この記事では、5種類の破砕機を詳しく紹介し、それぞれの特徴やメリットについて解説します。
目次
5種類の破砕機
破砕機とは、対象物の大きさを、大きい状態から小さい状態にするための機械のことです。破砕する方法としては、圧縮、衝撃、せん断、摩砕などがあります。破砕により対象物を小さくすることで、貯留性や次工程の加工性を向上可能です。
破砕機の用途は多岐にわたり、化学薬品、医薬品、樹脂ペレット、食品などの分野で活用されています。破砕機によって、材料の減容、粒度の調整、品質の向上などの効果が得られます。
- ジョークラッシャー
- ハンマークラッシャー
- インパクトクラッシャー
- 一軸破砕機
- 二軸破砕機
ジョークラッシャー
ジョークラッシャーは、垂直に固定された固定ジョーと、一端を固定しながら前後に揺動するスウィングジョーの間で破砕物を圧縮粉砕する機械です。このタイプの破砕機の強みは、以下の通りです。
- 簡単な構造で、操作やメンテナンスが容易
- 粗砕に適しており、大きな塊を一気に小さくすることが可能
- 破砕物の粒度を調整可能
ジョークラッシャーは、大きくて硬い対象物に対しては有効ですが、小さくて柔らかい対象物に対しては不向きです。また、粗砕に適しており、ある程度の粒度調整が可能ですが、細かい粒度や均一な粒度を求める場合には不向きです。
ハンマークラッシャー
ハンマークラッシャーとは、高速回転するハンマーによって硬い物質を衝撃的に破砕する機械です。木材、コンクリート、ガラス、瓦などに適していますが、柔らかい素材やゴム、軟質プラスチックなどには向いていません。スクリーンを取り付けることで、破砕後の粒度を調整することも可能です。このタイプの破砕機の強みは、以下の通りです。
- 破砕粒度が均一で、粒度調整が容易
- 構造が簡単で、操作が容易
- 低速回転であるため、騒音や振動が少ない
ハンマークラッシャーは、構造が簡単で操作しやすく、騒音や振動、消費電力が少ないので、工場内での使用に適しています。
インパクトクラッシャー
インパクトクラッシャーは、物体に高速で回転するローターから飛び出すハンマーが衝突することで、破砕力を発揮します。このため、一度に多くの物体を破砕することができます。また、破砕後の粒度も調整可能です。インパクトクラッシャーは、破砕比が20:1と大きくとれるため、一次破砕や二次破砕に適しています。このタイプの破砕機の強みは、以下の通りです。
- 物体に高速で回転するローターから飛び出すハンマーが衝突することで、破砕力を発揮する
- 硬度や粘着性の高い物体でも破砕可能
- 構造が簡単で、メンテナンスが容易
インパクトクラッシャーは、一度に多くの物体を破砕でき、破砕後の粒度も調整可能です。また、硬度や粘着性の高い物体でも破砕でき、汚染された素材にも適しています。
一軸破砕機
一軸破砕機とは、一本の回転軸に刃物を取り付けたロータを備えた破砕機です。ロータと固定刃の間に破砕物を送り込み、切断・削り・圧縮などの力で破砕します。破砕物はスクリーンの穴を通って排出されます。このタイプの破砕機の強みは、以下の通りです。
- 大きな塊から所定の大きさまで一台で破砕可能
- 破砕条件に合わせて粒度調整スクリーンを選択可能
- プラスチックや木材などの柔らかいワークにも対応
一軸破砕機は、大きな塊から所定の大きさまで一台で破砕でき、破砕条件に合わせて粒度調整スクリーンを選択できるので、ある程度は最終状態をコントロールしたい場合に適しています。
二軸破砕機
二軸破砕機とは、二つの回転する刃を持つ破砕機のことです。二軸破砕機は、一軸破砕機と違って、固定刃がありません。その代わりに、二つの刃が互いに逆方向に回転し、破砕物を中央に引き寄せて、せん断力で切断します。このタイプの破砕機の強みは、以下の通りです。
- 一軸破砕機よりも多くの刃を持ち、刃の間隔も狭いため、より細かく破砕可能
- 刃の回転方向が逆であるため、破砕物を中央に集め、破砕効率が高い
- 刃の数が多く、刃の間隔も狭いため、破砕物が刃に絡まる可能性が低い
- 刃の回転を逆転させることで、破砕物を排出可能
二軸破砕機は、金属やプラスチックなどの硬い物質や、紙や布などの柔らかい物質を破砕することができます。また、一軸破砕機や四軸破砕機よりも細かく破砕することができますが、破砕粒度を調整することが難しいです。さらに、一軸破砕機よりもコストが高いです。
破砕機を活用するメリット・デメリット
破砕機は作業の効率化という意味では非常に役立ちますが、デメリットも存在します。このセクションでは、破砕機のメリットとデメリットの両方をご紹介します。
メリット
破砕機のメリットとして、主に以下の3つのポイントが挙げられます。- 粗大な物体や硬い物体を破砕可能
- 破砕物の粒度をスクリーンで調整可能
- 金属や石などの異物に対して耐久性が高い
粗大な物体や硬い物体を破砕可能
破砕機は、粗大な物体や硬い物体を効率的に破砕する機械であり、工業用から家庭用までさまざまな用途で使用されています。この機械の主な機能は、大きな物体や硬い物体を小さくし、処理や再利用を容易にすることです。このメリットが特に生かされる場面は以下の通りです。
- 産業廃棄物処理:大型の金属、コンクリート、石材などの破砕
- リサイクル業:プラスチック、ガラス、金属などのリサイクル素材の前処理
- 鉱業:採掘現場での鉱石のサイズ調整
- 建設業:建設現場での廃材の減量化
- 廃棄物処理場:大型家具や家電製品の解体
- 製造業:生産過程での不良品の破砕
破砕物の粒度をスクリーンで調整可能
破砕機には破砕された物体の粒度(粒の大きさ)をスクリーンやメッシュを用いて調整できる機能があり、特定の用途や要求に応じたサイズの破砕物を得ることができます。このメリットが特に生かされる場面は以下の通りです。
- プラスチックリサイクル:プラスチックの破砕物を均一な粒度にすることで、再生プラスチック製品の品質を向上
- ガラスリサイクル:破砕されたガラスを均一なサイズにすることで、再利用の効率を高める
- 原材料の準備:再利用可能な原材料を均一なサイズにすることで、製品の製造プロセスを安定化
- 製品の品質管理:均一な粒度の素材を使用することで、製品の品質を一定に保つ
- 鉱石の精錬前処理:均一なサイズに破砕することで、後続の精錬プロセスを効率化
金属や石などの異物に対して耐久性が高い
破砕機は、金属や石などの異物が混入した材料に対しても高い耐久性を持っています。この耐久性は、破砕機の設計や素材の特性によって実現されており、破砕機の長寿命と安定した性能を保証します。これにより、異物の混入が頻繁に起こる環境でも効率的に作業を行うことができます。このメリットが特に生かされる場面は以下の通りです。
- 廃棄物処理場:廃棄物に含まれる金属や石による機械の故障を防ぎ、安定した運転が可能
- リサイクル業:リサイクル素材の中の異物が破砕機の運転を妨げないようにし、スムーズなリサイクルプロセスを実現
- 建設業:建設廃材の中の金属や石を破砕する際に耐久性が求められ、効率的な再利用が可能
- 鉱業:鉱石に含まれる硬い金属成分や石に対しても破砕機が耐えることで、効率的な鉱石処理が可能
- 廃車解体業:廃車の解体に含まれる多くの金属部品や硬い部材に対しても迅速かつ効率的な解体作業が可能
- 電力会社(バイオマス発電):バイオマス燃料に含まれる木材や石などの異物に耐える破砕機を使用することで、安定した燃料供給が確保
デメリット
一方で、破砕機には以下のようなデメリットもあるので、注意が必要です。- 破砕物の粒度が均一でないことがある
- 破砕物の温度が上昇する
- 破砕物の粉塵が発生する
破砕物の粒度が均一でないことがある
破砕機を使用する際のデメリットの一つとして、破砕物の粒度が均一でないことがあります。これは、特に再利用や次の工程での処理において問題となることがあります。粒度が均一でないと、製品の品質が低下したり、処理工程が非効率になったりする可能性があります。このデメリットを軽減するには、以下のようなことを行うことがおすすめです。
- スクリーンやセパレーターの導入:破砕物の粒度を選別し、均一化可能
- 破砕プロセスの複数段階化:初めに大まかな破砕を行い、その後に細かい破砕を行うことで、粒度の均一化が可能
破砕物の温度が上昇する
破砕機を使用する際のデメリットの一つとして、破砕物の温度が上昇することがあります。破砕プロセス中に発生する摩擦や圧力が、破砕物の温度を上昇させる原因となります。温度が上がると、特定の素材の性質が変化し、加工や再利用に悪影響を与えることがあります。このデメリットを解消するためにできる2つのことは以下の通りです。
- 冷却システムの導入:破砕プロセス中の温度上昇を抑えることで素材の性質変化を防ぎ、品質を保持可能
- 断続運転の採用:運転と休止を交互に行うことで、機械内部の温度が下がり、破砕物の温度も適度に冷却
破砕物の粉塵が発生する
破砕プロセス中に物質が粉砕されると、微細な粉塵が空中に飛散し、作業環境の悪化や健康被害を引き起こす可能性があります。また、粉塵が機械内部に入り込むことで、機械の故障やメンテナンス頻度の増加を招くこともあります。このデメリットを解消するためにできる2つのことは以下の通りです。
- ダストコレクションシステムの導入:粉塵の飛散を防ぎ、作業環境の空気品質を向上させることで、作業員の健康や機械の故障を防ぐ
- 密閉型破砕機の使用:密閉された環境での破砕により、粉塵の飛散を完全に防ぐことができ、作業環境の清潔さを維持
4つの選定基準 | 破砕機の選び方
破砕機を選定する際は、以下の4つのポイントを抑える必要があります。
- 対象物の硬さ
- 対象物の大きさ
- 対象物の粘着性
- 破砕後の製品の品質
破砕する対象物の硬さ
破砕する対象物の硬さが変わると、破砕機の種類や性能、耐久性などに影響が出ます。一般的に、硬い対象物を破砕する場合は、ハンマー式破砕機や移動式破砕機などの高速回転型の破砕機が適しています。柔らかい対象物を破砕する場合は、一軸破砕機や二軸破砕機などの低速回転型の破砕機が適しています。
破砕する対象物が硬い場合のメリットは、以下の通りです。
- 破砕物の粒度が均一になりやすい
- 破砕物の品質が向上する
- 破砕物のリサイクルや再利用が容易になる
逆に、破砕する対象物が柔らかい場合、以下の通りです。
- 破砕機の刃や部品にかかる負担が低い
- 破砕機の刃や部品の摩耗や損傷が遅くなる
- 破砕機のランニングコストやメンテナンスコストが低くなる
破砕する対象物の大きさ
破砕する対象物の大きさに対して、適切な破砕機を選ぶ必要があります。一般的に、大きな物体を破砕する場合は、二軸型やハンマー式などの高速回転で強力な破砕力を持つ機種が適しています。小さな物体を破砕する場合は、一軸型や気流式などの低速回転で細かい粒度を調整できる機種が適しています。破砕機の消費電力やメンテナンスコストに影響します。
大きな物体を破砕する場合は、破砕機にかかる負荷が大きくなり、消費電力が増えたり、刃の摩耗が早まったりします。小さな物体を破砕する場合は、破砕機にかかる負荷が小さくなり、消費電力が減ったり、刃の寿命が延びたりします。
破砕する対象物が大きい場合のメリットは、以下の通りです。
- 破砕機の種類と性能に制限が少ない
- 高い裁断力と処理速度を持つ破砕機が使用可能
- 破砕物の粒度や品質にあまりこだわらなくてもよい
逆に、破砕する対象物が小さい場合のメリットは、以下の通りです。
- 破砕機のサイズとコストが低い
- 設置スペースや運搬コストが減る
- 破砕機の製造コストが低い
破砕する対象物の粘着性
粘着性とは、物質が他の物質に付着する性質のことで、破砕機の選択や性能に影響を与えます。破砕機の種類や設計によって、粘着性の高い物質に対する対応力が異なります。一般に、粘着性の高い物質は破砕機の刃やスクリーンに付着しやすく、破砕効率を低下させたり、機械の故障や摩耗を引き起こしたりします。そのため、粘着性の高い物質を破砕する場合は、刃やスクリーンの清掃や交換の頻度を高めたり、特殊な構造や機能を備えた破砕機を選択したりする必要があります。
粘着性の数値が高いということは、物質が他の物質に強く付着するということです。この場合のメリットは、以下の通りです。
- 破砕された物質が固まりやすく、運搬や保管が容易
- リサイクルや再利用に適した形に加工可能
例えば、発泡スチロールは粘着性が高く、破砕後に溶融機で溶かすとコンパクトなブロックになります。
逆に、粘着性の数値が低いということは、物質が他の物質に弱く付着するということです。この場合のメリットは、以下の通りです。
- 破砕機の性能や寿命に良影響
- 破砕機の清掃や交換の手間やコストを減らす
- 機械の故障や摩耗を防ぐ
例えば、金属やプラスチックは粘着性が低く、破砕機の刃やスクリーンに付着しにくく、破砕効率を高めます。このように、粘着性の低い物質は、破砕機の清掃や交換の手間やコストを減らしたり、機械の故障や摩耗を防いだりします。
破砕後の製品の品質
破砕機を選定する際は、品質と性能、コストのバランスが重要です。回転速度や破砕時間を調整することで、粒子の大きさや形状を変化させ、製品の品質を調整できます。高品質な破砕物は均一で細かく、高密度で純度が高いため、次工程で高効率を発揮します。
例えば、プラスチックは均質な樹脂ペレットに再生され、食品や化学薬品も品質を維持できます。一方、低品質の破砕物は低コストで、環境負荷も少ない運用が可能です。
破砕機を製造するメーカー5社
破砕機を製造する主なメーカーには、以下の5社が挙げられます。
- フジテックス
- ウエノテックス
- 商研
- 遠藤工業
- リョーシン
フジテックス
フジテックスは、1978年に創業した東京に本社を置く国際貿易会社です。環境にやさしい商品やサービスを提供することを目指しており、物流、リユース、衛生管理、健康・美容などの事業を展開しています。同社は、木質バイオマス発電において活用できる、木材や農業廃棄物などを破砕して燃料にするための破砕機を提供しています。
ウエノテックス
ウエノテックスは、1965年に創業した新潟県上越市に本社を置く総合破砕機メーカーです。環境設備機械、産業用自動省力機械、機械加工などの事業を展開しており、省人化システムやデジタル技術の導入にも積極的です。同社は、木くず、廃プラ、紙くず、タイヤなどの資源リサイクルの前段階として廃棄物を破砕する破砕機を製造しています。取り扱っている破砕機の種類は、一軸破砕機、二軸破砕機、粉砕機などさまざまです。部品製作から組立、販売、メンテナンスまで一貫して行っています。また、AI搭載廃棄物選別ロボットや廃棄物自動投入クレーンなどの省人化システムも提供しています。
商研
商研は、1999年に創業した大阪に本社を置く環境機器メーカーです。破砕機、プレス機、コンベアなどの廃棄物処理機械の販売事業のほか、オゾン発生器、人工炭酸製造装置、水素水製造装置などの環境改善機器の販売事業も行っています。同社の破砕機は、主に木くずや紙くずなどの可燃性廃棄物を破砕するために設計されています。高い破砕能力と低い消費電力が特徴で、破砕後の廃棄物は燃料として利用可能です。破砕機の種類は、一軸破砕機、二軸破砕機、四軸破砕機などがあり、廃棄物の量や形状に応じて選択できます。
遠藤工業
遠藤工業は、1935年に金属洋食器の生産でスタートした産業用機械・機具メーカーです。現在は、「荷役機器」「給電機器」「環境機械」の3つを事業としています。新潟県燕市に本社を置き、海外にもグループ会社を展開しています。同社は、環境機械事業の一部として、破砕機・粉砕機・切断機などの製品を取り扱っています。破砕機には、エンドクラッシャー、エンドミル、エンドシュレッダーの3種類があり、それぞれ木材やプラスチック、金属やゴムなどの廃棄物を破砕・粉砕することができます。
破砕機の性能や機能は、ロータリーカッター、ハンマーミル、自動制御システムなどの最新の技術によって向上させられています。
リョーシン
リョーシンは、最先端技術を駆使したリサイクルプラントメーカーです。リサイクルプラントは破砕機や選別機などの機械を組み合わせた仕様になります。リョーシンではそれぞれの分野で最も優れた機械を選りすぐり、組み合わせることで、リサイクルプラントの最適解をご提案できます。同社は、一軸破砕機、二軸破砕機、四軸破砕機、粗破砕機、移動式破砕機の5種類の破砕機を扱っています。それぞれの破砕機は、破砕対象物、破砕サイズ、処理量、異物耐性、省エネルギー性などの特徴に応じて、最適な刃の形状や構造を持っています。