5種類のプラズマ切断機とそのメリット、比較方法とおすすめのメーカー5社
  • 最終更新日:2024年9月13日
プラズマ切断機は、現代の製造業において欠かせないツールです。高温のプラズマアークを利用して、さまざまな金属を効率的に切断する能力を持つこれらの機械は、多様な素材や形状に対応可能です。

今回は、エアプラズマ、酸素プラズマ、窒素プラズマ、アルゴン・水素プラズマ、ウォーターインジェクションプラズマの5種類のプラズマ切断機の特徴と利点について詳しくご紹介します。

5種類のプラズマ切断機

プラズマ切断機の種類と特徴

プラズマ切断機は、水素、酸素、または大気などをプラズマ化し、切断したい材料に照射することで金属を切断する装置です。

プラズマ切断の特徴は、電気を通す金属材料であればほとんど切断可能であることで、アルミ、真鍮、ステンレスなど、様々な金属材料の切断に対応可能です。そのため、各種類の特性の違いを上手く使い分けることで、多様な加工環境で活躍します。

プラズマ切断機を使用する上で必要な資格は特に必要ありませんが、労働安全衛生法が定める特別教育が必要です。

他のガス切断とプラズマ切断の大きな違いは、持っているエネルギーの大きさです。プラズマ切断では、プラズマアークそのものが大きな熱エネルギーを持ち、摂氏約2万度の高エネルギーにより、あらゆる金属を一瞬で溶解し切断可能になります。

プラズマ切断機には、以下の5種類があります。

  • エアプラズマ切断機
  • 酸素プラズマ切断機
  • 窒素プラズマ切断機
  • アルゴン・水素プラズマ切断機
  • ウォーターインジェクションプラズマ切断機

エアプラズマ切断機

エアプラズマ切断機は、水素、酸素、または大気などをプラズマ化し、切断したい材料に照射することで金属を切断する装置です。このタイプの切断機は、その汎用性とコスト効率の高さで知られており、一般的な用途に広く使われています。

電気を通す素材であれば、比較的新しい種類のプラズマ切断機として、滑らかな曲線の切断にも適しています。

この種類のプラズマ切断機の強みは以下の通りです。

  • 電気を通す素材であれば、多くの金属を切断可能
  • 初心者でも短時間のトレーニングで扱える
  • 高速加工により、生産時間の短縮とコスト削減を実現
  • 別途のガス供給システムが不要になり、運用コストを低く抑えられる

特に、薄~中厚の金属の切断に適しており、自動車修理や小規模な工作機械での使用に適しています。

酸素プラズマ切断機

酸素プラズマ切断機は、酸素をプラズマガスとして使用する切断機です。この技術は、特に厚い鋼板の高速自動切断に使用され、建設業界や重工業での使用に特に適しています。

酸素プラズマ切断機の強みは以下の通りです。

  • 特に炭素鋼の高速自動切断に優れている
  • 酸素を使用することで、より高温のプラズマアークを生成し、厚い材料を効率的に切断できる

厚い鋼板の切断に適しており、建設業界や重工業での使用に特に適しています。

窒素プラズマ切断機

窒素プラズマ切断機は、プラズマガスとして窒素を使用する切断機です。このタイプの切断機は、特に非鉄金属の切断に適しており、プラズマ切断機としては比較的古い歴史を持っています。

窒素プラズマ切断機の強みは以下の通りです。

  • 様々な材質のワークを切断加工できる汎用性がある
  • 他のプラズマ切断機に比べて、電極やチップの耐久性が長く、比較的ラフな使用が可能

非鉄金属の切断に適していますが、切断面の品質や環境への影響から、現在ではあまり使用されなくなっています。

アルゴン・水素プラズマ切断機

アルゴン・水素プラズマ切断機は、アルゴンガスや水素ガスをプラズマガスとして使用する切断機です。このタイプの切断機は、非鉄金属の加工に適しており、特にステンレスなどの材質の切断に重宝されています。水素ガスをプラズマガスとして使用すると、還元効果により材質の酸化を抑え、質を落とさずに加工を行えるのが特徴です。

アルゴン・水素プラズマ切断機の強みは以下の通りです。

  • 非常に滑らかできれいな切断面を提供
  • 後処理が最小限に抑えられる
  • ステンレス鋼やアルミニウム合金など、非鉄金属の切断に優れている
  • 水素により切断温度が上昇し、切断速度が速くなる

高品質な切断面を必要とする場合に使用され、精密工学や美術品の制作など、高い品質が求められる業界で好まれています。

ウォーターインジェクションプラズマ切断機

ウォーターインジェクションプラズマ切断機は、水をプラズマガスに注入することでアークプラズマの収縮を助長し、プラズマ温度を高める切断機です。この方法は、特にステンレスやアルミニウムなどの非鉄金属の切断に適しており、水没切断が可能で、高品質な切断面を実現します。

ウォーターインジェクションプラズマ切断機の強みは以下の通りです。

  • ステンレスやアルミニウムの切断において、滑らかできれいな切断面を提供
  • 切断時の騒音や粉塵が少なく、環境に優しい切断方法
  • 非鉄金属だけでなく、厚い鋼板の切断も可能

非鉄金属の切断に適しており、環境への影響が少なく、高品質な切断面が求められる場合に使用されます。

プラズマ切断機のメリット・デメリット

プラズマ切断機の強みと課題

プラズマ切断機を活用するメリットは大きな反面、デメリットも存在します。その両方を比較して、貴社に適切な機械を導入しましょう。

メリット

プラズマ切断機を活用するメリットは、以下の3つです。

  • 多様な素材を加工できる
  • 曲線の切断が可能
  • 操作が簡単

多様な素材を加工できる

プラズマ切断機は、高温のプラズマアークを利用して金属を切断する装置で、鉄鋼、アルミニウム、ステンレス鋼、銅など、多様な素材に対応できます。高い精度と速さを兼ね備えており、特に複雑な形状の切断や厚みのある素材の加工に優れています。

このメリットのため、特に以下の用途で活用しやすいです。

  • 製造業での多品種少量生産:プラズマ切断機は一台で複数の素材を加工できるため、工具の切り替えが不要で効率的
  • 建設業:鉄鋼やアルミニウムなどの異なる素材を現場で切断
  • 修理・メンテナンス:汎用性が高く、様々な金属部品を迅速に切断・加工できる
  • アート・デザイン:精度が高いため、複雑な形状や細かなディテールを持つ金属作品の制作が可能

曲線の切断が可能

プラズマ切断機は、プラズマアークを利用して金属を切断する技術を用いた装置です。直線だけでなく、曲線や複雑な形状の切断も高精度で行えます。この特性により、従来の機械加工では難しい曲線の切断が簡単に実現できます。

この特徴が役立つ場面は以下の通りです。

  • 建築装飾・アーキテクチャ:複雑な形状や曲線が多く用いられる建築物の装飾やファサードデザインで、デザインの自由度が増し、美しい装飾金属パネルやアートワークを効率的に製作
  • 製造業の部品加工:自動車や航空機産業で、機能的かつ美的な曲線を持つ部品を高精度で切断し、製品の品質向上や加工時間の短縮に寄与
  • 金属工芸・アート:彫刻やアート作品の制作において、曲線の切断が非常に重要で、自由な発想で作品を作り上げることができ、細かなディテールも実現可能
  • サイン・看板製作:複雑なロゴや文字の切断が必要な看板や標識の製作で、正確な曲線や細かなディテールを持つデザインを容易に実現し、視認性の高いサインを製作
  • プロトタイピング・試作:新製品の試作やプロトタイピングで、迅速に複雑な形状を持つ部品を作成することが求められ、短期間で高精度な試作品を製作

操作が簡単

プラズマ切断機は、直感的な操作が可能で、複雑な設定や高度な技術を必要としないため、初心者でも短期間で使いこなせます。自動化された機能やユーザーフレンドリーなインターフェースが備わっており、効率的かつ安全に金属切断作業を行えます。

この特徴が役立つ場面は以下の通りです。

  • 中小企業の製造現場:プラズマ切断機の操作が簡単で、従業員が短期間で操作を習得でき、生産性の向上に寄与
  • 教育機関での技術訓練:技術学校や職業訓練校で、学生に金属加工技術を教える際に最適で、安全機能も装備
  • 現場での迅速な作業:建設現場や修理現場で、簡単な操作で迅速な対応が可能になり、作業時間の短縮とコスト削減を実現
  • 小規模ビジネスの立ち上げ:金属加工やアートワークなどの小規模ビジネスを始める際に大きなメリットがあり、短期間で技術を習得でき、ビジネスの立ち上げがスムーズ
  • メンテナンスやリペアサービス:機械や設備のメンテナンス業務で、操作が簡単なプラズマ切断機は有用で、現場スタッフが短時間でセットアップし、迅速に修理や部品交換を行い、ダウンタイムを最小限に抑えられる

デメリット

一方で、プラズマ切断機を導入するデメリットとして、以下の3点を理解しておく必要があります。

  • 導電性材料のみ切断可能
  • 厚すぎるものの切断には不向き
  • 極端に厚い材料の切断には適していない

導電性材料のみ切断可能

プラズマ切断機は、導電性材料、つまり金属材料を主に切断するための装置です。このため、非導電性の素材(プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど)は切断できません。この制約は、特定の作業環境や用途において、プラズマ切断機が不適切である場合があることを意味します。

そのため、プラズマ加工を用いた以下のような加工や作業は避ける必要があります。

  • 非導電性材料の切断作業:プラスチック、木材、ガラス、セラミックスなどの非導電性材料を切断するために使用すると、機械に損傷を与える可能性がある。


厚すぎるものの切断には不向き

プラズマ切断機は、高温のプラズマアークを利用して金属を切断する装置です。 多くの厚みの金属を効率的に切断できますが、極端に厚い金属(通常25mm以上)を切断する場合、その性能は限られます。切断速度が遅くなったり、切断品質が低下することがあります。さらに、特定の厚さを超えると、物理的に切断が難しくなる場合もあります。

特に避ける必要があることは以下の通りです。

  • 極厚の金属材料の切断:25mm程度以上の厚さでは切断速度が大幅に遅くなり、切断面の品質も低下
  • 一貫した高品質の切断が必要な場合:特に製品の品質が厳しく求められる場合には、他の切断方法を検討
  • 長時間の切断作業:厚い金属の切断には時間がかかり、機械の寿命が短くなる可能性がある

プロセス中に明るいフラッシュが発生する

プラズマ切断機の使用中に発生する明るいフラッシュは、強烈な紫外線や赤外線を含み、目や皮膚に対するリスクが伴います。このフラッシュは、オペレーターにとって視覚的な障害や火傷の危険を引き起こす可能性があります。適切な安全対策を講じることが、作業環境の安全性を確保するために重要です。

このデメリットを軽減するためには以下の対策が有効です。

  • 適切な保護具の着用:防護眼鏡やフェイスシールドは遮光フィルター付きのものを使用
  • 遮光スクリーンやカーテンの設置:作業エリアに設置してフラッシュが周囲に拡散するのを防ぐ
  • 作業エリアの適切な照明:十分な照明を設けることで、フラッシュに対する視覚的な対策を補助
  • 自動遮光フィルターの使用:プラズマ切断中の光の強さに応じてフィルターを自動的に調整

4つの選定基準 | プラズマ切断機の選び方

プラズマ切断機の選び方

プラズマ切断機を選定する上で、以下の4点を考慮する必要があります。

  • 切断速度
  • 切断精度
  • 連続運転時間
  • 切断面の品質

切断速度

切断速度が変動すると、切断面の品質、生産効率、および切断作業の総時間が変わります。高速で切断することで生産性が向上する一方、切断面の品質に影響を与える可能性があります。

切断速度が速いと、切断時間を短縮し、労働コストや運用コストを削減できます。その一方で、切断速度が遅いとより滑らかで精密な切断面を実現できるほか、低速切断は熱影響を減少させ、材料の変形や硬化を抑制できます。

切断精度

切断精度が変動すると、切断面の品質や寸法の正確性が変わります。精度が高いほど、より正確な形状とサイズで切断できます。

切断精度が高い場合のメリットは以下の通りです。

  • 滑らかできれいな切断面が得られ、後処理が少なくて済む
  • 同じ設定で一貫した品質の切断が可能

一方、切断精度が低い場合のメリットは以下の通りです。

  • 精度がそれほど高くない機器は、通常、低コストで購入や運用が可能
  • 精度要求が低い場合、機器の設定や操作が簡単

連続運転時間

連続運転時間が変動すると、機械の熱管理と生産性に影響が出ます。長い連続運転時間は、機械の冷却にかかる時間と頻度を減らし、生産効率を向上させることができます。

連続運転時間が長い場合のメリットは以下の通りです。

  • より多くの作業を一度に完了
  • 機械の冷却やメンテナンスのための停止時間が減少

一方、連続運転時間が短い場合のメリットは以下の通りです。

  • 機械を過熱から守り、長期的な耐久性を保つ
  • 定期的な冷却と停止により、機械のメンテナンスが容易

切断面の品質

切断面の品質が変動すると、切断された材料の表面仕上げの滑らかさや寸法精度が変わります。品質が高いほど、後処理が少なくて済み、製品の外観や機能性が向上します。

切断面の品質が高い場合のメリットは以下の通りです。

  • 滑らかできれいな切断面が得られ、溶接や組み立てが容易
  • バリ取りや研磨などの追加作業が少なくなり、生産効率が向上

一方、切断面の品質が低い場合のメリットは以下の通りです。

  • 切断速度を優先することで、生産効率を向上
  • 切断面の品質を多少犠牲にしても、機器のコストや運用コストを抑えることが可能

プラズマ切断機を製造するおすすめのメーカー5選

プラズマ切断機を製造する会社

プラズマ切断機を製造する主なメーカーとして、以下の5社が挙げられます。

  • 小池酸素工業
  • WELDTOOL
  • パナソニックコネクト
  • 日酸TANAKA
  • ダイヘン

小池酸素工業

小池酸素工業は、プラズマ切断機を含む多様な切断・加熱機器や溶接機器を製造している企業で、長年にわたるプラズマ切断のノウハウと最先端技術を融合し、高品質な製品を提供しています。

同社はエアプラズマ切断機、酸素プラズマ切断機を主に製造しています。以下は、製造している機械の一部です。

  • UNITEX:ガス・プラズマ切断機のフラッグシップマシン
  • TECHNOGRAPH:あらゆる業種で最高性能を発揮するスタンダードマシン
  • ECONOGRAPH:薄板から厚板までこなすオールラウンドマシン

WELDTOOL

WELDTOOLは、2013年に創業した溶接機専門店で、TIG溶接機、半自動溶接機、プラズマ切断機などを販売しています。5000社以上の中小零細企業に製品を提供しており、購入後のサポートも充実しています。

WELDTOOLは主にエアプラズマ切断機を製造しており、以下の製品があります。

  • WT-60:軽量で持ち運び可能な200Vのエアープラズマ切断機
  • WT-100S:三相200Vのハイパワー機種で、重量は30kgと持ち運びが可能
  • WT-30C:コンプレッサー内蔵のプラズマ切断機

パナソニックコネクト

パナソニックコネクトは、高品質な切断と消耗部品の長寿命化を実現するエアプラズマ切断機を製造しています。これらの機器は、フルデジタル制御やインバーター制御を採用し、精密な切断が可能です。

パナソニックコネクトは主にエアプラズマ切断機を製造しており、以下の製品があります。

  • PF3シリーズ:高機能切断機で、エアプラズマガウジングも可能
  • PA2シリーズ:コンプレッサ内蔵タイプで、現場での使用に適している
  • 130PF1:大容量130Aで最高70mmまで切断可能な機器
  • 200TRC:切断・TIG溶接・手溶接の1台3役をこなす機器

日酸TANAKA

日酸TANAKAは、切断関連機器や溶接関連機器、ガス関連機器などを提供する企業で、特に大型切断機においてレーザ切断機、プラズマ切断機、ガス切断機をラインナップしています。産業ガスの供給設備や警報器など、ガスに関する様々なニーズに対応しています。

プラズマ切断機については、エアプラズマ切断機、酸素プラズマ切断機、アルゴン・水素プラズマ切断機などを取り扱っています。

日酸TANAKAは、厚板から薄板、開先加工など、多様な切断ニーズに応えるプラズマ切断機を提供しています。具体的には、以下のようなものがあります。

  • ペガサス500シリーズ
  • PLASIANシリーズ

ダイヘン

ダイヘンは、自動車や船舶、ビル、橋梁など、あらゆるものづくりに欠かせない溶接機・切断機のトップメーカーで、プラズマ切断機を含む多岐にわたる溶接・切断機器を提供しており、製造業のさまざまなニーズに応える製品を展開しています。

同社はエアプラズマ切断機を主に製造しており、具体的には、以下のようなものがあります。

  • デジタルエアープラズマ DCT35・DCT60
  • エアープラズマ M-1500C
  • エアープラズマ A-70
  • スーパープラズマ D-8000・12000
  • スーパープラズマガウジング D-12000G
  • インバータエアープラズマ DT-6000