産業用ドローン

産業用ドローンのIC

産業用ドローンは、農業・測量・点検・物流など多様な業界で活躍し、業務の効率化や省人化、安全性の向上を実現する次世代の業務用ロボットです。

しかし「どんな種類があるのか分からない」「価格や導入効果が見えづらい」「どのメーカーを選べばいいか判断できない」といった悩みを持つ方も多いのではないでしょうか。

本記事では、産業用ドローンの基本知識から種類別の用途、導入コスト、選定ポイント、さらにおすすめメーカーまで解説しています。

これから産業用ドローンを導入・検討したい方が、本当に自社に合った選択肢を見つけられるように、必要な情報を丁寧にまとめました。導入の不安を解消し、自社におすすめの機体選びに役立ててください。

目次

産業用ドローンとは? 特徴や活用例などを解説

産業用ドローンとは?

産業用ドローンとは、農業、測量、建設・インフラ点検、物流、警備、防災といった様々な「産業分野」において、業務利用を目的として開発・運用される無人航空機(ドローン)のことです。

一般的なホビー用ドローンとは異なり、強風下でも安定した飛行が可能な機体設計や、AIやセンサー、GPS、高性能カメラなどを搭載し、現場での実用性が重視されています。

特に近年は、人手不足や作業の高度化といった社会課題を背景に、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支えるツールとしても注目されています。政府も規制緩和や技術開発支援を進めており、産業用ドローンの導入ハードルは年々下がりつつあるでしょう。

産業用ドローンの具体的な用途としては、以下のような分野があります。

  • 農業
  • 農薬・肥料の散布、作物の生育状況のセンシング

  • 建設・インフラ
  • 橋梁や高層建築の点検、測量

  • 物流
  • 山間部や離島への配送、倉庫内搬送

  • 災害対策
  • 被災地の空撮、二次災害の回避

  • 警備・監視
  • 広域施設の巡回監視、不審者の検知

導入の進む一方で、操縦や運用に専門知識が必要であることや、飛行に関する規制・安全性の確保といった課題も存在します。これらを踏まえたうえで、導入目的や環境に応じた適切な産業用ドローンの選定が不可欠です。

続いては、産業用ドローンの具体的な種類と、それぞれの特徴や活用実態を見ていきましょう。

産業用ドローンを種類ごとに細かく解説

産業用ドローンの種類

産業用ドローンは、活用される産業分野によって種類が明確に分かれており、それぞれ用途や設計思想が異なります。以下では代表的な種類について、それぞれの用途・強み・直面している課題を細かく解説します。

物流ドローン

物流ドローンは、荷物を空中輸送することを目的に開発された産業用ドローンで、特に離島や山間部といった地上輸送が困難な地域での活用が進んでいます。

例えば医薬品や食料といった緊急物資の運搬、倉庫間の部品配送など、時間と安全性が求められる場面で高い有効性を発揮することが多いです。

空中を移動するため交通渋滞やインフラの影響を受けにくく、災害時にも迅速な対応が可能というメリットがある一方で、飛行距離や積載重量には限界があり、悪天候時には運用できないなどの課題も残されています。

物流ドローンについてより詳しく知りたい方は、物流ドローンに特化した以下の記事をご覧ください。

農業ドローン

農業ドローンは、農作業の省力化と精度向上を目的に導入される産業用ドローンで、主に農薬や肥料の散布、作物の生育状況のセンシングなどに使われています。

広大な農地を持つ農家にとっては、従来の人力による作業に比べて作業時間を短縮できるほか、均一な散布による品質の安定化が期待されます。

また、作物の生育状態を空撮データから解析することで、収穫量の予測や病害虫の早期発見にもつながるでしょう。

ただし、適切な飛行のためには操作スキルが求められ、保守費用や天候依存といった制約も存在しています。

農業ドローンについてより詳しく知りたい方は、農業ドローンに特化した以下の記事をご覧ください。

点検ドローン

点検ドローンは、橋梁やダム、送電線、工場設備などの高所や危険箇所の点検業務に使用される産業用ドローンで、ズームカメラや赤外線カメラを搭載して目視では確認しにくい箇所も詳細に点検可能です。

人がアクセスしにくい場所を遠隔で確認できるため、作業員の安全性向上と点検作業の効率化が図れます。特に、建設業やインフラ保守分野でのニーズが高く、定期点検の自動化にも役立っています。

点検ドローンの課題は、複雑な構造物への飛行操作に技術が必要な点や、取得した映像の分析に専門的な知識が求められる点です。

測量ドローン

測量ドローンは、上空から地形や構造物のデータを取得する目的で使用される産業用ドローンで、主に建設現場や森林調査、都市開発などで導入されています。

RTKやLiDARといった高精度な測位・センサー技術を搭載することで、従来の人手による測量よりも迅速かつ安全に作業を進めることが可能です

3Dマッピングや土量計算などに活用され、設計・施工計画の精度向上にも寄与していますが、高性能な機体や専用ソフトの導入にはコストがかかり、飛行時の規制や操作技術に対する対応も必要です。

測量ドローンについてより詳しく知りたい方は、測量ドローンに特化した以下の記事をご覧ください。

警備ドローン

警備ドローンは、施設内外の巡回や監視業務を無人で行うことを目的とした産業用ドローンで、商業施設や物流センター、公共施設などのセキュリティ対策に活用されています。

AIによる画像解析やGPSによる自動飛行により、不審者の検知や夜間巡回を自動化でき、人的負担の軽減に貢献しています

広い敷地を効率よく巡回できることから、警備コストの削減と防犯効果の向上が期待されている一方で、リアルタイムでの緊急対応にはまだ課題が残り、普及には電波干渉や映像精度などの技術的な改善が必要です。

空撮用ドローン

空撮用ドローンは、映画やCM、観光PR、イベント記録などで映像制作のために利用される産業用ドローンです。高解像度カメラとジンバルによって安定した美しい映像が撮影できるため、空中からの印象的なショットが可能になります。

商業映像やドキュメンタリー制作の現場では不可欠なツールとなっており、映像演出の幅を広げています

ただし、飛行には許可申請が必要な場合があり、天候や撮影環境によっては中止を余儀なくされるケースもあるでしょう。また、周囲への配慮や騒音・プライバシー問題にも注意が必要です。

パフォーマンス用ドローン

パフォーマンス用ドローンは、主にイベントや観光地でのショー演出に使用される産業用ドローンです。複数の機体を同期させ、音楽や照明と連動した演出を空中で展開することで、従来にはない視覚体験を提供します。

LEDを搭載したドローンが夜空に模様を描く様子は、国内外の観光プロモーションや企業イベントでも注目を集めています

群制御のプログラム技術が鍵となる一方で、環境音への配慮、風の影響、演出時間の制約など、演出の自由度には限界もあるというのが現在の課題です。

パフォーマンス用ドローンについてより詳しく知りたい方は、パフォーマンス用ドローンに特化した以下の記事をご覧ください。

続いては、産業用ドローンはいくらで導入できるのか?という疑問に応えるべく、産業用ドローンの価格相場について詳しく解説します。

いくらで導入できる?産業用ドローンの価格相場を紹介

いくらで導入できる?産業用ドローンの価格相場を紹介

産業用ドローンの価格は、数十万円ほどの比較的安価なものから、数百万円に達する高性能なタイプの産業用ドローンまで幅広く存在します。

価格に影響を与える主な要因として、機体のサイズや搭載可能なセンサーの種類、稼働可能な飛行時間、耐候性や防水・防塵などの特殊性能が挙げられます。

例えば農薬散布用ドローンでは大容量タンクやパワフルなモーターが必要になり、測量・点検用ドローンでは高精度カメラや赤外線・LiDARなどを搭載するために価格が上がりやすいです。

防災・救助用では特殊環境での飛行に耐える設計や夜間・悪天候での運用を想定したセンサー類が求められ、コストが高額になりやすい傾向です。

より具体的な製品タイプごとの価格帯を解説

産業用ドローンは、搭載する機能や性能、想定される用途によって価格が大きく異なります。ここでは、大まかな目安として、性能や価格帯によるタイプ分類とそれぞれの価格帯を紹介します。

産業用ドローンには、明確な業界標準のクラス分けがあるわけではありませんが、性能や価格帯から大別すると、以下のような傾向が見られます。ただし、これはあくまで目安であり、製品ごとに仕様や価格は多様です。

産業ドローンのクラス エントリーレベル ミッドレンジ ハイエンド
おおよその価格 約50万円 ~ 70万円程度 約70万円 ~ 200万円程度 約200万円以上

※上記の価格帯はあくまで一般的な目安です。搭載するカメラやセンサーの種類・性能(赤外線、LiDAR、高倍率ズーム、マルチスペクトルなど)、機体の飛行性能、バッテリー性能、ソフトウェア、メーカー、保守サポートの内容などによって価格は大きく変動します。

この章では、産業用ドローンの価格帯の目安について解説しました。導入を検討する際は、まず自社の目的や必要な機能を明確にすることが重要です。

「必要以上の高機能機を導入してしまう」「逆に機能が足りない」といった失敗を避けるためにも、価格帯の目安を参考にしつつ、個別の製品について詳細な仕様と価格を確認し、比較検討することを強くお勧めします。

産業用ドローンを導入するメリット・デメリットを解説

産業用ドローンを導入するメリット・デメリットを解説

産業用ドローンは、さまざまな分野で作業効率向上を可能にするツールとして注目されています。一方で、技術的・制度的な課題も存在しており、導入前に両面をしっかりと把握しておくことが重要です。

導入によって得られるメリット

産業用ドローンのメリットは、業務の効率化と省人化にあります。

例えば農業では、1ヘクタールの圃場に対して従来の人力散布が約90分かかるところを、産業用ドローンであれば10分程度に短縮できます。これにより作業者の負担を軽減しつつ、作業の正確性も向上するでしょう。

建設や測量分野においては、高精度な地形データの取得や広範囲の現場撮影が短時間で可能となるため、プロジェクト全体の進行スピードが加速し、測量コストの削減にもつながります。

さらに、高所点検や災害現場の調査など、危険を伴う作業を遠隔で安全に実施できる点も産業用ドローンの魅力です。

また、映像制作や観光分野では、空撮によってこれまでにない視点からの映像表現が可能となり、企業のブランディングやプロモーションにも貢献します。

事前に知っておきたいデメリット

一方で、産業用ドローンの導入にはいくつかの課題もあります。

まず、航空法や関連規制への対応が必要であり、飛行許可の取得や飛行ログの管理、特定飛行時の手続きなど、法令遵守のための運用体制が求められます。

また、産業用ドローン自体の購入費用だけでなく、バッテリーやセンサーの定期的な交換、ソフトウェアのサブスクリプションなど、継続的なコストも課題の一つです。

加えて、産業用ドローンの飛行には一定の操作スキルが必要であり、操縦者には国家資格(無人航空機操縦者技能証明)を求められるケースもあります。

さらに、強風・雨天・高温といった気象条件によっては飛行が制限されるため、全ての業務を常に産業用ドローンに任せられるわけではないという点にも留意が必要です。

以上のように、産業用ドローンには多くの可能性がある一方で、適切な導入と運用のためには準備と継続的な管理が不可欠です。これらを踏まえた上で、自社に合った機体の選び方を知ることが、成功への第一歩となるでしょう。

次は、数ある機体やメーカーの中から自社に合った産業用ドローンを選定するために押さえておきたい重要なポイントを解説します。

3つのポイントから産業用ドローンの選び方を解説

産業用ドローンの選び方

産業用ドローンは業務効率化やコスト削減に貢献しますが、その導入は機種選定の段階でつまずくケースも少なくありません。

目的や環境に合わない機体を選んでしまうと、「導入したものの使えない」「期待した効果が出ない」といった失敗に繋がりかねません。そうした事態を避け、着実に成果を出すために、本章では特に重要となる選定基準として以下の3つのポイントを解説します。

飛行環境への適合性を見極める

産業用ドローンを選ぶ上で重要なポイントのひとつは、飛行環境への適合性です。

運用する場所の広さや高さ、障害物の有無、さらにはGPSやWi-Fiといった電波の強度によって、求められる機体の性能、サイズ、センサーは異なります。

環境に適さない機体を選ぶと衝突や墜落、通信トラブルによる業務停止のリスクが高まり、特に屋内や設備が密集したエリア、電波が不安定な工場のような環境では致命的となりかねません。

飛行環境に最適なドローンを選定することで、計画通りの安定した飛行が実現し、点検や搬送といったタスクの確実性が向上するでしょう。

目的タスクに最適なペイロードを選ぶ

目的とするタスクに特化したペイロード(搭載機器)を考慮することが、産業用ドローンの選定には不可欠です。

高所設備の点検に必要な高解像度カメラ、部品搬送のための適切なアームやコンテナ、環境データ計測用の特殊センサーなど、実施したい作業内容によって搭載すべき機器は変わります。

もし目的外のペイロードしか搭載できない機体を選んでしまえば、導入目的であるタスクそのものを実行できなくなり、特に特定の設備に対する精密な非破壊検査や、指定された場所への正確な部品搬送が求められる状況では導入の意味がありません。

タスクに最適化された専用機器を搭載できるドローンを選ぶことで、従来の人手による作業を凌駕する高精度なデータ取得や、効率的な物品搬送が実現可能となります。

安全機能と安全確保の仕組みを確認する

失敗しない産業用ドローン選びには、安全機能と安全確保の仕組みの確認が欠かせません。

ドローンの飛行エリア周辺での人の作業頻度、近接する設備の重要度や破損時のリスク、そして企業が定める安全規定などによって、必要とされる安全機能のレベルは判断されます。

衝突回避センサーや自動帰還、緊急停止といった安全機能が不十分な機体は、万が一の際に人への危害や設備の重大な損壊事故を引き起こす可能性があります。

人の近くや高価な設備の上空を飛行させる場合、または連続自動運転を行う際には特に慎重な検討が必要です。

工場の安全基準を満たす十分な安全機能安全確保の仕組みを備えたドローンを導入することで、予期せぬトラブル発生時にも被害を最小限に食い止め、従業員と貴重な設備を守りながら安心して運用できる体制を構築できます。

ここまで紹介した3つの視点を押さえておくことで、貴社にとって最適な産業用ドローンを選ぶことが期待できます。

次は、具体的にどのメーカーがどのような特徴を持った産業用ドローンを提供しているかを比較してみましょう。

おすすめの産業用ドローンメーカーを紹介! 各社の製品や強みも解説

おすすめの産業用ドローンメーカーを紹介! 各社の製品や強みも解説

ここでは、おすすめの産業用ドローンメーカーを紹介します。自社の用途や環境に最適なメーカーを見つけてください。

※JET-Globalの問い合わせフォームに遷移します。
※一部メーカーとは提携がない場合がありますが、ユーザー様に最適なご案内ができるよう努めています。

ACSL / エーシーエスエル

メーカー名 ACSL / エーシーエスエル
設立年 2013年
本拠地 東京都江戸川区
概要 国産産業用ドローンメーカー

エーシーエスエルは2013年に東京都江戸川区で設立した、国産の産業用ドローンメーカーです。NDAA準拠の高度な情報セキュリティと第一種型式認証機体を含む自律制御技術が強みです。

代表的な産業用ドローンとしてPF2-CAT3、SOTEN、Miniがあり、自律制御と高セキュリティ性能を備える点に優れ、安心して運用できる特徴があります。

実際に、PF2-CAT3はANAホールディングスによる離島配送や日本郵便の医薬品輸送などで活用されています。

ヤマハ発動機 / Yamaha Motor

メーカー名 ヤマハ発動機 / Yamaha Motor
設立年 1955年
本拠地 静岡県磐田市
概要 無人ヘリとマルチローターを開発する総合モビリティメーカー

ヤマハ発動機は1955年設立の歴史ある総合モビリティメーカーで、無人ヘリとマルチローター技術を提供しています。30年以上に及ぶ産業用無人ヘリの量産実績と最大50kg級ペイロード対応のエンジン技術が強みです。

産業用ドローンとしてはFAZER R G2があり、長時間の飛行と高重量ペイロード対応に優れており、山間部物流や大規模農薬散布に適しています。

FAZER R G2は長崎県離島での鮮魚空輸実証や九州電力送電線資機材運搬、静岡県の森林レーザ計測サービスRINTOで実運用されています。

エアロセンス / Aerosense

メーカー名 エアロセンス / Aerosense
設立年 2015年
本拠地 東京都北区
概要 VTOL型測量・監視ドローンとクラウド解析を提供するメーカー

エアロセンスは2015年に設立された測量・監視ドローンメーカーです。VTOL固定翼「Aerobo Wing」とクラウド解析を融合させた長距離測量ソリューションに強みを持ちます。

主要な産業用ドローンにはAerobo Wing、Aerobo PPK、Aerobo On Airがあり、飛行から点群生成まで一貫したワークフローを提供できる点が魅力です。

Aerobo Wingは道路・河川インフラの点検、建設現場の無人化監視、砂防堰堤の広域測量などで導入されています。

SkyDrive / スカイドライブ

メーカー名 SkyDrive / スカイドライブ
設立年 2018年
本拠地 愛知県豊田市
概要 eVTOLと大型物流ドローンを開発する次世代航空スタートアップ

スカイドライブは2018年設立の次世代航空スタートアップで、大型物流ドローンやeVTOLの開発に注力しています。

中でもSkyLiftは最大30kgまでホイストで吊り下げられる非着陸荷下ろし機能を備え、物資を着陸せずに届ける運用性に優れており、山岳地帯への物資輸送に強いです。

実際、送電鉄塔への塗料運搬や災害地への物資投下、能登半島地震時の支援物流などで活用されています。