6種類のベルトコンベアとメリット、比較方法とおすすめのメーカー5社
  • 最終更新日:2024年9月13日
工場や倉庫での効率的な物品移動に欠かせない「ベルトコンベア」。しかし、一口にベルトコンベアといっても、用途や目的に応じてさまざまな種類があります。

ここでは、貴社に最適なベルトコンベアを見つけるために、6種類のベルトコンベアの特徴をわかりやすくご紹介します。

6種類のベルトコンベアと特徴

ベルトコンベアの種類と特徴

ベルトコンベアは、工場や倉庫などで物品を効率的に移動させるための機械装置です。

このコンベアには、以下の6種類が挙げられます。

  • 平ベルトコンベア
  • 傾斜ベルトコンベア
  • カーブベルトコンベア
  • スライダーベッドベルトコンベヤ
  • ローラーベッドベルトコンベア
  • モジュラーベルトコンベヤ

平ベルトコンベア

平ベルトコンベアは、表面が平らなベルトを使用したコンベアです。主に水平、またはわずかな傾斜で物品を移動させるために使用されています。

このタイプのコンベアは、軽荷重から中荷重の搬送に適しており、多くの産業で基本的な搬送手段として広く利用されています。

このタイプのコンベアの最大の強みは、そのシンプルさにあります。少ない動力で高速伝動が可能であり、軸間距離が長く取れるため、様々な搬送ニーズに柔軟に対応できます。また、平ベルトは摩擦係数を調整することで、滑りやすさをコントロールでき、搬送物の種類に応じて最適な搬送が可能です。

平ベルトコンベアは主に水平搬送や軽〜中荷重の搬送に適しています。

傾斜ベルトコンベア

傾斜ベルトコンベアは、水平から垂直に近い角度で物品を搬送するために設計されています。これにより、スペースの節約や作業効率の向上が期待できます。特に、工場内での物流を円滑に進めるために、高低差のあるレイアウトに適しています。

このタイプのベルトコンベアの強みは、省スペース化が可能であること、水平から傾斜、傾斜から水平への変角が容易であること、そして高い搬送能力を持っていることです。また、波桟と横桟を取り付けることで、急傾斜搬送〜垂直搬送(傾斜角度90°まで)が可能であり、メンテナンスが容易でランニングコストの削減に貢献します。

傾斜ベルトコンベアは、特に高低差を克服する必要がある場合に選ばれます。

カーブベルトコンベア

カーブベルトコンベアは、搬送ラインで方向転換が必要な場所に使用されるコンベアです。円錐状のベルト外周縁にガイドローラを取り付け、これがガイドレールに沿って走ることで、ベルトの走行をコントロールし、物品をスムーズにカーブさせながら搬送します。

このタイプのコンベアの強みは、最小限のスペースで効率的に搬送ラインを利用できる点です。また、搬送物はカーブ面上を静かにスムーズに流れるため、騒音が少なく、搬送物への負担も軽減されます。さらに、構造がシンプルでメンテナンスが容易であり、長期間にわたって安定した搬送が可能です。

カーブベルトコンベアは、直線的な搬送だけでなく、方向転換が必要な場所で特に有効です。

スライダーベッドベルトコンベヤ

スライダーベッドベルトコンベヤは、ベルトが平らな面上を滑るように設計されており、摩擦を減少させることで、長距離および重い荷物の搬送に適しています。このタイプのコンベヤは、特に水平または低傾斜の長距離輸送に使用されることが多く、倉庫や配送セクションなどで効果的です。

このタイプのコンベヤの主な強みは、その滑らかな搬送面により、摩擦を最小限に抑えることができる点です。これにより、ベルトの摩耗が少なく、メンテナンスコストが低減され、長期間にわたって安定した運用が可能になります。また、不均等な底面を持つ袋や容器など、さまざまな種類の製品を効率的に運ぶことができます。

スライダーベッドベルトコンベヤは、主に長距離の水平輸送や、低傾斜での輸送に適しています。

ローラーベッドベルトコンベア

ローラーベッドベルトコンベアは、ベルトの下にローラーが配置されており、ベルトとローラーの間の摩擦を減らすことで、重い荷物や長距離の搬送に適しています。このタイプのコンベアは、特に大量の材料を扱う場合や、出荷や入荷、バルクマテリアルのハンドリングなどの分野で効果的です。

このタイプのコンベアの主な強みは、ベルトの摩擦と摩耗を減らし、より重い負荷を搬送でき、エネルギー消費の削減を可能にする点です。また、スライダーベッドと比較して摩擦が少ないため、よりスムーズな搬送が可能となります。これにより、搬送効率が向上し、メンテナンスコストが低減されます。

ローラーベッドベルトコンベアは、重量物や長距離輸送に使用されることが多いです。

モジュラーベルトコンベヤ

モジュラーベルトコンベヤは、プラスチック製のモジュールを連結して作られたベルトを使用するコンベヤシステムです。このベルトは、さまざまな形状やサイズのモジュールを組み合わせることで、さまざまな用途に対応可能です。モジュラーベルトは、レンガ積みのようなパターンで組み立てられ、強度を増すとともに、自由な長さや幅での設計が可能です。

このタイプのコンベヤの強みは、メンテナンスの容易さにあります。ベルトが軽量で持ち運びが容易であり、切断や接続、交換が簡単に行えます。また、プラスチック製のため錆びず、水洗いが可能で衛生的です。食品搬送にも適しており、直線とカーブの両方の搬送が1本のベルトで可能です。さらに、搬送物に傷がつきにくく、金属片の混入の心配がありません。

モジュラーベルトコンベヤは、直線とカーブを1本のベルトで搬送できるため、複雑なレイアウトに適しています。他のコンベアシステムでは、直線とカーブの搬送にそれぞれ異なるコンベアが必要ですが、モジュラーベルトコンベヤはこの両方をカバーできます。また、水に沈む種類のモジュラーベルトを使用した冷却ラインなど、特殊な用途にも対応可能です。

ベルトコンベアのメリット・デメリット

ベルトコンベアの強みと弱み

ベルトコンベアには、メリットとデメリットの両方があります。そのため、これらの両方を比較して導入を検討することがおすすめです。

メリット

ベルトコンベアには、主に以下の3つのメリットが挙げられます。

  • 多様なベルト形状
  • 長距離搬送のコスト効率
  • 構造のシンプルさ

多様なベルト形状

液体から固体まで、さまざまな材料を搬送できます

この強みのため、以下のような用途で活用されることが多いです。

  • 異なる種類の食品を搬送する際に、衛生的で清掃が容易なベルトを使用可能
  • 化学薬品や医薬品の搬送には、耐薬品性に優れた特殊な材質のベルトが必要

長距離搬送のコスト効率

長距離にわたる搬送でもコストが増大しにくく、以下のような用途で活用されることが多いです。

  • 鉱石や砂利などの大量の物質を採掘地から処理施設まで搬送する際に、長距離でもコストを抑えることが可能
  • 大規模な倉庫内で商品を入出庫する際に、長い距離を効率的に物品を移動可能

構造のシンプルさ

耐久性があり、設置場所や環境に適応しやすく、以下のような用途で活用されることが多いです。

  • シンプルな構造のベルトコンベアは、メンテナンスが容易であり、空港のような高い信頼性が求められる場所での荷物の搬送に適している
  • 農産物を収穫後、処理場所へ搬送する際に、メンテナンスの手間を減らしながら効率的に作業を行うことが可能

デメリット

一方で、ベルトコンベアには以下のようなデメリットもあるため、注意が必要です。

  • 摩耗とメンテナンス
  • 事故のリスク
  • 厳しい環境への適応性

摩耗とメンテナンス

ベルトの摩耗が進むと、頻繁な交換やメンテナンスが必要になることがあります。

ベルトの摩耗を最小限に抑えるには、耐摩耗性の高い材質のベルトを使用することがおすすめです。

事故のリスク

挟まれや巻き込まれる事故が発生する可能性があります。

事故リスクを最小限に抑えるには、安全カバーや緊急停止スイッチの設置することがおすすめです。

厳しい環境への適応性

特定の環境下(例えば高温や化学物質の存在)での使用には適していない場合があります。

厳しい環境でベルトコンベアを活用する必要がある場合は、環境に適した特殊な材質のベルトを使用することで対策可能です。

5つの選定基準 | ベルトコンベアの選び方

ベルトコンベアの選定方法

ベルトコンベアを選ぶ際は、以下の5つのポイントを抑えることがおすすめです。

  • 搬送距離
  • 搬送速度
  • 電源の電圧
  • 搬送物の重量
  • モーターの出力

搬送距離

搬送距離が変動すると、ベルトコンベアの長さ、モーターの出力、および全体的なシステムの設計が変わります。長い搬送距離は、より強力な駆動システムや、耐久性のあるベルト材質を必要とすることがあります。

搬送距離が長い場合のメリットは、以下のとおりです。

  • 広範囲の施設内での物品移動が可能
  • 物流の効率が向上
  • 自動化システムと組み合わせることで、人手を減らし、作業の効率化が可能

このメリットのため、鉱石や土砂、瓦礫などを採掘地や工事現場から処理施設までの運搬や広い倉庫内で商品を効率的に分類し、長距離を移動させる必要がある場合に適しています。

一方で、搬送距離が短い場合のメリットは、以下のとおりです。

  • 設備投資やメンテナンスコストを抑えられる
  • 限られたスペースに適応しやすく、設置場所の柔軟性が増す
  • 変更や拡張が容易で、異なる生産ラインに迅速に対応可能

このメリットのため、主に精密機器や食品関係などの流れ作業での組み付けや工程間の搬送、製品の品質検査を行う短いラインで、搬送距離が短くても効率的に作業を進めることに適しています。

搬送速度

搬送速度が変動すると、搬送量の計画、ベルトの寿命、およびシステムの運用効率に影響があります。速度が上がると、計算上の搬送量は増加し、ベルト幅を狭くすることができますが、ベルトの屈曲回数が増えるため、理論上ベルトの寿命は短くなります。

搬送速度が速い場合のメリットは、以下のとおりです。

  • 単位時間あたりに搬送できる物品の量が増え、生産性が向上
  • 同じ搬送量をより狭いベルト幅で処理できるため、スペースを有効活用可能
  • 高速搬送により、緊急の注文や高い需要に迅速に対応可能

このメリットのため、大量生産工場や物流センターなどで、製品を迅速に次の工程へと移動させる必要がある場合や、荷物の仕分けや配送前の集積地点への迅速な移動が求められる場所に適しています。

一方で、搬送速度が遅い場合のメリットは、以下のとおりです。

  • ベルトの摩耗が少なくなり、ベルトの寿命が延びる
  • 搬送物がベルト上で安定しやすく、搬送中の事故や故障が減少
  • エネルギー消費を抑え、運用コストの削減が可能

このメリットのため、精密機器の組み立てラインや食品加工業など、慎重な取り扱いが必要な部品の搬送や、作業者が細かい作業を行う際に適しています。

電源の電圧

電圧が変動すると、ベルトコンベアのモーターの性能や効率に影響があります。。電圧が適切でないと、モーターは最適なパフォーマンスを発揮できず、搬送能力や速度が低下する可能性があります。 電源の電圧が高い場合のメリットは、以下のとおりです。

  • モーターはより高いトルクを発生させ、重い荷物を搬送する際に必要な力が得られる
  • モーターの速度制御がより正確になり、搬送速度の変更がスムーズに行える
  • 長距離搬送においても安定したパフォーマンスを維持可能

このメリットのため、鉱業や建設業などで重い物質を搬送する際や、大量の製品を迅速に搬送する必要がある大規模な製造ラインに適しています。

一方で、電源の電圧が低い場合のメリットは、以下のとおりです。

  • 作業環境における安全性を高める
  • エネルギー消費を抑え、運用コストの削減につながる
  • モーターやその他の機械部品への負担を軽減し、長期的な耐久性に寄与

このメリットのため、電子部品の組み立てや食品加工など、繊細な製品を扱う軽工業分野や、安全が重視される環境での使用に適しています。

搬送物の重量

ベルトコンベアにおける搬送物の重量が変わると、必要なモーターのトルクや必要なベルトの素材、ローラーやフレームの強度が変わります

重い搬送物に対応するベルトコンベアのメリットは、以下のとおりです。

  • 重い物品を一度に多く搬送できるため、輸送効率が向上
  • 大量の物品をまとめて移動させることで、単位重量あたりの輸送コストが削減
  • 重量物の搬送は自動化により効率的に行うことができ、人的リソースの削減につながる

このメリットのため、鉱業や建設現場での鉱石や土砂、瓦礫の運搬、バルク材のハンドリングプロセスでの石炭、鉱石、石灰石などのバラ物や重量物の搬送に適しています。

一方で、軽い搬送物に対応するベルトコンベアのメリットは、以下のとおりです。

  • 強力なモーターや頑丈なベルトが不要なため、初期投資が抑えられる
  • ベルトやローラーへの負担が少なく、メンテナンスが容易
  • 軽量物の搬送システムは、変更や拡張が容易で、異なる種類の物品に対応しやすい

このメリットのため、精密機器や食品関係の組み立てラインや検査ライン、トラックやその他のエリアでの資材の積み下ろし用に拡張できる伸縮ベルトコンベアなど、搬送物の量が比較的少ない場合に適しています。

モーターの出力

モーターの出力が変動すると、ベルトコンベアの搬送能力、速度、および搬送する物品の重量に対する対応力が変わります。出力が高いモーターは、重い物品を搬送する際に必要なトルクを提供でき、低出力のモーターは軽量物の搬送に適しています。

モーターの出力が高い場合のメリットは、以下のとおりです。

    重い物品を搬送する能力がある 速度を維持しながらも重い負荷を動かすことが可能 大量の物品や重量物を迅速に搬送可能

このメリットのため、鉱業や建設業などの重工業や、大量の製品を迅速に搬送する必要がある大規模な製造ラインでの使用に適しています。

一方で、モーターの出力が低い場合のメリットは、以下のとおりです。

    消費電力が少なく、運用コストを削減 価格が安く、初期投資を抑えられる 運用中の負荷が少ないため、メンテナンスが容易で、長期的な耐久性に優れる

このメリットのため、電子部品の組み立てや食品加工などの軽工業分野や、安全が重視される環境での使用に適しています。

ベルトコンベアを製造するメーカー5社

ベルトコンベアを製造する企業

ベルトコンベアを製造する主な会社には、以下の5社が挙げられます。

  • 日本コンベヤ
  • クレタス
  • マルヤス機械
  • オークラ輸送機
  • マキテック

日本コンベヤ

日本コンベヤは、各種コンベヤ及び付帯設備の設計、製作、販売、関連工事の施工を行っている会社です。また、太陽光発電所の分譲販売や立体駐車装置の販売なども手掛けています。

同社は、平ベルトコンベア、傾斜ベルトコンベア、カーブベルトコンベアを主に製造しています。

クレタス

クレタス株式会社は、1969年に設立された企業で、工業用ゴム・プラスチック製品の専門商社として、技術コンサルティングサービスと高品質な製品の提供に努めている会社です。

同社は、平ベルトコンベア、傾斜ベルトコンベア、カーブベルトコンベアを主に製造しています。

マルヤス機械

マルヤス機械株式会社は、1938年に設立された搬送省力機械や自動化機器の製造・販売を行う企業です。特定建設業の許可を持ち、搬送システムの設計から製造、販売、関連工事の施工までを手掛けています。

同社は、平ベルトコンベア、カーブベルトコンベアを主に製造しています。

オークラ輸送機

オークラ輸送機株式会社は、1927年に創業し、1960年に設立された企業です。本社は兵庫県加古川市にあり、コンベヤ機器、パレタイジング設備、仕分け設備、ピッキング設備など、マテハン機器の製造・販売を行っています。また、マテハンシステムのコンサルティングから設計、製造、施工、アフターサービスまでトータルでエンジニアリングサービスを提供しています。

同社は、平ベルトコンベア、傾斜ベルトコンベア、カーブベルトコンベア、モジュラーベルトコンベアを主に製造しています。

マキテック

マキテック株式会社は、1946年に創業し、1974年に設立された企業です。搬送システムや流通物流システム、再生可能エネルギーシステム、建設事業などを手掛けています。

同社は、平ベルトコンベア、傾斜ベルトコンベア、カーブベルトコンベアを主に製造しています。