CNC旋盤

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CNC旋盤は、車両のエンジンやトランスミッション、医療機器や航空機部品などを製造する上で欠かせない存在ですが、具体的にはどのような機械なのでしょうか。

様々なタイプやスペックが存在するため、適切な選択をしないと思い描いた加工ができなかったり、予算の価格をオーバーしてしまうリスクがあります。
また、加工する素材や目的の用途に合わせた最適な機械を選ばなければ、効率的な生産が難しくなったり事故に繋がったりするので、注意が必要です。

貴社が加工機に置いて最適な投資ができるよう、この記事ではCNC旋盤とは何か、CNC旋盤の種類、メリットと注意点、適切な選び方や主要なメーカーを詳しくご紹介します。

目次

CNC旋盤の概要と類似する機械との違い

CNC旋盤とは、数値制御で動く旋盤の一つで、航空機部品や自動車部品、電子部品といった精密部品の製造を自動的に行えます。

CNCは「Computer Numerical Control」の略で、内蔵されているコンピューターで設定したプログラムに従う形で動作します。

  • CNC旋盤はプログラムをもとに高精度の加工が可能
  • 複数のツールを自動で切り替えることで、一連の加工工程を連続して効率良く進行できる
  • 設定されたプログラムに従って加工が進みます。同一の部品を繰り返し同じ品質で加工可能
  • 新しい部品の設計や仕様変更があっても、プログラムを更新するだけで迅速に対応可能

特にエンジン部品、スマホやPCのコネクタやハウジングなどの電子部品、ベアリングやギアなど一貫生産ラインや大量生産の現場では、その高い再現性と精度が求められるため、CNC旋盤の存在は非常に価値があります。

CNC旋盤は旋盤加工を自動ツールチェンジャーやライブツーリングなど、加工を自動化するにあたって多彩な機能を持つ製造機械ですが、他にも類似した機械が数多く存在します。

よく比較される機械は以下の通りです。

CNC旋盤とNC旋盤の違い

「CNC旋盤」と「NC旋盤」、これらの旋盤は、名前が似ているため混同されやすいですが、2つ違いがあります。

  • 旋盤の数値制御の方法
  • 制御プログラムの保存方法

数値制御の方法

CNC旋盤は、コンピュータを使って制御される旋盤です。このコンピュータは、CNC旋盤の操作全般を監視・制御します。

一方で、NC旋盤はカードやテープなどの物理的な媒体にプログラムを入力してNC旋盤の操作を行います

操作や監視は人の目や手を使うため、プログラムの動きに付随して手動で微調整をかけながら作業をすることがあります。

CNC旋盤の
数値制御の特徴
NC旋盤の
数値制御の特徴
数値制御の方法 キーボードやタッチスクリーンを通じて、
マシンに直接データを入力可能
専用のプログラムによって数値制御
プログラム
編集方法
専用のソフトウェアを活用 パンチカードやテープ
プログラムの
柔軟性・可変性
手元ですぐにプログラム内容を変更可能 専門スタッフや業者に依頼、一週間程度必要

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制御プログラムの保存方法

CNC旋盤とNC旋盤の制御プログラムの保存方法をデータとして保存するか、カードやテープなど物理的な媒体に保存するかという大きな違いがあります。

CNC旋盤の
制御プログラム保存方法
NC旋盤の
制御プログラム保存方法
保存方法 内蔵コンピュータや外部PCに保存 カードやテープなど物理的な媒体に保存
読み込み方法 USBメモリやネットワークを通じた転送、
専用ソフトでの読み込み
機械が穴の空いたカードやテープを解読
プログラム管理 ダメージ・紛失リスクが低い
バックアップが容易
物理的なダメージ・紛失リスクが高い
バックアップ管理が手間

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NC旋盤が今も使われている理由は?

NC旋盤と比較するとCNC旋盤は様々な点で優れていますが、導入コストの低さと手動操作での微調整が理由でNC旋盤が選択されることがあります。

CNC旋盤 NC旋盤
価格 高いと1,000万円以上 高くても300万円程度
制御 プログラミングを学ぶ必要があるが
慣れると修正・改変は速い
物理的に穴を開ける必要があり
変更・修正が手間
操作の
微調整
プログラム通りにしか動かず
微調整が難しい
手動操作が多く、
機械の動作を手元で調整できる

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プログラムの可変性は落ちるものの、価格と操作の微調整という面でNC旋盤の需要がまだ根強いです。

大きさから2種類あるCNC旋盤。卓上・小型CNC旋盤の特徴

一般的なCNC旋盤はサイズが大きく、長さ3メートル×幅2メートルの床面積が必要になることもあります。

一方、卓上・小型CNC旋盤は小型化されていて、長さ1メートル×幅0.5メートル程度、もしくはそれより小さくなるケースもあります。

機械の大きさが異なることから、以下のような違いがあります。

一般的なCNC旋盤 卓上・小型CNC旋盤
得意な加工サイズ 大きく複雑な部品の加工
航空機のタービンブレードや
自動車のホイールハブなど
小型でシンプルな部品の加工
RCホビー用部品、時計の部品など
加工精度 数ミクロン以下の精度での加工が可能 数十ミクロン程度の精度での加工が可能
プログラム管理 ダメージ・紛失リスクが低い
バックアップが容易
物理的なダメージ・紛失リスクが高い
バックアップ管理が手間
価格 高いと1,000万円以上になることも 高くても100万円程度の投資

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CNC旋盤とマシニングセンタの違いは何?

CNC旋盤と同じくマシニングセンタも精密な工作が可能で、加工の自動化や工具の交換を自動で行います。一方、この2つの決定的な違いは主に「得意な部品加工の種類」と「工具の動き方」の2点にあります。

CNC旋盤は円柱型の部品製造が強みでボルトやナット、軸受などの部品製造が可能です。

一方、マシニングセンタは人体に使用されるインプラントなどの高精度な部品や自動車車体のフレーム部品、スマートフォンやカメラ、計測器具などの精密な筐体部品の製造が得意です。

CNC旋盤 マシニングセンタ
加工方法 加工の対象物を回転させて加工 工具を回転させて対象物を加工
加工精度 1本の主軸に1本の工具を装着 自動工具交換装置で複数の工具を使い分ける
トレーニング期間 数ヶ月程度の研修で操作可能 半年以上の研修が必要
価格 高いと1,000万円前後 高いと数千万円になることがある
加工例 高精度の円柱形状の部品製造に特化
航空浮きの翼や胴体の部品など
3Dの複雑な加工が可能
自動車のエンジンや人工関節など

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導入するメリットと注意点

CNC旋盤を導入することで、円柱型の部品を精度高く量産で切るメリットがありますが、導入する上での注意点もあります。

これらを比較して、貴社でどのようなCNC旋盤を導入すべきか検討しましょう。

CNC旋盤を導入する3つのメリット

CNC旋盤は、高精度なプログラム制御や多軸自動制御機能など手動では叶えられなかった動作を実現したことにより、以下のようなメリットを製造業にもたらしています。

  • 高精度かつ効率的な加工ができること
  • プログラムを簡単に変更できること
  • 同じ部品の大量生産が可能であること

高精度かつ効率的な加工ができること

CNC旋盤なら高精度かつ効率的な加工ができることです。

  • 一度プログラムが設定されれば、指示通りに部品を再現可能
  • 複雑なデザインや微細な部品も難なく加工可能
  • 自動運転のためヒューマンエラーの影響を受けづらく、安定した品質の部品製造が可能

プログラムを簡単に変更できること

CNC旋盤ならプログラムの変更や調整が非常に簡単で、プログラミングができれば十分程度で改変できます。

  • 従来は1週間ほどかけて更新していたプログラムを数時間程度で改変可能
  • 製造業者はCNC旋盤の柔軟性を利用して市場変動や顧客要求にすばやく対応可能
  • プログラム更新が簡単なので新しい設計やプロトタイプ製作が数時間で終わる
  • プログラム変更時のエラーチェックが可能、エラーのリスクを1%以下程度に低減

これらの要点を考慮すると、CNC旋盤のプログラム変更の容易さは、市場の変動に迅速に適応し、効率的な生産を実現する上での強力なツールです。

同じ部品の大量生産が可能であること

CNC旋盤は、一度のプログラム設定で同じ部品を繰り返し高精度で大量生産が可能で、例えば中規模のボルトであれば一時間あたり約500-1,000個の製造が可能です。

NC旋盤で同じ条件のものを製造した場合は一時間あたり約300-600個、手動の加工機であれば一時間あたり約50~100個程度なので、CNC旋盤の効率の高さが伺えます。

  • 手動操作の旋盤と比べて大量生産ラインの停止時間を75%程度削減
  • 必要に応じてプログラミング修正による設定変更が可能
  • 高精度な加工と一貫性により、品質の確認と管理が容易

他の旋盤加工機より効率よく、同じ部品を大量生産するのであればCNC旋盤がおすすめです。

ここまでCNC旋盤を導入する3つのメリットをご紹介しました。次の章でご紹介する注意点を踏まえて、どのようなCNC旋盤を導入すべきか検討しましょう。

CNC旋盤を導入する際の3つの注意点

CNC旋盤はその高精度や効率性から多くの製造業者にとって魅力的な選択肢となっています。

しかし、導入を検討する際にはいくつかの重要な点を考慮する必要があります。

  • 高い初期投資が必要となること
  • 特定のプログラミング知識が求められること
  • 苦手な素材や加工形状が存在すること

初期投資が高いこと

CNC旋盤の導入には、数千万円程度、CNC旋盤の種類によっては億単位の導入コストがかかることがあります。中型の産業用CNC旋盤の初期費用のレンジを見てみると、以下のようになります。

一方で、NC旋盤を導入する場合は総額がおよそ半分に、小型CNC旋盤になると1/4以下になるケースもあるので、資金状況との相談は必須です。

  • CNC旋盤本体: 750万円~3,750万円
  • 関連ツール・装備: 75万円~300万円
  • ソフトウェア: 30万円~225万円
  • インストール費用: 75万円~300万円
  • トレーニング費用: 15万円~75万円

※あくまでも参考価格です

プログラミング知識が必要であること

CNC旋盤はNC旋盤と比べて1.7倍程度の生産性の高さで高精度な部品加工ができますが、これを実現するにはG-codeというプログラミング知識が必要です。

このプログラムを使えば機械の動きや工具の選択、速度などを制御し、部品の仕様に応じてカスタマイズが可能です。

プログラミングという新たな知識が必要であるものの、G-codeは非常に直感的な操作が可能なので覚えやすいと言われています。

以下がG-codeの概要です。

  • G-codeはCNCマシンの標準言語で、命令セットがシンプルで覚えやすい
    (例:G01は直線移動、G02は時計回りの円弧移動、G03は反時計回りの円弧移動)
  • G-codeの習得には、合計で数十から150時間以上の学習が必要

苦手な素材・加工形状がある

CNC旋盤は多岐にわたる材料や形状の部品を加工できますが、以下で紹介している超硬質の材料や超大型の部品はCNC旋盤の加工には不向きです。

一方で、CNC旋盤が得意とする鉄、アルミニウムや真鍮(黄銅)などの金属、ポリカーボネートなどのプラスチックなどの材料や部品に関しては、高速で精密かつ正確な加工が可能です。

用途や要件に応じて、適切な旋盤の選択が必要です。

  • 超硬質の材料の例
  • 超大型の部品の例
  • タングステンカーバイド (WC)
  • シリコンカーバイド (SiC)
  • ボロンカーバイド (B4C)
  • ダイヤモンド
  • 窒化ケイ素 (Si3N4)
  • 船のプロペラ
  • 風力発電機のブレード
  • 大型の油圧プレス機のフレーム
  • 鉄道の車両フレームやボディ
  • 大型の橋の部材や建設機械のアーム

8種類のCNC旋盤

CNC旋盤といってもその形状や機能は多種多様です。大きく分けると以下の8種類があり、特定の加工ニーズや要求される精度に応じて開発・使用されています。

ベッド型旋盤

ベッド型旋盤は、CNC旋盤の中でも手動操作の旋盤と同じ形態を持つもので、ベッド部が水平に展開されています。

このデザインは、昔ながらの旋盤の形を継承しており、操作性やアクセス性に優れています。

  • 相場は1,000万円から3,000万円程度で、初期投資が他の種類より半分前後、もしくはそれより安い価格で購入できる
  • メンテナンス部品は他の種類より1/3程度
  • ボタンの数は10個程度と少なく、加工範囲が狭いため操作が容易

  • ベッド型旋盤が得意な加工・素材
  • ベッド型旋盤が苦手な加工・素材
  • 得意な素材:鉄、アルミニウム、ポリエチレンなどのプラスチック
  • 得意な加工形状:シリンダー錠やドリルロッド、ボルト、ナットなどのシンプルな形状
  • 加工例:工業用のパイプの端面加工や外径の仕上げ、一般的なボルトやナットの加工、小さなカスタム工具の製作など
  • 苦手な素材:タングステンカーバイドなど超硬質な素材やソフトゴムなどの柔らかい素材
  • 苦手な加工形状:複雑な3D形状
  • 不向きな加工の例:航空機エンジンや発電機のタービンブレードなど

一見、多軸加工機や櫛刃型旋盤など高性能な旋盤加工機が高機能に見えますが、実は高機能であればその分だけ加工用途が狭まるデメリットがあります。

ベッド型旋盤は大量生産や基本的な旋盤加工に機能が絞られているからこそ汎用性が高く、多くの工場や工房で愛用されています。

タレット型旋盤

タレット型旋盤は、複数の加工を一度に行うことに特化した旋盤の一種で、複数のツールを装備できる回転タレットを持っていることが特徴です。

ベッド型旋盤では一度のプログラムで一つの加工しかできませんが、タレット型旋盤であれば一度のプログラムで何種類もの加工を自動で行えます。

ツールの交換を頻繁に行うことなく、連続して異なる操作が迅速に実行できます。

  • タレット型旋盤が得意な加工・素材
  • タレット型旋盤が苦手な加工・素材
  • 得意な素材:ステンレス鋼、アルミニウム、アクリルやその他の一部のプラスチックなど
  • 得意な加工形状:円筒形状や複数の特徴を持つ形状、エンジンのシャフトや建築用のボルトなど
  • 加工例:自動車のエンジン部品やサスペンション部品、電気部品の大量生産など
  • 苦手な素材:タングステンカーバイド等の超硬質な素材やソフトゴム等の柔らかい素材
  • 苦手な加工:複雑な3D形状
  • 不向きな加工の例:タービンブレードや人工関節など

櫛刃型旋盤

櫛刃型旋盤は、櫛のような形状を持つ一列に配置された複数の切削ツールを特徴とするCNC旋盤の一種です。

この独特の配置により、加工する部品や素材を固定したまま、複数の操作を連続的に行うことが可能です。

工具の交換は手動で数分かかるところ、櫛刃型旋盤はその時間が不要です。

そのためツールの交換の時間を節約し、生産効率を大幅に向上させることが可能です。

また他の旋盤よりも10倍近くのスピードで回転するため、高速加工を実現しています。

  • 櫛刃型旋盤が得意な素材・加工
  • 櫛刃型旋盤が苦手な素材・加工
  • 得意な素材:アルミニウムや真鍮などの金属やポリエチレンなどのプラスチック
  • 得意な加工形状:時計の部品や電子部品、医療機器の部品など高精度な加工が必要なもの
  • 加工例:高精度な端子やコネクタ、微細なギアやネジの製造など
  • 苦手な素材:インコネルなどの合金や航空機の主翼や胴体部分などの大型素材
  • 苦手な加工形状:複雑な3D形状
  • 不向きな加工の例:風力発電機の羽根などの大型素材、人工関節など

複合旋盤

複合旋盤は、旋盤加工とフライス加工の両方の機能を持つ革新的なCNC旋盤です。

この統合された機能性により、ひとつのセットアップで、複数の加工操作を一度に行うことが可能です。

加工する角度を自由自在に調整できるため、部品の取り扱いや機械へのセットアップの回数が大幅に減少し、生産効率が大幅に向上します。

  • 複合旋盤が得意な素材・加工
  • 複合旋盤が苦手な素材・加工
  • 得意な素材:ステンレス鋼など耐食性や強度が高いもの、ポリカーボネートなど耐衝撃性や透明性が高いプラスチック
  • 得意な加工形状:人工骨や関節などの複雑な3D形状のものやカーボンファイバーと金属を組み合わせた自動車の部品など
  • 加工例:航空機エンジンのタービンブレードやギアやギアボックスの部品やベアリングなどの機械部品など
  • 苦手な素材:超硬合金などの非常に硬質な材料や大型の鋼板や大径のバーなどの大型素材
  • 苦手な加工:大型素材の加工
  • 不向きな加工の例:大型の船舶や建築構造部材など

縦型旋盤

縦型旋盤は、大型の部品の加工に特化しており、数百キログラムから数トンの重量の部品でも安定を保ちながら効率的に加工できます

この旋盤の最大の特徴は、加工する対象の素材が垂直軸上での回転を行うことです。

部品の自重が直接台座に掛かるため、加工中の振動や部品の変形が大幅に減少し、加工精度が大幅に上がります。

  • 縦型旋盤が得意な素材・加工
  • 縦型旋盤が苦手な素材・加工
  • 得意な素材:鋳鉄、鋼、タングステンのような硬質の材料
  • 得意な加工形状:タービンのブレードディスクなどの大きな円盤形状、重機の大きな歯車など厚みのある部品
  • 加工例:タービンディスク、ブレードなどの航空宇宙部品や車輪、ブレーキディスクなどの鉄道部品
  • 苦手な素材:フォーム (スチロールフォーム)やポリエチレンフォームなど非常に軽い材料、ラバーなどの柔らかい材料
  • 苦手な加工:細長い部品の加工
  • 不向きな加工の例:医療機器の針やカテーテル、電子部品のリード線などの細長い部品

多軸旋盤

多軸旋盤は、高度な技術の進化を反映したCNC旋盤の一種で、複数の加工軸を有しています。

そのため、部品を再セットアップすることなく一度のプログラムで10種類以上の加工が可能です。

例えばCNC旋盤であれば一度のプログラムで5種類程度の加工しかできないため、効率的に6種類以上の加工を実施したいときに多軸旋盤は活躍します。

  • 多軸旋盤が得意な素材・加工
  • 多軸旋盤が苦手な素材・加工
  • 得意な素材:アルミニウム、ステンレス鋼、ポリエチレンなどのプラスチック素材
  • 得意な加工形状:タービンブレードや航空機のエンジン内部の複雑な部品やバルブやピストンなど、異なる加工手法を組み合わせて製造される部品
  • 加工例:航空機のエンジン部品やフレーム、医療機器のインプラントや外科用器具など
  • 苦手な素材:ダイヤモンドなどの超硬質素材や、ゴムやシリコンなど非常に柔らかい素材
  • 苦手な加工:細長い部品の加工
  • 不向きな加工の例:医療機器の針やカテーテル、電子部品のリード線などの細長い部品

多主軸旋盤

多主軸旋盤は、大量生産に最適化された高機能なCNC旋盤の一種です。その名の通り、この旋盤は複数の主軸を持ち、一度のセットアップ加工を同時に多数の部品を加工することが可能です。

一度にひとつの部品しか加工できないベッド型旋盤とは違い、例えば6軸の多主軸旋盤であれば6つの加工を同時に処理可能です。そのため大量の部品を短時間で製造することができ、生産効率の大幅な向上が期待できます。

  • 多主軸旋盤が得意な素材・加工
  • 多主軸旋盤が苦手な素材・加工
  • 得意な素材:真鍮、アルミニウムなどの金属やナイロンなどのプラスチック素材
  • 得意な加工形状:ボルト、ナット、ピンなどシンプルな形状のものやエンジンのボルトやネジなど繰り返し生産される部品
  • 加工例:自動車部品の大量生産、建設機械のボルトやナットの製造など
  • 苦手な素材:タングステンやセラミックスなどの超硬質素材やゴムやゲルなど非常に柔らかい素材
  • 苦手な加工:複雑な3D素材
  • 不向きな加工の例:タービンブレードや生体医療インプラントなど

9つの比較ポイント | CNC旋盤の選び方

CNC旋盤を選ぶ際には、多くの要因を考慮する必要があります。加工の精度や速度はもちろん、機械の耐久性や拡張性、さらには使用時の安全性やコスト面など、多岐にわたるポイントが選択の鍵となります。

特に注視すべき点は以下の9つです。

主軸数

CNC旋盤の選択時の重要なポイントとして、主軸の数があります。以下で紹介している主軸の数によって、加工の効率や適用される用途が大きく異なります。

特徴 メリット デメリット C対応機械の例
シングル主軸
  • 最もメジャーなタイプ
  • 初期投資が低い
  • 操作やメンテナンスが簡単
  • 大量生産には不向き
  • ベッド型旋盤
  • タレット型旋盤
ダブル主軸
  • 主軸とサブスピンドルの両方で同時に加工が可能
  • 一つの部品に対して
    複数加工が効率的
  • 操作が複雑で
    専門的な知識が必要
  • 複合旋盤
多主軸
  • 3つ以上の主軸を持つ
  • 最大8軸、9軸の旋盤も存在
  • 大量生産を目的とした設計を持つ
  • 同じ部品を大量に
    生産・加工できる
  • コストが高い
  • 専門知識が必要
  • 多主軸旋盤
多軸
  • 3つ以上の軸に沿った
    部品移動が可能
  • 複雑な形状やプロファイルの
    部品加工が可能
  • コストが高く、設定が複雑で
    メンテナンスが難しい
  • 多軸旋盤

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移動方式

CNC旋盤の特性を理解するためには、被削材の移動方式の分類を知ることが重要です。

移動方式とは、旋盤の動きの方向や特性を示すもので、これによって機械がどのような加工を得意とするのか、どのような部品に適しているのかが決まります。

一般的には以下で紹介している5つの移動方式があります。

特徴 メリット デメリット 対応機械の例
X-Y移動方式
  • X軸とY軸の2方向に移動が可能
  • 操作や設定が容易
  • 初心者にも扱いやすい
  • 3次元的な加工には不向き
  • ベッド型旋盤
  • タレット型旋盤
X-Y-Z移動方式
  • X軸、Y軸、Z軸の3方向に移動が可能
  • 3次元的な加工や
    深い穴の加工が可能
  • 操作が少し複雑になることがある
  • 複合旋盤
  • 多軸旋盤
縦型移動方式
  • ベッドが縦型で、主軸が上下に動く
  • 大きな径や重い部品の加工に対応
  • 設備が大きい
  • 縦型旋盤
多主軸移動方式
  • 複数の主軸が独立して動く
  • 同時に複数の部品を効率的に加工可能
  • 初期投資やメンテナンスコストが高い
  • 多主軸旋盤

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旋盤の構造

CNC旋盤の性能や用途は、その構造によって大きく変わります。旋盤の構造は、部品の形状、大きさ、加工の複雑さなど、多岐にわたる要因に基づいて選ばれます。

特徴 メリット デメリット 対応機械の例
ベッド型ベッド構造
  • 定番の構造、ベッドが水平に配置
  • 初心者にも扱いやすい
  • 高速加工や高精度加工には不向き
  • ベッド型旋盤
縦型構造
  • ベッドが垂直で主軸が上下に動く
  • 大きな部品や重い部品の
    安定した加工が可能
  • 大型の設備が必要となるため
    設置スペースが広く必要
  • 縦型旋盤
櫛刃型構造
  • 刃物が一列に配置されている
  • 高速な切り替えが可能
  • 使用できる刃物の数に制限がある
  • 櫛刃型旋盤
タレット型構造
  • 刃物が円状に配置されている
  • 複数の刃物を使っての連続的な加工に最適
  • ガングタイプに比べて刃物の切り替え時間が長くなる
  • タレット型旋盤

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刃物台

CNC旋盤の刃物台は、工具を保持しつつ、必要に応じて工具を切り替える上で非常に重要な部分です。

以下では、その主な分類と特徴や製造できる製品の例を示しています。

特徴 メリット デメリット 適した加工部品の例 対応機械の例
タレット型
刃物台
  • 刃物を円状に配置し
    主軸の回転で工具を切り替える
  • 連続的な複数工程加工や複雑な形状の部品加工に最適
  • 工具の切り替え時間が長くなる
  • シャフト部品
  • ボルトやナットなどの標準部品
  • タレット型旋盤
  • 複合旋盤
  • 多軸旋盤
櫛刃型
刃物台
  • 工具を一列に配置
  • 高速な工具の切り替えが可能
  • 使用できる工具の数に制限がある
  • 精密な歯車やピニオン
  • 微小な径の部品やピン
  • ガングタイプ 旋盤
キャプトタイプ
刃物台
  • キャプト工具を迅速に
    取り付け・取り外し可能
  • 数百kg程度の大型部品に対応可能
  • 高速な工具の交換や
    複数工程の加工に対応
  • 特定のキャプト工具の使用が必要
  • 重機や船舶の部品
  • 大型のシャフトや部品
  • 複合旋盤

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高速加工能力

高速加工能力を持つCNC旋盤は、一般的な旋盤より数10倍近く速く回転するため、生産効率の向上や短い納期の実現が可能です。

しかし、高速加工能力を持つ旋盤が優れているとは一概に言えません。

以下でご紹介するそれぞれのメリットを比較した上で、最小限のコストで必要なメリットを得られる加工機を選ぶことが重要です。

特徴 メリット デメリット 対応機械の例
高速加工のCNC旋盤
  • 大量生産が求められる部品の製造に最適
  • 大量の部品を短時間で生産可能
  • 自動車や家電製品などの
    大量生産部品の製造に強い
  • 機械の摩耗が早まる
  • 冷却装置のメンテナンスやコストがかかる
  • 自動車部品
  • 家電製品部品の生産ライン
低速加工のCNC旋盤
  • 精密な部品製造や
    カスタム部品の生産に対応
  • 機械の耐久性が向上
  • 長期間の安定した使用が可能
  • 冷却装置のメンテナンスやコストが削減可能
  • 生産効率が低下する
  • 大量生産には向かない
  • 航空機部品
  • 医療機器部品
  • 特注の高精度部品

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堅牢性・耐久性

堅牢性と耐久性が高いCNC旋盤を選択すると10年近くも使い続けられる一方、堅牢性が低い旋盤加工を選定するとその年数が半分、もしくはそれ以下になってしまう可能性があります。

一方で、目先の導入コストが上がるため、現時点で確保できる予算とのバランスを取ることが重要です。

特徴 メリット デメリット 対応機械の例
堅牢性と耐久性の高いCNC旋盤
  • 厚みのある鋳鉄製のフレームや本体
  • 高い堅牢性と耐久性
  • 長寿命
  • 連続的な長時間の運転に最適
  • 高精度の部品加工が可能
  • 日次メンテナンスが不要
  • 修理の必要が少ない
  • 初期投資が高い
  • 重量が重く、移動が困難
  • 大規模な製造工場
  • 航空宇宙部品の生産ライン
堅牢性と耐久性の低いCNC旋盤
  • 軽量化やコンパクト化を追求したモデルが多い
  • 初期コストが低い
  • 小規模な場所や移動に対応可能
  • 頻繁なメンテナンスや部品交換が必要
  • 大量生産には向かない
  • 寿命が短くなりやすい
  • 教育機関
  • プロトタイピング
  • 趣味・小規模生産

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最終的には、使用する環境や予算、期待される生産量や品質などの要因を総合的に考慮し、堅牢性と耐久性に適したCNC旋盤を選択することが求められます。

自動ツールチェンジ機能の有無

CNC旋盤の自動ツールチェンジ機能は、加工の生産効率や柔軟性(加工できる素材の種類や重さ・大きさの幅)に大きな影響を与える要素です。

特徴 メリット デメリット 対応機械の例
自動ツールチェンジ機能付き
  • 自動で複数の加工ツールの交換を数秒でできる
  • ツールの交換時間が1/100程度に短縮される
  • 連続的な長時間の運転が可能
  • 一つの部品に対して連続的な複数の加工が可能
  • 初期投資が高い
  • 自動車のエンジン部品製造
  • 人工関節や手術用の精密器具製造
  • プリント基板の部品の部品製造
自動ツールチェンジ機能なし
  • ツールの交換を手動で行う
  • 初期のコストを抑えられる
  • ツールの手動交換が必要
  • 生産効率が低下する可能性がある
  • カスタムボルトや歯車などの部品製造
  • CNC旋盤の導入を初めて考える企業や教育機関

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安全機能の充実

どんなCNC旋盤にも最低限の安全機能がついていますが、その充実度は機械のグレードによります。

最低限の安全機能だと緊急停止ボタンなど基本的な機能しかありませんが、安全機能が充実すると破損ツール検出機能やドアインターロックなどの機能が付きます。

予算に余裕がある場合は、安全機能が充実したCNC旋盤を選択して作業効率と安全性を確保することがおすすめです。

特徴 メリット デメリット 対応機械の例
安全機能が充実したCNC旋盤
  • 破損ツール検出、ドアインターロックなど高度な安全システムやセンサーを搭載
  • 作業者を予期せぬ事態から守りやすい
  • 設備の寿命を延ばす
  • ツールの破損検出機能など製品品質を守る機能がつく
  • 初期投資が高い
  • 初期設定やエラーメッセージの増加で操作が複雑になる可能性がある
  • 大量生産を行う工場
  • 技術者の教育やトレーニング施設
安全機能が少ないCNC旋盤
  • 緊急停止ボタンなど基本的な安全機能のみを備えている
  • 購入コストが低い
  • 作業者の安全リスクが高い
  • 機械へのダメージのリスクが増加
  • 小ロットの生産を行う工場
  • プロトタイプ製造など短期の特定プロジェクト
  • 専門家のみが操作する環境

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メンテナンスの容易性

CNC旋盤のメンテナンスの容易性は、長期的な生産効率や総所有コストに大きな影響を与えます。

特徴 メリット デメリット 対応機械の例
メンテナンスが容易なCNC旋盤
  • メンテナンスの手順がわかりやすい
  • 診断ツールが組み込まれている
  • 部品が簡単に外せる
  • 機械の停止時間が短縮可能
  • 機械寿命が伸びる
  • メンテナンス費用が低減する
  • 初期投資が高い
  • 自動車部品製造の大手企業の生産ライン
  • 大量生産が要求されるエレクトロニクス部品の製造
  • 24時間運転の加工場
メンテナンスが複雑なCNC旋盤
  • 構造が複雑でメンテナンスに専門的な知識が必要
  • 部品の取り寄せに時間がかかる
  • 高精度や高速な加工が可能
  • 長時間の運転が可能
  • メンテナンスに必要な工数や時間が多い
  • メンテナンスの難易度が高いことがある
  • 航空宇宙用のジェットエンジン部品製造
  • 医療ロボットの部品製造
  • タングステンカーバイドを使ったドリルやカッターの製造

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以上がCNC旋盤を比較する上で必ず比較すべきポイントです。この9つの点を踏まえて、CNC旋盤を製造するおすすめのメーカーをご紹介します。

自社の用途に最適なCNC旋盤を製造するメーカーをお探しの方は、ぜひこのままご覧ください。

CNC旋盤を製造するメーカー

CNC旋盤は、精密な加工を行うための不可欠な機械として、多くの製造業者に利用されています。その背景には、高い技術と品質を持つメーカーたちの存在があります。今回は、世界中で信頼と実績を持つCNC旋盤メーカーを紹介します。

多くのメーカーは一通りの種類のCNC旋盤を製造していますが、それぞれ得意な機械や付加価値が異なります。貴社にとって優先順位の高い項目に強みがあるメーカーへ連絡してみましょう。

※JET-Globalの問い合わせフォームに遷移します。
一部の会社とは正式な提携がない場合がありますが、皆さまに最適なご案内ができるよう努めています。

オークマ / Okuma

会社名 オークマ / Okuma
設立年 1918年
本社 愛知県丹羽郡大口町下小口5-25-1
概要 総合工作機械メーカー

オークマは、自社開発NC「OSP」や熱変位抑制の「サーモフレンドリーコンセプト」、衝突回避の「アンチクラッシュシステム」など、機電一体の技術に強みを持つ総合工作機械メーカーです。

代表機種のLB3000 EX IIIは、多様な加工に対応するCNC旋盤として展開されています。熱安定性を重視した設計と知能化技術により、長時間の連続加工でも寸法の安定性を維持できる点が評価されています。

導入事例としてシンセメック𠮷田鐵工所タマテックキンレイなどがあり、自動化や工程集約の分野で成果を上げています。

ヤマザキマザック / Yamazaki Mazak

会社名 ヤマザキマザック / Yamazaki Mazak
設立年 1919年
本社 愛知県丹羽郡大口町竹田1-131
概要 総合工作機械メーカー

ヤマザキマザックは、対話式CNC「MAZATROL SmoothAi」を核に、プログラミングのしやすさと自動化との高い親和性を備えています。

主力製品のQUICK TURN シリーズは、幅広い部品加工に対応可能なCNC旋盤です。SmoothAiによる段取り・加工最適化と自動化提案力が魅力です。

導入事例としてタチ製作所では、多品種少量生産の自動化・無人化の取り組みで成果を挙げています。

ディーエムジー モリ / DMG MORI

会社名 ディーエムジー モリ / DMG MORI
設立年 1948年
本社 東京都江東区潮見2-3-23
概要 総合工作機械メーカー

ディーエムジー モリは、高剛性ベッドと熱安定構造、直感的な操作が可能な操作盤「CELOS(MAPPS V)」を特長とし、自動化対応の幅広さに強みを持っています。

代表機種にはNLX 2500 | 700 2nd GenerationNLX 2000があり、ターニングセンタの分野で幅広く利用されています。CELOSとMAPPS Vによる直感的な操作と豊富な自動化オプションを併せ持つ総合力が評価されているポイントです。

導入事例ではKUSUDAのNLX 2500活用や、NLX 2000とNHX 4000、ロボットを組み合わせたターンキー導入が知られています。

シチズンマシナリー / Citizen Machinery

会社名 シチズンマシナリー / Citizen Machinery
設立年 1930年
本社 長野県北佐久郡御代田町御代田4107-6
概要 CNC自動旋盤の専業メーカー

シチズンマシナリーは、低周波振動切削(LFV)技術を強みに、小径精密加工や難削材加工の安定性を高めています。

代表製品のCincom L32Miyano BNA/BNJ シリーズは、自動旋盤やタレット旋盤の分野で高い評価を得ています。LFV技術により切りくず噛み込みを抑え、無人運転の安定性を確保できる点が特徴です。

導入事例ではメトロールによる工程効率化や、機内計測と組み合わせた品質安定の取り組みが挙げられます。

ツガミ / TSUGAMI

会社名 ツガミ / TSUGAMI
設立年 1937年
本社 東京都中央区日本橋富沢町12番20号
概要 小型・高精密工作機械メーカー

ツガミは、高剛性構造やビルトインモータ主軸、熱変位補正機能を持ち、小型ながら高精度かつ安定した加工を実現するメーカーです。

代表製品のM08SY-ⅡはY軸複合機能を備えたCNC旋盤で、多様な工程を一台で完結できます。Y軸・サブ主軸・ミーリング対応による工程集約性と高い生産性が特徴です。

導入事例として寺西工業野原熱錬工作所などで活用され、工程集約と生産効率の向上に寄与しています。

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