シャフトモーター

シャフトモーターのIC

近年、産業機械や測定器の高性能化に伴い、高速化・高精度が求められるようになりました。そのような中、とくに注目されているのがシャフトモーターです。

シャフトモーターは磁石とコイルのシンプルな構造のモーターで、半導体製造装置や精密機器など幅広い分野で活用されています。

本記事では、シャフトモーターの原理や仕組み、選定基準やおすすめのメーカーを紹介します。

とりあえず話を聞きながら考えたい方やすぐにメーカーへ問い合わせをしたい方は、以下のボタンからお問い合わせください。担当者におつなぎいたします。

目次

シャフトモーターとは? 動作原理や構造を解説

シャフトモーターとは?

シャフトモーターとは、シャフト(円柱状の軸)とステーター(固定子)によって構成されるリニアモーターの一種です。

シャフトの周囲に設けられたコイルとマグネットの相互作用で推進力を得る仕組みであり、ロータリー型モーターのような回転運動ではなく、直線運動を直接得られることがシャフトモーターの特徴です。

一般的なロータリーモーターの場合、回転運動をリードスクリューやベルトなどを介して直線運動に変換します。しかしシャフトモーターでは、モーター自体が直線方向の力を発生させるため、機構がシンプルになります。

また、構造上、摩耗部分が少ないため、メンテナンス性の向上や長寿命化が期待できる点も特徴のひとつです。

シャフトモーターの基本的な動作原理としては、シャフト内部に配置されたマグネットとステーターコイル間の電磁力を制御することで、シャフトを前後に動かします。

高精度な位置決めや高速応答が求められる用途に広く活用される一方、コイルや磁気回路の設計・選定が重要となるため、最適化には専門的な知識が必要です。

駆動方式でシャフトモーターを4種類に分けて解説

駆動方式でシャフトモーターを4種類に分けて解説
本章ではシャフトモーターを駆動方式によって4種類にわけ、それぞれの特徴やメリットを紹介します。

単軸駆動

単一方向への直線運動をする基本的な駆動方式のシャフトモーターです。可動子を短いストロークで駆動させます。

長いストロークと比較して応答性に優れ、高精度な位置決めが可能です。微細な動きが要求される精密機器や、半導体製造装置の駆動などの高い位置精度が要求される装置に適しています。

マルチ駆動

一本のシャフト上で複数の可動子を独立してコントロールする駆動方法のシャフトモーターです。複雑な動きや長ストロークの動きに対応する場合に用いられます。

複数の作業を同時に実行できるため、生産性の向上に繋がると掃除に、設置スペースを削減できることもメリットといえるでしょう。

パラレル駆動

マルチ駆動のひとつで、複数のシャフトを並列に配置しているため、単一のモーターでは得られない高出力・高トルクな駆動が可能なシャフトモーターです。

各モーターは位置や速度を独立制御し、装置全体として動きます。重い物を高速で搬送する大型搬送装置や、プレス機などの大きな力を必要とする装置に適しています。

タンデム駆動

複数のシャフトを並べて直線上に配置し、長距離の直線運動を実現する駆動方式のシャフトモーターです。可動子同士が連結され、一体となって動作します。

長ストロークを必要とする装置や、搬送距離が長い装置、長いアームを持つロボットなどに適しています。

他のモーターと比較した際のシャフトモーターのメリット・デメリット

他モーターと比較した際のシャフトモーターの特長・メリットを紹介
シャフトモーターを他のモーター(例えばサーボモーターやステッピングモーターなど)と比較した場合、以下のようなメリットが挙げられます。

メリット

  • 直線運動のために別途リードスクリューやベルトを必要としないため、省スペースかつ機構がシンプルになる。
  • ダイレクトドライブ方式であるため、バックラッシ(機械的な隙間)がほぼない高精度な位置制御が可能。
  • 摩耗や騒音が少なく、メンテナンス性が高い。

一方でメリットとしては、以下のような点があります。

デメリット

  • リニアモーターとしての構造が複雑なため、導入コストが高くなりがち。
  • 冷却や電磁的なノイズ対策が必要となる場合があり、設計に専門知識が求められる。
  • 大推力が必要な場合にはサイズや磁気回路設計が大きくなるなど、最適化に時間とコストがかかる。

このようにシャフトモーターは、他のリニアモーターと比較しても高精度・高速・メンテナンス性を兼ね備えた優れた選択肢となり得ます。一方で、導入コストや設計の複雑さもあるため、用途や必要な性能に合わせた選定が重要です。

使用用途・応用例を確認

シャフトモーターの使用用途・応用例を確認

シャフトモーターは、以下のような多様な分野で活用されています。

シャフトモーターの使用用途・応用例

  • 半導体製造装置
  • ウェーハ搬送やリソグラフィ装置など、高精度で高速な直線移動が求められる工程に適用。

  • 精密測定・検査装置
  • 微小な振動やバックラッシの少なさを活かし、高精度な位置決めが必要な検査機器に利用。

  • 産業用ロボット
  • 狭いスペースでの直線駆動や、多軸制御が必要となる作業工程で活躍。

  • 医療機器
  • X線装置やMRIなど、騒音低減やスムーズな移動が重視される場面にも採用可能。

  • 研究開発機関
  • サンプルステージや実験用のカスタム装置として、高度な位置決め性能を活かして使用。

選定時に重要なシャフトモーターの選び方を解説

選定時に重要なシャフトモーターの選び方を解説

シャフトモーターは用途・環境によって選定する基準が大きく異なります。とくに、考慮したい内容は下記です。

長いストロークでも推力と精度を両立できる磁極設計を重視する

シャフトモーター特有の長いストロークでも推力と精度を維持するためには、磁極設計を重視するという選び方があります。

ステータとマグネットスライダの組み合わせやエンコーダの分解能といった要因によって、その設計が変動し、シャフトモーターにおけるストローク性能や位置決め精度が左右される点が重要です。

もし適切に磁極設計を考慮しない場合、行程端で推力や制御精度が著しく低下し、生産性の低下が避けられないばかりか、高速・高精度かつ長い移動が必要とされる生産ラインや検査工程では装置全体の効率が落ちる可能性が高まります。

逆に、この選び方をしっかり検討してシャフトモーターを選定すれば、装置全域で安定した推力を確保でき、長行程でも高精度を保ちながら稼働することが可能となり、長ストロークを要求される現場での生産性を向上させられるでしょう。

放熱特性を考慮した冷却機構の有無を基準にする

シャフトモーター内部のコイル配置やボディ設計による放熱特性を見極め、冷却機構の有無を基準に選ぶ方法もあります。

連続稼働による温度上昇や使用環境の熱的負荷といった要因が影響し、シャフトモーターのパフォーマンスは変動するため、設計段階での放熱対策の有無は慎重に確認する必要があります。

もし熱管理を軽視すると、磁石の磁力低下やコイルの断線リスクが高まり、最終的には装置停止や寿命短縮に直結してしまうだけでなく、多シフト連続運転や高サイクル生産の現場では稼働率が低下するでしょう。

しかし、優れた放熱設計を持つシャフトモーターを選定すれば、高負荷条件下でも温度上昇が抑えられ、長時間連続運転でも安定した性能を維持できるようになり、メンテナンスも少ないコストと労力で行えるようになります。

高精度位置決めのために振動抑制設計の有無を確認する

高精度位置決めを重視する際は、シャフトモーター特有のガイドレス構造やエンコーダ精度を踏まえ、振動抑制設計の有無を確認するという選び方が求められます。

シャフトモーター特有の磁気吸引力とガイドレス構造に加え、エンコーダの分解能や取り付け精度といった要因が複合的に影響し、高精度制御の成否を左右するため、導入時の設計段階で振動対策を含めて検討することが重要です。

もしそうした対策を考慮せずにシャフトモーターを採用してしまうと、微細加工や厳密な測定を行う工程において位置ズレや歩留まりの低下が起こり、サブミクロン単位の制御が要求される半導体や光学部品の生産では損失を招く恐れがあります。

しかし、適切に振動抑制設計を施し、高分解能エンコーダを活用できるシャフトモーターを選択すれば、微細な振動を抑えながら高繰り返し精度を実現し、要求精度の厳しい製造工程においても高品質な成果を期待できるようになります。

シャフトモーターおすすめのメーカー5選を比較

シャフトモーターおすすめのメーカー7選

おすすめのシャフトモーターメーカーを5つ紹介します。メーカー選びの参考にしてください。

日本パルスモーター / Nippon Pulse Motor

メーカー名 日本パルスモーター / Nippon Pulse Motor
設立年 1952年
本拠地 東京都文京区
概要 精密小型モーターおよびモーションコントロール製品のメーカー

日本パルスモーターは1952年に設立され、東京都文京区に本拠地を構える精密小型モーターおよびモーションコントロール製品のメーカーです。

コアレス構造によるコギングレス(脈動ゼロ)、高精度・高速・低振動・高効率な直線駆動技術、そして幅広いラインアップとカスタマイズ対応力に強みを持っています。

同社が製造するシャフトモーター「Sシリーズ、Lシリーズ、SSシリーズ、SXシリーズ、SLPシリーズ」などは、非接触・メンテナンスフリー設計で、低発塵・静音・長寿命・クリーンルーム対応が可能な点は他社製品と比べても際立っています。

半導体・電子部品検査装置や金属加工機、放電加工機、レーザー加工機などへの導入実績があり、多様な産業現場でその高性能を活かして活躍しています。

ジイエムシーヒルストン / G.M.C. Hilston

メーカー名 ジイエムシーヒルストン / G.M.C. Hilston
設立年 1991年
本拠地 山形県最上郡
概要 シャフトモーター(円筒型コアレスリニアモーター)専業メーカー

ジイエムシーヒルストンは1991年に設立され、山形県最上郡に本拠を構えるシャフトモーター(円筒型コアレスリニアモーター)専業メーカーであり、円柱シャフト型コアレスリニアモーターで磁束を360度無駄なく活用し、高効率かつ高推力を実現している点に強みがあります。

同社が展開するシャフトモーターには、Sシリーズ、Lシリーズ、SXシリーズ、SSシリーズ、SSSシリーズなどが存在します。

これらは、コアレス・コギングレス設計により極めて滑らかな動作と高い速度安定性を実現しており、非接触構造で摩耗がないため長寿命化を図れる点が強みです。

半導体製造装置や電子部品検査装置、金属加工機、ロボット、FA分野などに幅広く導入され、多彩な生産工程で着実にパフォーマンスを発揮しています。

三菱電機 / Mitsubishi Electric

メーカー名 三菱電機 / Mitsubishi Electric
設立年 1921年
本拠地 東京都千代田区
概要 総合電機・産業用オートメーション機器メーカー

三菱電機は1921年に設立され、東京都千代田区に本拠を構える総合電機・産業用オートメーション機器メーカーであり、8万本以上の出荷実績を誇る高い信頼性が魅力です。

同社が提供するシャフトモーターは、SXシリーズやMELSERVO-J4対応モデルなどです。

独自のマグネット配列と最適配置設計を取り入れ、他社と比べて超低速度リップル(速度ムラを極小化)を実現している点が際立ち、滑らかな速度制御を求める現場で評価を得ています。

特に半導体製造装置や電子部品実装機、精密位置決め装置などで活用され、高精度と生産性を同時に追求できるシャフトモーターとして多くのユーザーに支持されています。

三木プーリ / Miki Pulley

メーカー名 三木プーリ / Miki Pulley
設立年 1939年
本拠地 神奈川県座間市
概要 伝動・制御機器および位置決め制御機器の総合メーカー

三木プーリは1939年に設立され、神奈川県座間市に本拠を構える伝動・制御機器および位置決め制御機器の総合メーカーであり、自社開発の円筒型リニアモータ(リニアシャフトドライブ)で簡素なシステム構成と高い位置決め精度を両立していることが特徴です。

同社が手掛けるシャフトモーターとしては、リニアシャフトドライブが挙げられます。

これは、シャフトから発生する磁束を利用した位置検出技術により、外付け位置センサーを用いずに精度の高い運転を可能とし、他社にはない省スペース性と制御の簡略化を実現したシャフトモーターです。

光学機器、半導体製造装置、食品機械、検査装置などにも導入され、多様な分野でスムーズかつ高精度な生産体制をサポートしています。

金田工業 / Kaneta Kogyo

メーカー名 金田工業 / Kaneta Kogyo
設立年 1949年
本拠地 静岡県浜松市
概要 冷間鍛造シャフト専門メーカー

金田工業は1949年に設立され、静岡県浜松市に本拠を構える冷間鍛造シャフト専門メーカーであり、長尺・大径シャフトやスプライン・深穴の冷鍛成形など、他社にはない高難度の技術を有する点が強みです。

冷間鍛造技術を取り入れた独自の製品ラインによって、シャフトモーターの主要部品として欠かせない精密シャフトを高品質に供給できる体制を整えています。

他社と比較しても、冷間鍛造による高精度・高強度・軽量化が実現でき、コストパフォーマンスを高水準で両立させているところに優位性があります。

二輪・四輪車のエンジンやミッション部品、さらに建設機械にも採用され、シャフトモーターの耐久性と安定性を支える重要な役割を果たしています。

まとめ|クリーンでコンパクトな生産設備を作製しよう

まとめ|クリーンでコンパクトな生産設備を作製しよう
シャフトモーターは、クリーンでコンパクトな生産設備の構築に適した技術です。非接触構造により摩耗や汚染を最小限に抑え、メンテナンスコストも削減できます。

さらに、精密な位置制御が可能で、省スペース化や高効率な生産ラインの実現に寄与します。

シャフトモーターを活用することで、次世代のクリーンで持続可能な製造環境を構築する一歩を踏み出せるでしょう。