例えば、サーボモーターには3種類あり、産業用ロボットに向いているものや、小型ロボットに向いているもの、工作機械に向いているものなど、製品によって求められる品質が異なり、適したサーボモーターも異なってきます。
この記事では、サーボモーターの基本的な構造から、用途に応じた比較、各メーカーの特徴までを詳しく解説します。
高精度な制御が求められる場面で最適なサーボモーターを選ぶためのガイドラインとして、ぜひ最後までご覧ください。
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目次
サーボモーターの原理と構造
サーボモーターは、指示された位置や速度に正確に追従できるモーターです。ロボットアームや工作機械など、高精度な位置決めが求められる場面で広く活用されています。
サーボモーターの動作原理は、以下のようなフィードバック制御に基づいています。
- 目標値の設定 サーボモーターを動かしたい位置や速度などの目標値を設定
- 現在の位置の検出 モーターに取り付けられたエンコーダーなどのセンサーが、現在の位置や速度を検出
- 誤差の算出 目標値と現在の位置の差、つまり誤差が計算
- 制御信号の出力 誤差に基づいて、モーターを制御するための信号が生成され、モーターに送られる
- モーターの駆動 モーターは、制御信号に従って回転し、目標値に近づく
- 繰り返し 上記の過程を高速で繰り返し行うことで、常に目標値に近づけようとする制御が実現
サーボモーターは、大きく分けて以下の部品で構成されています。
- モーター本体 回転運動を生み出す部分
- エンコーダー モーターの回転角度や速度を検出するセンサー
- ドライバ モーターを駆動するための回路
- コントローラー サーボモーター全体の動作を制御する装置
3種類のサーボモーターと特徴
サーボモーターには、以下の3つの種類があります。
- ACサーボモーター
- DCサーボモーター
- ステッピングモーター ※クリックすると該当箇所まで飛びます
ACサーボモーター
ACサーボモーターは、交流電流を利用して動作するサーボモーターの一種です。DCサーボモーターに比べ、高出力、高トルク、高速回転が可能なため、産業用ロボットや工作機械など、高負荷かつ高速な動作が求められる場面で広く活用されています。ACサーボモーターには、以下のような特徴があります。
- 高出力・高トルク DCサーボモーターよりも大きな力を出すことができ、重負荷の駆動に最適
- 高速回転 高速回転が可能であり、高速な動作が要求される装置に最適
- 高精度な位置決め エンコーダーによるフィードバック制御により、高精度な位置決めが可能
ACサーボモーターは、ロボットアームの関節部に使用され、自由度の高い動作を実現します。また、工作機械の送り軸や主軸に使用され、高精度な加工を実現します。NC工作機械やマシニングセンターなど、さまざまな工作機械に搭載されています。
DCサーボモーター
DCサーボモーターは、直流電流を用いて動作するサーボモーターの一種です。構造がシンプルで、低速域での高精度な制御に優れています。小規模な装置や、位置決め精度が特に求められる用途に広く用いられています。DCサーボモーターには、以下のような特徴があります。
- 構造がシンプル ACサーボモーターに比べて構造がシンプルで、小型化しやすい
- 低速域での高精度 低速域での位置決め精度が高く、精密な動きが求められる用途に最適
- 応答性が良い コントロールに対する応答性が良く、素早い動作が可能
DCサーボモーターは、時計やカメラなどの精密機器の駆動源など、非常に小さな動きを正確に制御する必要がある場合や、小型ロボットや教育用ロボットの関節部に使用されます。これらのロボットでは、シンプルで扱いやすいDCサーボモーターが採用されることが多いです。
ステッピングモーター
ステッピングモーターは、パルス信号を受け取るごとに一定の角度で回転するモーターです。精密な位置決めが容易であり、開ループ制御でも比較的安定した動作が可能です。構造がシンプルで、低速域でのトルクが大きいという特徴があります。ステッピングモーターには、以下のような特徴があります。
- 高精度な位置決め パルス信号の数を数えることで、高精度な位置決めが可能
- 低速域での高トルク 低速域においても高いトルクを発揮するため、静止状態での保持力が強く、振動に強い
- 開ループ制御 エンコーダなどの位置検出装置が不要な場合が多く、システムを簡素化可能
ステッピングモーターは、プリンターでの印字ヘッドの移動や用紙の送り出しなど、精密な位置決めが要求される部分や、工作機械の送り軸やテーブルの移動など、高精度な加工を行うために使用されています。
サーボモーターの主な用途
サーボモーターは、主に以下のような用途が挙げられます。
- ロボットの関節
- 半導体装置用のXYテーブル
- 自動ドアの開閉機構 ※クリックすると該当箇所まで飛びます
ロボットの関節
サーボモーターは、ロボットの関節部分に多く用いられるモーターです。その理由は、目標とする位置や速度に正確に追従できる高い制御性にあります。高精度な位置決め、高速応答性、広い動作範囲、高いトルク密度といった特徴により、ロボットは複雑な動きを滑らかに、そして正確に実行できます。
例えば、自動車の溶接やスマートフォンの組み立てなど、精密な作業が求められる場面で、サーボモーターは欠かせない存在となっています。
さらに、多様な制御方式に対応できるため、ロボットの動きを柔軟に制御できます。
半導体装置用のXYテーブル
半導体装置のXYテーブルは、半導体ウェハを非常に精密な位置に移動させる装置です。このXYテーブルの駆動源として、サーボモーターが不可欠な役割を果たしています。サーボモーターは、目標とする位置に正確に移動させることができる高い位置決め精度が特徴です。半導体製造工程では、微細な回路パターンを形成するため、極めて高い位置決め精度が要求されます。
サーボモーターは、この要求に応え、半導体ウェハを正確な位置に配置することで、高品質な製品の製造に貢献しています。
自動ドアの開閉機構
自動ドアの開閉機構には、サーボモーターが広く利用されています。サーボモーターは、目標とする角度や速度に正確に制御できるため、ドアの開閉をスムーズかつ安全に行うことができます。パルス信号に基づいて動作するため、ドアの開閉角度をミリ単位で正確に制御することが可能です。これにより、障害物との接触を防止し、高い安全性を実現しています。
また、ソフトスタート・ストップ機能により、ドアの開閉時の衝撃を緩和し、乗客の乗り降りも安全に行うことができます。さらに、ドアの重量や風の影響など、外部からの負荷変動に対して、適切なトルクを発生させることで、安定した動作を維持します。
サーボモーターのメリット・デメリット
サーボモーターには、メリットとデメリットの両方があります。その両方を比較して、サーボモーターに限らずモーターを検討しましょう。
メリット
サーボモーターは、目標とする位置や速度に正確に追従できるモーターです。この高精度な制御により、非常に滑らかな動きを実現しています。サーボモーターは、エンコーダーと呼ばれる位置検出器を搭載しており、自身の現在位置を常に把握しています。この情報に基づいて、目標位置との誤差を常に補正しながら動作するため、滑らかな動きが可能になります。
また、高度な制御アルゴリズムにより、加速・減速時の振動も抑制され、より滑らかな動きを実現しています。
デメリット
サーボモーターは、ほかのモーターと比較して高価な傾向にあります。その主な理由は、高精度な制御を実現するための高度な技術が搭載されている点にあります。高コストの要因としては、エンコーダーなどの精密部品、複雑な制御回路、そして高度な制御技術の開発コストなどが挙げられます。これらの要素が組み合わさることで、サーボモーターは高性能かつ高コストな製品となっています。
一方で、高い初期投資に見合うだけのメリットも数多く存在します。高精度な位置決め、高速応答性、柔軟な制御など、サーボモーターは生産性の向上や製品品質の安定化に大きく貢献します。長期的視点で見れば、初期投資は回収でき、さらなる利益をもたらす可能性も秘めています。
コストを抑える方法としては、必要な機能のみを搭載したモデルを選択したり、複数のベンダーから見積もりを取って比較検討したりすることが考えられます。
9つの比較ポイント | サーボモーターの選び方
サーボモーターを選ぶ際は、以下の9つの点を考慮することがおすすめです。
使用目的や用途
サーボモーターを選ぶ際には、用途に合わせて最適なモーターを選ぶことが重要です。ACサーボモーター、DCサーボモーター、ステッピングモーターのそれぞれに特徴があり、適した用途が異なります。以下の表を参考に、サーボモーターを選んでみてください。
特徴 | 適した用途 | |
---|---|---|
ACサーボモーター | 高出力、高トルク、高速回転、高精度な位置決め | 産業用ロボット、工作機械、NC工作機械など、高負荷かつ高速な動作が求められる装置 |
DCサーボモーター | 構造がシンプル、低速域での高精度、応答性が良い | 時計、カメラ、小型ロボットなど、精密な動きが求められる装置 |
ステッピングモーター | 高精度な位置決め、低速域での高トルク、開ループ制御が可能 | プリンター、工作機械、自動販売機など、開ループ制御で十分な場合や、低速域での高トルクが必要な場合 |
滑らかさ
滑らかさとは、制御性能の高さの表れであり、製品の品質や作業効率に大きく影響します。滑らかな動きを実現するためには、モーター本体の精度はもちろん、駆動回路や制御プログラムの最適化が重要です。滑らかなサーボモーターには、以下のような特徴があります。
- 高精度な位置決め 目標とする位置に正確かつ素早く到達できるため、滑らかな動きを実現
- 低振動 動作中の振動が少なく、安定した動きが可能
- 高速応答性 外部の変化に素早く対応できるため、滑らかな動きを維持
滑らかな動きが要求される用途としては、半導体製造装置、精密機器の組み立て、ロボットの関節部などが挙げられます。これらの分野では、製品の品質や生産性が、サーボモーターの滑らかさに大きく左右されます。
一方で、自動販売機における商品の出し入れや簡易な自動ドアなど、高い精度や高速性が求められない場合、簡易な構造のサーボモーターでも十分です。
回転力・トルク
トルクは、モーターが回転する力のことです。トルクが大きいほど、重いものを動かしたり、強い抵抗に打ち勝ったりすることができます。用途によって必要なトルクは異なり、適切なトルクのモーターを選ぶことが重要です。トルクが大きなサーボモーターには、以下のような特徴があります。
- 高負荷に対応 重いものを動かしたり、大きな抵抗に打ち勝ったりすることが可能
- 加速性能が高い 短時間で高速回転を実現
- 安定した動作 外乱に対して安定した動作が可能
トルクが大きなサーボモーターは、産業用ロボット、工作機械、搬送装置など、大きな力を必要とする用途に適しています。例えば、自動車のボディを溶接するロボットや、大きなワークを加工する工作機械など、高負荷な作業に対応する必要があります。
一方で、大きなトルクが不要な小型ロボットや時計やカメラなど、精密な動きが求められる機器では、小さなトルクで十分な場合が多いです。
精密度
精密度は、目標の位置や速度にどれほど正確に追従できるかを示す指標です。高精度なサーボモーターは、微細な動きや繰り返し精度が要求される用途に適しています。精度が高いサーボモーターには、以下のような特徴があります。
- 高分解能エンコーダ モーターの回転角度を細かく検出できるため、高精度な制御が可能
- 高性能な制御回路 外乱に対して安定した制御を行い、高精度な動きを実現
- 機械的な精度 モーター本体の機械的な精度が高く、ガタや振動が少ないため、高精度な動きが可能
精度が高いサーボモーターは、半導体製造装置、精密機器の組み立て、医療機器など、微細な動きや繰り返し精度が要求される用途に適しています。例えば、半導体ウェハ上に微細な回路パターンを形成する工程や、精密部品を組み立てる工程など、高い精度が要求される場面で活躍します。
反応速度・応答性
応答性とは、外部からの指令に対してどれだけ素早く反応し、目標の状態に到達できるかを示す性能です。応答性の高さは、迅速かつ正確な動作が求められる場面で威力を発揮します。応答性が高いサーボモーターには、以下のような特徴があります。
- 高速な制御回路 高速な演算処理を行い、モーターを迅速に制御可能
- 低慣性 モーター自体の回転体が軽く、回転速度を素早く変化可能
- 高剛性 外力に対して変形しにくく、安定した動作を維持
応答性の高いサーボモーターは、ロボットの関節部、NC工作機械の送り軸、半導体製造装置など、高速かつ正確な動作が求められる用途に適しています。例えば、ロボットが物体を掴んで移動させる際、目標の位置に素早く移動する必要があります。
一方で、商品の出し入れなど、高速な動作は必要ありません。また、簡易な自動ドアなど高い精度や高速性が求められない場合、簡易な構造のサーボモーターでも問題ありません。
耐久性能
耐久性能は、過酷な環境や長時間の連続運転においても安定して動作できる能力を指します。耐久性の高さは、製造ラインや物流現場など、高い稼働率が求められる環境でその真価を発揮します。耐久度が高いサーボモーターには、以下の特徴が挙げられます。
- 冷却性能が高い 発熱を抑え、長時間の連続運転に対応可能
- 耐振動・耐衝撃性が高い 外部からの衝撃や振動に強く、安定した動作を維持
- 耐腐食性が高い 湿気や化学物質に強く、過酷な環境下でも使用
耐久性が高いサーボモーターは、自動車製造ライン、食品製造工場、物流倉庫など、過酷な環境下で長時間稼働する必要がある設備に適しています。これらの現場では、頻繁な起動・停止や振動、高温多湿といった過酷な条件下で動作するため、高い耐久性が求められます。
一方で、家庭用機器など、使用環境が比較的穏やかな製品では、耐久性よりもコストや小型化が優先される場合があります。また、短時間での実験や研究用であれば、耐久性よりも高精度や高速性が重視されることがあります。
サイズと重量
サイズと重量は、設置スペースや可搬性、そしてモーターの出力に大きく影響します。用途に合わせて最適なサイズと重量のモーターを選ぶことが重要です。サイズと重量が大きなサーボモーターには、以下の特徴があります。
- 高出力 大きなトルクを出力でき、重い負荷を駆動可能
- 高剛性 大きな外力にも耐えられ、安定した動作が可能
- 冷却性能が高い 大型のヒートシンクを搭載でき、長時間の連続運転に対応可能
サイズと重量が大きなサーボモーターは、産業用ロボットの大型関節部、工作機械の主軸、クレーンなど、大出力が必要な用途に適しています。例えば、自動車のボディを溶接するロボットや、大型のワークを加工する工作機械など、高負荷な作業に対応する必要があります。
一方で、ドローンや小型の産業用ロボットなど、軽量化が求められる用途では、小型のサーボモーターが使用されます。また、時計やカメラなど、小型で高精度な動きが求められる機器では、小型のサーボモーターが使用されます。
電源要件
電源要件は、モーターの正常動作に不可欠です。定格電圧を供給しないと、トルク不足やモーターの破損を招きます。電流は負荷に応じて適切に供給されるべきで、過不足があると過熱や回路損傷のリスクがあります。周波数も指定通りでなければ回転速度や振動に影響を及ぼします。
費用価格
コストは、性能、機能、ブランド、購入数量などにより変動します。高性能なモーターは高価ですが、最適な選択とは限りません。コスト削減のためには、必要な性能を見極め、複数のメーカーを比較し、標準品や中古品の検討が有効です。また、購入時期によっても価格が変わるため、キャンペーン期間などを活用することが推奨されます。
サーボモーターを製造するおすすめのメーカー5社
サーボモーターを製造する主なメーカーには、以下の5社が挙げられます。
安川電機(YASKAWA ELECTRIC)
安川電機は、1915年に創立され、福岡県北九州市に本社を置く、日本を代表する電機メーカーです。主にサーボモーター、インバータ、産業用ロボットの製造・販売を行っており、これらの分野で世界トップクラスのシェアを誇ります。特に、ACサーボモーターでは世界シェア1位を維持しています。また、メカトロニクスの分野で革新的な技術を提供し、産業自動化の進展に大きく貢献しています。
三菱電機(Mitsubishi Electric)
三菱電機は、1921年に設立され、東京都千代田区に本社を置く日本の大手総合電機メーカーです。家庭用電器から産業用機器、人工衛星まで幅広い製品を提供しています。特に、FA機器やパワー半導体、エレベーターなどの分野で国内トップシェアを誇ります。サーボモーターにおいても、高性能で信頼性の高い製品を提供し、産業自動化の分野で重要な役割を果たしています。
ファナック(FANUC)
ファナックは、1972年に設立され、山梨県南都留郡忍野村に本社を置く、日本を代表する電機メーカーです。主に工作機械用CNC装置や産業用ロボットの製造・販売を行っており、これらの分野で世界トップクラスのシェアを誇ります。特に、CNC装置では国内シェア7割、世界シェア5割を占め、産業用ロボットでも世界シェア2割を持つなど、工場の自動化設備に特化した製品で高い評価を得ています。
シーメンス(SIEMENES)
シーメンスは、1847年に創業され、ドイツのミュンヘンに本社を置く世界的な総合電機メーカーです。情報通信、交通、防衛、生産設備、家電製品など幅広い分野で事業を展開しています。特に、産業用オートメーションとデジタル化の分野で強みを持ち、サーボモーターやドライブシステムの分野でも高い評価を得ています。シーメンスの製品は、信頼性と高性能で知られ、世界中の工場やインフラストラクチャーで広く使用されています。
ロックウェル・オートメーション(Rockwell Automation)
ロックウェル・オートメーションは、1903年にアメリカで設立された、産業オートメーションと情報技術のリーディングカンパニーです。特にAllen-Bradleyブランドのサーボモーターで知られています。これらのサーボモーターは、高いパフォーマンス、効率、信頼性を提供し、さまざまな産業用途に対応しています。Kinetix®シリーズは、システム出力を増大させ、マシンの寿命を延ばし、柔軟性を高めることで、競争力と収益性を維持するための優れたソリューションを提供します。
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