この記事では、購買管理システムを特徴ごとに分類し、特に製造業で役立つシステムを比較してご紹介しています。これを参考に、自社に最適な購買管理システムを見つけてください。
目次
購買管理システムとは?
購買管理システムは、発注から支払いまでの一連の購買業務を電子化し、効率化するためのツールです。発注、購買情報、見積内容などのデータを一元管理することで、業務の効率化やコスト削減を目指す企業が多く導入しています。
製造業における購買管理とは、調達部門が製品の製造に必要な部品や原材料を仕入れるプロセスを指します。そのため、仕入管理システム、支払管理システム、在庫管理システムと購買管理システムを連携させた統合管理が特徴です。
一方、製造を行わない業種においては、購買管理は事務用品など必要な資材を購入するプロセスを意味します。会計システムと連携し、発注先へのスムーズな支払いを実現することが求められます。
4種類の購買管理システム
購買管理システムには、以下の4種類があります。
- 汎用的な購買管理システム
- 間接部材に対応した購買管理システム
- 特定の業種に特化した購買管理システム
- 購買管理機能のある販売管理システム・ERPなど
汎用的な購買管理システム
一般的な購買管理システムは、発注処理、見積管理、納期管理などの基本機能を幅広くカバーし、購買業務全般を支援します。また、多くのシステムは柔軟性が高く、カスタマイズにも対応しているため、様々な業種での利用が可能です。
間接部材に対応した購買管理システム
オフィス用品や消耗品など、間接部材の調達業務に特化した購買管理システムです。価格比較や調達先の選定、カタログ購買といった機能が充実しており、間接部材に関連する多様なニーズに対応します。これにより、調達プロセスの効率化が図れ、オペレーションコストや調達コストの大幅な削減が期待できます。
特定の業種に特化した購買管理システム
特定の業種に特化した購買管理システムは、その業種固有のニーズや課題に対応するための専門的な機能に対応しています。例えば、製造業の場合、品質の低い部品や原材料が製造ラインに流入すると、トラブルや不良品の発生率が上がる可能性があります。
そのため、サプライヤーの供給品質を重視することが重要です。製造業向けのシステムには、納期遵守率や納入実績、不良品発生率などを自動的に評価できるサプライヤー品質管理機能が搭載されています。
購買管理機能のある販売管理システム・ERPなど
購買管理システムの導入以外にも、販売管理システムやERP(基幹システム)に搭載された購買管理機能を活用する方法があります。これにより、購買から調達、支払、財務までの企業の支出を一元管理することが可能です。特に、仕入れた原材料や部品を加工・販売する製造業にとっては、非常に有効な手段です。購買管理システムの主な9つの機能
購買管理システムには、一般的には以下の9種類が含まれています。
- 見積依頼機能
- 発注管理機能
- カタログ購買機能
- パンチアウト連携機能
- 受入検収・支払管理機能
- 契約管理機能
- 価格管理機能
- ワークフロー機能
- データ分析機能
見積依頼機能
購買管理システムの主な機能の一つが見積依頼機能です。この機能を活用することで、複数のサプライヤーから一括で見積もりを取得し、比較・分析することができます。これにより、最適な価格と条件での購買が可能となり、コスト削減に大きく寄与します。さらに、見積もりプロセスの迅速化により、市場の変動にも迅速に対応することができます。
発注管理機能
発注管理機能は、発注プロセスを自動化し、発注書の作成から送信までをシームレスに実行します。この機能は購買プロセスの効率化に大きく寄与する重要な要素です。自動化により手作業によるミスを削減し、迅速な発注を実現します。また、発注履歴を管理・分析することで、将来の購買戦略の策定にも役立ちます。
カタログ購買機能
カタログ購買機能では、頻繁に購入する物品を事前に登録しておき、簡単に注文できるようにします。これにより、定期的な購入が容易になり、購買プロセスの時間短縮と効率化が図れます。また、システム内で物品を管理することで、不必要な購入を防ぎ、コスト削減にも寄与します。
パンチアウト連携機能
パンチアウト連携機能では、外部のECサイトと購買管理システムを直接接続します。これにより、ユーザーはシステム内から外部ECサイトの商品を直接閲覧、選択、購入することが可能になります。この機能を活用することで、商品の選択肢が広がり、最適な商品を最適な価格で購入することができます。
受入検収・支払管理機能
受入検収・支払管理機能は、商品の受け入れから支払い処理までを一元管理する機能です。この機能を利用することで、商品の受け入れ確認や品質チェック、支払い処理が効率化され、財務管理の精度が向上します。さらに、支払い遅延や誤支払いのリスクを軽減することができます。
契約管理機能
契約管理機能では、サプライヤーとの契約内容をデジタルで一元管理します。これにより、契約違反のリスクを低減し、契約の透明性を向上させます。さらに、契約更新の通知や条件変更の追跡が容易になり、契約管理の効率化を実現します。
価格管理機能
価格管理機能では、購入価格の履歴や市場価格の動向を分析し、最適な購入時期や価格を判断します。これにより、コスト削減の機会を逃さず、より効果的な購買戦略を立てることが可能になります。ワークフロー機能
ワークフロー機能は、購買プロセスの各ステップにおける承認や確認作業をデジタル化して効率化します。この機能により、プロセスの透明性が向上し、内部統制が強化されるほか、プロセスの迅速化が実現されるため、業務の生産性も向上します。データ分析機能
データ分析機能は、購買データを詳細に解析し、購買戦略の最適化を支援します。この機能により、購買パターンの把握やコスト削減の機会の発見、サプライヤーのパフォーマンス評価などが可能になるほか、データに基づく意思決定を通じて、より効果的な購買管理を実現できます。5つの比較ポイント | 製造業で購買管理システムの選び方
製造業である貴社に適した購買管理システムを選ぶには、以下の5つの選定基準を考慮することがおすすめです。一つずつ確認していきましょう。
- 集中購買に対応していること
- 多品目の調達に対応していること
- 多くの関係者が活用しやすいこと
- 既存システムとの連携ができること
- 購買品目やカバーする業務範囲は適切であること
集中購買に対応していること
製造業では、要求部門からの依頼を購買部門がまとめて購入する「集中購買」と呼ばれるプロセスを取ることが多く、この集中購買に対応したシステムを活用することがおすすめです。この理由は、製造業が製品の材料となる直接材の調達を行うためです。材料の価格は製造業の利益に直結するため、少しでも安く仕入れるために購買部門が相見積もりを取り、最も安価な仕入先に一括発注することが一般的です。
そのため、購買部門の業務量が増加し、商品カタログの更新や依頼部門とのやり取りが多くなることがあります。また、注文金額が変更された際には注文書を出し直す必要があるなど、統制上のルールを守るためのプロセスが多く発生します。
そこで、このよう集中購買に対応した購買管理システムを活用すれば、このような手間やプロセスを簡略化できます。
多品目の調達に対応していること
製造業の調達項目は多岐にわたります。他の業種と比べて多品目に対応する必要があるため、これらの品目に対応しているシステムを選ぶ必要があります。 材料や部品などの直接材だけでなく、試薬、燃料、工場設備などの間接材、さらには梱包用の副資材も調達する必要があります。このように、製造業では多様な品目を調達するため、仕入先も多岐にわたります。仕入先ごとに特有の商習慣があったり、品目によって取引方法が異なるため、調達管理業務が複雑になる傾向があります。
多くの関係者が活用しやすいこと
製造業における購買プロセスでは工場や本社、各地方の管理担当者など様々な人が関わります。そのため、多くの関係者にとって使いやすいシステムを導入する必要があります。製造業では、複数の工場拠点を持つ企業が多く、各工場や本社、地方の管理拠点など、さまざまな場所で購買管理を行うケースが一般的です。
多数の拠点があると、各現場での購買管理の運用が異なりやすくなり、さらに扱う品目も多岐にわたるため、業務要件がばらばらになる傾向があります。このように各現場で異なる運用を一つのシステムで統合しようとすると、システムの対応が難しい場合や、現場からの反発により導入が頓挫してしまうケースも少なくありません。
既存システムとの連携ができること
購買管理業務は、企業内で独立した業務ではなく、他のシステムと連携する必要があります。例えば、会計システムには発注データを渡し、生産管理システムや在庫管理システム、販売管理システムとデータベースを共有することで、製品数や在庫の管理を行います。多くの購買管理システムは、会計ソフト、生産・販売管理システム、ERPなどと連携できるように設計されています。また、一部のシステムは、人事システムや入金消込システムなどとも連携可能です。
既存システムと連携できない購買管理システムを導入すると、企業内での在庫や資金の流れを把握しにくくなる可能性があります。そのため、導入前に自社で運用しているシステムと連携できるかどうかをベンダーに確認することが重要です。
購買品目やカバーする業務範囲は適切であること
購買管理システムを導入する上で、購買品目やカバーする業務範囲を考慮することも重要です。購買管理システムには、直接材と間接材の両方に対応する製品と、間接材に特化した製品があります。また、購入依頼から入荷検収までの購買プロセス全般をカバーする製品と、見積業務など一部のプロセスに特化した製品も存在します。
管理したい購買品目が直接材と間接材の両方なのか、間接材だけでよいのか、また購買プロセス全般をカバーしたいのか、一部のプロセスだけでよいのかによって、選ぶべき製品は異なります。効率化したい購買プロセスの範囲を明確にし、それに対応するシステムを選ぶことが重要です。
製造業で活用できる購買管理システム11選
この項目では、実際に製造業で活用できる購買管理システムをご紹介します。
先ほどご紹介した4種類の購買管理システムに分けて、それぞれご紹介します。
汎用的な購買管理システム
汎用的な購買管理システムの代表的なシステムには、以下のものが挙げられます。- 楽々ProcurementII(住友電工情報システム)
- HUE Purchase(ワークスアプリケーションズ)
- トラミル(クレオ)
楽々ProcurementII(住友電工情報システム)
「楽々ProcurementII」は、直接材と間接材の両方に対応し、スポット購入やカタログ購入も可能な購買管理システムです。購買業務の全プロセスをカバーし、見積依頼、社内承認、発注入力、検収などの業務をシステム上で一括管理することで、大幅な業務効率化が期待できます。さらに、業務ごとの残タスクの件数表示、案件のステータス管理、予算消化状況の確認など、業務効率化のための機能が充実しています。これにより、煩雑な購買業務をトータルでサポートします。
無制限で相見積を取ることができ、過去の見積を参照・引用する機能も備えているため、購買業務の属人化を防ぎ、価格交渉や購買単価の低減にも効果的です。
HUE Purchase(ワークスアプリケーションズ)
ワークスアプリケーションズが提供する「HUE Purchase」は、Web-EDIやパンチアウト連携などの先進機能を備え、業務効率化からガバナンス強化まで幅広い課題を解決する購買管理システムです。文房具や役務サービス、自社ビルなど、さまざまな購買プロセスをカバーし、日本の大手企業向けに設計されています。
このシステムは、社内外の購買業務をすべてWeb上で完結させることができます。購買部門だけでなく、現場の業務も効率化され、文房具から自社ビルまで、あらゆる購買を一元管理することが可能です。
トラミル(クレオ)
「トラミル」は、購買プロセスの全体管理とデータ連携に強みを持つ業務プロセス管理ツールです。集中購買・分散購買のいずれにも対応し、見積、購買承認、発注、検収、支払依頼までの一連の購買機能を備えています。「発注作業のみをシステム化したい」といったニーズに応じて、他のシステムとの対応範囲を切り分けることで、不要な機能を導入する手間やコストを軽減できます。
「トラミル」では、「誰が・いつ・何を・いくらで購入するのか」といった取引情報や進捗状況をワンビューで把握できるため、購買管理が効率的に行えます。
また、見積や納期回答などのやりとりをシステム上で完結できるため、コンプライアンスの強化にも寄与します。さらに、口頭発注やエビデンスが紐づかない支払依頼を防止することで、個人の意識に依存しない購買統制を実現します。
間接部材に特化した購買管理システム
製造業向けの購買管理システムの中でも、間接部材に特化したシステムがあります。この種類の主なシステムには、以下のものが挙げられます。- ビズネットの購買管理プラットフォーム(ビズネット)
- SOLOEL(ソロエル)
- べんりねっと(コクヨグループ)
ビズネットの購買管理プラットフォーム(ビズネット)
ビズネットが提供する「ビズネットの購買管理プラットフォーム」は、各種BtoB製品の主要サプライヤーECサイトと連携し、最大5,000万点の商品を購入できるサービスです。購入から承認までを一括管理し、自社のECサイトを持たない取引先の商品情報もデジタル化して取引可能です。さらに、請求の取りまとめや購買実績のレポート取得、会計システムへの連携により、調達購買業務をスムーズに行えます。
建設、電力、医療、製造業など各業界の大手企業が導入しており、ビックカメラやモノタロウなどから最大5,000万点の商品を最安値で検索することが可能です。また、貴社独自の購買ルールを実現するための管理機能も充実しています。
SOLOEL(ソロエル)
アスクルの子会社であるソロエルが提供する「SOLOEL」は、間接材に特化した購買管理システムです。物品材とサービス材の両方を取り扱い、カタログ購買や外部カタログサイトとの連携、会計連携(有料オプション)などの機能で購買業務をトータルサポートします。外部カタログ社34社を含めた外部サプライヤーは1,500社に及びます。
複数のカタログから最安値の商品を横断検索することで、購買コストの削減が期待でき、購買手段の統一と見える化による不正防止にも役立ちます。また、これまでの購買業務支援のノウハウを活かした購買業務代行サービスも提供しています。
べんりねっと(コクヨグループ)
コクヨグループのカウネットが提供する「べんりねっと」は、間接材・消耗材の購買管理システムです。15年以上のシステム運用実績と、約500企業グループ3,000社以上の導入実績があります。見積商談機能を利用することで、カタログ作成に必要な正確なメーカー名や品番の履歴が残り、購買実績データをもとに交渉を行えます。
また、独自のWebカタログを作成できるため、購買交渉の効率化やコスト抑制、購買ボリュームの集約に役立ちます。さらに、複数サプライヤーからの相見積もり取得や見積もり取得申請のワークフロー設定など、業務効率化に役立つ機能も多数備えています。
特定の業種に特化した購買管理システム
特定の業種に特化した購買管理システムには、以下のものが挙げられます。- Hi-PerBT 購買管理(日立ソリューションズ)
- LinDo購買(TIS)
- MONQX EDI(YEデジタル Kyushu)
Hi-PerBT 購買管理(日立ソリューションズ)
「Hi-PerBT 購買管理」は、全社集中購買、コンプライアンスの厳守、WebEDI取引を実現する購買専用パッケージです。購買業務に必要な機能を標準実装しており、直接材と間接材の両方の購買に対応しています。承認ワークフローによる内部統制の強化や、下請対象会社の管理による検収漏れの防止など、購買業務に特化した機能が充実しています。
さらに、多言語サポートを提供しているため、海外拠点でも使用可能で、国外の拠点においても購買統制を強化したいというニーズに応えます。同社が提供するカタログサイト「TWX-21 MRO集中購買」との連携や、EDIおよび在庫管理オプションの追加導入など、拡張性の高さにも定評があります。
LinDo購買(TIS)
「LinDo購買」は、製造業の購買調達業務を高度化する優れたソリューションです。多角的な見積査定を行うための相見積や類似品比較機能により、サプライヤー選定を支援します。また、バイヤーが指定する価格明細テンプレートを使用することで、評価の粒度を標準化し、高度なコストリダクション管理を実現します。ポータルサイトでの一括管理機能は、業務の属人化や不正の防止に役立ち、適切かつ効率的な購買調達業務をサポートします。さらに、内部統制の強化やコンプライアンス準拠のための機能も備えています。BtoCレベルで使い勝手の良いユーザーインターフェースも魅力の一つです。
MONQX EDI(YEデジタル Kyushu)
「MONQX EDI」は、YEデジタル Kyushuが提供する製造業向けのWeb-EDIサービスです。電話やFAXでの発注、納期回答、出荷といった企業間取引を電子化・自動化することで、受発注業務の効率化とペーパーレス化を実現します。伝票データの取り込みと自動処理により、データの正確性が向上し、ミス修正にかかる時間を削減できるため、業務の効率化が図れます。
クラウド型のため導入費用が大幅に低減され、メンテナンスや設備投資も不要です。また、取引先に合わせたカスタマイズが可能で、多言語対応により海外取引もカバーします。業種を問わない豊富なテンプレートを活用することで、即運用が可能です。
購買管理機能のある販売管理システム・ERPなど
購買管理システムのある販売管理システム・ERPには、以下のものが挙げられます。- アラジンオフィス(アイル)
- Leaner見積(Leaner Technologies)
アラジンオフィス(アイル)
「アラジンオフィス」は、アイルが提供する中堅・中小企業向けの販売・購買・在庫管理システムです。基本機能をコンパクトにパッケージ化し、企業のニーズに合わせて柔軟にカスタマイズできるのが特徴です。ハンディターミナル、EC管理ソフト、Web受発注システムなど、多くのシステムとの連携にも対応しています。また、導入前のコンサルティングから開発、導入後のサポートまで、手厚いサポート体制が整っているため、トラブル時にも安心です。
お客様の声を反映して完成度の高いパッケージとなっており、5,000社を超える導入実績があります。販売・購買・在庫管理だけでなく、豊富なオプション機能も提供しています。
Leaner見積(Leaner Technologies)
Leaner Technologiesが提供する「Leaner見積」は、購買要求の受取から見積検討の完了まで、すべてのプロセスをデジタルで実現する見積管理システムです。見積作成・依頼、取引選定、見積比較表の自動作成などの機能により、要求部門、調達部門、サプライヤー間のやり取りを一元管理できます。すべての見積情報が蓄積・見える化されるため、進捗管理も一元化されます。さらに、過去の見積情報や交渉履歴は自動的にデータベースに蓄積されるため、参照が容易です。これにより、見積業務の約50%以上が削減され、調達業務の効率化が図れます。
まとめ
ここまで、製造業における購買管理システムを選定する際のポイントについてご紹介してきました。これらのポイントに着目して各ソリューションの詳細を確認することで、製造業という特殊な業務に対応しながら、業務改革や効率化を実現できます。購買管理業務は一見目立ちにくいものの、効率化やコストカットに取り組む企業は経営基盤が安定し、予期せぬ事態が発生しても揺らぎにくい体質を築けます。機能やサポートを慎重に確認し、自社に最適な購買管理システムを導入しましょう。