです。軽量なだけではなく高度なセンサーを搭載し、人との衝突事故を防ぎます。ロボットの高速動作と人の繊細な動作が、高い生産性を生み出せます。

また、プログラムの変更が簡単であり、さまざまなタスクにも迅速に適応できます。導入が容易で、非技術者でも操作可能です。十分な資金が確保できない中小企業でも、導入のハードルが低くなるでしょう。

協働ロボットの用途・活躍できるシーン

小型で扱いやすい協働ロボットは、小ロットや中ロットの製品組立に最適です。製造ラインで組立部品のセットや品質検査など、今まで人数をかけていた反復作業や単純作業をロボットに一任できます。作業者の負担も減らせるだけでなく、人員コストも削減可能です。

特に、ロボットビジョンを搭載すれば製品の品質検査もできるようになります。人がおこなう目視検査は、体調や精神状態の影響で不良品を見逃すことがあります。ロボットは常に一定の基準で検査するため、検査のバラツキをなくし、精度の高い検査が可能です。

産業用ロボット導入のメリット

産業用ロボット導入の事例

産業用ロボットは、当たり前のように製造現場に導入されています。上司に導入許可を得るには、ロボット導入でどのようなメリットがあるかを、具体的に説明できるほうが望ましいでしょう。ここでは、産業用ロボットのメリットについて触れていきます。

  • 自動化と省人化
  • 人件費の削減
  • 作業速度の安定化
  • 製品品質の向上
  • 生産性の向上

自動化と省人化

人が繰り返し作業していれば、いつかミスをしてしまうでしょう。ミスの程度や頻度は、人の体調や精神状態に依存するため予測ができません。しかし、ロボットはミスなく同じ動作を高速で繰り返します。生産性も大幅にアップし、省人化にも繋げられるかもしれません。

また、ベテラン社員が退職してしまえば、製造ラインを満足に管理することは難しくなります。若い世代は活発とはいえ、ベテランのような熟練した経験と知識はありません。不慣れな作業で負荷をかけてしまい、事故を起こしてしまう可能性も高まります。

自動化に成功すれば、不慣れな若手が危険な作業をする必要はなくなるでしょう。製造ラインが同じ品質を保ったまま、若い人材を別の部署で活躍させることもできます。

人件費の削減

産業用ロボットによる恩恵は、製造ラインの無駄を徹底的に削減できることです。安定した品質と数量を作り上げれば、製造ラインに多くのオペレーターや作業者を配置する必要はありません。

昨今の世界情勢により、売上が低下している企業は多くあります。業界で生き残るためには、産業用ロボットの導入で生産効率をアップさせ、人件費の最適化をおこなう必要があるでしょう。

作業速度の安定化

プログラムされた動作を反復することしかできない産業用ロボットだからこそ、作業速度のバラツキがなくなり、生産数が安定します。高速作業と安定した作業は、全体の生産性を大きく高めることが可能です。日々の生産数が大きく増加し、納期遅延や数量不足などの問題も回避できます。

製品品質の向上

生産ラインでの製品検査は、単純作業で非常に負荷の大きい作業です。従来までは人が担当しましたが、見間違え・見逃し・作業指示違反など多くの問題を抱えてきました。

しかし、産業用ロボットとロボットビジョンを組み合わせて品質検査を任せれば、常に同じ基準で検査がおこなえます。作業効率も格段に向上するでしょう。

生産性の向上

製造ラインでは、サイクルタイムが工場の効率に直結します。産業用ロボットを導入すれば、サイクルタイムを大幅に減少させ、多くの製品を短時間で生産できます。工場自動化(FA)を目指すのであれば、積極的に導入する必要があるでしょう。

人の柔軟で繊細な作業は魅力ですが、人による生産性向上には限界があります。たとえ昼夜交代制のシフトで24時間稼働をおこなったとしても、さまざまな問題が発生します。

まず、深夜労働(深夜業)による人件費の問題です。労働基準法第37条では、深夜業を「午後10時から翌日午前5時までの間に労働とし、深夜業に対する割増賃金は2割5分以上」と定めています。

深夜作業者を増やすほど人件費が高くなり、企業の利益を圧迫するかもしれません。さらに、昼夜のシフトを行き来する作業者は、生活リズムが変則的になります。シフトが切り替わる日は作業効率に大きく影響を及ぼし、効率的な作業ができないこともあるでしょう。

産業用ロボットを導入すれば、24時間365日安定して可動し、同じ作業を人よりも素早くおこなえます。生産のバラツキをなくし、生産性を大幅に向上させるには設備投資が必要です。

産業用ロボット利用分野例

産業用ロボットの活用事例

産業用ロボットの年間設置数は急速に増えており、多くの分野で導入されています。生産性の向上等を目的に、設置を検討する企業が増えていることがわかります。

物流メーカー

物流メーカーでは、サイズの大きい荷物の運搬、仕分け、入出庫、パレタイズに産業用ロボットが導入されています。荷物を運ぶだけの作業ですから、できる限り自動化し、高速かつ自由度が高いロボットが必要です。具体的には垂直多関節ロボット、スカラロボット(水平多関節ロボット)などが挙げられます。

自動車・部品メーカー

自動車・部品メーカーは、工場自動化(FA)が最も進んでいる業界といっても過言ではありません。

プレス、熱間鍛造加工、塗装、組立、検査工程などに導入され、作業者の負荷低減と効率化の追求をおこなっています。導入されている産業用ロボットは、垂直多関節ロボット、スカラロボット(水平多関節ロボット)などです。

半導体・電子部品メーカー

半導体や電子部品メーカーでは、多種多様な精密部品を扱わなくてはいけません。大量の部品を処理する能力と正確性が産業用ロボットには求められます。スカラロボット(水平多関節ロボット)、直交ロボット、円筒座標ロボットなどが使用され、半導体製造、部品実装・組立、外観検査工程で活躍しています。

また、半導体を扱うのは清浄が保たれているクリーンルーム内です。ちょっとしたチリやゴミが製品の品質に大きな影響を及ぼします。産業用ロボットの摩耗粉にも対応しているクリーンロボットが導入されています。

食品メーカー

食品メーカーで産業用ロボットは、ピッキング作業で大いに活躍します。人でしかおこなえなかった仕分け作業を、パラレルリンクロボットなどの高速・高精度で可動できるロボットが担えるようになりました。

そのほかにも、荷積みや搬送ラインに産業用ロボットが導入されています。例えば、ロボットビジョンを用いれば、ラインで転倒してしまった製品を自動で元に戻せます。人が手を加える必要はありません。非常に単価が安い食品業界ですから、製品のコスト低減には大きく貢献するでしょう。

包装容器メーカー

食品や医薬品などを包み、内容物を保護する容器を製造する包装容器メーカーでは、製品搬送、箱詰め、検査工程などで産業用ロボットが活用されています。容器の形はさまざまですから、搬送の際にはどの角度からでも容器が掴めることが大切です。

検査工程では、ロボットビジョンにより高速で品質検査ができるようになりました。人の目では見逃しがちな問題も安定して検査できます。

医薬品メーカー

医薬品メーカーは、特に品質基準が厳しい業界です。清浄度が非常に高いクリーンルームの環境でも可動できるロボットが必要です。装置内外へのチリやゴミなどを抑制する構造のクリーンロボットの検討が求められるでしょう。

医薬品メーカーでもピッキング、検査、包装・梱包工程で、産業用ロボットは活躍しています。省スペースでも設置でき、高速・高精度で可動できるスカラロボット(水平多関節ロボット)やパラレルリンクロボットなどが導入されています。

8つの選定基準 | 産業用ロボットの選び方

産業用ロボットの選び方

産業用ロボットの種類は豊富ですから、どれを選定したらいいか悩んでしまうこともあります。新規設備設計時に、どのような点に注意して産業用ロボットを選定すればいいか解説します。

取り付けられるか

産業用ロボットを工場内の設置場所を確認することが重要です。一般的には天吊り、壁、床の3種類が考えられます。建物のスペースや強度を考えた上で決めてください。

特に、床に設置する場合には許容重量にも注意する必要があります。導入前には、設置スペースがどの程度あるのかを把握した上で、メーカーに相談しましょう。

また、労働安全衛生規則第150条4項によれば「産業用ロボットに接触する危険がある場合には、柵または囲い等を設けること」と定められています。

可動範囲は適切か

導入予定の産業用ロボットが作業範囲を正しくカバーしているかは重要なポイントです。ロボットアームの可動範囲は、作業全体の効率化に直結します。作業範囲が合わない場合は、人による追加作業が発生してしまう恐れがあるため、導入前には詳細を確認しておきたい内容です。

また、工場内に産業用ロボットを設置できたとしても、ロボットアームが他の設備や建屋に干渉してしまう場合があります。購入したにもかかわらず「実は設置できませんでした」では、多額の資金を無駄にするだけです。設計時の段階で何度も検討をおこなってください。

安全性は十分か

作業者とロボットの接触事故を防ぐには、ロボットの動きが設計された範囲内で完結することが重要です。設備設計時には、産業用ロボットの可動範囲を十分に確認する必要があります。

また、可搬重量にも細心の注意を払う必要があるでしょう。可搬重量とは、ロボットが安全に作業をおこなえるワーク重量です。ハンドピースやチャックの重量が考慮されず、事故に繋がるケースもゼロではありません。可搬重量を確実に把握し、運用してください。

ワークサイズは適切か

ワークサイズの選定で産業用ロボットの速度、精度、耐久性が変わります。生産性や安全性を重視する上では、設備設計時にワークサイズにあったロボットの選定が必要です。

ワークサイズが大きすぎる場合、ロボットが過負荷になる可能性があり、サイクルアップに繋がりません。ロボットの故障や事故にも発展する可能性があるでしょう。一方、ロボットサイズに対してワークサイズが小さすぎる場合は、リーチや作業範囲が不十分になります。

可搬重量は適切か

産業用ロボットが可動する際には、設計範囲内で運用されていなければいけません。安全率を考慮した設計範囲が、最適な性能を発揮できる領域です。過負荷・負荷不足は、作業の質と速度に影響を及ぼすだけでなく、機械部品の摩耗や損傷に繋がりかねません。

負荷をかけすぎて無理な運用をすれば、過度なメンテナンスコストや修理費用などが発生します。コスト低減で産業用ロボットを導入したはずなのに、かえってコストがかかってしまう恐れがあります。

一方で、負荷が軽すぎる場合にも問題は発生します。ロボットは設計された性能を発揮できず、作業速度が遅くなったり、精度が落ちたりすることがあります。全体的な生産性が低下するため、可搬重量は適切な範囲で使用してください。

タクトタイムを短縮できるか

産業用ロボットの効率は、サイクルタイムとタクトタイムに分けて考えられます。

  • サイクルタイム:ロボットの一回の動作にかかる時間(実測値)
  • タクトタイム:ひとつの製品の製造にかかる時間(理論値)

毎月決められた納品数をクリアするためには、どれだけのタクトタイムが必要なのか計算でわかります。安全率や他設備との干渉を考慮し、設計時にタクトタイムを短くできるほどサイクルアップに繋がります。

アプリケーションの使いやすさ

ソフトウェアやその他のアプリケーションの使いやすさを考慮することは、産業用ロボットを選ぶ上で非常に重要です。各メーカーで独自のアプリケーションを開発しているため、自社にあったロボット導入をする必要があります。

直感的で扱いやすいアプリケーションでは、作業者の教育コストが低くなります。設定変更やプログラム更新を素早くおこなえれば、生産ラインの停止時間を最小限に抑えられるでしょう。

また、エラーの発生時の対応も迅速になり、チョコ停後の復旧も早くなります。アプリケーションの選定で工場の生産性も変わってきますから、慎重に選んでください。

販売価格

産業用ロボットを導入する上で、予算にあった価格の機械を選ぶ必要があります。産業用ロボットは、価格相応のサーボモータや機械部品を使用します。しかし、あまりにも作業に見合わない安価なロボットでは能力も低くなるでしょう。目的の動作ができないだけでなく、耐久性が低く破損や事故にも繋がるため、注意してください。

高額な産業用ロボットは能力が高く、生産性やメンテナンス性などが向上することが予想されます。

ところが、ロボットの性能を使いこなせない場合もあります。会社の利益を追求するためとはいえ、費用対効果で採算が取れなければ社内稟議で許可が降りるとは限りません。目的に応じた産業用ロボットの選定が必要です。

産業用ロボットを製造するメーカー7選

産業用ロボットを製造する会社

産業用ロボットを製造するメーカーーはたくさんありますが、メジャーなメーカーとして挙げられるのは以下のような企業です。

  • 安川電機
  • ABB
  • KUKA
  • ファナック
  • 川崎重工
  • 不二越
  • ダイヘン

安川電機

安川電機は1915年に創業した歴史ある産業用ロボットメーカーです。モーター技術を応用した製品を作り続けて、ロボットの動きを緻密に制御することを可能にしました。国内で初めて全電気式の産業用ロボット「MOTOMAN(モートマン)」を販売しています。

安川電機が得意とする分野は、溶接や塗装向けの多関節・双腕ロボットで、高いシェアを獲得しています。その他にも、医療分野へも力を入れています。

ABB

ABBはスイスの産業用ロボットメーカーです。繰り返し精度に優れ、ロボットアームの先端速度が速いことが大きな特徴です。生産性を大きく向上させたい場合には検討してみるのもよいでしょう。

ABBの強みは、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせた自動化ソリューションの提案力です。独自のプログラミング「ウィザードイージープログラミングツール」と呼ばれるアプリケーションは、スマホのように直観的な操作でおこなえます。専門的な知識がない方でも簡単に使用できます。

KUKA

ドイツの産業用ロボットメーカーといえば「KUKA(クーカ)」が挙げられます。1898年に創業し、ハイスペックの産業用ロボットを販売しています。豊富な製品のラインアップが特徴です。一般的な産業用ロボットから、クリーンルーム向けのロボットまでが揃っています。

KUKAの強みは、動作精度と剛性の高さです。レーザー溶接やレーザー切断にも使われ、先端に工具をつければ切削加工もできます。使い方次第では、一台で大きな成果が出せる産業用ロボットといえるでしょう。

ファナック

ファナックは、1972年に設立された国内のメーカーです。業界としては比較的新しいですが、世界的に高い技術力を持ち、NC装置などで世界シェアNo.1を誇ります。

ファナックの特徴は、小型高速から高可搬まで幅広いラインアップでしょう。溶接、搬送、組立などあらゆる作業に対応した産業用ロボットがあります。特に、自動車向けの多関節ロボットが主力製品です。

また、製品開発思想として「壊れない・壊れる前に知らせる・壊れてもすぐ直せる」をスローガンとして生涯保守をおこなっています。ロボットの部品供給期限がなく、長期的に使い続けていく場合にはおすすめのメーカーです。

川崎重工業

国内でも長い歴史がある川崎重工業。多角経営が特徴で、非常に多くの分野を手掛けています。企業全体の技術の引き出しは世界レベルといえるでしょう。多彩な技術力で1969年には、国内でもいち早く産業用ロボットの販売をおこないました。

多くの分野で川崎重工業のロボットは活躍していますが、主力製品は半導体ウェハーの搬送ロボットです。2020年には世界シェア50%以上を獲得するほど、世界から技術力が認められています。

さらに、ロボットだけではなくシステム面でも高い技術力があります。導入診断からアフターサービスまで一貫して対応してくれるところも、川崎重工業の強みといえるでしょう。

不二越

不二越は工具メーカーとして創業し、工具やベアリングなどの一貫生産体制で事業を拡大してきました。ロボット事業では、主に自動車業界で使用される産業用ロボットが主力製品です。しかし、現在ではさまざまな分野で工場自動化が達成できる製品を販売しています。

不二越の強みは、高速かつ高精度でロボットアームを制御できる技術力でしょう。溶接、ハンドリング、シーリング、組立など多くの分野のロボットを販売しています。サイズも小型から大型まで幅広いラインアップも特徴です。

ダイヘン

ダイヘンは1919年創業のメーカーで関西中心に事業所を展開し、現在は3つの事業に分かれています。産業用ロボットを扱っているのは、スムース・ファクトリー・オートメーション事業です。

ダイヘンは自動車工場などの生産ラインで、高度な動作性能をもつ溶接ロボットやハンドリングロボットを提供しています。特に、溶接ロボットはラインアップが幅広く、可搬重量3~6kgと軽量なものから、可搬重量166~210kgの高可搬なものまであります。

省人化と生産性向上を目指しましょう

産業用ロボットの選定において、目的を考慮したロボットを導入することが非常に重要です。適切なロボットを選べば、作業効率の最大化、コスト削減、品質向上が期待できます。

上司へ産業用ロボット導入の許可を得るためには、どれだけ生産性がアップするかを費用対効果で明らかにするといいでしょう。適切なロボットを導入し、売上アップに貢献してください。