レーザー溶接機とは?その原理と選び方、比較解説
  • 最終更新日:2024年4月1日
レーザー溶接機とは?その原理と選び方、比較解説
レーザー溶接機は、精密さと効率性の良さから、現在多くの企業、産業によって重宝されています。

しかし、レーザー溶接機といっても、製品によってスペック、価格、用途は異なってくるのが事実です。求めているものに最適な製品を選ばなければ、コストの無駄に繋がってしまうだけでなく、安全性の面で問題が生じる可能性もあります。

この記事では、レーザー溶接機の基本的な原理、レーザー溶接機の種類と各レーザーの特徴、利用されている産業と用途例、レーザー溶接機のメリット・デメリット、そして選ぶ際のポイントを、メーカー情報とともに詳しく解説します。

この記事を読み終えると、レーザー溶接機の選定基準の大枠を把握できるようになります。最後にレーザー溶接機を製造しているおすすめの企業が記載されているので、気になった企業があれば、是非ボタンからお問い合わせください。

レーザー溶接機とは?原理と5つの種類の特徴を解説

レーザー溶接機?その仕組みと5タイプの特性

溶接方法には様々な種類がありますが、レーザー溶接はその名の通りレーザー光を利用した溶接方法です。レーザー光と集光レンズを用いて局所的にエネルギーを発生させ、材料を溶かすことで溶接します。

基本的な作動構造は次のようになっています。

レーザー溶接機の作動構造

  1. エネルギー源となるレーザー発振器からレーザー光が射出される。
  2. 生成されたレーザー光は光路によって伝送される。
  3. 伝送されたレーザー光は集光レンズなどの集光部でスポット系に集光される。
  4. 集光されたレーザー光がワークベンチ上の素材に照射される。
参考:MONO塾「レーザー溶接とは?原理や種類などをわかりやすく解説」

以上が基本的なプロセスとなります。他にも、溶接した箇所の酸化・窒化を防ぐためにシールドガスを噴出する工程が加わることもあります。

5つのレーザータイプ

上記構造の中で一番重要なポイントは、レーザー光の種類です。レーザー溶接機は、大別して以下の5つの種類に分けることができます。

  • CO2レーザー
  • YAGレーザー
  • ファイバーレーザー
  • ディスクレーザー
  • 半導体レーザー

順を追って説明していきます。

(参考1:溶接革命「レーザー溶接」
(参考2:MONO塾「レーザー溶接とは?原理や種類などをわかりやすく解説」

CO2(炭酸ガス)レーザー

CO2レーザーは、気体レーザー溶接の代表格です。炭酸ガスを媒質にして光を増幅させる手法を取っているのが特徴です。特に10mm以上の厚みのある素材や数十平方cm以上の大面積にわたる溶接作業において、均一で強度の高い溶接をすることができます。樹脂などの溶接も可能なため、幅広い分野で利用されています。

また、長時間の安定した連続運用が可能なことから、大規模な生産ラインで連続的な作業ができることも特徴として挙げられます。CO2レーザーは主に自動車産業などで使われています。

YAGレーザー

YAGレーザーは、固体レーザー溶接の代表格です。ガーネット構造の結晶を媒質に用いています。パルスレーザーという特性上、細かい時間間隔で点滅を繰り返します。波長がCO2レーザーと比べて短いため、金属によるエネルギー吸収率が高く、溶接が容易です。

また、コヒーレント性(可干渉性)やレーザーの広がり性能など、レーザーの集光拡散に優れており、使い勝手が良いです。精密部品の溶接や繊細な溶接作業をするのに適しています。YAGレーザーは主に医療機器製造などに使われています。

ファイバーレーザー

ファイバーレーザーは、固体レーザーの一種で、媒質に光ファイバーを用いています。細いファイバー内に光を閉じ込めて増幅させるため、エネルギー変換効率が非常に高く、綺麗な溶接が可能な点が特徴です。

波長が短く、スポットを絞ることができます。エネルギー密度に関しても非常に高く、アルミニウムや銅などの高反射材に対して深い溶け込みを実現できます。異種金属同士の溶接にも用いられています。

また、非接触で高速な溶接ができたり、ビーム焦点を自動で設定できたりなど、自動化の容易さも魅力の一つです。他にも、ハンディ(ハンド)トーチ型や切断・焼け取り・クリーナー機能搭載型など、製品の幅も広い傾向があります。ファイバーレーザーは一般的な工業製品に多く使われています。

ディスクレーザー

ディスクレーザーは、固体レーザーの一種です。イッテルビウムなどの希土類元素を添加した結晶を媒質として用いています。

ディスクレーザーの特徴は、固体レーザーの弱点である溶接の精度低下を防ぐ工夫がされていることです。固体レーザーは発生する熱によってレーザー結晶の温度が不均一になり、熱レンズ効果を併発させてしまうため、レーザー集光度が低下してしまうという課題があります。熱レンズ効果とは、結晶がレンズのような屈折率を持ってしまうことを指します。

ディスクレーザーは、レーザー結晶を薄いディスク状にし、その裏にヒートシンクを取り付けることで課題を解決し、これまでの固体レーザーより溶接精度が上がりました。ディスクレーザーは航空宇宙産業でよく使われています。

半導体レーザー

半導体レーザーは、固体レーザーの一種です。主に半導体材料を媒質として用いています。同じものを指す他の表記として、ダイオードレーザーやレーザーダイオードもあります。

特筆すべきは、他のレーザータイプとは異なり、半導体に電流を流すと発生するレーザー光を熱源としていることです。励起(供給)源にランプを使用していないため、限られたスペースでも利用可能です。

また、非常に細かい溶接作業をするのにも適しています。半導体レーザーは電子機器製造でよく使われています。

ここまで、レーザー溶接機の原理とタイプごとの特徴を説明してきました。次は、レーザー溶接機がどのような業界で何の用途に使われているのかを説明します。業界ごとに用途が異なるため、次の章を読み進めて用途を把握いただけたら幸いです。

使い道は?利用業界・企業と用途例

使用されている業界・企業と使用例

前章ではレーザー溶接機の仕組みと各レーザーごとの特徴を説明しました。ここでは、レーザー溶接機が利用されている業界と用途例を紹介します。レーザー溶接機が使われる代表的な場面や業界として以下のものが挙げられます。

(参考:NISHIHARA「レーザ溶接とは」


上から順を追って説明します。

自動車業界

自動車業界では、ボディのスポット溶接やシーム溶接などにレーザー溶接機が使われています。

具体的には、以下の組み立て工程で使用されることが多いです。

  • 車体のフレームやシャーシ(骨格)の溶接
  • ドアパネルやボンネットの組み立て
  • 薄い金属部品の精密溶接
  • 車両のエキゾーストシステム(排ガスに関わるシステム)の製造
  • バッテリーパックの組み立て(ex. 電気自動車など)
  • 軽量化材料(ex. アルミニウム合金など)の溶接
  • 複合材料(ex. 繊維強化プラスチックなど)の溶接
  • エアバッグセンサーなどの小型電子部品の溶接

自動車業界の製造工程でレーザー溶接機が使用される主な理由は、自動車の組み立て溶接には精密な作業が時として求められるためです。レーザー溶接機は非常に速く精密な溶接が可能で、自動化への適合性もあるため、自動車製造の効率化や品質向上に貢献しています。

電子部品製造業界

電子部品製造業界では、微細なワイヤーやピンのスポット溶接などにレーザー溶接機が使われています。

特に、以下のような製造過程で使用されることが多いです。

  • 基板上の微細な部品の溶接
  • 電子チップと基盤の接合
  • センサー部品の組み立て
  • 精密なコネクターの製造
  • バッテリーパックの組み立て
  • スマートフォン内部の細かい部品の溶接
  • カメラモジュールの組み立て
  • 医療機器の小型電子部品の溶接

電子部品製造には精密な加工が要求されます。その要求に対応することができるのが、レーザー溶接機です。また、異なる材質への対応や部品への熱損傷の最小化も可能です。こうしたレーザー溶接機の特性が、電子部品の一貫した品質維持に貢献しています。

航空宇宙業界

航空宇宙業界では、安全性基準に耐えうる、高い強度が必要な部品の製造に対してレーザー溶接機が使われています。

以下の製造プロセスで使用されることがあります。

  • 航空機の骨格など構造部品の組み立て
  • タービンブレードの製造
  • 軽量合金材料の精密溶接
  • エンジンコンポーネントの組み立て
  • 高強度アルミニウム合金の溶接
  • 空気力学的コンポーネントの製造
  • 衛星の小型部品の組み立て
  • 航空機内部の電子システムの溶接

航空宇宙業界で必要とされる部品や製品で求められるのは、耐久性のある品質と軽量化です。レーザー溶接機は高強度の溶接が可能な上、多様な材質に対応が可能なため、軽量化された材料の効率的な結合もできます

医療装置メーカー

医療装置メーカーでは、精密な医療機器の組み立てや修理に対してレーザー溶接機が使われています。

例えば、以下のような製造工程や修理に用いられることが多いです。

  • 外科用器具の精密組み立て
  • インプラント(歯や骨)の製造・修理
  • 医療用電子機器の小型部品の組み立て
  • プローブやセンサーの製造・修理
  • 高度な医療機器の筐体製造
  • 医療機器の金属部分の接合

医療装置を製造する際は、非常に高い水準の安全基準と品質基準を満たす必要がありますが、これら基準を満たすことのできる製造道具がレーザー溶接機です。

機械メーカー

上記の自動車や医療装置以外の機械製品の製造でもレーザー溶接機は幅広く使用されています。機械メーカーでは、精密な機械部品の組み立てのためにレーザー溶接機が使われています。

例えば、以下のような場面で用いられることが多いです。

  • 大型構造物の組み立て
  • 高精度溶接を要する金属部品の製造
  • 複雑な形状の部品の溶接
  • 軽量で耐久性のある材料の使用
  • 金属部品の継ぎ目なし接合への使用
  • 高品質な表面処理
  • 自動化された製造ラインでの使用

基本的には自動車業界や医療装置業界での使用方法と同じですが、それ以外にも大型構造物の組み立てや高品質な表面処理が必要となる作業でも用いられることが多いのが特徴です。

ジュエリーメーカー

ジュエリーメーカーでは、繊細な金属部品の接合や修理のためにレーザー溶接機が使われています。

  • 繊細な宝飾品の組み立て
  • 異なる金属の精密な接合
  • ジュエリーの修復と修理
  • 宝石の取り付け
  • サイズ調整(リングサイズなど)
  • カスタムデザインの製作

ジュエリーメーカーでレーザー溶接機が広く用いられるのは、繊細で精密な溶接能力が求められているためです。ジュエリー製作の工程では、細かい部品の組み立てや複雑なデザインの実現が試みられます。

また、熱影響の範囲が小さいため、金やプラチナなど高価な材料を損なう恐れも少ないことも使用される理由の1つです。レーザー溶接機は以上のような条件を満たすことのできる水準で溶接が可能なため、ジュエリー業界では幅広い用途で利用されています。

ここまで、レーザー溶接機の利用業界と用途例を紹介しました。続いて、レーザー溶接機利用のメリット・デメリットを説明します。

メリット・デメリットの検討はそもそもレーザー溶接機を導入すべきか否かを検討する際に重要なので、次の章も是非お読みください。

レーザー溶接機のメリット・デメリット

レーザー溶接機利点と欠点

『レーザー溶接機の利用業界・企業と用途例』では業界・企業の分野ごとにレーザー溶接機が利用される理由と用途を解説しました。これをレーザー溶接機使用のメリット・デメリットとしてまとめたのがこの章です。

(参考:ウェルテック舎「レーザーによる精密溶接の原理や使用例・メリット・デメリット・コツ」

メリット

レーザー溶接機の主なメリットは以下の3点を挙げられます。

  • 高精度(スポット溶接など)と高品質
  • コスト・時間の削減に繋がる溶接速度
  • 多様な材質を加工可能

高精度(スポット溶接など)と高品質

レーザー溶接機は、精密なビーム制御により、非常に精密で品質の高い溶接が可能です。これは特に、小さな部品や複雑な形状の接合において重要で、溶接部分の均一性と強度を担保します。

つまり、強度は保ちつつ、溶接箇所は目立ちにくくなり、製品の全体的な品質が向上するということです。この利点は、電子部品製造や医療装置製造において非常に重要となってきます。

コスト・時間の削減に繋がる溶接速度

レーザー溶接機は高速で動作するため、一般的な溶接方法と比べて生産効率が大幅に向上します。このことが大量生産が求められる製造業界でのコストと時間の削減・節約に寄与します。

市場が急速に変化する昨今の状況ですが、迅速な対応が可能となることもあり、自動車製造や電子部品製造で重宝されています。

多様な材質を加工可能

レーザー溶接機は多様な材質に対応できるため、1つの装置で金属、プラスチック、合成材料など様々な種類の材料を溶接することが可能です。これにより、製品設計の柔軟性が増し、異なる材料の組み合わせができるようになります。

特に複合材料が多用される航空宇宙業界でこの利点が求められています。

デメリット

デメリットは主に以下の3点です。デメリットの把握は、レーザー溶接機を納得して導入をする際に特に重要です。この3点以外にも、貴社導入にあたって気がかりとなりそうな点は予め書き出すなどして明確にしましょう。

  • 高い設備投資・ランニングコスト(ガス・電気など)
  • 技術的な専門知識が必要
  • 板厚によっては利用できない

高い設備投資・ランニングコスト(ガス・電気など)

レーザー溶接機は高価なレーザー発振器、精密な制御システムなど先進技術を使用しているため、購入費用は一般の溶接機と比べてかなり高額です。また電気代などのランニングコストも定期的に発生します。

ハンディトーチ型のファイバーレーザー溶接機などランニングコストが低く押さえられるものもありますが、安全面を含めた環境設備への投資も含めると、全体として初期費用が高くなる傾向にあります。

小規模な企業や初めてレーザー溶接機を導入する企業にとっては、初期費用が大きな負担となってしまうのは注意が必要です。

技術的な専門知識が必要

ハンディタイプのレーザー溶接機は初心者でも扱いやすいような仕組みになっていることが多いですが、一般的にレーザー溶接機の操作とメンテナンスには専門的な技術の知識が必要です。

しかし、レーザー溶接機を適切に使用するためには、オペレーターは特定の訓練と経験が必要になるなど、専門的なスキルを必要とします。適切な人材の確保、オペレーターへの継続的なトレーニングなどの提供が求められるため、それなりの負担が発生するのは念頭に置きましょう。

板厚によっては利用できない

レーザー溶接機は特定の厚さの材料に最適化されているため、非常に薄い材料や反対に非常に厚い材料には適していない場合もあります。そのため、異なる厚さの材料を溶接する必要がある場合は、追加の設備や異なる溶接方法を検討する必要も出てきます。

特に、多様な製品を扱う製造業や多様な材料を扱わなければならない製品を取り扱う場合、検討中の単一のレーザー溶接機でどれほどの対応ができるのかについては注意が必要です。

ここまで、レーザー溶接機を用いることのメリットとデメリットをそれぞれ3つ挙げて説明しました。次の章からは、レーザー溶接機を選ぶ際のポイント6つを説明します。

実際にレーザー溶接機を選ぶとなったときに困るのが、どのような基準で選べば良いのかということです。その基準を知りたい方は、次の章も併せてお読みください。

どのような軸で選べば良いか|レーザータイプ別に解説

導入前に検討したい6つの観点

『レーザー溶接機を使用するメリット・デメリット』では、レーザー溶接機一般に広く見られるメリットとデメリットを説明しましたが、レーザー溶接機の種類によって得意としていることは異なります。

ここでは、レーザーのタイプ別に、6つの観点からレーザー溶接機の選び方を解説していきます。貴社で求められている用途や使われている材料を把握した上で、以下の項目を参照してください。


(参考:AccTek「レーザー溶接機の選び方は?」

よく使われる業界と材料

材料には様々な種類が存在するため、レーザー溶接機を選ぶ際は業界や貴社で扱っている材料の種類を把握することが重要です。検討中のレーザー溶接機がどれほど幅広く、あるいはピンポイントな材料に対応しているのかを確認した上でレーザー溶接機を選択しましょう。

レーザー溶接機の種類に応じた適切な材料とよく使用される業界は以下の通りです。

適した材料 業界
CO2レーザー 非鉄金属(アルミニウム、銅)、鋼、ステンレス鋼 自動車産業、航空宇宙産業、
重工業
YAGレーザー 鉄、ステンレス鋼、チタン、合金 医療機器製造、電子機器製造、
精密工学
ファイバーレーザー ほとんど全ての金属(鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、
チタン、銅など)
自動車産業、電子機器製造、
一般工業
ディスクレーザー ステンレス鋼、鋼、チタン、非鉄金属 航空宇宙産業、自動車産業、
医療機器製造
半導体レーザー 軽金属、薄板金属、プラスチック 電子機器製造、小型部品製造、
医療機器製造

ここで着目すべきは、溶接可能な材料の幅がどれほど広いかです。例えば、ファイバーレーザーは比較的幅広い材料に対応することが可能ですが、プラスチックには向いていません。

一方でプラスチックに向いている半導体レーザーですが、鋼など厚い傾向にある材料には向きません。

機能的特徴と適切な溶接用途

溶接方法によっては表面が焦げたようになってしまうこともあります。貴社で扱っている製品がどれほどの品質を求められているのかを確認することが重要です。レーザー溶接機を選ぶ際は、貴社で求めるパフォーマンスを把握した上で、レーザータイプの機能的特徴を確認し、望む成果を得られるかどうかを見極めましょう。

レーザーのタイプによって、溶接の機能的特徴と仕上がり・品質が異なってきます。

機能的特徴 適切な用途
CO2レーザー 高いエネルギー効率
深い浸透力
厚い材料の溶接に適切
大面積溶接作業で均一な溶接が可能
YAGレーザー 多様な金属に対応可能
微細な溶接が得意
高精度で細かい溶接
小型部品・精密機器に適切
ファイバーレーザー 優れたビーム品質
高いエネルギー密度
綺麗で精密な溶接が可能
薄板~中厚板に適切
ディスクレーザー 高いビーム品質と出力
精密かつ深い浸透力
高品質で均一な溶接が可能
金属加工に適切
半導体レーザー 比較的低出力
小型の軽量部品の溶接が可能
微細な部品や薄い材料に適切
高精度、深すぎない溶け込みの溶接が可能

レーザーの種類ごとの機能的特徴とその結果としての溶接品質には密接な関係にあります。例えば、CO2レーザーは深い浸透力があるため、厚い材料の溶接にも容易に対応できます。

価格・コスト

貴社で使う目的を整理し、導入・運用コストを計算して把握することがまず大切です。そして限られた予算を基準にして、なるべく目的に適いかつコストを抑えられるレーザー溶接機を見つけましょう。

価格の全体を把握することによって、長期的な運用の計画が立てられるようになります。まず、レーザー溶接機単体の価格帯は以下の3つの観点に分けられます。

レーザー溶接機単体の価格帯

低価格帯:小規模な作業や簡易な溶接に適しています。例えば、小さな工房やジュエリー修理などに用いられるレーザー溶接機がこの価格帯に入ってきます。価格は約200,000円から2,000,000円程度です。

中価格帯:汎用性が高く、小規模の製造業に適しています。例えば、中規模の部品製造や修理業務がそれにあたります。価格は約2,000,000円から20,000,000円程度です。

高価格帯:高い精度と大量生産能力を持つ、大規模な製造業向けです。自動車産業や航空宇宙産業に向いています。価格は約20,000,000円から100,000,000円程度です。

レーザー溶接機の単価だけではなく、その周辺にもコストは発生します。コストの発生ポイントは主に以下の3点が挙げられます。

  • 導入コスト(単価含む初期費用)
  • 運用コスト(電力消費やメンテナンス)
  • トレーニングコスト(オペレーターの育成・教育)

以下は、レーザーの種類ごとにかかる導入コストと運用コストです。

導入コスト 運用コスト
CO2レーザー 初期設備投資が高め 維持管理費用(ガス補充や交換、光学系の調整)がかかる
YAGレーザー 初期設備投資は中程度 光源の寿命が短く、交換コストが発生する
高価な光学系のメンテナンスが必須
ファイバーレーザー 安価なものもあるが、
初期設備投資は高い傾向
長期的にはメンテナンスコストが低い
ディスクレーザー 初期投資額が高め 効率性の良さから長期的な運用コストは低い
半導体レーザー 初期投資額は比較的低い 精密部品の修理や交換でコストが発生

操作性とメンテナンス

レーザー溶接機を導入して無理なく運用できるのかを基準に溶接機を選択するのが望ましいです。

レーザー溶接機によって仕組みが若干異なってくるのに伴い、操作性とメンテナンス方法についても違いがあります。

操作性 メンテナンス
CO2レーザー 他と比較して複雑
光学系の調整が必要になることも
光学部品のクリーニングと調整
定期的なレーザーガスの交換
YAGレーザー 他と比較してシンプル
精密なセットアップが必要
定期的なランプやレーザー媒体の交換
特にランプの寿命に注意が必要
ファイバーレーザー 比較的簡単で直感的な操作が可能
自動化と統合性が容易
ほとんどメンテナンスフリー
定期的なファイバーケーブルやレンズの検査
ディスクレーザー 他と比べて高度な操作が必要
一度セットアップすれば高い安定性発揮
定期的な光学部品のクリーニングや調整
全体的にメンテナンスは比較的容易
半導体レーザー 小型で操作が簡単なことが多い
ハンドヘルドタイプも存在
メンテナンスは少ない
部品チェックや交換が必要になることも

現行のレーザー溶接機が存在する場合は、それがどのような形で運用されているのか、運用上問題とされている点はないかなどの使用状況を把握しましょう。

また、レーザー溶接機に対してスタッフは技能をどれほど持ち合わせているのか、企業のノウハウレベルも確認することをおすすめします。

生産効率

レーザーのタイプによって生産効率のあり方にも違いが生じます。既存のシステムへの統合性が上手くいくかどうかを考慮しつつ、求めている効率性を最大限得ることのできる溶接機を選びましょう。

それに加えて、製品ごとに異なるアプリケーション(操作盤)や溶接する材料、溶接の複雑さによって効率が左右される点は導入の際注意が必要です。たとえば、次のような点に注意すると良いです。

  • 板厚に対するレーザータイプは適切か
  • 貴社の製造ラインへ容易に統合が可能か
  • 適切な効率度合いか(安全性を損なわないか)

以下が生産効率上の利点と欠点を表したテーブルです。

生産効率上の利点 生産効率上の欠点
CO2レーザー 大量生産に適している
非鉄金属(アルミニウム、銅)、
鋼、ステンレス鋼などに適切
大型設備が必要となるため、
導入やセットアップに時間がかかる
YAGレーザー 小規模な製品に対しては効率が良い
鉄、ステンレス鋼、チタン、合金などに適切
ランプ交換などメンテナンスに時間がかかる
ファイバーレーザー 迅速な溶接が可能なため、大量生産に適している
ほとんど全ての金属(鋼、ステンレス鋼、
アルミニウム、チタン、銅など)に対応可能
厚い材料には適していない場合がある
ディスクレーザー 複雑な溶接作業に適切で、
一度稼働すれば効率が良い
ステンレス鋼、鋼、チタン、非鉄金属などに適切
セットアップには専門知識が必要である
半導体レーザー 小規模な製品に対しては高い効率を発揮
軽金属、薄板金属、プラスチックなどに適切
大量生産にはあまり適していない

規模の大きいレーザー溶接機ほど大量生産には向いている一方で、大型設備となるためセットアップなどには専門知識が必要となるという傾向です。

また、既存の設備環境に新しく溶接機を導入する場合を踏まえるなら、検討中の製品が既存設備へ容易に統合できるかも重要な点です。

安全対策

レーザーの種類によって発生するリスクや必要な安全対策が異なってきます。そのため、導入した場合に貴社の安全対策に適しているか、無理なく安全管理を行えるのかなどを念頭に置いた上で、レーザー溶接機を選びましょう

どのレーザー溶接機にも共通するのは、操作員が安全に関する適切なトレーニングを受け、安全ガイドラインに従って作業を行うことです。そして定期的にメンテナンスをすることも大切です。

危険性 必要な安全対策
CO2レーザー 目に見える光を発する
高電力を扱う
目に光が当たらないよう適切な保護眼鏡が必要
周囲への影響を考慮し適切なシールドや遮蔽が必要
YAGレーザー 目に対する危険性がある
高温のリスクがある
適切な保護眼鏡が必要
使用の際は周囲の安全管理が重要
ファイバーレーザー ビームの強度が強い
ファイバーケーブルの取扱に
注意が必要
直接のビーム露出を避けるための
厳重な保護措置が必要
ディスクレーザー 高出力のレーザーを用いる
ビーム漏れや反射の恐れ
適切な保護措置とオペレーターの訓練が必要
周囲への影響を考慮した遮蔽と安全な操作環境の確保が必要
半導体レーザー 低出力のものが多いものの、
直接のビーム露出は目に良くない
保護眼鏡の着用が必要

レーザー光を用いる溶接方法なので、保護眼鏡、溶接面、溶接ヘルメットの用意が必要です。溶接機の規模によって、安全管理が必要な範囲が異なってくる場合があります

導入コストのみを考慮した選択方法だと、最悪の場合スタッフの怪我につながるなど、取り返しのつかない事態が生じてしまう可能性もあるので、注意が必要です。

ここまで、レーザー溶接機を選ぶ際の軸について説明してきました。次の章では、レーザー溶接機を製造しているメーカーを一覧で紹介します。選び方の大枠を踏まえながら次の章を読むと、貴社にとって適切なメーカーの判別がつくようになりますので、是非ご一読ください。

レーザー溶接機を製造するおすすめ企業比較一覧

レーザー溶接機おすすめ企業7選

前章では、レーザー溶接機を選ぶ際に参考にすると良い6つの軸を紹介しました。導入の条件を整理して、6つの軸を確認した後は、実際にそれに合うレーザー溶接機を販売している企業を探しましょう。

ここでは、レーザー溶接機の代表的なメーカーを紹介します。気になるメーカーがあれば、是非実際に問い合わせていただければと思います。

CO2レーザー YAGレーザー ファイバーレーザー ディスクレーザー 半導体レーザー
光響
エイム
テクノコート
アマダウエルドテック
ダイヘン
TRUMPF
レーザーライン

光響

2009年に創業された、レーザー技術を活用した製品の開発と販売に特化した企業です。精密加工や計測装置も扱っています。光響では、軽量タイプのハンディ式レーザー溶接機と従来タイプのハンドトーチレーザー溶接機を取り扱っています両機ともファイバーレーザー溶接機です。

光響はレンタル・サブスクサービスを月額定額20万円からで展開しているため、コスト面で導入がしやすいのが特徴です。日割り単位でのレンタルもできます。

ファイバーレーザー溶接機の導入を検討しているものの、金額面で不安を感じている方は、まず光響のレンタル・サブスクサービスを利用してみるのをおすすめします。

エイム

1962年に創業された、板金・金属加工、ファイバーレーザー溶接機開発・販売・リース事業などを展開している企業です。ハンドトーチ型のファイバーレーザー溶接機を扱っています。ビーム形状を変更したり、照射範囲を変更したりできるガルバノスキャナーを搭載したトーチなのが特徴です。

また、エイム社で直接実機を試すことができるので、よく吟味した上で導入することが可能です。ファイバーレーザー溶接機の実証を通して導入を検討したい方におすすめです。

テクノコート

1990年創業。機械部品、金型などの予防保全用コーティング機材、および補修用肉盛機材の販売製造ならびに施工の受託を事業として行っている企業です。レーザー溶接機は、ファイバーレーザーとYAGレーザーを扱っています

特にYAGレーザー溶接機は、歯科技工や医療機器への肉盛・溶接で使用されています。また、機械部品や精密部品の溶接、金型などへの補修にも用いられています。機械部品、精密部品など緻密な溶接を求めている方はテクノコート社のYAGレーザー溶接機を確認することをおすすめします。

アマダウエルドテック

1972年創業。アマダグループの傘下にある、精密溶接・加工事業を展開している企業です。抵抗溶接技術とレーザー溶接・加工技術を併せ持っている点に独自性を持っています。YAGレーザー溶接機とファイバーレーザー溶接機を扱っています

YAGレーザー溶接機は2種類存在し、スタンダードなタイプとYAG基本波では難しい銅や金の溶接が可能なYAG SHGレーザー溶接機があります。対応材質の幅が広いYAGレーザー溶接機を検討されている方は要チェックです。

ダイヘン

1919年に創業。溶接機事業や産業用ロボットの開発で知られています。非接触の電力供給システムやAI搬送ロボットなどの革新的なファクトリーオートメーション製品で注目されています。

ダイヘンでは、マルチファイバーレーザーを使用し、レーザー・アークハイブリッドトーチを搭載したレーザー溶接機を扱っています。鉄とアルミを高強度で接合可能です。異材金属接合を求めている方におすすめです。

TRUMPF

1932年に創業された、ドイツに本社を置く多国籍企業です。主に工業用機械やレーザー技術の分野で事業を展開しています。高品質な金属加工機械、パンチングマシン、レーザー加工機、曲げ機などの製造で知られています。

TRUMPFはCO2レーザーやディスクレーザーの溶接機を扱っています。昨今はCO2レーザー溶接機を扱っているところが少なくなりつつあるので、CO2レーザー溶接機を検討する際は要チェックのメーカーです。

また、ディスクレーザー溶接機を検討している場合もまずは確認してみると良いでしょう。

レーザーライン

1997年に創業。国際的にリードする産業用の高出力半導体レーザーの開発・製造を行っています

レーザーライン設立当初はレーザー材料加工の光源としての半導体レーザー装置は実現不可能と考えられていましたが、創設者であるクリストフ・ウルマン博士とフォルカー・クラウゼ工学士は、その当時から半導体レーザーのパイオニアとして活動してきました。

半導体レーザー溶接機の導入を検討する際は必ずチェックするべき、外してはならないメーカーと言えるでしょう。