4種類のNC旋盤と特徴、比較方法とおすすめのメーカー5社
  • 最終更新日:2024年9月13日
NC旋盤の種類や特徴、そして各タイプのメリットについて知ることで、自社に最適な機械を選ぶヒントが得られます。

NC旋盤とCNC旋盤の違いや、それぞれが持つ強み・弱みを比較することで、どのタイプが自社の生産ラインに最も適しているかを理解することが重要です。また、選定の際には、メーカーごとの特色や技術力も考慮することで、より良い選択ができるでしょう。

この記事では、NC旋盤の種類や特徴、比較方法について詳しく解説します。

4種類のNC旋盤

NC旋盤の種類と特徴

NC旋盤とは、数値制御装置(NC装置)を組み込んだ旋盤のことです。旋盤は、円柱状の加工材料を回転させて、そこに刃物を当てることで不要な部分を削る工作機械です。

NC旋盤は、NC装置が付いているため、自動的に加工プログラムに沿って加工を行います。これにより、高精度や高生産性の加工が可能になります。NC旋盤は、外径加工や内径加工などの基本的な加工性能は汎用旋盤と同じですが、曲面や複雑な形状の加工も得意です。

NC旋盤の種類として、主に以下の4種類が挙げられます。

  • NCタレット旋盤
  • NC立旋盤
  • NC正面旋盤
  • NCロール旋盤

NCタレット旋盤

NCタレット旋盤とは、タレットという旋回する刃物台を持ったNC旋盤のことです。タレットには複数の工具を取り付けることができ、必要に応じて工具を交換することで、様々な切削加工を自動で行うことができます。

このタイプの旋盤の特徴は以下の通りです。

  • 高精度、高速、自動化が可能で、工具の交換時間が短く、加工効率が高い
  • 複雑な形状の加工が可能で、外周削り、穴あけ、ねじ切りなどの連続加工が可能
  • 刃物台の種類や構造によって、多機能・高機能化が可能

NCタレット旋盤は、タレットという旋回する刃物台を持ったNC旋盤です。タレットには複数の工具を取り付けることができ、必要に応じて工具を交換することで、様々な切削加工を自動で行うことができます。小物から中物の大量生産や、複雑な形状の加工に向いています。

NC立旋盤

NC立旋盤とは、主軸を垂直方向に配置し、刃物を上から下へ移動させて旋削するNC旋盤です。重たい材料でも安定して加工でき、外径寸法が大きい物や重量物の加工に最適です。

このタイプの旋盤の特徴は以下の通りです。

  • 大物加工に適していて、テーブルに物を乗せるように作業でき、クランプ力が強く、重切削が得意
  • いびつなワークの加工が可能で、面盤やチャックで様々な形状のワークを固定でき、重力の影響で回転速度が均一
  • 刃物台がマシニングセンタのように動くものもあり、多機能・高機能化が可能

NC立旋盤は、重たい材料でも安定して加工でき、外径寸法の大きい物や重量物の加工に最適なNC旋盤です。

NC正面旋盤

NC正面旋盤は、普通旋盤のチャックの代わりに面盤を取り付けたもので、旋盤に比べて大きな径を加工できるようにベッドの振りを長くしたものです。このタイプの旋盤は、大型・重量物の加工に向いており、ワークを水平に保持できるため、重切削が得意です。

NC正面旋盤の特徴は以下の通りです。

  • 内面加工が得意で、ワークの中心に近い部分を加工できるため、内面の精度が高い
  • ワークの着脱が容易で、ワークを水平に保持するため、クランプや取り外しに時間がかからない

NC正面旋盤は、長さに対して外径寸法の大きい加工物を工作するNC旋盤です。主に端面の加工や内面加工を行います。

NCロール旋盤

NCロール旋盤は、NC旋盤の一種で、主に円筒形状のワークを加工するために使用されます。NCロール旋盤の特徴は、ワークを回転させながら、ロール(転造車)を上下左右に動かして加工することができる点です。この方法により、ワークの表面に滑らかな仕上がりを与えることができます。

このタイプの旋盤の特徴は以下の通りです。

  • 長尺ワークの加工に適していて、ワークの両端にセンターを入れて保持し、中心に沿って回転させることで、ワークの歪みや振動を抑えて加工できる
  • 重切削が得意で、ワークの重量や切削力に耐えるため、機械の剛性や馬力が高く、大きな切り込み量で加工可能
  • 精度が高く、ワークの長さに応じて刃物台を移動させることで、ワークの全長にわたって一定の精度で加工できる

NCロール旋盤は、長尺で円筒形状のワークを高精度かつ効率的に加工するために最適な機械です。

NC旋盤とCNC旋盤の違い

NC旋盤とCNC旋盤との違い

NC旋盤は、物理的なデータストレージ(例:パンチカードやテープ)を用いてプログラムを実行する装置です。操作は主に手動で行われるため、オペレーターの技術力が求められます。高い精度での加工が可能ですが、制御がハードウェアに依存しているため、プログラムの変更には手間がかかり、柔軟性にはやや欠ける面があります。NC旋盤は、安定した品質で単純な加工を繰り返し行う用途に適しています。

適している用途は、以下の通りです。

  • 単純な形状の加工
  • 中小ロットの部品生産
  • 簡易な製品のカスタマイズ

一方で、CNC旋盤は、コンピュータ制御による高度な自動化を実現した装置です。GコードやMコードを用いたプログラムにより、複雑な形状や多段階の加工が可能です。また、プログラムの修正や変更が容易で、異なる製品の生産にも迅速に対応できます。ソフトウェアによる精密な制御により、安定した高精度の加工が可能であり、大量生産やカスタマイズされた少量生産にも対応できる点が特徴です。

適している用途は、以下の通りです。

  • 複雑な形状の加工
  • 大量生産のライン
  • カスタマイズされた製品の少量多品種生産

NC旋盤のメリット・デメリット

NC旋盤の強みと弱み

NC旋盤には、メリットとデメリットの両方があります。このセクションでは、その両方をご紹介します。

メリット

NC旋盤には、以下の強みがあります。

  • 高精度
  • 自動化
  • 繰り返し精度

高精度

NCプログラムを一度作成すれば、そのプログラムに基づいて機械が自動運転を行うため、手作業による誤差がほとんどなくなり、常に高精度な加工が可能です。

また、量産加工においても、同じ精度で繰り返し製品を製造することができるため、安定した品質管理が求められる製造現場で大いに活躍します。これは特に金属加工業において、大きなメリットとなります。

自動化

NCプログラムを使用して機械に動作を指示することで、製品や刃物を自動的に動かしながら加工が行われ、手動操作に比べて繰り返し精度が非常に高くなります

この自動化により、同じ作業を繰り返す際も精度が保持され、オペレーターの負担を軽減します。これにより、品質のばらつきを最小限に抑えつつ、大量生産の効率化が実現できるのです。

繰り返し精度

汎用工作機械では、作業員が手動で加工操作を行うため、精度にばらつきが生じやすく、作業者の熟練度にも依存します。

しかし、NC旋盤では、一度設定されたプログラムに従って自動的に加工が行われるため、精度のばらつきがなく、常に一定の品質が保たれます。また、作業者がその場を離れても安定した加工が可能なため、省力化を実現し、生産性を大幅に向上させることができます。

デメリット

一方で、NC旋盤には以下のようなデメリットがあります。

  • 高価
  • プログラム作成に時間がかかる
  • 加工範囲が限られる

高価

汎用旋盤に比べてNC旋盤は高性能である反面、その価格も高く設定されています。初期投資が大きいため、中小企業や小規模な生産ラインでは導入に慎重になることが多いです。

また、機械の複雑さからメンテナンスコストも増加する場合があります。しかし、高い初期費用を上回る精度や生産性の向上を見込めるため、長期的な視点での投資と捉えることが重要です。

プログラム作成に時間がかかる

NC旋盤を動かすためには、加工内容を指示する「加工プログラム」を作成しなければなりません。このプログラムはNC装置が認識し、各サーボモータに正確な指示を送ることで加工が行われます

しかし、プログラムの作成には高度な知識が必要であり、初心者にはハードルが高い場合があります。また、加工前の段取りにも時間を要するため、特に少量生産や頻繁な設定変更が必要な場合には効率が悪くなることがあります。

加工範囲が限られる

NC旋盤は、外径加工、内径加工、端面加工、ネジ加工、溝加工、ドリル加工、テーパー加工など、基本的な形状の加工には非常に優れた性能を発揮します。しかし、複雑な形状や曲線を多用する加工には対応が難しい場合があります

特に3次元的な複雑な加工が求められる場合や、曲面や多面体の加工が必要な製品には、NC旋盤では限界があるため、他の加工機械や技術が必要になることがあります。このため、製品の形状や加工内容に応じた適切な機械の選択が求められます。

4つの選定基準 | NC旋盤の選び方

NC旋盤の選定基準

NC旋盤を選ぶ際、以下の4つのポイントを抑えることが重要です。

  • 切削速度
  • 送り速度
  • 主軸回転数
  • 冷却液の使用量

切削速度

切削速度とは、工具の刃先がワークに接触する部分の移動速度のことで、m/minやm/sなどの単位で表されます。

切削速度は、特に加工面の粗さ、加工効率、工具の寿命に影響します。

切削速度が高い場合、切削面がきれいに仕上がり、短時間で切削することができます。逆に、切削速度が低い場合、刃物の摩耗が抑えられます。また、構成刃先やチッピングも少なくなります。

送り速度

送り速度は、工具が加工物に対して進む速度です。送り速度が変わると、加工物の表面の粗さや形状が変化します。

送り速度が高い場合、加工時間が短縮されるため、生産性が向上します。逆に、送り速度が低い場合、切削力が小さくなるため、刃物の摩耗が少なくなり、刃物の寿命が長くなる可能性があります。

主軸回転数

主軸回転数は、工具が回転する速度です。主軸回転数が変わると、切削面の粗さや切削面の形状が変化します。

主軸回転数が高い場合、切削速度が上昇し、切削時間が短縮されます。逆に、主軸回転数が低い場合、切削速度が低下し、工具の寿命が延びます。

冷却液の使用量

冷却液は、切削時に発生する熱を冷却するために使用されます。冷却液の使用量や種類が変わると、加工物の表面の粗さや形状が変化します。

冷却液の使用量が多い場合、切削部分の温度が下がり、切削部品の表面粗さが改善されます。また、切削油の使用量が増えるため、切削部品の寿命が延びます。

逆に、冷却液の使用量が少ない場合、コストが削減されます。また、環境負荷が低減されます。

NC旋盤を製造するメーカー5社

NC旋盤とCNC旋盤との違い

NC旋盤を製造する主なメーカーには、以下の5社が挙げられます。

  • オークマ
  • FUJI
  • 西部電機
  • TAKISAWA
  • ヤマザキマザック

オークマ

オークマは、1898年に創業した総合工作機械メーカーです。NC旋盤、マシニングセンタ、複合加工機、研削盤などの工作機械や、自社開発のCNC装置(OSP)やFA製品などを製造・販売しています。

FUJI

FUJIは、電子部品実装ロボットと工作機械を主力事業とするメーカーです。同社は、主に横型NC旋盤のTN IIシリーズを製造しています。

西部電機

西部電機は、福岡県古賀市に本社を置く搬送機械、産業機械、工作機械、放電機械などを製造、販売するメーカーです。同社は、高精密小形NC旋盤のシリーズを製造、販売しています。

TAKISAWA

TAKISAWAは、1922年に旋盤メーカーとして創業し、現在はCNC旋盤・普通旋盤・マシニングセンタ・複合加工機などを製造販売する工作機械メーカーです。ニデックの傘下に入り、国内外で高い評価を得ています。品質管理の徹底とカスタマイズ技術が強みです。

ヤマザキマザック

ヤマザキマザックは、1919年に創業した日本の大手工作機械メーカーです。マザーマシンと呼ばれる工作機械を通じて、「お客様・社員・国際社会に貢献する」ことを企業理念として掲げています。工作機械のグローバル・カンパニーとして、世界11ヵ国に生産拠点とサポート拠点を展開しています。