無人フォークリフト
無人フォークリフトは、物流や製造業の現場において導入が進む次世代の自動運搬機器です。
「人手不足で現場が回らない」「フォークリフト事故のリスクを減らしたい」「作業の自動化を進めたい」──このような悩みや不安を抱える方にとって、無人フォークリフトはまさに最適な解説作となるでしょう。
本記事では、無人フォークリフトの仕組みや注目される背景、メリット・デメリットをはじめ、選び方やおすすめメーカーまでを網羅的に解説します。
導入を検討している方が、自社の環境に適した最良の選択ができるよう、実用性と専門性の両面から情報を提供しています。
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一部メーカーとは正式な提携がない場合がありますが、皆さまに最適なご案内ができるよう努めています。
目次
無人フォークリフトとは? 仕組みを解説
無人フォークリフトとは、人の操作を必要とせず、パレットやコンテナを自律的に搬送・荷役できるフォークリフト型の自動搬送ロボットです。
通称AGF(Automated Guided Forklift)とも呼ばれ、準拠を謳う機種ではISO 3691-4:2020が定める無人産業車両の安全要件を満たすよう設計されているため、工場や倉庫での実運用でも国際規格に基づいた高い安全性が担保されます。
無人フォークリフトの車体にはLiDAR(光検知・測距)やステレオカメラ、IMU、超音波センサーが複合的に搭載され、AIがセンサーフュージョンを行うことで数ミリ〜数センチ程度の位置補正とリアルタイム障害物回避を実現します。
通信面ではWi-Fi 6や5Gに対応した機種も増えており、WMS(倉庫管理システム)やMES(製造実行システム)と常時同期することで、在庫情報と連動した動的ルート生成やタスク最適化が可能です。
また、リチウムイオンバッテリーの急速充電や自動充電ステーションにより24時間連続稼働を前提としたエネルギーマネジメントが行える点も、従来の有人フォークリフトとの違いです。
無人フォークリフトの仕組みを解説
無人フォークリフトは、さまざまな技術を組み合わせて動作しています。主に以下の要素が無人フォークリフトの仕組みを支えています。
- 自動運転技術
無人フォークリフトは、GPSやLiDAR(ライダー)センサー、カメラなどのセンサーを用いて周囲の環境を認識します。これにより、障害物を避けたり、最適な経路を選択したりして、効率的に荷物を運搬します。 - ナビゲーションシステム
多くの無人フォークリフトは、事前に設定されたルートや、動的に計算される経路に基づいて動作します。これにより、倉庫内の指定された場所へ自動で荷物を届けることが可能です。 - AI(人工知能)
無人フォークリフトは、AIを搭載しており、過去のデータを学習することによって、効率的な作業手順を改善することができます。例えば、積み下ろしのパターンや混雑したルートの回避方法を学習し、より迅速に作業を完了することが可能です。 - 自動充電システム
無人フォークリフトは、バッテリーで動作しており、定期的に充電が必要です。多くのシステムでは、自動的に充電ステーションに戻り、バッテリーを充電して再度作業に戻ることができる機能も搭載されています。
このように、無人フォークリフトは先端技術と国際安全基準に支えられており、労働力不足や事故リスクといった物流現場の課題を解決する一つの手段と言えるでしょう。
次の章では、なぜ無人フォークリフトが近年とくに注目を集めているのかを詳しく解説します。
現在、無人フォークリフトが注目されている背景を解説
無人フォークリフトが注目されている背景には、社会的・経済的な課題とテクノロジーの進化が密接に関係しています。特に以下の3点が理由となっています。
- 労働人口の減少と物流現場の担い手不足
- 労災事故のリスク低減
- コロナ禍以降の非接触ニーズの高まり
労働人口の減少と物流現場の担い手不足
高齢化と少子化により、物流現場では慢性的な人手不足が続いています。特にフォークリフト操作は資格が必要であり、若年層の従事者が少ない現状では、自動化のニーズが高まっています。
労災事故のリスク低減
人が運転するフォークリフトでは接触事故や転倒事故が後を絶ちません。無人フォークリフトはセンサーとAIによって人や障害物を検知し、事故のリスクを減らすことが望めます。
コロナ禍以降の非接触ニーズの高まり
感染症対策として非接触での作業が期待される中、無人フォークリフトの導入が進んでいます。これにより作業員の安全と安心が確保されます。
このように社会的背景と技術的進歩の双方から、無人フォークリフトの導入が加速しています。
次は、無人フォークリフトの導入による具体的なメリットについて詳しく見ていきましょう。
無人フォークリフトのメリットを解説
無人フォークリフトには、単なる作業効率化以上の多くのメリットがあります。以下に主な利点をまとめます。
人件費の削減
無人化により、フォークリフトオペレーターの人件費が不要になります。また、シフト管理や労働時間の調整といった手間も省け、管理コストの削減も期待できるでしょう。
24時間稼働が可能
人の休憩や交代が不要なため、無人フォークリフトは24時間稼働が可能です。これにより、夜間や休日でも稼働でき、作業効率の向上が望めます。
作業の標準化と精度向上
AIによる制御で、常に一定の動作精度を保つことができ、作業品質のばらつきがありません。これによりミスや損傷のリスクが減少し、品質管理の向上にもつながります。
無人フォークリフトの導入は、単に業務を機械に置き換えるのではなく、経営効率や安全性の向上という面でも価値を提供します。
次に、無人フォークリフト導入時の具体的な課題について確認しましょう。
無人フォークリフト導入時の課題を解説
無人フォークリフトを導入する際の課題となるポイントを3つ挙げます。
導入前の現場シミュレーション
実際の稼働環境で、無人フォークリフトが問題なく運行できるか事前にシミュレーションを行うことが不可欠です。想定ルートの障害物や通信エリアの不安定さも事前にチェックしましょう。
人との共存を意識した安全設計
完全自動化が進んでも、現場には人がいるケースが多いため、接触防止や視認性確保のための配慮が必要です。警告音やライト、エリアセンサーの設定も重要です。
トラブル対応フローの整備
システムエラーや突発的な障害が発生した場合に備え、マニュアルや復旧手順をあらかじめ用意しておくことが重要です。また、担当者の教育や訓練も不可欠です。
こうした課題を押さえておくことで、無人フォークリフトの導入がよりスムーズで安全なものとなります。
次の章では、無人フォークリフトの種類を解説します。
どんな無人フォークリフトがあるのか? 種類ごとにメリット・デメリットを解説
無人フォークリフトはれぞれの型によって特徴や適した利用シーンが異なります。ここでは【誘導方式による種類】と、【車体の形状・機能による種類】にわけてメリット・デメリットも含めて詳しく見ていきます。
誘導方式による違い
無人フォークリフトが、どのようにして自分の位置を把握し、決められた場所まで走行するのか、その「頭脳」にあたるのが誘導方式です。
主に2つの方式があり、それぞれに得意な環境があります。
SLAM誘導方式
SLAM誘導方式は、レーザーセンサーで周囲の環境をスキャンして地図を作成し、自らの位置を推定しながら自律走行する方式です。
床面の工事が不要で、人や障害物を柔軟に回避できるため、レイアウト変更が多い倉庫や人とロボットが共存する環境で主流となっています。
磁気誘導方式
磁気誘導方式は、床面に設置された磁気テープや磁気棒をセンサーで読み取り、決められたルート上を正確に走行する方式です。
古くから実績のある確実な誘導方式で、コストを抑えたい場合や、決まったルートでの単純作業を自動化したい場合に適しています。
車体の形状・機能による違い
無人フォークリフトには、運ぶ荷物や作業場所に合わせて、車体の形状があります。代表的な2種類をご紹介します。
リーチ型
リーチ型無人フォークリフトは、フォークが前後にスライドする構造を持ち、狭い通路でも効率的に荷物の搬送・積み下ろしが可能なタイプです。
棚の間隔が狭い高密度保管倉庫での使用に適しており、省スペースかつ高所への対応力に優れています。
カウンターバランス型
カウンターバランス型無人フォークリフトは、車体後方の重り(カウンターウェイト)でバランスを取り、安定した重量物の搬送が可能な最も一般的なタイプです。
トラックへの荷物の積み下ろしや、床に直接置かれたパレットの搬送など、屋内・屋外を問わず幅広い現場で活躍します。
次の章では、無人フォークリフトの選び方を解説します。自社にとって適切な無人フォークリフトを導入するためにも是非、ご一読ください。
無人フォークリフトの選び方
無人フォークリフトを導入する際には、現場の特性に合わせた最適な機種選定が必要です。以下では、選定において特に重要となる3つの視点について解説します。
運用環境に最適な走行誘導方式を選定する
1つ目の無人フォークリフトの選定ポイントは、運用環境に最適な走行誘導方式(磁気テープ・レーザーSLAM・QRコードなど)を選定することです。
この誘導方式の選定は、倉庫のレイアウトの複雑さ、床面状態、可変ルートの有無、そしてレイアウト変更の頻度といった要因によって左右されます。
もし不適切な誘導方式を採用してしまうと、走行中に位置ずれやルート逸脱が多発し、結果的に荷役作業の停止や衝突事故につながる恐れがあります。
特に、レイアウト変更が頻繁に発生する3PL倉庫や、建物間を横断走行させるような広域運用では、この選定が重要です。
最適な方法を選べばマップ再作成や誘導ライン更新の手間が減り長期運用コストを削減できるため、将来的な運用効率の向上に貢献します。
積載重量、フォーク長さ、リフト高さの確認
次に重要な選定ポイントは、積載重量・フォーク長さ・リフト高さが自社のパレット寸法とラック高さに合致する無人フォークリフトのモデルを選ぶことです。
この仕様の選定には、取扱う貨物の重量分布、パレットのサイズや材質、そして保管ラックの最上段の高さなどが関係してきます。
仕様が現場の要求に対して不足していた場合、貨物を持ち上げられなかったり、無理な操作でパレットが破損するなど、かえって手作業の負担が増してしまいます。
とりわけ、軽量物と重量物が混在する多品種少量の生産ラインで同一機体を用いる場合には、この選定基準の重要性が増すでしょう。
的確な仕様なら軽量から重量物まで一本化搬送でき設備投資を最小化できるため、現場全体の合理化とコスト削減に繋がります。
通路幅に応じた車体サイズと旋回性能を選ぶ
最後に見逃してはならないのが、通路幅に対する無人フォークリフトの車体寸法と最小旋回半径を確認し十分な安全距離を確保できる機種を選ぶという点です。
この判断には、倉庫通路の幅、ラック脚間の寸法、作業員の動線などが主要な要因となります。
安全距離を無視して選定してしまうと、通路が塞がれたり、棚の角に車体が接触するなどの事故を誘発し、結果的に稼働率が低下するリスクがあります。
特に、改築が困難な冷蔵倉庫や狭小な通路での導入を検討する場合、この安全距離確保は不可欠な視点です。
最適寸法を選ぶと既存レイアウトを大改修せずに導入でき立ち上げ期間を短縮できるため、導入のハードルが一気に下がります。
これら3つの視点から適切な選定を行えば、無人フォークリフトは最大限のパフォーマンスを発揮し、現場の効率化を加速させる存在になるでしょう。
JET-Global編集部がおすすめする無人フォークリフトのメーカー・代理店
無人フォークリフトの導入を検討する際、どのメーカーがよいのかと迷う方は多いのではないでしょうか。
現場の環境や用途によって最適な機種は異なるため、まずは信頼できるメーカーを知ることが第一歩です。ここでは、長年の実績と技術力を誇る有力メーカー・代理店を紹介します。
気になるメーカーや製品がございましたら、以下よりお気軽にお問い合わせください。
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一部メーカーとは正式な提携がない場合がありますが、皆さまに最適なご案内ができるよう努めています。
マキテック / Makitech
メーカー名 | マキテック / Makitech |
設立年 | 1974年 |
本社 | 愛知県名古屋市 |
概要 | 搬送システム・物流機器メーカー |
マキテックは1974年に愛知県名古屋市で設立された、搬送システムや物流機器の専門メーカーです。長年にわたり積み重ねてきた搬送システムの開発実績を活かし、現場ごとに最適なソリューションを柔軟にカスタマイズ提供できる点が強みです。
同社が提供する無人フォークリフト「MW-SE20」は、ユーザー自身でプログラム変更が可能な設計となっており、運用変更や現場改善にもスムーズに対応できます。
倉庫や物流センター、製造業、小売業、さらには農業分野まで幅広い業界で活用されています。
村田機械 / Murata Machinery
メーカー名 | 村田機械 / Murata Machinery |
設立年 | 1935年 |
本社 | 京都府京都市 |
概要 | 総合機械メーカー |
1935年に京都市で設立された村田機械は、長年にわたり物流自動化システムの開発を手がける総合機械メーカーです。業種や現場の要件に応じたオーダーメイド対応力に優れており、柔軟な提案が可能です。
無人フォークリフト「Premex SLX」は、SLAM誘導方式を採用しており、反射板や磁気スポットなどの設置工事が不要です。
既存倉庫のレイアウトを大幅に変えることなくスムーズに導入でき、医薬品や食品製造をはじめとしたさまざまな業種で活用されています。
三菱ロジスネクスト / Mitsubishi Logisnext
メーカー名 | 三菱ロジスネクスト / Mitsubishi Logisnext |
設立年 | 1937年 |
本社 | 京都府長岡京市 |
概要 | 総合物流機器メーカー |
三菱ロジスネクストは1937年設立、京都府長岡京市に本拠を構える、総合物流機器メーカーです。世界初の無人フォークリフトを開発した先駆者として、技術力と三菱重工グループの総合力を活かした提案力が強みです。
主力製品である「プラッターオートHタイプ」は、最新のレーザー誘導方式を採用しており、床面工事が不要で既存レイアウトに対応できます。
流通業や食品・冷凍倉庫、製造業など多岐にわたる現場でその利便性が評価されています。
APT / アプト
メーカー名 | APT / アプト |
設立年 | 2009年 |
本社 | 千葉県千葉市 |
概要 | 物流システムインテグレーター |
アプトは2009年創業の新進気鋭の企業で、千葉県千葉市に本社を構え、自動倉庫を中心とした物流システム全体の設計・構築を得意とするインテグレーターです。1,000件以上のリニューアル実績に裏付けされた現場適応力が評価されています。
同社の無人フォークリフト「SLIM」は、既存設備との柔軟な連携が可能で、システム全体の効率化に貢献します。
物流倉庫や冷凍倉庫、製造現場など、特殊な環境でもパフォーマンスを発揮します。
リンクス/LINX
企業名 | リンクス/LINX |
設立年 | 1990年 |
本拠地 | 東京都品川区 |
概要 | マシンビジョンとAMR/AGFなど最先端ロボティクス機器を輸入・提供するテクノロジープロバイダ |
リンクスは、画像処理・IIoT・ロボットの先端技術を世界から組み合わせて提供する「技術商社 × メーカー」です。
海外メーカーと共同開発し、足りない要素は自社で作る体制と、課題整理から運用まで並走する「伴走型技術支援」で製造現場の課題を解決します。
また、同社は中国 HuaRay Technology(iRAYPLE)製 AMR/AGF の販売代理店であり、フォークリフト型AGFを含む各種自律搬送ロボットを日本市場に提供しています。
同社のAGFの製品としては、ハンドリフトタイプとリーチ式・カウンター式AGFが挙げられ、重量貨物を軽快に狭所搬送し、高所ラックへ正確に格納しつつ全周センサーで安全を守る点が強みです。
導入事例としては、福建省のリチウム電池工場においてフォークリフト型AMRと潜伏型AMRを導入し、MES/WMSと連携した原材料搬入から製品出庫までの全自動搬送を実現しています。
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