天井搬送ロボット

狭小空間点検ロボット

製造現場やクリーンルームの自動化が進む中で、天井搬送ロボットの導入を検討する企業が増えています。しかし、「どのメーカーを選べばいいのか分からない」「各社の違いや強みが見えにくい」といった声は少なくないでしょう。

この記事では、天井搬送ロボットの導入を検討している方に向けて、基本情報や種類、選び方を解説します。また、天井搬送ロボットのおすすめメーカーも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

目次

天井搬送ロボットとは? 定義や活用事例を紹介

天井搬送ロボットとは? 定義や活用事例を紹介

天井搬送ロボットとは、天井に設置されたレールを移動することで、部品や製品を搬送するロボットです。搬送経路を床上ではなく天井に持たせることで、限られた工場内スペースを有効活用できる点が強みです。

天井搬送ロボットは、搬送・運搬ロボットの一種であり、AGV(無人搬送車)やAMR(自律走行搬送ロボット)、運搬ドローンと同様、物体を自律的に運ぶ機能を持っています。ただし、天井に設置されたレールに沿って動くため、移動範囲が限定される代わりに、走行の安定性や搬送精度に優れています。

代表的な活用例は以下です。

  • 半導体製造工場でのクリーン搬送
  • 医薬品製造ラインでの衛生的な搬送
  • 自動車部品工場での省スペース搬送

いずれも、作業員の動線と干渉しない天井搬送ロボットの特性が活かされていると言えるでしょう。

天井搬送ロボットの細かい種類分けを解説

天井搬送ロボットの細かい種類分けを解説

天井搬送ロボットはまず、ISO Classの指定があるクリーンルーム内で使用されるか否かで分けられます。クリーンルームで使用するものは主に、OHTやOHSと呼ばれ、主に半導体業界で導入されています。

一方でクリーンルーム以外の場所でも天井搬送ロボットは使用されており、それらは汎用天井搬送ロボットなどと呼ばれることが多いです。

以下では、これらの特徴やメリット・デメリットを見ていきます。

OHT/OHS

OHT(Overhead Hoist Transport)およびOHS(Overhead Shuttle)は、ISO Class規格に対応したクリーンルーム用の天井搬送ロボットです。主に半導体・液晶パネル(FPD)工場のクリーンルームで使用され、微細な粉塵や振動にも配慮された設計になっています。

OHT/OHSのメリット

  • ISO Class指定のあるクリーン環境でも使用可能
  • 精密搬送に対応し、振動・発塵を最小限に抑える設計
  • 半導体業界など特定産業において実績が豊富

OHT/OHSのデメリット

  • 導入コストが高い
  • 汎用性が低く、クリーンルーム以外では過剰性能
  • レール設計や保守に高度な専門性が必要

また、OHTとOHSには、工程内搬送でホイスト機構を持つタイプがOHT、工程間搬送でシャトル型のものがOHSという違いがあります。

汎用天井搬送ロボット

汎用天井搬送ロボットは、クリーン環境以外の一般的な製造業や物流現場に導入される天井走行型ロボットです。荷重・サイズ・搬送ルートなどの仕様が多様で、比較的自由度の高い設計が可能です。

汎用天井搬送ロボットのメリット

  • レイアウトの自由度が高く、様々な搬送ニーズに対応
  • 床面スペースを完全に空けられるため作業効率が向上
  • クリーン環境に依存せず幅広い業種で導入可能

汎用天井搬送ロボットのデメリット

  • OHTに比べると走行精度や耐環境性に制限がある
  • 建屋の構造によっては設置が難しいケースもある
  • 運用開始までに設計・施工期間が必要

自社の業界や自社で扱っている製品によって、導入する天井搬送ロボットを決めましょう。

次章では、天井搬送ロボットの課題を解説します。安全性等に懸念を抱いている方はぜひご覧ください。

安全性は大丈夫? 天井搬送ロボットの課題を解説!

安全性は大丈夫? 天井搬送ロボットの課題を解説!

天井搬送ロボットは、床面を使わずに高効率な搬送を実現する一方で、導入・運用においていくつかの課題も存在します。

まず、安全性の面では、レール上を移動する構造ゆえ、落下・落下物のリスクが完全にはゼロになりません。そのため、設置構造物の強度、安全設計、定期点検が重要になります。

また、人が通行する場所の真上をロボットが通過する場合には、万が一の落下事故を防ぐためのカバー設置やセンサー連携など、複数の安全対策が求められます。

他にも、以下のような課題が挙げられます。

  • 天井構造の制約により導入できない建屋がある
  • 設置工事に長期間を要するため、稼働開始までのリードタイムが長い
  • 導入後のレイアウト変更が容易ではない

こうした課題をクリアするには、事前の現場調査と綿密な設計、および信頼できる導入パートナーの選定が欠かせません。

課題を踏まえたうえで、天井搬送ロボットの導入に進みたい方は、次章で天井搬送ロボットの選び方を解説するので、ご一読ください。

天井搬送ロボットの選び方を3つの視点から解説

天井搬送ロボットの選び方を3つの視点から解説

天井搬送ロボットは先述したように、課題も存在するため、自社に適した製品を選べないと導入や運用が思うように進みません。

そのため、本章で自社に適した製品やメーカーの目星をつけるための知識をつけておきましょう。

天井構造と支持方式の適合性を最初に確認する

天井搬送ロボットの選定ポイントとして、天井構造の耐荷重とレール支持方式が建屋の梁強度や耐震要件に適合するかを事前に確定する必要があります。この選び方は、梁ピッチや耐震等級、さらには上部に走るダクトや配管との干渉といった建屋側の制約によって左右されます。

適合を確認せずに導入を進めると、設置直前に大規模な補強工事が発生し、納期の遅延に加えて数千万円規模の追加コストが生じる恐れがあります。特に既築工場や耐震補強済み建屋で荷重マージンが小さい場合には、このポイントの確認が大切です。

初期段階で天井搬送ロボットの適合を見極めておけば、将来的なレールの延長やシステムの増設も無補強で対応でき、長期的な視点で見た際の総設備投資を抑えやすいでしょう。

処理能力に余力を持たせたスペック設計が不可欠

天井搬送ロボットの選定においては、ピーク搬送量を基にキャリアの台数や走行速度、モータ容量などの処理能力仕様に十分な余裕を持たせることが肝心です。これは、現行のタクトタイムや搬送するワークの質量分布、さらには今後の製品計画といった要因によって決まります。

過小な設計を行うと、生産量の増加に伴ってモータや母線の再設計が必要となり、長期間のライン停止を余儀なくされることもあります。特に需要変動が大きい多品種混流のラインや、今後の成長が見込まれる製品を扱う生産ラインでは、この処理能力設計を確認しておきましょう。

初期段階から余力を持たせた設計を行えば、将来的に生産量が増加した場合でもソフトウェア設定の変更のみで対応可能となり、ラインを止めずにキャパシティを拡張できるというメリットを得られます。

レール形状と曲げ性能がレイアウト適合性に直結する

天井搬送ロボットを導入する際には、メーカーごとに異なるレールの断面形状や最小曲げ半径が、自社の工場レイアウトや工程フローに適合するかどうかを事前に検証することが求められます。

この適合性は、工程間距離や通路のカーブ形状(U字・Z字など)、および既設設備との物理的な干渉といった要因によって影響を受けます。

適合性を軽視して天井搬送ロボットを導入すると、将来的にレイアウト変更が必要になった際、既設レールの撤去と再敷設が必要となり、現場の稼働に深刻な支障をきたします。

特にスペースが限られた場所で多方向への搬送を行うスマート物流ラインや、今後レイアウト変更を前提とする新設工場では、この点の検証が重要です。

事前に適合を確保できていれば、将来の工程変更にも標準モジュールだけで柔軟に対応可能となり、全体のレイアウト自由度と拡張性が高まります。

以上が、天井搬送ロボットの選び方です。これまでの解説を踏まえて、次章では、天井搬送ロボットのおすすめメーカーを紹介します。

天井搬送ロボットのおすすめメーカーを紹介! 各社の強みを解説

天井搬送ロボットのおすすめメーカーを紹介! 各社の強みを解説

本章では、当編集部が厳選したおすすめの天井搬送ロボットメーカーを紹介します。気になる企業には問い合わせをしてみてください。

ダイフク/Daifuku

メーカー名 ダイフク/Daifuku
設立年 1937年
本拠地 大阪府大阪市
概要 世界最大級のマテハンメーカー

ダイフクは、1937年に大阪府大阪市で設立された、世界的に著名なマテリアルハンドリング機器の総合メーカーです。

同社が製造する天井搬送ロボット「Cleanway®シリーズ」は、ISO Class対応の高クリーン度搬送や、低発塵・低振動を実現する構造により、厳格な環境下でも安定した稼働が可能です。

半導体ウエハー搬送の実績が豊富で、SamsungやTSMCなど、世界の先端企業に広く導入されています。

村田機械/Murata Machinery

メーカー名 村田機械/Murata Machinery
設立年 1935年
本拠地 京都府京都市
概要 クリーンFAとロジスティクスの総合機械メーカー

村田機械は、1935年に京都市で設立した、クリーンファクトリーオートメーションと物流分野に強みを持つ総合機械メーカーです。天井搬送ロボット領域では、半導体製造工場を中心に多数の納入実績を持ち、信頼性の高いシステム提供が可能です。

同社の製造する天井搬送ロボット「SKY RAV」は、台車間のリアルタイム通信による衝突防止や最適配車制御などの先進機能が強みです。さらに、ロードポートへ直接アクセス可能なホイスト機構を備え、限られたスペースでも柔軟に対応できます。

導入事例としては、半導体・電子部品のほか、ヘルスケアや消費財工場など幅広い業種で活用されています。

椿本チエイン/Tsubakimoto Chain

メーカー名 椿本チエイン/Tsubakimoto Chain
設立年 1917年
本拠地 大阪府大阪市
概要 動力伝達・搬送のグローバルブランド

椿本チエインは、1917年に大阪で設立され、動力伝達や搬送機器分野で100年以上の実績を持つグローバル企業です。天井搬送ロボット分野でも多業界への納入実績があり、Autran Vanguard®はその代表製品です。

最高220m/minの高速搬送性能に加え、光学センサによる高精度位置検出が可能で、全体のタクトタイムを短縮することができます。さらに、モジュール構造により施工期間を短縮でき、無線LANでの遠隔モニタリングにも対応しており、運用面での柔軟性も高いです。

LCD・半導体・食品・自動車ライン・物流センターなど、幅広い業種で導入が進んでいます。

IHI物流産業システム/IHI Logistics & Machinery

メーカー名 IHI物流産業システム/IHI Logistics & Machinery
設立年 1984年
本拠地 東京都江東区
概要 重工系の物流会社

IHI物流産業システムは、1984年に東京都で設立された、重工業グループ傘下の物流ソリューションプロバイダーです。クレーン・AGV・天井走行型の各種搬送装置を包括的に提供できる体制を整えています。

同社の製造する天井搬送ロボット「キュートラン®シリーズ」は、停止精度±5mm(オプションで±1mm)の高精度着座が可能で、精密搬送が求められる工程に最適です。さらに、分岐・傾斜・上下ストレージを含む3D構造のレール設計により、高さ方向も含めた空間活用を実現します。

特に、自動車組立工場や一般製造業、倉庫搬送など、天井空間を活用したシーンで導入が進んでいます。

以上がJET-Globalがおすすめする天井搬送ロボットのメーカーです。気になるメーカーがある場合は、以下のボタンからJET-Globalにお問い合わせください。

まずは、JET-Global担当者がヒアリングさせていただきます。