光造形3Dプリンター6つの種類と5つの比較基準、おすすめメーカー5社を解説
  • 最終更新日:2024年3月15日
ものづくりの多様化が変化し、国内でも多品種小ロットの需要が増えてきました。開発品や新製品立ち上げをスピーディーに行わなくては、この強い流れにはついていけません。

「光造形3Dプリンター」は、ここ数年で大きく技術を伸ばしています。高精度化・高速化が進み、汎用性樹脂だけではなく、金属やエラストマーなども造形可能です。サンプル品作製以外にも、実生産・商品として利用できるほど価値が高まっています。

比較的新しい技術なので、企業に導入する際には、何をどうすればいいかわからないと考えている方も多いと思います。そこで、本記事では「光造形3Dプリンター」に注目し、各方式のメリット・デメリットや、選び方・製造メーカーについて触れていきます。

光造形3Dプリンターの特徴

光造形3Dプリンターの特徴、仕組みと構造

光造形3Dプリンターとは、紫外線を照射すると硬化する紫外線硬化樹脂(レジン)を使い、造形していく3次元造形機です。

熱可塑性樹脂を用いて造形する「FDM方式(熱溶解方式)」と違い、外観が非常に綺麗な仕上がりが特徴です。レジン以外にもABS樹脂・エラストマー・カーボンを材料として使える機種も増えてきました。扱いやすさが飛躍的に向上しています。

光造形3Dプリンターの仕組みと構造

バットと呼ばれる受け皿にレジンを入れ、紫外線を照射して樹脂を硬化。0.015mm〜0.1mmの極薄層をミルフィーユのように積み上げて造形します。

機種によって、バットから積み上げる方式、プラットフォームに吊り下げる方式があり、各メーカーでさまざまです。

6種類の光造形3Dプリンター | 特徴とメリット・デメリット

6種類の光造形3Dプリンターとメリット・デメリット

従来は、FDM方式(熱溶解方式)が主流。しかし、より精巧な造形品を高速で作製する必要がありました。最近では光造形3Dプリンターの開発が各メーカーで進められています。

光造形3Dプリンターには、以下の種類が挙げられます。

  • SLA方式(Stereolithography Apparatus)
  • DLP方式 (Digital Lighting Process)
  • LCD方式 (Liquid Crystal Display)
  • インクジェット方式
  • LFS方式 (Low Force Stereolithography)
  • DLS方式 (Dynamic Light Scattering)

SLA方式の特徴

SLA方式は、光造形方式の中で歴史のある方法で、点状紫外線レーザーを照射します。一筆書きのように造形していく方式です。

SLA方式のメリット

レーザーを一筆書きのように1点に集中させて照射するため、複雑で細かな構造のものであっても3Dデータ通りの造形が可能です。表面精度が優れており、細かいディテールを正確に再現したい場合に用いられます。

SLA方式のデメリット

点状レーザーで緻密に造形をしていきますから、他の光造形方式に比べると造形スピードが遅くなることがデメリットです。

また、構造上レーザーをミラーで反射して、狙った部位に照射します。レーザーの出処は変わりません。レーザーが当たる角度が場所によって造形品質が異なりますから、注意が必要です。

DLP方式の特徴

DLP方式の紫外線照射には、機器に搭載されたプロジェクターが使われます。バットの下から「面」で紫外線を照射して硬化させる方式です。

プラットフォームに吊り下げながら造形するため、造形品は上下反対に出力される特徴があります。

DLP方式のメリット

面で紫外線を照射するため、造形スピードに優れているのが特徴です。大量のサンプル品などを短時間で作成する場合に向いています。

DLP方式のデメリット

プロジェクターから照射される紫外線は、ピクセル単位で照射されます。点で紫外線を照射するSLA方式と比較すると、造形物の外観が粗くなります。

造形サイズが大きい場合や、解像度の低いプロジェクターを使う場合には注意が必要です。単位面積あたりのピクセルが大きくなるため、造形物の外観品質が落ちます。

LCD方式の特徴

LCD方式は、DLP方式のようにバットの下から紫外線を面であてて造形する方式です。照射範囲をプロジェクターが決めるのではなく、バット下部にある液晶ディスプレイのLCDパネルを用いて照射範囲を決めています。

LCD方式のメリット

DLP方式と同様に高速で高精度な造形物を作りたい場合に向いています。造形品質はLCDの解像度に依存します。モノクロタイプや4K、8Kのものを選定すれば、さらに高精度な造形品を制作可能です。

さらに、導入コストの安さにも注目です。DLP方式と比較しても、LCDパネルがプロジェクターよりも安価です。大幅にコストダウンしたことから、業界の常識を変えた画期的な方式といわれています。

LCD方式のデメリット

造形品質は、LCDパネルの性能に依存。解像度やゆがみによって、造形物の品質が低下する可能性があります。

また、LCDパネルの寿命が短く、定期的に交換しなければいけません。高性能なLCDを使用する場合には、トータルコストがかさむ恐れがあります。

インクジェット方式の特徴

基本的な原理は他のプリンターと同じです。他と違う点は、色のついたレジンを使用し、造形品に色をつけながら作製する方法です。

インクジェット方式は、マテリアルジェッティング方式とバインダージェッティング方式に分けられます。

マテリアルジェッティング方式は、素材そのものをインクジェットとして噴霧して紫外線硬化する方法。一方、バインダージェッティング方式は、結合剤をインクジェットにして噴霧して冷却固化する方法です。

インクジェット方式のメリット

造形品に多彩な色付けができることが大きなメリットです。後工程で加飾する必要がありませんから、コスト低減にも繋がる上、完成度の高い造形ができます。

また、設備によっては0.015mmの積層ピッチで造形でき、他の光造形3Dプリンターよりも、滑らかな表面を造形できます。

インクジェット方式のデメリット

着色インクを使っているため、他の光造形3Dプリンターと比較すると有機溶剤特有の臭いがします。密閉した空間では体調不良を引き起こす恐れがありますから、設置場所は十分検討してください。

他の方式と比較すると、導入コストが高めです。さらに、液体材料の中で造形しないため、サポート材を多めに使用しなくてはいけません。

設備コストだけはなく、レジンなども十分にチェックすることをおすすめします。

LFS方式の特徴

SLA方式の問題点を改善した方式が、LSF方式です。レジンを入れるバットをフィルム化し、造形時の歪みや反りを改善しています。

LFS方式のメリット

SLA式はミラーに反射させて照射するため、照射角度の差で場所によっては精度が異なりました。しかし、LFS方式は紫外線レーザーをユニット化。

全て同じ角度で照射できますから、精度のバラツキが非常に少なくなります。

SLA方式よりも高精度、滑らかな表面造形が可能です。極細のレーザーで樹脂を硬化できますから、造形品とサポート材の設置面を極力小さくできます。サポート材の除去がしやすい点も、LFS方式のメリットといえるでしょう。

LFS方式のデメリット

SLA方式同様に、レーザーでレジンを硬化しますから、造形時間が長くなります。また、紫外線照射装置をユニット化したことで、部品点数が増え、SLA型と比較してもコストがアップしています。

DLS方式の特徴

DLS方式は、Carbon社が開発した3Dプリンター技術です。DLP方式と同様に、面で造形、紫外線を照射して硬化します。加えて、DLS方式は光量と酸素流量を制御し、従来方式よりも高速で造形が可能です。

DLS方式のメリット

造形部の酸素量をコントロールし、層の硬化度を調整。層間の接合部を同程度に硬化できます。

積層痕を残さない上、従来よりも造形スピードが速くなりました。また、レジンに熱で活性化する物質を組み込み、非常に強度が高い造形品もつくれます。

DLS方式のデメリット

2024年現在では、設備単体での販売ではなく、年間契約しなくてはいけないことがデメリットになるかもしれません。

さらに、追加のアクセサリーパックや、別途レジンを購入する必要があるため、トータルコストは高額になりがち。費用対効果を吟味する必要があるでしょう。

5つの比較基準 | 光造形3Dプリンターの選び方

光造形3Dプリンターの選定基準5つ

高額の3Dプリンターを導入しても、必ずしもよいビジネスができるとは限りません。3Dプリンターにはそれぞれ個性があり、得意分野が異なります。目的にあった光造形3Dプリンターを探してください。

光造形3Dプリンターを選定する上で比較すべき基準は以下の通りです。

  • 造形サイズ
  • 造形精度・品質
  • 使用レジン
  • 積層厚と造形速度
  • スライサソフトとの相性

造形サイズ

造形品のサイズは、光造形プリンター選定に重要な項目です。例えば、小さい造形品を制作したいのに、大きな3Dプリンターを導入するのは危険です。

大きな3Dプリンターで小さな造形品を作ると、解像度が粗くなり、外観品質に影響を及ぼす可能性があります。

造形精度・品質

造形品の品質基準を予め決めておくことも大切です。形状確認のための造形品であれば、層間の段差や縞模様を気にする必要はないでしょう。

しかし、より完成品に近い外観や強度を求める場合には、より高性能の3Dプリンターが必要です。

使用レジン

使用レジンは、造形品の強度や作業性に大きな影響を及ぼします。標準的なものから、水洗いするだけでサポート材が除去できるレジンなど、各メーカーでさまざまなレジンが販売されています。

業務内容にあわせて選定してください。

積層厚と造形速度

造形品の外観品質を大きく左右するのが、レジンの積層厚です。薄いほど細かい造形が可能になるので、外観に段差や縞模様をなくすことができます。

しかし、極薄の層を積み重ねていくため、造形速度は遅くなるデメリットも。層厚と速度はトレードオフの関係にあるので、用途にあわせてプリンターを選ぶとよいでしょう。

スライサソフトとの相性

3Dプリンターは、3Dデータをスライサソフトで変換したデータを用います。スライサソフトは、プリンター製造メーカーが開発した独自ソフトと、ソフトだけを開発したメーカーの汎用ソフトがあります。

独自ソフトは、一貫したサポートや設定値が作り込まれているメリットがあります。一方、汎用ソフトはユーザー数が多く、ノウハウが調べやすい特徴があります。

光造形3Dプリンターを製造する主要メーカー5社

光造形3Dプリンターのおすすめ製造企業

業界に精通していたり、頻繁に企業展示ブースに足を運んだりしなければ、どのようなメーカーがあるか分からないことがほとんどです。ここでは、企業向けに光造形3Dプリンターを製造する主要メーカーを紹介します。

Stratasys 3D Systems キーエンス Formlabs Carbon
SLA方式
DLP方式
LCD方式
インクジェット方式
LFS方式
DLS方式

Stratasys(ストラタシス)

ストラタシスは、米国・イスラエルの3Dプリンターメーカーで、世界シェアNo.1の企業です。世界初の3Dプリンターを誕生させたことから、業界のパイオニアと呼べるでしょう。

業界でも非常に多くのノウハウをもち、小型サイズ、大型サイズさまざまな業界でも活躍できる3Dプリンターが揃っています。

3D Systems

前述のStratasys(ストラタシス)と双璧をなすアメリカの3Dプリンターメーカーです。光造形や金属、樹脂などさまざまな造形方法を得意としています。

また、造形速度が遅いSLA方式を改善した「デュアルレーザーSLAプリンタ」が有名です。SLA方式の高精度の造形精度を保ちながら、最大2倍の速度で造形できます。

キーエンス

導入は考えているけれど、海外メーカーは敷居が高いと考えている方もいると思います。

国内でも光造形3Dプリンター技術は負けておらず、その中でも測定機器最大手のキーエンスも光造形3Dプリンターを手掛けています。

小型で手軽に導入できるメリットがあり、さらに国内で唯一のインクジェット方式を採用している機種もあります。

Formlabs(フォームラブス)

Formlabsは、光造形3Dプリンターの製造と販売を行っている会社で、コストパフォーマンスに優れた光造形3Dプリンターが特徴です。

特にSLA方式やLFS方式の光造形3Dプリンターを製造しています。

使いやすさに重点を置きつつ、非常に細かいディテールと滑らかな表面の造形が可能な3Dプリンター製造を手掛けています。

Carbon(カーボン)

Carbonは、光造形3Dプリンターの分野で活躍する革新的な企業で、特にデジタル光合成(Digital Light Synthesis, DLS)技術で知られています。

この技術は従来のステレオリソグラフィー(SLA)技術を進化させたもので、光源と酸素透過性のウィンドウを使用して、高速かつ精密な3Dプリントを実現します。

大量生産に適した造形スピードと物理的に強靭なオブジェクト造形が可能で、高速かつ柔軟な生産能力により、3Dプリンティング技術の新たな可能性を広げています。

業務改善・新分野開拓に「光造形3Dプリンター」導入を検討してみては

3Dプリンター登場当初は、扱いにくさや造形品の品質に問題・課題がありました。しかし、ここ数年で技術は大幅に進化。完成品と遜色がない仕上がりが可能になりました。

3Dプリンターを使用することで、今までは不可能だと思われた業務も難なくできるようになるかもしれません。無駄な業務が改善されれば、その分リソースを他に割けます。更に売上アップに繋がるかもしれません。

本当に自分の目的に合った企業なのか?正しいモデルを選べているのか?悩んだ時は一度ご相談ください。

各製品や各企業の違い、あなたの目的に最適な企業を提案させていただきます。

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