バレル研磨機6つの種類と比較基準、おすすめのメーカー4社をご紹介
  • 最終更新日:2024年9月26日
バリ取り、R付け、研磨など「ものづくり」の最終工程を担う研磨。大量生産に特化した研磨方法であり、自動車や航空業界など多くの分野で活用・導入が検討されます。

手や研削盤と比較すると大味な研磨方法という点で非常に魅力です。しかし、企業のノウハウに依存しやすく、研磨機や研磨石を熟知していないと、上手く研磨できない可能性があります。

そこで、本記事ではバレル研磨機の種類・特徴を紹介。さらに、加工条件が品質に与える影響や販売メーカーにも触れていきます。

バレル研磨機の特徴

バレル研磨機の特徴と原理

バレル研磨機は、幅広い研磨に対応できる万能機。バレルと呼ばれる容器にワーク、研磨石、コンパウンド(研磨助剤)、水を入れて回転させ、摩擦により研磨します。

研磨石やコンパウンドの組み合わせ次第で、さまざまなワークのバリ取りや表面仕上げが一括で行えます。

ワークや研磨石が入ったバレル容器が回転して全体を研磨するため、機械構造は単純で、複雑な作業手順が必要なく研磨ができます。

バリ取り、R付け 、スケール取り以外にも、手では大変手間がかかる鏡面磨きなどもバレル研磨機で可能です。

6種類のバレル研磨機とメリット・デメリット、それぞれの適切な設置場所

6種類のバレル研磨機とメリット・デメリット、それぞれの適切な設置場所

バレル研磨機には多くの種類があります。


ここでは、各研磨機の特徴や、メリット・デメリットについて触れていきます。

流動式バレル研磨機

流動式バレル研磨機は、バレル槽の底面に取り付けられた回転盤が回転。ワーク・研磨石・コンパウンドが流動し、擦れ合い研磨します。バレル容量は、10リットルから300リットル程度。研磨力は中程度です。

ワークと研磨石の選別に手間がかかるバレル研磨機ですが、各メーカーではさまざまな工夫がされています。製品の投入から研磨、排出、選別、回収までを自動化するタイプなどがあります。

加工時間を大幅に短縮できるため、大量生産・低コスト商品を作るのに向いている研磨機です。

流動式バレル研磨機のメリット

大量のワークを均一にムラなく研磨できます。小型部品なら数千個単位で処理できます。

バレル槽を密閉しない構造なので、製品の仕上がりを確認しながら研磨できます。作業効率を向上させたい場合にも有効です。また、一般の研磨機に比べて極めて静かなので、都市部でも安心して使用できます。

流動式バレル研磨機メリットまとめ

  • 均一性に優れる
  • 大量生産しやすい
  • 仕上がりを確認しながら研磨できる
  • 静音性に優れる

流動式バレル研磨機のデメリット

構造も操作も簡単ですが、研磨槽の回転方向が一定です。研磨条件の調整が難しいことがデメリットとして挙げられます。

流動式バレル研磨機デメリットまとめ

  • 回転方向が一定
  • 条件の調整が困難

流動式バレル研磨機の設置ポイント

バレル槽が密閉しないため、傾斜のあるところに設置するとワークや水が飛び出す恐れがあります。工場内の床面、もしくは屋外の安定した平坦な場所に設置してください。

回転式バレル研磨機

回転式研磨機は、多角形のバレル容器を回転させて、ワークと研磨石が擦れて研磨する方法です。研磨力は低~中程度で、軽いバリ取りや平滑仕上げに向いています。

回転式バレル研磨機のメリット

バレル研磨機の中でもシンプルな構造で、汎用性が高いことが特徴です。金属、プラスチック、陶磁器、貴石、ガラスなど、さまざまなワークに対応できます。

また、低コストで導入できるコストメリットにも注目です。保守管理が極めて容易で、多額の維持費がかかりません。導入後のコストを気にする場合でも安心です。

回転式バレル研磨機メリットまとめ

  • 汎用性が高い
  • さまざまなワークに対応
  • 低コスト
  • 保守がしやすい

回転式バレル研磨機のデメリット

バレル研磨機の中では、研磨力が強い部類ではありません。研磨時間を長くしてしまうと、研磨石の消耗や、ワークの変形の可能性が高まります。強力な研磨を求める際には、別の研磨機を選定したほうがよいでしょう。

回転式バレル研磨機デメリットまとめ

  • 研磨力が弱い
  • 摩耗・消耗しやすい

回転式バレル研磨機の設置ポイント

比較的小型の研磨機ですが、広い場所への設置が望ましいです。安定した平坦な場所に設置するとよいでしょう。

遠心式バレル研磨機

遠心式バレル研磨機は、多くの現場で使われています。バレル容器を自転と公転を組み合わせて、高い圧力と高速流動を与えて研磨する方法です。

回転式や振動式のバレル研磨機に比べて研磨力が強く、短時間で重切削から精密仕上げまでできます。

品質要求が高いワークに向いています。

遠心式バレル研磨機のメリット

研磨時間が短く、生産性の高さが魅力です。研磨力が強いので、重切削から精密仕上げまで幅広い研磨が可能です。また、研磨槽の形状や回転数を変えやすいことも強みです。研磨条件の調整が容易で、さまざまなワークに対応できます。

遠心式バレル研磨機メリットまとめ

  • 研磨時間の短縮
  • 生産性が高い
  • 高研磨力
  • 条件の調整が容易

遠心式バレル研磨機のデメリット

強い研磨力がありますが、研磨時間が長くなると、ワークや研削材が熱をもつようになるため、熱に弱いワークには不向きです。また、バレル容量が小さいので、大型部品や大量の研磨には向きません。機械構造も複雑なため、他の研磨機に比べると保守管理費や維持費がかかります。

遠心式バレル研磨機デメリットまとめ

  • 熱を持ちやすい
  • 大型部品の研磨や大量生産に不向き
  • コストが高い

遠心式バレル研磨機の設置ポイント

バレルが回転するため、傾きのある場所では、バレル軸が摩耗しやすくなります。平坦な場所に設置してください。また、大容量の場合には研磨機自体も大きくなりますから、相応のスペースが必要です。

振動式バレル研磨機

振動式バレル研磨機は、バレル槽に三次元の振動を与えて研磨する方法です。金属、プラスチック、セラミック、ガラス製品の研磨に使われ、小型から大型部品のバリ取りや平滑仕上げに向いています。

振動式バレル研磨機のメリット

研磨力は中程度ですが、モーター振動の調整ができるため、研磨条件を容易に変更できます。条件によっては、キズや打痕がつきにくく、さまざまなワークに対応可能です。さらに、熱の発生が少ないので、熱に弱いワークにも使用できます。

作業性の高さにも注目です。密閉されていないバレル槽は、研磨中にワークの仕上がりを確認できます。

振動式バレル研磨機メリットまとめ

  • 条件の変更が容易
  • さまざまなワークに対応できる
  • 条件次第でキズ、打痕がつきにくい
  • 熱を持ちにくい
  • 仕上がりを確認しながら研磨できる

振動式バレル研磨機のデメリット

細かい振動で研磨するため、加工時間が長くなりやすいです。また、他の研磨機と比較して、バレル槽の形状が特殊で研磨石の種類やサイズに制限があります。操作性もよく、自動化もしやすいのですが、研磨機が高額になってしまいます。

振動式バレル研磨機デメリットまとめ

  • 加工が長時間化しやすい
  • 研磨石の種類やサイズに制限
  • コストが高い

振動式バレル研磨機の設置ポイント

さまざまなサイズが販売されていますが、大容量のものは、設置面積が必要です。バレルが密閉されていないモデルもあるため、平坦な場所に設置してください。

重圧式バレル研磨機

重圧式バレル研磨機とは、バレル槽に圧力をかけて回転させ、ワークを高速研磨する研磨機です。低速でも高い研磨力があり、加工時間を大幅に短縮できる特徴があります。

重圧式バレル研磨機のメリット

高い圧力で、研磨石とワークの接触面積が増えます。研磨効果が高まるため、通常の回転式バレル研磨機に比べて、研磨時間が約半分に短縮できることもあるほどです。また、研磨石の摩耗が均一になり、ワークの表面仕上げの精度が向上します。

重圧式バレル研磨機メリットまとめ

  • 研磨効果が高い
  • 時間短縮が可能
  • ワークの表面仕上げの精度に優れる

重圧式バレル研磨機のデメリット

通常の回転式バレル研磨機に比べて、構造が複雑です。重圧装置や油圧装置などの付属機器も必要で、初期投資が高額になることも。また、バレル槽に重圧をかける都合上、バレル槽のサイズは巨大化できず、大型のワークには適していません。

重圧式バレル研磨機デメリットまとめ

  • 高コスト
  • 大型ワークに向かない

重圧式バレル研磨機の設置ポイント

バレルは複数個あり、軸部のカジリを防止するためにも、平坦な場所に置く必要があります。別途付帯設備を設置するスペースが必要です。

磁気バレル研磨機

磁石が回転盤と回転し、容器内の磁性砥粒が激しく動いて研磨します。回転運動のほかにも磁力で、砥粒が複雑な動きをするので、複雑なワークでも均一に磨くことができます。金属部品のバリ取りや、光沢出しに使用されることが多いです。

磁器バレル研磨機のメリット

通常の研磨力に加えて、磁力による砥粒の研磨が合わさります。複雑なワークでも容易に研磨できることがメリットです。短時間で効率よく、バリ取り、研磨、洗浄ができます。利便性の高さから多くの業界で親しまれている研磨機です。

磁器バレル研磨機メリットまとめ

  • 研磨性に優れる
  • 利便性が高い

磁器バレル研磨機のデメリット

研磨力が弱いため、大きな研磨には向きません。あくまでも、形状変更を起こさないバリ取り、メッキ前の前処理に使用します。

磁器バレル研磨機の設置ポイント

さまざまなサイズがありますが、比較的コンパクトなサイズが多く、置き場にはあまり困りません。しかし、他の研磨機同様に、平坦な場所に設置してください。

4つの比較基準 | バレル研磨機の選び方

4つの比較基準-バレル研磨機の選び方

加工方法が単純だからこそ、職人の域になりがちです。研磨機の加工条件も多岐に渡ります。そのため、研磨機選定の際に確認しておきたいポイントについて触れていきます。

  • 回転速度
  • バレル容量
  • 加工時間
  • 研磨媒体の濃度

回転速度

ワーク、研磨石にかかる遠心力や摩擦力が変わります。ダイレクトに研磨条件に影響します。回転数が高ければ、研磨力は上がりますが、ワークが熱を持ってしまいます。ワークに合った回転数を選べる研磨機を探してください。

バレル容量

バレル容量は、一度に処理できるワークの量に影響し、生産能力に直結します。ただし、あまり大型化すると研磨時間が長くなるので、目的に応じて最適な容量を選ぶ必要があります。

加工時間

生産性を重視するのであれば、加工時間は短いに越したことはありません。メディアの消耗具合も少なくなり、トータル的にコストダウンが狙えます。研磨時間の短さは、バリ、キズ、表面光沢に影響するため、品質基準を満たせるような研磨機の選定が重要です。

研磨媒体の濃度

研磨には媒体の濃度も重要です。ワーク、研磨材の摩擦力や流動性に影響し、総合的な品質に直結します。ワークに合わせた媒体を選びましょう。

バレル研磨機を製造するおすすめのメーカー4社

バレル研磨機を製造するおすすめの製造企業4社比較

バレル研磨機はニッチな市場かもしれませんが、実績のあるメーカーが揃っています。ここでは、国内でも大手と呼ばれるメーカーを紹介します。

  • チップトン(Tipton)
  • イマハシ製作所(IMAHASHI MFG)
  • タニシ(TANISHI)
  • 新東工業(SINTOKOGIO)

チップトン イマハシ製作所 タニシ 新東工業
流動式バレル研磨機
回転式バレル研磨機
遠心式バレル研磨機
振動式バレル研磨機
重圧式バレル研磨機
磁気バレル研磨機

株式会社チップトンの特徴・取り扱い商品

チップトンは、バレル研磨機関連の国内シェアトップのメーカーです。バレル研磨機全機種をラインナップしていて、80年以上の実績とノウハウがあります。研磨機以外にも、研磨石は約1500種類、コンパウンドは約500種類のラインナップがあり、国内だけではなく、海外とも取引を行っています。

イマハシ製作所(IMAHASHI MFG)

イマハシ製作所は、宝石加工機や脆性素材の高精度加工機を製作しているメーカーです。宝石加工で培ってきた技術を応用し、研磨機を開発しています。電磁力を利用した円筒型電磁バレル研磨機のラインナップが豊富です。

タニシ(TANISHI)

創業30年以上の実績を持ち「削る」「磨く」「鍛える」といった表面処理に関わる設備、消耗品を販売しているタニシ。バレル研磨では、専門スタッフがいるほどノウハウが蓄積されていて、改善提案やアドバイスができます。

新東工業(SINTOKOGIO)

新東工業は、表面処理事業、鋳造事業、環境事業など、グループでさまざまな事業のノウハウを蓄積しています。多岐に渡り事業に取り組んでいる企業は、各分野をクロスオーバーしたアイディアが出やすいです。バレル研磨機のラインナップも豊富な特徴があります。

ノウハウを習得すれば、扱いやすく心強いバレル研磨機

バレル槽にワーク・メディア・コンパウンド・水を入れて作動させるだけで、容易に研磨ができるバレル研磨機。自動車、航空、医療、食品分野など、多くの部品の最終工程を担っています。

従来までは、職人のノウハウが必要でしたが、研磨機メーカーの技術も上がり、誰でも扱いやすいモデルが増えています。

目的に応じたバレル研磨機を導入すれば、作業効率や歩留率がアップし、業績アップに繋がる可能性があります。

どの会社に問い合わせるか迷った場合はご相談ください

本当に自分の目的に合った企業なのか?正しいモデルを選べているのか?悩んだ時は一度ご相談ください。

各製品や各企業の違い、あなたの目的に最適な企業を提案させていただきます。