ダイボンディング装置
最先端の電子機器製造において、ダイボンディング装置は高い集積度と安定した接合品質を実現する重要な設備です。
しかし、「ワイヤーボンディングでは対応しきれないのか」「高コストや接合精度など課題が多そうだけど実際はどうなのか」とお悩みではありませんか。
本記事では、ダイボンディング装置の基本的な仕組みと構造、その種類ごとの特長からメリット・デメリット、さらには導入時の選び方と主要メーカーの比較までを幅広く解説します。
半導体の高密度化や小型化を目指す中で必要となる基礎知識を分かりやすくまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。
とりあえず話を聞きながら考えたい方やすぐにメーカーへ問い合わせをしたい方は、以下のボタンからお問い合わせください。担当者におつなぎいたします。
目次
ダイボンディング装置の基本情報を解説
ここでは、ダイボンディング装置とは何か、どのような仕組みで動き、どんな構造を持っているのかを順に解説していきます。
そもそもダイボンディング装置とは?
ダイボンディング装置とは、ワイヤーを使わずにICチップ(ダイ)を基板やテープキャリアに直接接合するための装置です。
ICチップを180度反転するフリップチップボンディングや、リードパターンが形成されたテープに配置するテープオートメイテッドボンディングなど、従来のワイヤーボンディングとは異なる方式を用いて効率的に接続します。
信号経路を短くできるため、電気的特性の向上やノイズの低減が期待でき、電子機器の高性能化や信頼性向上につながる点が特徴です。
ダイボンディング装置の仕組みを確認
ダイボンディング装置の仕組みは、大きく分けてチップの供給から位置合わせ、接合、そして硬化や冷却のステップで成り立っています。
まずウェハーから切り出されたICチップをピックアップし、基板やテープキャリアと精密に位置を合わせます。
次に、はんだリフローや熱圧着、導電性接着剤を用いた接合など、製品や用途に応じた方法でICチップを直接接合します。
最後に必要な工程として接着剤の硬化や冷却を行い、十分に安定した状態にしてダイボンディングを完了させます。
ダイボンディング装置の構造はどうなっている?
ダイボンディング装置は主にピックアンドプレースユニット、高精度アライメントシステム、接合ヘッド、温度や圧力を制御する機能、そして自動搬送システムによって構成されています。
ピックアンドプレースユニットはウェハーなどからチップを取り出し、設定された場所へ素早く配置する役割を担い、高精度アライメントシステムはカメラやセンサーを用いてチップと基板の位置合わせを実行します。
接合ヘッドでは温度や圧力の微調整が行われ、はんだリフローや熱圧着などの接合方式に合わせた操作が可能です。
自動搬送システムはチップや基板を連続的に供給し、生産性を高めるための重要な要素となっています。
2種類のダイボンディング装置それぞれの強みを紹介
ダイボンディング装置には、テープオートメイテッドボンディング(TAB)装置とフリップチップボンディング(FCB)装置の2つが代表的な存在として挙げられます。
この2種類はともにICチップを基板へ高精度かつ効率的に接合するための装置ですが、採用する方式や得意とする用途、実装方法がそれぞれ異なり、多様なニーズに応える手段として選ばれています。
テープオートメイテッドボンディング(TAB)装置
テープオートメイテッドボンディング(TAB)装置は、リードパターンが形成されたテープキャリアにダイを接続し、そのまま基板に接合する方式を採用します。
高速かつ自動化された工程で微細なピッチの電極同士を正確に位置合わせできるため、大量生産に向いた生産性の高さが特長です。
さらに、フレキシブル基板の利用や熱圧着による強固な接合方法が可能であり、長期信頼性にも優れていることから、LCDドライバICやスマートデバイスなどの分野で重宝されています。
フリップチップボンディング(FCB)装置
フリップチップボンディング(FCB)装置は、ICチップを反転させ、基板上のバンプや接続パッドと直接面実装する方式により、接続距離を極限まで短縮できます。
ワイヤーを使わない接合構造を実現することで、高速通信で不可欠な高周波特性の向上や、ノイズの低減に寄与する点がメリットです。
はんだリフローや導電性接着剤などの方法を使い分けることで、幅広い半導体パッケージに対応でき、小型かつ薄型を求められるスマートフォンや高性能プロセッサなどの分野で広く導入されています。
ワイヤーボンディングなど従来技術と比較した際のメリット・デメリットを解説
ダイボンディング装置は、ワイヤーを用いるボンディング方式とは異なり、ICチップを直接基板に接合することで高い集積度や高速信号処理を可能にする装置です。
しかし、この技術には大きな優位性がある一方で、導入コストやアライメント精度といった課題も存在します。
以下では、そのメリットとデメリットを順に見ていきます。
ダイボンディング装置のメリット
ダイボンディング装置には、高密度実装を実現できる点が挙げられます。微細ピッチやバンプを活用した接続が可能なため、プロセッサやメモリチップなどの高密度ICパッケージを効率よく製造できます。
さらに、ワイヤーを使わずに直接接合することで接続距離を短縮でき、電気的特性が向上することも特長です。高速通信デバイスや画像処理センサーなど、高周波特性や省エネ性能が求められる製品では、そのメリットが大きく発揮されます。
また、ワイヤーがない分だけ小型化・薄型化につながり、スマートフォンやウェアラブル機器などの携帯性が求められる分野でも有効です。デバイスの薄型化は、製品設計の自由度を高めるだけでなく、消費者の利便性向上にも寄与します。
ダイボンディング装置のデメリット
一方で、ダイボンディング装置は高い導入コストが課題になる場合があります。高精度な装置や技術を要するため、設備投資が大きくなる傾向にあり、中小規模の事業者にとっては負担となりがちです。
これを軽減するためには、装置機能をモジュール化して必要最小限の機能から導入したり、共同利用による投資負担の分散を図ったりする方法が考えられます。
また、微細ピッチの接合に対応するためには極めて高い精度のアライメントが必要であり、熟練技術者の確保や画像認識技術の導入などの初期準備や研修コストがかさむ可能性があります。
自動補正システムやAIによるリアルタイム調整を活用することで、こうした難度を緩和しつつ高品質な接合を実現可能です。
最後に、装置の稼働速度や生産ライン全体の最適化にも工夫が求められます。多ヘッド方式の採用や工程間の搬送時間短縮、リフローなどの熱工程の高速化に取り組むことで、高精度な接合を維持しつつ生産スピードを上げることが可能です。
自社の目的に沿ったダイボンディング装置を導入するための選び方を解説
ダイボンディング装置を選ぶ際は、製造するデバイスの特性や量産体制、将来的な拡張性などを総合的に考慮することが重要です。
ここでは、接合精度やダイのサイズ、接合方法、処理速度、自動化レベルといった主な選び方のポイントを順に見ていきます。
接合精度(アライメント精度)
ダイボンディング装置の接合精度が低いと、微細ピッチでの正確な接合が難しくなり、歩留まり低下や接合不良のリスクが高まります。
高精度のアライメント機能を備えたダイボンディング装置を選ぶことで、プロセッサやメモリなどの高密度実装にも対応でき、品質や信頼性を向上させられます。
特に微細バンプ接合が必要なフリップチップ技術を導入する場合や、歩留まりの改善が求められる状況では、この精度面を優先的に検討することが有効です。
対応するダイのサイズと厚さ
製品の多様化に伴い、ダイのサイズや厚さも変化しつつあります。大型ダイや極薄ダイに対応できるかどうかで、生産ラインの柔軟性やコスト効率が変わります。
例えば複数の製品サイズを扱うことが多い場合や、薄型チップの欠損リスクを避けたい場合は、対応レンジが広いダイボンディング装置を選ぶと効果的です。
これにより、多品種生産でも設備を有効活用でき、必要に応じたライン変更を最小限で行えます。
接合方法(はんだ、導電性接着剤、熱圧着など)
製品や基板の材料特性によって適切な接合方法は異なります。はんだ接合を用いる場合はリフロー工程が前提となり、導電性接着剤なら低温での接合が可能です。
熱や電気的特性を考慮して接合方式を選ぶことで、デバイスの信頼性や性能向上につながります。
特に高速通信デバイスで低抵抗接合を求めるケースや、熱に弱い材料を扱う場合は特に接合方法の選定が大切です。
処理速度(スループット)
大量生産を前提とするラインでは、処理速度が製品の供給能力やコストに影響します。
スループットの高いダイボンディング装置を導入すれば、短いサイクルタイムで多くのダイを接合でき、納期短縮や生産コスト削減に直結します。
仮に生産数が多く、納期厳守の案件を抱えている状況であれば、この項目を重点的に検討することで、余裕ある量産体制を構築しやすくなります。
装置の自動化レベルと柔軟性
生産プロセスの自動化が進めば、人的ミスを減らしつつ安定した品質を保ちやすくなります。
多品種に対応できる柔軟性を備えたダイボンディング装置を選べば、急な製品仕様の変更にもスムーズに対応可能です。
人手不足や効率化が課題となっている現場では、高度な自動化機能を持つ装置を導入することで、人件費削減やラインの安定稼働を実現でき、将来的な生産計画の見直しにも対応しやすくなります。
【編集部おすすめ】ダイボンディング装置の代表的なメーカー5社を比較!
ダイボンディング装置は微細ピッチや薄型化など、高度化する半導体製造の現場で必須の設備となっています。
ここでは、世界的に実績を持ち、特徴的な技術を提供するダイボンディング装置メーカー5社を取り上げ、それぞれの概要や強みを比較できるようにまとめました。
キューリッキ・アンド・ソファ・インダストリーズ(Kulicke and Soffa Industries Inc)
設立年 | 1956年 |
本社所在地 | シンガポール |
代表的なダイボンディング装置 | APTURA™シリーズ(熱圧縮ボンディング)、Asterion™ EVなど |
強み | フラックスレスボンディング技術や60年以上の業界経験による高信頼性 |
キューリッキ・アンド・ソファ・インダストリーズは、ワイヤーボンディングとダイボンディングの両分野で長年の実績を積み重ねてきたメーカーです。
APTURA™シリーズのフラックスレスボンディング技術は、余計な薬剤を使わずに高密度接合を実現する革新的なアプローチで、半導体や先端パッケージングにおける信頼性向上に貢献しています。
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エーエスエムピー テクノロジー(ASMPT Ltd)
設立年 | 1975年 |
本社所在地 | シンガポール |
代表的なダイボンディング装置 | INFINITEシリーズ、AD211Plus-II、AMICRAシリーズ |
強み | 幅広い装置ラインアップとサブミクロン精度の高精度実装技術 |
エーエスエムピー テクノロジーは、エポキシや共晶、超高精度ダイアタッチなど、さまざまな接合方式に対応するダイボンディング装置を展開しています。
INFINITEシリーズの汎用性やAMICRAシリーズのサブミクロン精度など、工程の多様なニーズに合わせて選べる点が魅力です。
LEDやオプトエレクトロニクス分野にも導入実績が豊富で、生産性と品質向上を両立するダイボンディング装置として評価されています。
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パナソニックホールディングス
設立年 | 1935年 |
本社所在地 | 日本(大阪府門真市大字門真1006番地) |
代表的なダイボンディング装置 | MD-P200シリーズ(超音波フリップチップ対応)など |
強み | 独自の超音波技術や多様な実装プロセス対応 |
パナソニックホールディングス株式会社は総合電機メーカーとして幅広い事業を手がけており、ダイボンディング装置でも独自の超音波技術を活かした製品を展開しています。
MD-P200シリーズは連続スタック実装や高精度マルチダイ実装に対応し、超音波を活用した安定した接合を高速で実現します。
小型化と多様なプロセス対応が求められる市場において、堅実な技術基盤を強みとしています。
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芝浦メカトロニクス
設立年 | 1939年 |
本社所在地 | 日本(神奈川県横浜市栄区笠間二丁目5番1号) |
代表的なダイボンディング装置 | TFC-6500、TFC-6600、TFC-6700/6800など |
強み | 精密機械技術による高精度と多彩なプロセス対応 |
芝浦メカトロニクス株式会社は半導体製造装置やフラットパネル製造装置など、幅広い領域でメカトロニクス技術を展開している企業です。
フリップチップボンディングの分野でも多様なダイボンディング装置ラインナップを揃え、2.5DやFan-Outパッケージなど次世代技術への対応を積極的に進めています。
高精度なボンディングと安定した生産性を両立し、微細化や高集積化に挑む顧客に支持されています。
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澁谷工業
設立年 | 1949年 |
本社所在地 | 日本(石川県金沢市大豆田本町甲58) |
代表的なダイボンディング装置 | FDB250、FDB350、FDB210Pなど |
強み | 高剛性フレームと自動キャリブレーション機構による超高精度実装 |
澁谷工業株式会社は、パッケージングプラント事業やメカトロシステム事業で培った精密制御技術をダイボンディング装置に応用しています。
FDBシリーズはレーザヒートを組み合わせた方式を採用し、短時間での加熱・冷却が可能であるため、連続生産において効率的に高精度接合が行えます。
光デバイスやTSVチップなど先端分野にも対応できる柔軟性が強みとなっています。
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