パラレルリンクロボット

パラレルリンクロボットのIC

産業の現場で活躍するパラレルリンクロボットは、その高速で精密な動作により、生産性の向上を支えています。

しかし、パラレルリンクロボットにはさまざまな種類があり、それぞれの特性やメリットを理解することが重要です。

本記事では、3種類のパラレルリンクロボットを詳しく解説し、その特性や利点を紹介します。

目次

3種類のパラレルリンクロボット

パラレルリンクロボットの種類と特徴

パラレルリンクロボットは、産業用ロボットの一種で、複数のリンクとアクチュエータ(駆動装置)を平行に配置して、プラットフォームの動きを制御する機械です。主に、高速で精密な動作が要求されるピッキング作業や組み立て作業などに使用されています。

この機械は複数のリンクが並列に構成されているため、剛性が高く、高速作動時でもリンク部分の変形が少なく、精度の高い動作が可能です。

また、パラレルリンクロボットは高精度のセンサーを搭載し、高速で移動することができるため、動く対象物に対して迅速に反応し、効率的なピッキングが可能です。

パラレルリンクロボットには、以下の3種類が挙げられます。

  • 3軸パラレルリンクロボット
  • 4軸パラレルリンクロボット
  • 6軸パラレルリンクロボット

3軸パラレルリンクロボット

3軸パラレルリンクロボットとは、3つの自由度(X, Y, Z軸)を持つパラレルリンクロボットです。

このロボットの主な強みは、以下のとおりです。

  • シンプルでコストが低い
  • 軽量で設置が容易
  • メンテナンスが簡単

このため、主に簡易な組立作業に用いられることが多いです。

4軸パラレルリンクロボット

4軸パラレルリンクロボットとは4つの自由度(X, Y, Z軸 + 回転軸)を持ち、回転動作が可能で応用範囲が広く、軽量で設置が容易なロボットです。メンテナンスが比較的簡単という強みがあります。これにより、回転作業を必要とする簡易な組立作業に使用されます。

強みとしては、以下のとおりです。

  • 回転動作が可能で応用範囲が広い
  • 軽量で設置が容易
  • メンテナンスが比較的簡単

このロボットは、特に簡易な組立作業での使用に適しています。

6軸パラレルリンクロボット

6軸パラレルリンクロボットは、6つの自由度(X, Y, Z軸 + 3回転軸)を持ち、柔軟な動作が可能です。高度な作業に適応し、高度な精度と速度を実現します。これにより、高精度を要求される製造現場に使用されます。

強みとしては、以下のとおりです。

  • 柔軟な動作が可能
  • 高度な作業に適応
  • 高度な精度と速度

このロボットは、高精度を求める製造現場で特に有用です。

パラレルリンクロボットを活用するメリット・デメリット

パラレルリンクロボットの強みと課題

作業の効率化で役立つパラレルリンクロボットですが、メリットだけでなくデメリットも含めて導入を検討する必要があります。このセクションでは、パラレルリンクのメリットとデメリットをご紹介します。

メリット

パラレルリンクロボットには、以下のメリットがあります。

  • 高速で精密な動作
  • トラッキング性能が高い
  • メンテナンスが容易

高速で精密な動作

パラレルリンクロボットは、複数のリンクが並列に構成されているため、剛性が高いです。高速作動時でもリンク部分の変形が少なく、精度の高い動作が可能です。

そのため主に以下のような用途で活躍します。

  • 電子部品の高速ピッキングシステム
  • 食品包装などの組み立てライン

トラッキング性能が高い

高精度のセンサーを搭載し、高速で移動することができるため、動く対象物に対して迅速に反応し、効率的なピッキングが可能です。

そのため主に以下のような用途で活躍します。

  • コンベア上を流れる製品のピッキングや仕分け作業
  • 食品のパレット詰め自動化

このロボットは、特に効率性と精度が求められる現場で有用です。

メンテナンスが容易

パラレルリンクロボットは、構成がシンプルで共通部品が多用されているため、メンテナンスが比較的容易です。

そのため主に以下のような用途で活躍します。

  • 長期間にわたる連続稼働が必要な生産ライン
  • トレー詰め・袋詰め工程への導入

デメリット

一方で、パラレルリンクの導入の際には、以下のデメリットも考慮する必要があります。

  • 作業領域が狭い
  • 可搬重量が小さい
  • 初期費用が高額

作業領域が狭い

パラレルリンクに搭載されている機構は広範囲での作業が難しく、限られた範囲内での動作に適しています

広い範囲でパラレルリンクロボットを活用する必要がある場合は、複数台のパラレルリンクロボットを協調して稼働させることがおすすめです。

可搬重量が小さい

パラレルリンクロボットは構造がシンプルなため、可搬重量が比較的小さく、1kg~10kg程度が一般的です。

重量物を扱う場合は、並列しているリンクの本数を増やしたり、リンクの剛性やモーターの出力を上げることで対応することがおすすめです。

初期費用が高額

パラレルリンクロボットは初期費用が高額になりやすく、周辺機器やシステムインテグレーションにも費用がかかります

この機械に投資をする際は、まずは長期的な投資として考え、生産性の向上や品質の安定化によるコスト削減を評価することがおすすめです。また、導入前に詳細な費用対効果分析を行い、最適なロボット選定を行うようにしましょう。

6つの比較基準 | パラレルリンクロボットの選び方

パラレルリンクロボットの選定基準

パラレルリンクを導入する際は、以下の6つのポイントを抑える必要があります。

  • リンクの長さ
  • リンクの剛性
  • 可搬重量
  • 作業速度
  • トルク
  • センサーの精度

リンクの長さ

パラレルリンクロボットのリンクの長さが変わることで、作業範囲、可搬重量、速度、精度などが変化します。

長いリンクを持つパラレルリンクロボットは、作業範囲が広くなり、大きな作業スペースでの作業が可能になります。また、長いリンクは、高い可搬重量を持つことができるので、重い物体を効率的に扱える利点があります。

逆に、短いリンクを持つパラレルリンクロボットは、高速作業に適しているので、加速・減速が素早く行えます。また、短いリンクは、振動や歪みが少なく、高い精度を維持できるので、精密な作業に最適です。

リンクの剛性

リンクの剛性が変化すると、ロボットの動きの精度や安定性、可動範囲が変わります。リンクの剛性が高い場合のメリットとして、ロボットの高い精度と安定性が維持されることが挙げられます。また、高速動作に耐えることができ、ピッキングや組立などの精密作業に適しています。

一方で、リンクの剛性が低い場合のメリットとして、広い可動範囲を持つことができます。リンクの柔軟性が高いため、特定の作業に適しています。

可搬重量

リンクの剛性が変化すると、ロボットの動きの精度や安定性、可動範囲が変わります

リンクの剛性が高い場合のメリットは、ロボットの高い精度と安定性が維持されることです。また、高速動作に耐えることができ、ピッキングや組立などの精密作業に適しています。

一方、リンクの剛性が低い場合のメリットは、広い可動範囲を持つことです。リンクの柔軟性が高いため、特定の作業に適しています。

作業速度

パラレルリンクロボットの作業速度は、CPM(Cycles Per Minute)と呼ばれる指標で表され、ロボットの作業効率に影響します。これは、特定の動作パターンでロボットが動ける回数(速さ)を示しています。ただし、実際の動作ではロボットがワークを吸着・離脱(掴む・離す)する時間も考慮する必要があります。

作業速度が高い場合のメリットは、高速な作業が可能で生産性が向上することです。また、一定の精度を保ちながら素早くタスクを遂行できるため、24時間稼働が実現でき、人手不足の解消にもつながります。

一方、作業速度が低い場合のメリットは、精密な作業が求められる場合に適していることです。作業範囲が狭いため正確な位置決めが可能であり、高重量な物体を扱う必要がない場合に効率的です。

トルク

トルクが高い場合、ロボットは重い物体を持ち上げたり、高い速度で動作したりできます。逆に、トルクが低い場合、制限された重量しか扱えません。

トルクが高い場合のメリットは、重い物体を持ち上げることができることです。また、高い負荷をかけても安定した動作が可能です。

一方、トルクが低い場合のメリットは、アクチュエータが軽量でコンパクトであることです。さらに、電力消費が少ないという利点もあります。

センサーの精度

センサーの精度が変動すると、ロボットの制御に影響を及ぼします。位置検出や物体検出の正確さ、トラッキングの精度などが変化します。

センサーの精度が高い場合のメリットは、高速で正確な動作を実現できることです。また、ピッキング作業や組み立て作業などで高いトラッキング性能を発揮し、メンテナンスが容易で安定した作業を継続できる点も挙げられます。

一方で、センサーの精度が低い場合のメリットは、低いセンサー精度でも基本的な作業が可能であることです。さらに、初期費用が低く予算に合った導入ができるという利点もあります。

パラレルリンクロボットを製造するメーカー5社

パラレルリンクロボットを製造する会社5選

パラレルリンクロボットを製造する主なメーカーには、以下の5社が挙げられます。

  • ファナック
  • パナソニック
  • 安川電機
  • 村田機械
  • オムロン

ファナック

ファナック(FANUC)は、産業用ロボットの分野で世界的に有名なメーカーです。ファナックのパラレルリンクロボットは、高速で精密な作業を行うために開発されています。

同社は、主に6軸数のパラレルリンクロボットを主に製造しています。

パナソニック

パナソニックは、日本の大手電機メーカーであり、さまざまな分野で活躍しています。家電から産業用機器まで幅広い製品を提供しており、その技術と品質で世界中の人々の生活をサポートしています。

同社は、6軸数のパラレルリンクロボットを主に製造しています。

安川電機

安川電機は、産業用ロボットの分野で世界的に有名なメーカーです。安川電機は、小物の高速搬送や包装・梱包の自動化に向けて、パラレルリンク機構を採用したロボットを製造しています。

同社は、主に4軸数のパラレルリンクロボットを製造しています。

村田機械

村田機械は、1935年に設立された工作機械メーカーです。主要な事業内容は、ロジスティクスシステムや工作機械、情報機器の分野です。

同社は、主に3~6軸数のパラレルリンクロボットを製造しています。

オムロン

オムロンは、パラレルリンクロボットを製造しているメーカーであり、その製品は高速ピック&プレースを実現する特長を持っています。

同社は、主に4軸数のパラレルリンクロボットを製造しています。