ホーニング盤

ホーニング盤IC

ホーニング盤の選び方に悩んでいませんか? ホーニング盤には様々な種類があり、特徴や用途が異なります。どのメーカーの製品が自社に最適か、どう選べばよいのか、迷うことが多いでしょう。

本記事では、ホーニング盤の種類や特徴を比較し、選び方のポイントを解説します。

3種類のホーニング盤の種類と特徴

ホーニング盤の種類と特徴

ホーニング盤は、主に穴の内面を精密に仕上げるための工作機械です。回転するホーニング工具を、加工物に押し当てながら往復運動させることで、円筒形の穴を極めて高い精度で仕上げます。この際、ホーニング工具に埋め込まれた砥粒が穴の内壁を削り、滑らかで均一な表面を作り出します。

ホーニング盤には、主に以下の3つの種類が挙げられます。

  • 平行平面ホーニング研削盤
  • CNC多軸ホーニング盤
  • 液体ホーニング盤

平行平面ホーニング研削盤

平行平面ホーニング研削盤は、主に平面の精密加工に用いられる工作機械です。2枚のディスク状の砥石でワークを挟み込み、砥石を回転させながら往復運動させることで、平面度や平行度を高精度に仕上げます。ホーニング加工の特徴であるクロスハッチ状の表面を形成することで、潤滑性や耐摩耗性を向上させることも可能です。

  • ミクロン単位の精度で、平面度や平行度を高精度に仕上げることが可能
  • 鋼、鋳鉄、非鉄金属など、幅広い材料の加工に対応可能
  • 平面だけでなく、段差やテーパーなど、複雑な形状の加工も可能

平行平面ホーニング研削盤は、自動車部品、精密機器部品、半導体製造装置部品など、高精度な平面加工が要求される部品の製造に広く利用されています。例えば、エンジンブロックの摺動面や、精密機器のベースプレートの加工など、製品の品質に大きく影響する部分の仕上げに用いられます。

CNC多軸ホーニング盤

CNC多軸ホーニング盤は、CNC(コンピュータ数値制御)によって、複数のホーニング工具を同時に制御し、複雑な形状の加工を行うことができる工作機械です。従来のホーニング盤では困難であった、テーパ穴や非円形の穴など、様々な形状の加工を高い精度で実現できます。

  • 多数の工具を同時に制御することで、複雑な形状の穴や表面の加工が可能
  • CNCによる精密な位置決めと速度制御により、高い寸法精度と表面品質が得られる
  • 加工プログラムを作成することで、複雑な形状の加工を自動で行える

CNC多軸ホーニング盤は、自動車部品、航空機部品、精密機器部品など、高精度かつ複雑な形状の穴加工が要求される部品の製造に活用されています。例えば、エンジンのオイルホールや冷却水路の加工、精密機器の内部部品の加工など、製品の機能に直結する部分の仕上げに用いられます。

液体ホーニング盤

液体ホーニング盤は、微細な砥粒と液体を混合したスラリーを、高圧でワーク表面に噴射することで加工を行う装置です。従来のホーニング盤が主に内径加工に用いられるのに対し、液体ホーニング盤は、外径や複雑な形状の加工にも対応できます。スラリーの粒度や噴射圧力を調整することで、様々な表面状態を実現することができます。

  • 内径、外径、曲面など、様々な形状の加工に対応可能
  • バリ取り、表面の粗さ調整、光沢出しなど、幅広い用途に利用可能
  • 硬い材料だけでなく、ガラスやセラミックスなど、脆い材料の加工も可能

液体ホーニング盤は、自動車部品、精密機器部品、医療機器部品など、様々な分野で活用されています。例えば、エンジン部品のバリ取り、精密金型の表面処理、医療用インプラントの仕上げなど、高精度かつ複雑な形状の加工が要求される場面で活躍しています。

ホーニング盤の主な使用用途2選

ホーニング盤の主な使用用途2選

ホーニング盤は、主に自動車産業で活用されることが多いです。このセクションでは、特に以下のふたつの活用事例をご紹介します。

  • エンジンのシリンダー加工
  • 自動車の動力伝達用歯車の加工

エンジンのシリンダー加工

ホーニング加工は、エンジンのシリンダーを仕上げる際に最適な加工方法として広く採用されています。特にエンジンの内部は、作動時に高温になり、シリンダー内部で摩擦が発生しやすい環境です。

シリンダー内部でピストンとピストンリングが擦れ合うことで、壁面が傷つきやすくなり、その結果、ピストンの上下運動に抵抗が生じ、エンジンの性能が低下する問題があります。

ホーニング加工により生まれるクロスハッチが、シリンダー内の摩擦を効果的に抑え、エンジン性能低下の原因となる摩擦発生を軽減します。このため、エンジンシリンダーの仕上げには、ホーニング加工が適していると言えます。

自動車の動力伝達用歯車の加工

ホーニング加工は、自動車の動力伝達用歯車の仕上げにおいて、高い精度を実現するために導入されています。特に、ハイブリッド車やEV車の普及に伴い、トランスミッションから発生する異音が問題視されるようになってきました。

トランスミッションからの異音は、歯車が噛み合う際に発生する騒音で、歯車同士がぶつかり合ったり、うねったりすることが原因です。従来の手法では、熱処理歪みを抑えたり、歯車の組み合わせを最適化することで解決を試みましたが、効果は限定的でした。

ホーニング加工によって仕上げられた歯車は、熱処理歪みをコントロールし、歯車同士の噛み合わせを向上させることで、累積ピッチ精度の向上に貢献しました。その結果、歯車が噛み合う際の騒音が大幅に改善され、自動車の静粛性が向上しました。

ホーニング盤のメリット・デメリット

ホーニング盤の活用場面

ホーニング盤には、メリットだけでなく、デメリットもあります。このセクションではその両方を

    紹介します。

    メリット

    ホーニング盤には、主に以下のメリットが挙げられます。

    • 穴精度が高い
    • 加工公差が小さい
    • クロスハッチを形成できる
    • 加工物への負担が小さい

    穴精度が高い

    ホーニング盤は、穴の仕上げ加工において非常に高い精度を実現できることが大きな特徴の一つです。その理由は、ホーニング加工の原理と、ホーニング盤の構造にあります。

    ホーニング加工は、回転するホーニング工具を、加工物に押し当てながら往復運動させることで、穴の内壁を研磨します。この際、ホーニング工具に埋め込まれた砥粒が、穴の内壁を均一に削り取るため、真円度や円筒度が極めて高くなります。また、ホーニング工具が穴全体に接触するため、穴の位置精度も向上します。

    加工公差が小さい

    ホーニング加工は、回転するホーニング工具を、加工物に押し当てながら往復運動させることで、穴の内壁を研磨します。この際、ホーニング工具に埋め込まれた砥粒が、穴の内壁に均一に作用するため、寸法精度が極めて高くなります。また、ホーニング工具が穴全体に接触するため、形状のバラつきも少なく、高い寸法安定性を実現できます。

    クロスハッチを形成できる

    ホーニング加工によって形成されるクロスハッチは、単なる加工痕ではなく、製品の性能を大きく左右する重要な要素です。潤滑油保持、冷却効果、耐摩耗性向上など、様々なメリットをもたらし、特に摺動面を持つ部品の加工に有効です。

    加工物への負担が小さい

    ホーニング加工は、ワークへの負担が小さい加工法です。低い加工圧と低速加工、そして冷却液の使用により、ワークへのダメージを最小限に抑えます。そのため、硬くて脆い材料や複雑な形状の部品の加工に適しています。例えば、精密機器部品や医療機器部品、光学部品など、高精度かつ高品質な仕上げが求められる部品の加工に広く利用されています。

    デメリット

    一方で、ホーニング盤には以下のようなデメリットもあります。

    • 前加工の精度に依存する
    • 加工できる内径が限られている

    前加工の精度に依存する

    ホーニング加工は、高い精度が求められる加工ですが、前加工の精度に大きく依存するという側面も持ち合わせています。そのため、ホーニング加工を行う際には、前工程の品質管理を徹底することが不可欠です。

    加工できる内径が限られている

    ホーニング加工は、その構造上、加工可能な内径に制限があります。そのため、ワークのサイズや形状に合わせて、適切な加工方法を選択する必要があります。

    5つの比較基準 | ホーニング盤の選び方

    ホーニング盤の強みと課題

    ホーニング盤を選ぶ際は、以下の5つのポイントを押さえる必要があります。

    • 加工ワークの特性
    • 精度
    • 生産性
    • 安全性
    • コスト

    加工ワークの特性

    ワークの材質、形状、サイズ、そして求められる精度によって、最適なホーニング盤の種類が異なります

    ワークの特性としては、以下のものが挙げられます。

    • 材質:硬度、脆性、熱伝導率など
    • 形状:円筒形、テーパ形、非円形など
    • サイズ:内径、長さ、外径など
    • 精度:寸法公差、表面粗さなど
    • 数量:少量生産か大量生産か

    以下、各ホーニング盤の種類が得意としているワークの特性を紹介します。

    • 平行平面ホーニング研削盤:主に平面ワークの仕上げに用いられます。平面度の高いワークや、広い面積の仕上げに最適
    • CNC多軸ホーニング盤:複雑な形状のワークや、高精度な仕上げが要求されるワークの加工に適する
    • 液体ホーニング盤:超硬合金やセラミックなど、硬い材料の加工に最適

    精度

    ホーニング加工の精度とは、加工後のワークの寸法や形状が、設計図面どおりに仕上がっているかを示す指標です。

    精度が高いことのメリットは以下の通りです。

    • 部品間の組み付け精度が向上し、製品全体の品質が向上
    • 部品間の干渉が少なくなり、摩耗が抑制されるため、製品の寿命が延びる
    • 精度が高いと、再加工やスクラップの発生が少なくなり、生産性が向上

    精度が重要な用途例として、以下のものが挙げられます。

    • 精密機器:時計、カメラ、半導体製造装置など、非常に高い精度が要求される機器
    • 医療機器:人体に使用されるため
    • 自動車部品:エンジン部品など、高い耐久性が求められる部品

    一方で、すべての活用場面に精度が求められるわけではありません。例えば、以下のような用途では精度が低くても問題がありません。

    • 鋳物部品:強度が重視され、寸法精度が厳しく要求されない場合
    • 装飾品:外観が重視され、機能性が求められない場合
    • 一部のプラスチック部品:金属部品と比較して、機械的な強度が求められない場合

    生産性

    ホーニング盤を選ぶ際、生産性はコスト削減や納期短縮に直結する重要な要素です。生産性とは、一定時間内に加工できるワークの数や、加工サイクル時間を指します。

    生産性が高いホーニング盤を使用することで、以下のメリットが得られます。

    • 生産コストを削減できるため、コスト削減
    • 短納期での製品供給が可能になり、納期短縮
    • 生産能力が向上し、事業拡大に対応

    生産性が重要な用途例は以下の通りです。

    • 自動車部品、家電製品などの大量生産
    • 受注生産品など、短納期での納品が求められる製品
    • 低コストで製品を製造する必要があるコスト競争が激しい業界

    一方、生産性が低くても問題ない用途も存在します。

    • 少量の試作品を製造する場合
    • 精度が優先される高精度な部品
    • 複雑な形状の部品で、加工時間が長くなる場合

    安全性

    ホーニング盤を選ぶ際、安全性は作業者の安全を守る上で重要です。ホーニング加工は高速回転する砥石や切削液を使用するため、不適切な操作や機械の故障により、事故が発生するリスクがあります。

    • 事故のリスクを低減し、作業者の安全を確保
    • 機械の故障や破損を防ぎ、設備の寿命を延ばす
    • 安全な作業環境下で安定した加工を行うことで、品質の安定に繋がる

    コスト

    ホーニング盤の選定において、コストは非常に重要な要素です。高性能なホーニング盤は高価ですが、生産性向上や品質の向上に貢献します。一方、低コストのホーニング盤は初期投資を抑えられますが、機能や性能が限定される場合があります。

    コストが高いことのメリットは以下の通りです。

    • 微細な加工や複雑な形状の加工に対応できる高精度な加工
    • 自動化や省力化機能が充実しており、短時間で多くのワークを加工できる高生産性
    • 高品質な部品を使用しているため長寿命で、メンテナンスコストを抑えられる長い耐用年数

    コストをかけた方が良い用途例として、以下のものが挙げられます。

    • 時計、カメラ、半導体製造装置など、非常に高い精度が要求される精密機器の製造
    • 人体に使用されるため高い安全性と、信頼性が求められる医療機器の製造
    • 高い耐久性と信頼性が求められる自動車部品の製造

    一方で、コストが安いことにもメリットがあります。以下のような用途では低コストのホーニング盤が適しています。

    • 資金が限られている場合でも、ホーニング加工を導入できる初期投資の抑制
    • 少量の製品を製造する場合、高性能なホーニング盤はオーバースペックになる小ロット生産
    • 新製品の開発段階で少量の試作品を製造する

    ホーニング盤を製造する主なメーカー3選

    ホーニング盤を製造する企業

    ホーニング盤を製造する主なメーカーには、以下の3社が挙げられます。

    • 日進製作所(Nissin Manufacturing)
    • 富士ホーニング工業(Fuji Honing Industrial)
    • ナーゲル・アオバプレシジョン(NAGEL・AOBA PRECISION)

    日進製作所(Nissin Manufacturing)

    日進製作所は、ホーニング盤をはじめとする工作機械や、自動車・オートバイ用エンジン部品などを製造している日本のメーカーです。特に超高精度ホーニング盤の開発・製造においては、高い技術力と実績を誇っており、業界をリードする存在となっています。

    富士ホーニング工業(Fuji Honing Industrial)

    富士ホーニング工業は、ホーニングマシン専業メーカーとして、1949年の創業以来、一貫してホーニングマシンの生産に携わってきた老舗企業です。ホーニングマシンとは、円筒形の穴の内面を研磨する工作機械で、富士ホーニング工業は、この分野において国内トップクラスのシェアを誇ります。

    ナーゲル・アオバプレシジョン(NAGEL・AOBA PRECISION)

    ナーゲル・アオバプレシジョンは、ホーニング加工の分野において高い技術力と実績を持つ日本のメーカーです。ホーニングマシンだけでなく、ホーニング加工に関わる様々な技術や製品を提供しており、自動車・二輪車業界を中心に、世界中で多くの顧客に製品とサービスを提供しています。