非破壊検査ロボット

非破壊検査ロボット

検査ロボットの中でも、対象物を破壊せずに内部の欠陥を検知できる非破壊検査ロボット。複雑な部品や多品種少量生産にも柔軟に対応できる点が評価され、航空宇宙や自動車、エネルギーなど様々な分野で重要な位置づけを占めています。

しかし、「非破壊検査ロボットには、どんな技術や種類があって、どれが自社に合うのか分からない」「コストや精度など、検討すべき項目が多すぎて導入の決定に踏み切れない」と悩む企業も少なくありません。

そこで本記事では、非破壊検査ロボットの基本的な仕組みや種類の違い、選び方のポイント、さらには具体的なおすすめメーカーの特徴までを一挙に解説します。

「自社の製品や工程に合った最適な非破壊検査ロボットを導入して、品質向上とコスト削減を同時に実現したい」という方にとって、有益な内容です。ぜひ最後までお付き合いください。

非破壊検査ロボット以外にも、検査ロボットには、寸法検査ロボットや外観検査ロボット等があります。検査ロボット全般について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

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目次

非破壊検査ロボットとは? 特徴や仕組み、活用例を解説

非破壊検査ロボット

非破壊検査ロボットとは、製品や部品の内部を破壊せずに自動で検査を行うロボットを指します。X線や超音波、渦流などの技術を用いて、部材の内部状態を可視化・解析し、欠陥の有無を調査可能です。

非破壊検査ロボットの仕組みは、対象物に適した検査技術を搭載し、その技術によって得られたデータをロボットが自動的に処理・評価する形をとります。

通常、人が行う検査では作業時間や検査者の技能レベルによって結果が左右されやすいのに対し、非破壊検査ロボットであれば自動化による安定性と再現性が期待できます。

具体的な活用例としては、航空機や自動車、船舶の重要部品の検査や、大型プラントの配管・タンクなどの内部検査、半導体製造装置の部品チェックなどです。

特に、高い安全性や精度が求められる製造現場では、非破壊検査ロボットを導入するメリットが大きいと言えます。

非破壊検査ロボットを検査技術ごとに種類分けして解説

非破壊検査ロボット

非破壊検査ロボットは、活用する検査技術によって分類できます。ここでは代表的な4つの技術であるX線、超音波、渦流、磁粉探傷について、それぞれの特徴や他技術との比較におけるメリット・デメリットを解説します。

X線技術を用いる方法

X線技術を用いる非破壊検査ロボットは、X線を対象物に照射し、その透過率や画像情報から内部の欠陥を検知する方法です。金属や樹脂など、ある程度の厚みがある材料でも、内部構造を可視化することが可能です。

特に部材の内部に気泡や亀裂が存在する場合など、目視や外部測定では見つけにくい欠陥を検出しやすい点が特長となります。

X線技術を用いる非破壊検査ロボットのメリット

  • 内部構造を画像として捉えられるため可視性が高い
  • 金属などの多様な素材を検査できる
  • 欠陥の有無を直接的に判断しやすい

X線技術を用いる非破壊検査ロボットのデメリット

  • 放射線防護のため設備面でのコストが高い
  • 素材によっては十分な透過率が得られない場合がある
  • 運用に放射線取扱資格など専門知識が必要

超音波技術を用いる方法

超音波技術を用いる非破壊検査ロボットは、対象物に超音波を送り込み、反射波や透過波を解析して内部欠陥を検出する方法です。X線と比べて安全性が高く、装置も比較的コンパクトにまとめられるため、製造ラインへの導入が比較的容易という利点があります。

特に、溶接部分の検査やボルトの締結状態確認など、金属部品の内部に発生しやすい欠陥を把握しやすいことが特徴です。

超音波技術を用いる非破壊検査ロボットのメリット

  • 放射線防護が不要で安全性が高い
  • 装置の小型化が可能で、現場への導入が容易
  • 厚い金属部品でも欠陥を検出しやすい

超音波技術を用いる非破壊検査ロボットのデメリット

  • 検査箇所の形状や材質によって波の伝播が複雑になる
  • 解釈に専門知識が必要で、熟練度で精度が左右されやすい
  • X線ほど内部画像を直感的に把握できない

渦流技術を用いる方法

渦流技術を用いる非破壊検査ロボットは、対象物に電磁誘導を利用して電流(渦電流)を発生させ、その変化を測定することで欠陥の有無を調べる方法です。特に導電性を持つ金属材料の表面や浅い内部の検査に適しており、微小な亀裂や表面欠陥の検出が得意です。

また、検査速度が速いため、大量生産ラインでの品質チェックに用いられることが多い技術です。

渦流技術を用いる非破壊検査ロボットのメリット

  • 高速検査が可能で生産ラインに組み込みやすい
  • 微小な表面欠陥を高精度で検出できる
  • 放射線や液剤などを使用しないため安全性が高い

渦流技術を用いる非破壊検査ロボットのデメリット

  • 非導電性の素材には原則的に適用できない
  • 厚みのある金属の深部欠陥検出には不向き
  • 形状が複雑な部品では検出領域の設定が難しい

磁粉探傷技術を用いる方法

磁粉探傷技術を用いる非破壊検査ロボットは、対象物を磁化し、表面や近表面の欠陥部分で磁束の乱れを生じさせ、そこに磁粉を付着させることで欠陥を可視化する方法です。

主に鉄鋼材などの強磁性体の検査に用いられ、表面や浅い層に発生している亀裂を比較的容易に発見することができます。

磁粉探傷技術を用いる非破壊検査ロボットのメリット

  • 強磁性体材料の表面欠陥を直接視認できる
  • 比較的簡易な装置で導入しやすい
  • 速度とコストの両面で効率が良い場合が多い

磁粉探傷技術を用いる非破壊検査ロボットのデメリット

  • 対象が強磁性体に限られる
  • 内部深くの欠陥は検出しにくい
  • 磁粉の散乱や部品形状によって検査精度が左右される

自社で検査したい対象や検査精度・度合い、コスト等を振り返ったうえで、適した非破壊検査ロボットの種類を選定しましょう。

また種類以外にも、非破壊検査ロボットを選ぶ際に確認しておきたい項目はあります。次章では、非破壊検査ロボットの選び方を解説するので、ぜひご一読ください。

導入を成功させるために知っておきたい非破壊検査ロボットの選び方

非破壊検査ロボット

非破壊検査ロボットにも多くの種類があり、それぞれ得意不得意があるため、それらを理解せずに選定をして導入すると、失敗しかねません。

本章で解説する非破壊検査ロボットの選び方を参考にして、導入を成功させる糸口を掴んでください。

検査手法に合わせた選定

まず解説する非破壊検査ロボットの選び方は、狙う欠陥の種類や大きさ、部品の材質・構造に合わせた最適な検査手法の見極めです。

部品の形状や材質、検査対象となる欠陥の深さや種類によって最適な検査手法が左右されるため、導入を検討する段階でこれらの要素を正確に把握する必要があります。

もし適切な検査手法を搭載しない非破壊検査ロボットを選んでしまうと、欠陥を見逃したり不要な検査を行ったりして品質管理やコストに悪影響が生じます。特に複数の材質や形状の部品を扱う製造ラインや欠陥パターンが多様な工場では注意が必要です。

一方で、検査手法を正しく選ぶことができれば高い欠陥検出精度が見込めるため、製品の信頼性を向上させつつ市場競争力を強化する良い循環を作り出せるでしょう。

部品形状やサイズに応じた検査範囲の最適化

非破壊検査ロボットの選定では、検査深度やスキャン可能範囲が部品の大きさや形状に合致するかどうかが重要なポイントになります。

部品サイズや内部構造、さらに非破壊検査ロボットの可動域やプローブの配置などによって検査可能範囲は変動するため、現場条件に合わせた確認が不可欠です。

仮にスキャン範囲が適切でない非破壊検査ロボットを導入してしまうと、欠陥を見落とすリスクが高まるだけでなく、不要な領域まで検査して時間やコストを余計に消費します。

そのため、大型部品や複雑形状のワークを扱う現場や限られたスペースの工場では特に問題が顕在化するでしょう。

しかし、検査範囲を最適化できる非破壊検査ロボットを選べれば、効率的な全数検査が実現し、不良品の流出を防ぎつつ検査時間を短縮できるため、生産性の向上と品質の確保を両立させることが可能になります。

リアルタイム解析と即時判定機能の重視

非破壊検査ロボットの選定では、検査データをリアルタイムで解析でき、合否判定を即座にフィードバックする能力を備えた機種を選ぶことも大切です。

対象物の材質や欠陥の特性に合わせ、高度な信号処理や画像処理アルゴリズムが必要となるため、現場の条件や扱う製品の要求精度に応じて選び方が変わってきます。

解析速度や精度が不十分な非破壊検査ロボットを選定すると、欠陥を見逃したり誤判定が多発したりして追加検査や手戻りが増えるだけでなく、生産性の低下を招きやすく、大量生産ラインや高い品質基準が求められる現場では特にリスクとなります。

しかし、リアルタイムで正確にデータ解析を行える非破壊検査ロボットを選ぶことができれば、不良流出の防止と円滑な検査ライン運用を両立し、結果として安定した高品質の製品を迅速に市場へ供給できるようになるでしょう。

自社に適した非破壊検査ロボットの特徴のイメージはついたでしょうか。

次章では、非破壊検査ロボットのメーカーを数社紹介するので、気になる会社があればお問い合わせをしてみてください。

当編集部おすすめの非破壊検査ロボットメーカーを紹介! 各社の特徴比較も

非破壊検査ロボット

本章では、JET-Globalがおすすめする非破壊検査ロボットのメーカーを紹介します。各社の特徴を比較して、それぞれの強みも解説するのでぜひご一読ください。

中外テクノス/Chugai Technos

メーカー名 中外テクノス/Chugai Technos
設立年 1953年
本拠地 広島県広島市
概要 環境調査や非破壊検査装置を手掛ける総合検査メーカー

中外テクノスは1953年に広島県広島市で設立した、環境調査や非破壊検査装置を手掛ける総合検査メーカーです。長年培った放射線技術やセンサー技術を活用してオーダーメイドの検査システム開発を行い、多様なニーズに応えています。

X-VARIOSという非破壊検査ロボットを製造しており、高精度な検査が可能な点が注目されています。

内部(X線)と外部(可視カメラ)の欠陥検査を同時に行える複合検査機能やAIによる自動検出機能を備えており、ほかのメーカーの非破壊検査ロボットと比較して多角的な検査を効率的に実施できる点が強みです。

自動車部品や大型構造物など少量多品種生産が求められる製造業で導入されており、特に品質保証工程で効率的に内部・外部の欠陥を検出する用途で活用されています。

東芝/Toshiba

メーカー名 東芝/Toshiba
設立年 1875年
本拠地 東京都港区
概要 エネルギー、インフラ、電子機器、デジタルソリューションなどを手掛ける総合電機メーカー

東芝は1875年に東京都港区で設立された、エネルギー、インフラ、電子機器、デジタルソリューションなどを手掛ける総合電機メーカーです。特に重電分野や社会インフラにおける高度な技術開発力を持ち、医療や発電プラント向けの非破壊検査技術を活用した製品開発にも注力しています。

同社が提供する非破壊検査ロボットである「スポット溶接検査ロボット」は超音波技術「Matrixeye™」を活用し、溶接部位を3D映像化することで高精度な検査が可能です。

さらに、「傾き推定エンジン」により、プローブ角度を自動調整し、従来よりも高速な検査が実現しました。

主に、自動車産業のスポット溶接部位の品質保証に活用されており、効率的かつ高品質な非破壊検査を可能にしています。

エビデント/Evident

メーカー名 エビデント/Evident
設立年 2021年
本拠地 東京都新宿区
概要 非破壊検査機器や工業用顕微鏡などを開発・製造するメーカー

エビデントは2021年に東京都新宿区で設立され、非破壊検査機器や工業用顕微鏡などを幅広く開発・製造している企業です。オリンパスから継承した100年以上の技術力を活かし、超音波フェーズドアレイ技術やAI・IoTを取り入れた柔軟な検査ソリューションを提供しています。

同社が開発する「自動検査ロボットソリューション」は、大型対象物にも対応できる高精度の非破壊検査を実現する点で注目されています。超音波フェーズドアレイ技術を用いて、ほかのメーカーと比較してより複雑な形状の部品を省力化しながら自動で検査できることが特徴です。

風力発電設備、自動車製造業など多様な分野で導入が進んでおり、品質保証やメンテナンスの効率化に寄与する非破壊検査ロボットとして評価を得ています。

以上がJET-Globalがおすすめする非破壊検査ロボットのメーカーです。気になるメーカーがある場合は、以下のボタンからJET-Globalにお問い合わせください。

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