レーザー彫刻機とは? 種類と選び方、おすすめのメーカー5社を比較解説
  • 最終更新日:2024年12月3日
レーザー彫刻機とは、レーザー発振器を用いてさまざまな材料に文字や図を刻印できる加工機です。レーザー光が加工物の表面に熱を与えることで、素材を融解、燃焼させ、溝を掘ることができます。

レーザー彫刻機の応用は広く、プロダクトデザイン、工芸、広告、装飾、建築、医療などの分野で使用されることが多いです。特に、3Dプリンターと組み合わせることで、立体物の加工もできます。

今回の記事では、レーザー彫刻機とはどのようなものか、その種類と選び方、おすすめのメーカー5社をご紹介します。

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レーザー彫刻機の種類

5種類のレーザー彫刻機比較

レーザー彫刻機は、大きく分けると5つの種類があります。

種類によって彫刻に適している素材が異なるので、貴社が加工したい素材にあわせてレーザー彫刻機の種類を選ぶことが重要です。


CO2レーザー彫刻機

CO2レーザー彫刻機は、基本波長(1064ナノメートル)のレーザーを発振し、10.6マイクロメートルと9.6マイクロメートルのふたつの波長を中心に、9.2-10.8マイクロメートル程度の長い波長の赤外光を発生させることができます。

エネルギー効率が良く、高出力で加工できることが特徴で、透明な素材や金属など多くの素材に対応できます。

CO2レーザー彫刻機の強みは、以下のような点が挙げられます。

  • 対応できる素材が幅広く、細かい加工も可能
  • 購入時の価格が比較的安価であり、ランニングコストも低い
  • マイクロ流体デバイスや印字などにも最適

一方で、光を反射する素材(アルミニウムなど)に対しては効果が低かったり熱伝導率の高い素材(金属や木材など)に対しては熱伝導率低下や表面処理不足などの問題が発生することがあるので、注意が必要です。

CO2レーザーは、高出力・高品質・高速度なパルス発振式のレーザーで、金属やプラスチックなどの硬い素材にも対応で、特に半導体製造や医療機器などの分野で広く利用されています。

ファイバーレーザー彫刻機

ファイバーレーザー彫刻機は、光ファイバー通信技術を応用したアクティブファイバーと呼ばれる共振媒体によってレーザー光を増幅し、ビームスポットが非常に小さくなります。

ファイバーレーザー彫刻機のメリットは以下の通りです。

  • ビーム品質が優れている
  • 構造的に小型軽量化が可能なため製造現場に設置しやすい
  • エネルギー効率が高い
  • ビームスポットが小さく、大きな加工対象や重い材料でも加工が可能

このレーザー彫刻機は、切断加工や印字、マーキング、溶接などの産業用途に広く使用されています。

通常のレーザー加工機より省エネであり、長寿命でメンテナンスも楽です。

ファイバーレーザーは紙や布などの柔らかい素材にも対応できるため、写真や絵画などのデザイン加工や印刷で使用されることが多いです。

YAGレーザー彫刻機

YAGレーザー彫刻機は、 YAG(Yttrium Aluminum Garnet)という結晶体を発振媒体として使用するレーザー彫刻機 です。

YAGレーザーは、波長1064ナノメートルの近赤外線レーザーであり、高い出力と優れた熱伝導率を有しています。

このため、金属やガラスなどの硬質な素材から、木材や布などの柔らかい素材まで、幅広い素材への彫刻が可能となっています。

YAGレーザー彫刻機の強みは、以下のとおりです。

  • 他のレーザーに比べて出力が高く、厚みのある素材や硬質な素材への彫刻も可能
  • 熱伝導率が高く、彫刻後の素材の歪みや焼け付きが少なく、高精度の彫刻が可能

YAGレーザーは金属、ガラス、木材、布、プラスチックなど、幅広い素材への彫刻に対応しています。

特に、医療機器や自動車部品などの分野で利用されています。

超短パルスレーザー彫刻機

超短パルスレーザー彫刻機は、パルス幅が数百ピコ秒から数ナノ秒のレーザー光を用いたレーザー彫刻機です。

このレーザー彫刻機はエネルギー密度が高く、瞬間的に高温を発生させることができます。

そのため、従来のレーザー彫刻機では困難であった、金属やガラスなどの硬質な素材への彫刻や、微細な彫刻が可能となっています。

超短パルスレーザー彫刻機の強みは、以下のとおりです。

  • 瞬間的に高温を発生させるため、金属やガラスなどの硬質な素材への彫刻が可能
  • パルス幅が短いため、微細な彫刻が可能
  • 加工後の素材へのダメージが少ない(加工痕が少ない)

超短パルスレーザーは、非常に高出力・高品質・高速度なパルス発振式のレーザーで、金属やプラスチックなどの硬い素材にも対応可能です。主に半導体製造や医療機器などの分野で広く利用されています。

UVレーザー彫刻機

UVレーザー彫刻機は、波長が380〜400ナノメートルの紫外線レーザーを用いたレーザー彫刻機です。

紫外線レーザーは、可視光線よりも短い波長を有しており、高いエネルギー密度を有しています。

このため、従来のレーザー彫刻機では困難であった、プラスチックや木材などの非金属素材への彫刻や、微細な彫刻が可能となっています。

UVレーザー彫刻機の強みは、以下のとおりです。

  • プラスチックや木材などの非金属素材への彫刻が可能
  • 波長が短いため、微細な彫刻が可能
  • プラスチックや木材などの素材の色を変化させることで、色の表現が可能

UVレーザーは、紙や布などの柔らかい素材にも対応できますが、金属などの硬い素材にはあまり向いていません。

写真や絵画などのデザイン加工や印刷に適しています。

レーザー彫刻機を活用するメリットとデメリット

レーザー彫刻機の強みと弱み

レーザー彫刻機と同じように精密なマーキングやカットを可能にする機械はいくつかありますが、ウォータージェットカッターやプラズマカッターなどと比べると、レーザー彫刻機にはメリットとデメリットがいくつか存在します。

ここでは、それぞれのメリットとデメリットを比較します。

レーザー彫刻機を活用するメリット

レーザー彫刻機は、他の彫刻機と比べて以下のメリットがあります。


非接触で加工できること

レーザー彫刻機は非接触で加工が可能です。

そのため、以下のようなメリットを享受できます。

  • 微細なディテールを正確に彫刻できるため、精度と品質が高い
  • 脆いまたは柔らかい素材の損傷や変形のリスクが低い
  • 切削工具の交換や調整が不要で複雑な形状や細かいデザインの実現が可能

特に精密工業での小さな部品製造、アート作品や装飾品の製作、木工業での繊細なデザイン彫刻、ガラス製品の精密加工、革製品のパターン彫刻など、多岐にわたる業種や素材で活躍します。

細かい刻印ができること

レーザー彫刻機は他の彫刻機と比べて細かい刻印が可能です。

そのため、特に木材、プラスチック、金属、ガラス、皮などで精密な加工を再現性高く実現できます。

レーザー彫刻機は特に以下の分野で力を発揮します。

  • ジュエリー
  • 細かいデザインやブランド名、シリアルナンバーの彫刻
  • 電子部品
  • 小型の部品に対する識別情報や技術的なディテールの彫刻
  • プロモーションアイテム
  • ロゴや細かいメッセージの彫刻が求められる小物やギフトアイテム
  • アートとデザイン
  • 細かいアートワークや複雑なデザインの彫刻
  • 医療機器
  • 機器や器具に対する識別コードや使用上の指示の彫刻

複数の加工物を処理できること

レーザー彫刻機は一度に複数の加工物をマーキングできるため加工効率が非常に高く、一貫した生産制度を保ちながら時間と工数を大幅に削減できます。

ウォータージェット加工機などであれば、一度の加工にひとつの対象物しか加工できず、レーザー彫刻機のような高効率は実現できません。

他の彫刻機とは違い、レーザー彫刻機であれば大量生産やカスタマイズされた製品のバッチ生産(名前入りギフトなど)、シリアルナンバーや識別マーキングの刻印も可能です。

レーザー彫刻機を活用するデメリット

一方で、レーザー彫刻機には以下のようなデメリットもあるため、注意が必要です。


厚い素材は加工が難しいこと

レーザー彫刻機は厚い素材の加工が苦手です。

レーザーの特性上、出力を挙げすぎると素材を傷めてしまうリスクがあるため出力を一定以上に上げづらいほか、レーザー照射による加工範囲が狭いことが要因です。

このため、レーザー彫刻機で加工できる素材はどうしても限られてしまったり、加工の深さが限られてしまいます。

例えば、厚い金属や木材、プラスチックやアクリルなどの素材では、それぞれ以下の厚さまでの加工が適していて、これ以上厚い場合は設計通りに加工できない可能性があります。

  • 金属
  • 1ミリメートルを超えた場合
  • 木材
  • 6ミリメートルを超えた場合
  • プラスチック
  • 5ミリメートルを超えた場合
  • アクリル
  • 10ミリメートルを超えた場合

反射率の高い素材には不向きであること

レーザー彫刻機が素材を加工する際、レーザーが素材に吸収されることで素材が加工されます。

反射率が高い素材の場合、レーザーが吸収されるのではなく反射されてしまうため、素材の加工が難しくなります。

反射率が高い素材を加工する場合、レーザーが操作者や周囲の人々に向かって反射されてしまうリスクがある他、加工できたとしてもその品質は下がる可能性が高いです。

反射率の高い素材として、以下のものが挙げられます。

  • 鏡面仕上げの金属
  • 一部のプラスチック

逆に、マットな表面や暗色の素材はレーザー彫刻機での加工に適しています。

ここまで、ほかの彫刻機と比べてレーザー彫刻機を使用するメリットとデメリットを解説しました。次のセクションでは、貴社に最適なレーザー彫刻機の選び方を解説します。貴社の工場や扱う素材に適したレーザー彫刻機をお探しの方は、ぜひ次のセクションに読み進めてください。

最適なレーザー彫刻機を選ぶ上で比較すべき5つの項目

レーザーマーカー(彫刻機)の選び方比較すべき5つの項目

貴社に最適なレーザー彫刻機を選ぶには、以下の5つの項目を比較・検討する必要があります。


加工する素材

レーザー彫刻機の種類によって得意としている素材が異なります。

そのため、まずは貴社で加工したい素材を確認する必要があります。

素材に対して相性の良い彫刻機を選択しないと、思わぬ事故が起きたり加工精度が下がったりする可能性があります。

各レーザー彫刻機は、それぞれ以下の素材の加工を得意としています。

貴社で加工する素材と照らし合わせて、最も適している種類をピックアップしておくことがおすすめです。

適している素材 適していない素材
CO2レーザー
彫刻機
木材、アクリル、ガラス 金属、PVC、鏡
ファイバーレーザー
彫刻機
金属、プラスチック、アノダイズドアルミニウム 木材、ガラス、レザー
YAGレーザー
彫刻機
金属、セラミックス、硬質プラスチック 軟質プラスチック(弾性率が70MPa以下)
木材、ファブリック
超短パルスレーザー
彫刻機
マイクロチップ、細かい金属部品、ガラス 厚い金属板、柔らかいゴム、木材
UVレーザー
彫刻機
プラスチック、ガラス、セラミックス 金属、木材、柔らかいゴム
※スマートフォンは横にスクロールできます

レーザー出力

レーザー彫刻機のレーザー出力を調整することで、以下の点が変動します。

  • 彫刻や切断のスピード
  • 彫刻や切断の精度
  • 素材へのダメージ
  • レーザー光の拡散

レーザー出力が上がると加工の速度や精度が上がるので、効率的に的確な加工を実施できます。

一方で、出力が上がると加工する素材が傷みやすくなったりエネルギー密度が落ちることで加工精度が落ちたりします。

逆に、レーザー出力が低いと加工速度や精度は落ちてしまいますが、素材へのダメージが少なく済んだりエネルギー密度の低下を防げたりするというメリットもあります。

素材や必要な加工に対して、適切な出力調整ができるレーザー彫刻機を選択することがおすすめです。

レーザー波長

レーザー彫刻機のレーザー波長が変動することで、以下の点が変動します。

  • レーザー光のエネルギー密度
  • 素材への浸透率
  • 色の表現

レーザーの波長が長いと素材へのレーザー浸透率が高くなり、より深い加工ができるようになります。また、様々な色の加工ができるようになります。

一方で、レーザーの波長が長いとエネルギー密度が低く、厚みのある素材の加工が難しくなるので注意が必要です。

逆に、波長が短いとレーザーのエネルギー密度が高くなり、厚みがある素材への加工が可能になります。素材へのレーザー浸透率低下や色の表現が難しくなるので、特に繊細な色を活用した加工が必要な場合は注意が必要です。

レンズ焦点距離

レンズの焦点距離が変動すると、以下の要素が変動します。

  • レーザー光の集光度
  • 彫刻や切断の精度
  • 彫刻や切断のスピード

レーザーの焦点距離が遠いとレーザー光の集光度が上がるため、彫刻や切断の精度が上がります。一方で、加工速度が落ちたりレーザー光の拡散が発生しやすいので、注意が必要です。

逆にレーザーの焦点距離が近いとレーザー光の集光度が低下します。加工精度は落ちますが、その分加工速度が上がったりレーザー光の拡散が起きづらくなるメリットがあります。加工精度とか高速度のどちらを優先させるか決めてからレーザー彫刻機の選定をすることがおすすめです。

スキャン速度

レーザー彫刻機のスキャン速度によって、以下の要素が変動します。

  • 彫刻や切断のスピード
  • レーザー光の熱影響
  • 加工精度

レーザー加工の速度を上げると、代償として素材が受けるレーザーの熱影響が上がります。また、加工精度も落ちてしまうので、注意が必要です。

一方でレーザー加工の速度が落ちると、熱影響範囲が小さくなり、加工対象が傷みづらくなるほか、加工精度も上がります。ただし、加工効率は落ちてしまうので、速度を優先させたい場合は一定の精度低下を認識しておく必要があります。

ここまで、レーザー彫刻機を選ぶ際に比較すべき5つの項目を解説しました。次のセクションでは、具体的におすすめのメーカーをご紹介します。

レーザー彫刻機を製造するおすすめのメーカー5社

レーザー彫刻機(マーカー)を製造するメーカー企業

レーザー彫刻機を製造するメーカーは何社もありますが、その中でもおすすめなメーカーは以下の通りです。


CO2レーザー彫刻機 ファイバーレーザー彫刻機 YAGレーザー彫刻機 超短パルスレーザー彫刻機 UVレーザー彫刻機
ユニバーサル
レーザーシステムズ
xtools
Coherent
TRUMPF
芝浦エレテック
※スマートフォンは横にスクロールできます

Universal Laser Systems(ユニバーサルレーザーシステムズ)

ユニバーサルレーザーシステムズは、アメリカのアリゾナ州に本社を置く、工作機械メーカーです。

1988年に創業し、世界に先駆けてX-Yプリンタ/プロッタータイプレーザー加工機を開発し、現在では、彫刻・マーキング・切断を一台で可能にできるレーザー加工機のジャンルを確立したパイオニアです。

同社は、特に以下の種類のレーザー彫刻機を製造しています。

  • CO2レーザー彫刻機
  • ファイバレーザー彫刻機

クラフト業界だけでなく、自動車、航空宇宙、電気電子、医療機器などのハイテク産業分野にも最適なレーザー加工機を提供しています。

Coherent(コヒレント)

コヒレントは、1966年にアメリカのカリフォルニア州で設立されたグローバル企業です。

同社は、CO2レーザーとファイバーレーザーとLD励起個体レーザーと半導体レーザーの4種類のレーザー光源を提供しています。

  • CO2レーザー彫刻機
  • ファイバレーザー彫刻機
  • LD励起固体レーザー
  • 半導体レーザー

医療分野や半導体分野など、さまざまな業界でレーザー彫刻機を提供しています。

xtool(エックスツール)

エックスツールは2012年に設立されたメーカーです。同社はもともとSTEAM教育に特化したメイクブロックという会社で、2020年末にメイクブロックはレーザーマシンビジネスに転向し、xToolブランドと最初の製品xTool D1が2021年に発売されました。

主にCO2レーザー彫刻機を製造しています。

具体的には、55Wの出力を持つデスクトップCO2レーザーカッターであるxTool P2などがあります。

また、xTool S1というダイオードレーザーカッター、xTool F1という携帯可能なレーザー彫刻機、そしてxTool M1というダイオードレーザーとビニールカッターを組み合わせたホームクラフティングマシンも製造しています。

小規模ビジネス、趣味やDIY愛好家、教育関係者など、幅広いユーザーに対応しています。また、レーザー彫刻機は、木材、アクリル、レザーなど様々な素材の加工に使用されており、個人のクリエイティブなプロジェクトから小規模なビジネス用途、教育現場での利用まで多岐にわたります。

TRUMPF(トルンプ)

トルンプは1923年に設立された、ドイツに本社を構える電子機器のグローバルリーディングカンパニーです。工作機械、レーザー技術、工業用電子機に強みを持つ中、レーザー彫刻機の製造も行っています。

同社が扱うレーザー彫刻機の種類は以下の3つです。

  • CO2レーザー彫刻機
  • ファイバーレーザー彫刻機
  • 超短パルスレーザー彫刻機

同社の技術は幅広い業界で活躍していますが、特に自動車産業、航空宇宙、電子機器製造など、幅広い分野で活用されています。

芝浦エレテック(SHIBAURA ELETEC)

芝浦エレテックは1972年に設立されたメーカーで、半導体製造やフラットパネルディスプレイ製造装置などを製造しています。

同社が扱うレーザー彫刻機の種類は以下の3つです。

  • ファイバーレーザー彫刻機
  • YAGレーザー彫刻機

特に半導体業界を含む高精度が求められる製造業界で活躍しています。

この記事を読んで、レーザー彫刻機が気になった方は、以下のボタンよりお気軽にお問い合わせください。

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