警備ロボット

警備ロボットIC

安全な企業運営をしていくためには、警備業務は必要不可欠です。しかし現実は、そうではありません。給料が高い夜間や、休日作業の警備員の人件費ですら痛手に感じる企業が多いようです。

企業のニーズに応えるために、警備業界ではロボット技術の革新が起きています。高機能のカメラ・センサーと、画像認識AIを搭載した自律可能なロボットを各メーカーが発売。警備員の人的リソースは、削減可能なレベルまでに到達しました。

ところが、自律警備ロボットは新しい技術のため、企業に導入をしようと稟議書を提出しても、決裁者に「魅力」が伝わりにくいようです。「費用対効果が数値化できずに、稟議の許可がおりない」「メリットがわからず、上司に説明ができない」といった悩みを抱える方も増えています。

そこで、本記事では、各メーカーが発売する警備ロボットの特徴や価格について触れていきます。

目次

警備ロボットとは

警備ロボットとは

警備ロボットとは、高機能のカメラ・センサー、画像認識AIを搭載し、自律運転により警備を行うロボットです。より人間に近い判断ができるようになったロボットと言えます。昨今のロボット技術向上により、警備ロボットは、警備員の業務を代行できるレベルまで進化しています。

人による警備のデメリットは、警備の品質にばらつきがあることではないでしょうか。日々の疲労や、気分の変化に大きく左右され、常に同じ警備ができているとは限りません。

一方のロボットは疲労や気分に左右されず、入力されたプログラム通りに警備ができます。昨今では、画像判定AI技術が進化しており、自動認識機能により倒れている人や不審者でさえも識別可能です。高性能なセンサーで、障害物や移動している物を検知し、自律運転までできるようになりました。

機種によっては無線接続、もしくはロボットに搭載されたロボットアームで、さまざまな作業ができます。今までは考えられなかった「エレベーターでの階層移動」も可能です。ますます、警備業務を代行できるようになったと言えます。

警備ロボットを導入すれば、人的リソースを減らせる可能性があります。活用方法によっては、今まで以上の警備効率を生み出すことも可能です。

3種類の警備ロボットと導入効果

3種類の警備ロボットと導入効果

警備ロボットは、以下の3種類に分けられます。ロボットのサイズによっては、搭載できる部品に制限があり、監視機能や稼働時間に差があります。ここでは、各ロボットの特徴を説明します。

  • 巡回型
  • ドローン型
  • 遠隔型

巡回型ロボット

巡回型ロボットは、特定のエリアや施設内をプログラムにしたがって自律的に巡回し、安全や異常検知をおこないます。シンプルな監視能力と長時間稼働が特徴です。

監視能力・自律機能

巡回型ロボットは、サイズも比較的大きいため、さまざまな機能が搭載可能です。複数のカメラ・センサーにより、多角的に状況を把握ができます。加えて、画像認識AIで周囲の状況を判断し、倒れている人や不審者を判別可能です。

自律走行性にも優れ、障害物に引っかかって止まらないように設計されています。ステレオカメラ、赤外線センサーなどにより、止まっている障害物だけではなく、動いている人・ペットも避けながら巡回できます。

異常を検知した際には、監視センターや担当者のスマホ・タブレットなどに警報を送信します。通信規格も大きく改善され、映像やデータをリアルタイムに送ることで、鮮明な情報を伝えられるようになりました。

警備ロボットが収集したデータは、クラウド上にアップロードされます。ログを追いかければ、いつ・どこで・何が起こったのかを、遡って確認できます。異常の早期発見や予防策の提案に役立ちます。

機種によっては、音声コミュニケーションや、強烈な煙を発生させて威嚇できます。不審者を発見した場合にも、一時的にロボットが対応してくれるため、警備員の安全も守りやすくなります。

稼働時間

巡回型警備ロボットの稼働時間は4〜8時間程度で、他の警備ロボットと比較すると稼働時間が長いことが特徴です。夜間や休日など、人的リソースが割きにくいシーンでも、十分活用できます。

多くのロボットが、自動充電機能を備えています。バッテリーが少なくなれば、自動で充電スポットに移動して充電します。機種によっては、充電中に監視が続けられます。充電のためだけに出社する必要はありませんから、休日はゆっくり休めるのではないでしょうか。

ただし、一点注意が必要です。充電中はその場で監視ができても、巡回警備ができません。施設、工場、オフィスビル全体を警備するためには「複数台警備ロボットを導入する」「人が警備する」などの対策を考える必要があります。

活躍するシーン

巡回型警備ロボットは、シンプルな機能で扱いやすく、オフィス・商業施設・工場など、さまざまな場所の巡回に適しています。特に、夜間や休日中などの社員や警備員がいない会社の警備をさせるのは、大きなメリットがあると言えます。

24時間フルタイムで警備員を導入するのは、コスト的・業務的にも非常に厳しいケースがほとんどです。ロボットであれば導入コストはかかりますが、運用中はプログラムに従って、一定の警備品質を保って巡回できます。長期的に考えれば、費用対効果で採算が取れるかもしれません。

巡回型警備ロボット導入に向けて考慮したいのは、警備員とロボットの役割を明確にすることです。2024年現在では、警備ロボットだけで全ての警備をこなせません。咄嗟の判断や、複雑な業務では、警備員との連携が必要になる場面も多いです。

ドローン型巡回ロボット​

ドローン型巡回ロボットは、ドローンで空中から監視業務をおこなう警備ロボットです。地面を巡回するロボットと比較して、地上の障害物の影響を受けません。監視範囲の広さと機動力の高さが、大きな魅力と言えます。

機種によって速度は異なりますが、ドローン型警備ロボットの飛行速度は、時速10〜50km程度といわれています。警備員が即座に駆けつけられないようなシーンでも、迅速な対応が可能です。不審者が逃走している場合でも、追跡が容易です。

監視能力・自律機能

ズーム・4Kなど高性能な可視カメラや赤外線カメラが搭載され、昼夜問わず監視が可能です。

警備員の目では、地上しか警備できない上、障害物に視界を遮られてしまいます。しかし、ドローン型警備ロボットは、上空から俯瞰的に現場を監視します。

広範囲を一度に監視でき、画像認識AIで物体を検知します。不審物・不審者の見落としが少なくなれば、業務効率化に繋がります。

また、捉えた映像や情報は、リアルタイムで警備センターや警備担当者のデバイスに送信でき、即座に状況把握と対応が可能です。メーカーによっては、3D解析機能を搭載している機種もあります。

ドローンを扱う上で心配なのは衝突による落下です。ドローン型警備ロボットは、高性能センサーを搭載し、空間の障害物を検知しています。屋内の植物や照明器具、屋外の樹木やクレーンなどの障害物との衝突を回避可能です。

稼働時間

連続飛行時間は「数十分程度」と、巡回型警備ロボットと比較すると短めですが、ドローン基地で全自動充電ができます。

連続稼働時間は短くても、機動力と追尾性の高さは、大変魅力的です。不審者を追跡する能力は、巡回型警備ロボットと比較しても群を抜いています。不審者を見失う可能性は低いです。また、危険物や凶器を持った不審者の追跡にも長けていますから、警備員の安全も確保できます。

活躍するシーン

高い視点を活用し、敷地面積が広い工場・農場・商業施設での活用が期待できます。人の目では確認しきれない場所も上空から監視すれば、設備に邪魔されず、多くの異常を発見できます。

ドローン型警備ロボットが活躍できるシーンの一つとして、不審者の追跡能力が挙げられます。ドローン型警備ロボットは、画像AIを駆使して敷地内の不審者を追跡して情報を集めます。

機種によっては全力疾走(100mを15秒程度で走る人の時速は15km/h程度)している男性よりも速く飛行して、追跡することが可能です。

従来の人に頼った方法では、監視カメラやセンサーで異常を発見してから警備員が駆けつけます。駆けつけたときには不審者はいなくなってしまい、現場確認が困難であることがほとんどです。しかし、ドローンであれば常に情報を入手しながら不審者の情報を集められます。

コンサートやスポーツイベントなどでも、ドローン型警備ロボットを使うのも効果的です。会場全体の安全を監視し、不審者の発見や混雑状況の監視をおこなえます。

なお、飛行場所によっては、航空局にドローン飛行の許可が必要です。原子力発電所設備等の周辺を飛行する場合には、公安および海上保安局への通知も必要になります。

遠隔操作型ロボット​

遠隔操作型ロボットとは、オペレーターが直接制御して、特定の任務を遂行できる警備ロボットです。複雑な環境下での対応や、高度な判断が求められる場面での使用に特化しています。

遠隔操作機能は、前述した巡回型警備ロボットに搭載されている機能で、警備員や社員が遠隔操作するケースがほとんどです。また、警備ロボットのスペックは、巡回型ロボットと同じと考えて差し支えありません。

操縦者は、ロボットのカメラやセンサーを通じて得られる情報を元に、リアルタイムで適切な操作をおこないます。巡回型警備ロボットではおこなえないような複雑な作業の場合には、遠隔操作で人が直接判断を下すほうが有効です。

注意点は、一人一台警備ロボットの操縦をおこなう必要がある点です。コストメリットは高くありません。そのため、自動巡回機能と遠隔操作機能を上手く切り替えて、警備体制を構築する必要があります。

監視能力・自律機能

巡回型警備ロボット同様に、全方位カメラ、赤外線カメラや、高機能なセンサーを搭載しています。さらに、画像認識AIにより、異常者・不審者の発見、異音・異臭の検知が可能です。

機種によっては、ロボットアームを装備しているものもあります。難易度の高い作業や繊細な操作が求められる場合でも、遠隔操作であれば高い精度での作業が可能です。具体的には、危険物を掴む、ドアの開閉、エレベーター操作などもできるようになります。導入前にスペックを確認しておきましょう。

稼働時間

各メーカーにより異なりますが、稼働時間は巡回型ロボット同様に4〜8時間程度です。

バッテリー残量が少なくなると、自動的に充電スポットに移動するシステムを搭載しています。ロボットの負荷状況によってはバッテリーの消耗が激しくなります。状況に応じて稼働時間は変わってくるものと考えてください。

活躍するシーン

危険物や化学物質を扱う工場など、人が直接関わることが危険な環境で大いに活躍できます。有毒ガス発生や爆発など、万が一のトラブルの際には被害を最小限にでき、警備員の安全を確保できます。

遠隔操作時は、常に人がついていないといけないデメリットはありますが、ロボットだけではできないような繊細な対応も可能です。自動巡回機能と上手く使い分けることで、警備効率を最大化できます。

警備ロボット導入のメリットとデメリット

警備ロボット導入のメリットとデメリット

スペックだけ並べて稟議書を提出しても、決裁者には警備ロボットの魅力がイメージできていないかもしれません。ここでは、警備ロボット導入時のメリットとデメリットについて触れていきます。

警備ロボットのメリット

警備ロボットを導入すると、警備品質が安定しやすくなります。

人の場合、疲労が蓄積して警備品質は落ちることもあります。また、気分の波もあるため、毎日同じパフォーマンスで警備業務を実施できない可能性があります。

警備ロボットを活用すれば、警備という業務のために人を活用するための仕事を削減できます。機械のメンテナンスさえ行っていれば、

24時間体制の安定した警備が可能

警備ロボットは、休まず、夜間や休日でも、常に同じパフォーマンスを出せます。

ただし、警備ロボットは、充電が必要です。長期時間稼働が可能な巡回型警備ロボットでも4時間〜8時間程度を要します。バッテリー残量が少なくなれば自動的に充電ステーションに戻るようにプログラムされています。充電ステーションさえあれば24時間体制での警備が可能です。

充電中でもカメラ監視をすることはできますが、動くことができません。警備ロボット一台での対応はまだ難しく、充電時間を考慮した勤務時間設定が必要です。

警備品質のバラツキをなくす

警備ロボットを導入することで、ヒューマンエラーによる警備不足を解消し、安定した警備品質が期待できます。警備業務の効率が大幅に向上できます。

警備を人に頼った場合、巡回ルートを省略や、思い込みによる間違いが「絶対に起きない」とは断言できません。夜間の見落としや、疲労による見逃しのリスクは、常にあるものと考えるほうが自然です。

警備ロボットは、プログラムされたルートを自動巡回。広範囲のエリアを一定のパターンで監視し続けます。さらに、画像認識AIや異常検知システムにより、異常や不審者を自動で識別し、リアルタイムで警報を発することが可能です。

また、警備員一人では、同時に監視できるエリアは限られています。大規模施設や複数のエリアを効率的に一人で監視するのは困難です。警備員と警備ロボットが連携を取れば、人的リソースを増やさず、広範囲の警備ができます。

高度なカメラ・センサーや映像解析技術による精密な監視

警備ロボットには複数のカメラやセンサーが搭載されているため、人間の目では捉えにくい微細な異常や、変化を検知できます。例えば、赤外線カメラによる夜間の監視、熱感知カメラによる火災の早期発見、顔認識技術による不審者の特定などが可能です。広範囲を均等に監視できることも警備ロボットの強みです。

人の有効視野角は約70度で、周囲の状況や警備員の精神状態で、実際に監視できる角度は狭くなり、重要な異常を見逃すリスクがあります。しかし、ロボットは全方位カメラや高性能センサーを活用し、エリア全体を均等に監視することが可能です。エラーやトラブルが発生しない限り、見落としは考えにくいです。

人的リソースの節約とコスト削減

警備ロボットは一度プログラムができてしまえば、導入した日からプログラム通りの警備が可能です。「教育」や「慣れ」は必要なく、導入初日から高いパフォーマンスを発揮します。

警備員だけに警備を頼れば、夜間や休日の勤務には高い人件費がかかります。また、新任の警備員の場合は「教育」や「慣れ」も必要なので、すぐに能力が発揮できるわけではありません。狙いの警備品質に至るまでには、時間がかかることが予想されます。

運用方法次第ですが、警備ロボットを導入すれば大幅なコストカットができる上、警備品質の大幅な向上が期待できます。

警備ロボットのデメリット

警備ロボットも万能ではありません。デメリットも存在しています。ここでは、警備ロボットのデメリットについて触れていきます。デメリットを上手く利用して、最適な警備体制をしてください。

現場の状況判断が人間よりも劣る

警備ロボットは、まだ人間のように柔軟かつ迅速に適応・判断することができません。AIや機械学習アルゴリズムが、複雑な状況や予期せぬ事態に対応していないためです。現場の状況判断能力は、警備員のほうが上だといわれています。

警備ロボットは緊急時でも、プログラムされた指示や学習したパターンに従います。適切な判断を下せず、緊急対応が取れないこともあります。最悪の場合、人的被害や物的損害に発展することが懸念されます。

ロボットが人間と同じ判断ができないのは、仕方ありません。警備ロボットのデメリットを補うためには、警備員との連携が必要不可欠です。今までの警備体制とは異なった、新たな仕組み作りが求められます。警備の人的リソースを、完全にゼロにするのは難しい点を、決裁者に説明したほうがよさそうです。

突然の停止や機能的なトラブルの発生

警備ロボットも機械なので、予期せぬトラブルが発生する可能性があります。ソフトウェアのバグ、ハードウェアの故障、外部からの干渉などにより停止してしまう場合があるため、注意が必要です。

また、警備ロボットは機械なので、センサーの誤認識・誤検知して停止してしまう可能性もあります。不必要な警報が発生し、利用者や関係者に不安や混乱をもたらしてしまうこともあるかもしれません。

一度エラーを起こすと、ロボット自身で自動復旧するのは困難です。復旧には人の手でエラーをリセットして、再スタートしなくてはいけません。監視業務が停止してしまえば、事故や犯罪が発生する可能性があります。

少しでもトラブルを避けるためには、警備ロボットの定期メンテナンスが欠かせません。また、正常に稼働しているかを定期的に確認する必要もあります。加えて、トラブル発生時、ロボット停止時には、速やかに復旧対応できるように、社員教育も必要です。

導入コストがかかる

警備ロボットは、高度な精密機器を使用しています。購入時のコストは、数百万円〜数千万円程度で高額になりやすいです。小さい規模の企業が導入するには、ハードルが高いかもしれません。

導入金額が高いと感じる場合には、リース契約も視野に入れてください。各メーカーでは、多くの企業でも導入できるようにリース契約を実施しています。一ヶ月15〜30万円程度で、警備ロボットが導入可能です。

警備ロボットの導入費用は、新入社員の初任給と同程度か、それよりも少し高い程度です。一度プラグラムを組んでしまえば、複数の警備員を雇用する必要がなくなる可能性があります。人件費を大幅に削減でき、警備品質も向上します。費用対効果をよく吟味した上で、導入してください。

7つの選定基準 | 警備ロボットの選び方

7つの選定基準-警備ロボットの選び方

効率的・効果的な警備をおこなうには「どのような警備をしたいのか?」を明確にする必要があります。警備ロボットには、さまざまな機能が搭載されていますが、効果的に使えなければコストの無駄になってしまいます。セキュリティの質を最大限に高めるために、事前に綿密な計画を練りあげましょう。

連続稼働時間で選ぶ

ロボットの機種によって連続稼働時間が違うため、選ぶ機種によって運用サークルが変わります

巡回型ロボットなど連続稼働時間が長いロボットは、一回の充電で4~8時間の稼動ができます。警備員と連携すれば、夜間や休日を含めた24時間体制の監視が可能です。警備員が巡回する回数や、巡回エリアを減らすことができ、人的リソースを効率的に利用できます。

一方、ドローン型警備ロボットのような稼働時間が短いロボットは、特定の警備に特化しています。一回の充電で稼働できる時間は、わずか数十分。複数台の導入を検討しなければ、24時間の警備は難しいかもしれません。広範囲の監視範囲や機動性の高さを活かした運用方法を模索する必要があります。

価格で選ぶ

警備ロボットの価格で選ぶ場合、警備員と警備ロボットのコストを比較し、費用対効果を確認する必要があります。

警備ロボットの導入には、ロボットを購入する場合と、リース契約の場合にわかれます。リース契約は、ロボットの性能にもよりますが月額15万円~30万円程度。購入の場合には、数百万円〜数千万円程度かかります。

ロボットの性能は、価格相応の能力です。しかし、高級な警備ロボットだからといって、企業のニーズに合った性能をもっているとは限りません。有効に活用できなければ、コストの無駄です。目的に応じた警備ロボットを選定することがおすすめです。

また、警備ロボット導入の成果に「集客・企業イメージ」アップを盛り込むのであれば、ロボットの外観にもこだわりたいところです。費用はアップしますが、メーカーによってオプションで外観・カラーリング変更が可能です。企業のイメージ・知名度がアップすれば、売上アップを見込めるかもしれません。

屋外稼働の可否​で選ぶ

屋外の商業施設や、工場の外を警備する際には、雨、風、極端な温度変化などの厳しい自然環境に耐える必要があります。屋内専用のロボットを屋外で使用すれば、性能を発揮できないだけではなく、最悪、故障してしまうかもしれません。屋外で使用する場合には、専用のロボットを選んでください。

段差踏破能力​で選ぶ

巡回型警備ロボットを導入する際には、巡回エリアに大きな段差がないかも事前に調査しておきましょう。段差踏破能力は、各メーカーによって異なりますから、カタログスペックを確認してください。必要に応じて傾斜のゆるいスロープの設置が求められるかもしれません。

本体サイズ​で選ぶ

大型ロボットのメリットは、性能を高められる余地があることです。高機能なカメラやセンサーなどのさまざまな部品や、大きな部品も搭載できます。アームなどのオプションも搭載しやすくなります。

一方で、小型ロボットは、監視するエリアや通路が狭い場合に有利です。大型ロボットと比較すると、搭載できるカメラやセンサーには限りがありますが、特定の警備に特化した運用が可能になります。警備体制を十分に吟味すれば、小型ロボットでも対応できてしまうかもしれません。

本体重量で選ぶ

本体重量は、ロボットの強度や移動速度に影響します。重く、頑丈であれば移動速度は遅くなりますが、トラブルで壊れる確率やロボット自体を盗難されるリスクは低くなります。

ところが、安全性と扱いやすさはどうでしょうか。巡回型警備ロボットの重量は15~160kg程度まで幅があります。何かのトラブルで重いロボットが転倒し、周りに人がいた場合、怪我をさせてしまうかもしれません。

さらに、転倒時には自身の衝撃で精密機器が破損してしまう恐れがあります。警備員や現場スタッフだけでは、転倒したロボットを起こせないことも考えられます。各メーカーで転倒対策は十分におこなっていますが、万が一のケースは想定しておく必要があります。

移動速度で選ぶ

緊急事態への迅速な対応や、広範囲を監視する能力が欲しい際には、移動速度がポイントです。使用場所によって移動速度が速い警備ロボットを選定してください。

屋外で使用する場合、地上の障害物の影響を無視できるドローン型警備ロボットが適しています。時速10〜50km程度の飛行速度で、即座に現場に駆けつけられます。走って逃げる不審者でも追跡可能です。機体も飛行性を重視し、軽量で強度は低いですが、監視範囲の広さと機動力は、巡回型ロボットの比ではありません。

屋内では、巡回型ロボットが候補に挙がります。時速は、0.4km~6km程度。成人男性の平均歩行速度が時速2~3km程度といわれていますから、オフィスビルでは十分な速度を持っていると言えます。

また、目的によっては「より遅く、慎重」に作業できるほうが適している場合があります。ロボットアームを駆使して、遠隔操作で精密作業をおこなう際には、移動速度は妥協し、精密な作業ができるロボットを選定するのがおすすめです。

警備ロボット主要メーカー7選

警備ロボット主要メーカー7選

昨今のロボット技術の向上により、国内で警備ロボットを取り扱うメーカーが増えてきました。ここでは、最前線でロボットを開発・製造している主要メーカーを紹介します。

  • SEQSENSE
  • UGO
  • ALSOK
  • SECOM
  • セントラル警備保障
  • 全日警
  • ZMP

SEQSENES(シークセンス)

シークセンスは、2016年に創業した日本のロボットメーカーです。自律移動型警備ロボット「SQ-2」と、警備ロボットサービス「SQ Guard」を提供しています。

頭部に搭載された4つのカメラを回転させることで、ロボット周囲360度の撮影が可能です。警備拠点の遠隔モニターにより、ロボット周辺をリアルタイムに監視できます。

独自開発の3D LiDAR(通称:SQ LiDAR)を搭載することで、非常に広い視野角を実現しました。3D LiDARとは、3次元状に光を照射して、センサーの物体の距離を計測する装置です。自己位置推定を経路計画に反映させ、安定した移動ができるようになり、歩行者や障害物との接触を防ぐことができます。

ロボットから送られてきた情報は全てクラウド上に蓄積され、ビッグデータです。巡回レポートの作成や、ロボットの撮影動画再生の機能を利用可能です。さらに、警備システムは、警備員からのフィードバックを反映させ、常に改善をおこなえます。

2019年に発売された「SQ-2」は、1年半程度で約10万台が導入されました。「大手町パークビルディング」「大手町フィナンシャルシティ
グランキューブ」のような大手町・丸の内・有楽町エリアにあるオフィスビルへ導入。さらに、「成田空港」、大阪の複合施設「なんばスカイオ」への導入実績があります。

同社は、今後の開発目標として画像認識AIと顔認証システムを組み合わせて「ブラックリスト」の判断すらも視野に入れています。

UGO(ユーゴ)

2018年に創業した日本のロボットソリューション企業のユーゴ。警備業務や点検業務など、人手不足が深刻化する業種に対して、ロボットを活用した業務DXソリューションを提供しています。

提供している警備ロボットは同社と同じ名前の「ugo」。巡回型のロボットで、主な用途はビル警備です。5Gを活かし、遠隔操作と警備業務を「見える化」するプラットフォーム「T-Spider」と組み合わせて効率的な警備が可能です。

カメラやセンサーの能力は、モデルにより異なります。標準的なモデルでは、中央のポール前後に2台のHDカメラで360度を監視。底部に2D LiDAR ・ 超音波センサーなどで、障害物などの検知をおこないます。

代表的なモデルは3種類。警備内容に合わせて、価格を最適化できます。ミニサイズの「ugo mini」、リーズナブルな「ugo Ex」、2本のロボットアーム搭載のハイエンドモデル「ugo
Pro」があります。それぞれ稼働時間や搭載されている機能が異なります。導入前にはスペックをよく確認してください。

UGOは、NTTドコモとパートナー契約を締結しています。通信環境においては抜群の信頼性があることが大きな特徴です。警備ロボットとの通信には「5G」を採用しています。

良質な通信環境で高精細映像をオペレーターに送信可能です。警備室からでも適格な現状把握ができ、精度の高い警備業務を実現しました。

今後、新たな通信規格が登場しても、ドコモがパートナーなので即座に対応できることが予想されます。長期的に使い続ける場合には、メリットが多いかもしれません。

ALSOK(アルソック/綜合警備保障)

屋外・ビル警備など万能警備ロボットを探しているのであれば、大手警備会社ALSOK(アルソック)の「REBORG-Z(リボーグゼット)」を確認してみましょう。

REBORG-Zは、多彩な機能・オプションが特徴です。顔認証機能、異常音検知、ガス検知などが搭載されているだけではなく、防水・防塵性能を高め、屋外対応も可能です。そのほかにも、無線接続でエレベーターでの階層間移動や、施設案内もできます。

火災に対しての対応が搭載されていることもREBORG-Zの強みです。火災発生時には、避難誘導を行うとともに防災センターへ通知します。内蔵された消火機能で、初期消火活動もできますから、被害を最小限に抑えることが可能です。

また、オプションになりますが、ご当地キャラや企業イメージキャラに合わせやすいことも魅力です。ラッピングデザインにも対応し、企業にマッチした警備ロボットが導入できます。来訪者・社員からの愛着も高まるかもしれません。

REBORG-Zは、大型商業姿勢や空港に導入実績があり、九州の大型商業施設「SAKURA MACHI Kumamoto」や「静岡空港」などへ導入されています。

SECOM(セコム)

SECOM(セコム)は、1962年に創業した大手警備会社の1つです。1966年には、日本初のオンライン安全システム「SPアラーム」を開発。効率的な警備の仕組みづくりがセコムの強みと言えます。

セコムでは、巡回型ロボットとドローン型ロボットの2種類のラインアップがあります。それぞれについて解説します。

巡回型ロボットの特徴

SECOMの巡回型の警備ロボットは「cocobo(ココボ)」です。AI・5Gなどを活用し、商業施設やオフィスビルなどの巡回警備や点検業務が可能です。

商業施設やオフィスビルなどの警備員の「視覚・聴覚・臭覚・触覚」と「判断力」を備えていると謳っています。カメラの情報をAIによって解析。施設内の残留者や転倒者などを検知します。そのほかにも、異常音、熱源、放置物も検知可能です。

自律走行にも定評があります。ステレオカメラ、3D-LiDAR、ToFカメラなどで、高精度の空間把握が可能です。人の流れが激しい商業ビルや、「成田空港」への導入実績があり、高度な自律走行をしていることがうかがえます。

ドローン型ロボットの特徴

開発中の技術にはなりますが、セコムはドローン型警備ロボット「セコムドローンXX」にも力を入れています。2015年から約8年かけてドローン警備ロボットの運用実績とノウハウを積み上げてきました。

飛行時間・速度を大幅に向上させ、最大で半径約6km のエリアを警備できます。耐風性能を高め、赤外線カメラも搭載していますから、悪天候や夜間の監視能力も格段に向上しました。

セントラル警備保障

昭和41年に創業した警備および監視機器のセントラル警備保障は、巡回型警備ロボット「C-SParX(シースパークス)」を提供しています。オフィスビルや駅などの警備に向いており、JR東日本とKDDI共同企画で提供された実績があります。

高性能CPU内蔵エッジPCを導入し、AI画像解析をおこなっています。転倒者、不審者、不審火などさまざまな異常をリアルタイムに検知可能です。検知された情報は、警備センターや警備員のスマホ・タブレットに連絡されます。警備員との連携で、警備品質の向上が見込めます。

稼働時間は、他社の巡回型警備ロボットと同程度ですが、オプションによりさらに大容量のバッテリーに乗せ換え可能です。長時間警備を可能にし、警備員の負担が軽減できる可能性があります。

その他にも、グレードによっては顔認証機能に対応しています。ブラックリスト、ホワイトリストの判別ができますから、オフィスビルなどでの犯罪予防が可能です。

全日警

全日警は警備業界でも売上上位に入る警備会社です。提供する警備ロボットは複合型サービスロボット「Toritoss(トリトス)」。オムロンソーシアルソリューションズと販売契約を締結し、開発されました。

Toritossは「人と一緒に働くパートナーロボット」がコンセプト。「清掃・警備・案内」ができるロボットです。自律警備をしながら清掃もでき、全面の大きなディスプレイでフロアガイドを表示させられます。多彩な機能が評価され、オフィスビルなど、多くの企業での導入実績があります。

警備以外にも、清掃・案内ができることが魅力です。さまざまな使い方ができます。例えば、開店時や社員が出社している時間は充電と案内、それ以外の時間では警備と掃除をおこなうなど、組み合わせ方は多彩です。社内や施設の状況に合わせて使い分けられることが大きなメリットでしょう。

ZMP

ZMPは、次世代自動車の開発用プラットフォームや、研究用・教育用ロボットなどの開発をおこなっているロボットベンチャー企業です。

2008年から10年以上、自動運転ロボットの開発・研究をおこなってきました。ハードウェア・ソフトウェアを一貫して自社開発しているため、多彩なニーズに応えられることが強みです。

ZMPが提供する警備ロボットは、2019年発売の「PATORO(パトロ)」。小型の巡回型警備ロボットで、人の歩く速さで自動運転ができ、豊かな表情や音声により、人とのコミュニケーションもとれます。

可愛らしい見た目ながら、360°カメラ、赤外線カメラ、3D-LiDAR、ステレオカメラなどを搭載。精度の高い自動運転が可能で、屋内外両方の使用も可能です。さらに、無線によりエレベーターの階層移動ができます。商業施設やオフィスビルの警備にも対応できるスペックがあると言えます。

警備ロボットの導入で、警備の人的リソースを改善しましょう

警備業界は雇用環境や業務内容の影響により、人材不足が深刻な問題になっています。加えて、高齢化が進み、ますます厳しい状態が続くことが予想されます。企業の安全を守るためには、人とロボットが協力していく必要がありそうです。

警備員が人である以上、疲労や気分の変化による警備品質のバラツキに対策を打つのは、大変難しいことです。ヒューマンエラーをなくすために、常に一定品質で警備できる警備ロボットに頼ることも検討してみてください。

警備ロボットは、警備員の弱点を補う機能が搭載されています。上手な警備体制を構築できれば、効率のよい警備が可能です。警備ロボットは、既にオフィスビルや空港に導入され、実績を上げています。

警備ロボットの機能は、本記事では紹介しきれないほど充実しています。各メーカーに問い合わせ、必要があれば見積もりを取ってください。

よくある質問

はじめて警備ロボットを導入する企業担当者は、どこから手を付けたらいいかわからないかもしれません。高価な買い物になりますから、失敗は避けたいところではないでしょうか。ここでは、導入検討段階でよくある質問について触れていきます。参考にしてください。

無線インターネットへの接続は必要ですか?

警備ロボットは、カメラやセンサーで得た情報を、警備室に送信し共有しています。使用には無線インターネット環境が必要です。ただし、警備ロボットによっては、モバイルルーターでも対応している機種があります。

夜間に警備ロボットが巡回するには電気をつけておくべきでしょうか

多くの巡回型・ドローン型警備ロボットには、LEDライトや赤外線カメラが搭載されています。夜間でも十分に警備が可能です。

導入費用はいくらですか?

各メーカーによって異なりますが、リース契約では月15~30万円程度。購入時は、数百万円〜数千万円程度かかるといわれています。メーカーによっては、リース契約のみしか実施していない場合があります。詳細は見積もり時にメーカーに確認してください。

どの警備ロボットでも屋内外どちらも使用可能でしょうか

警備ロボットによっては、屋外用に設計されていません。屋内専用のロボットは、屋内で使用してください。もし、誤った使い方をして破損した場合には、メーカーの保証対象外になる可能性があります。

エレベーターが無線対応していません。どうすればいいですか?

ロボットアームを搭載している警備ロボットがおすすめです。無線でエレベーターを操作できなくても、ロボットアームを用いて手動でエレベーターに乗れます。

この記事を読んで、警備ロボットが気になった方は、以下のボタンよりお気軽にお問い合わせください。