水中ドローンとは? 2種類の水中ロボットとの関係、活用事例や選び方、おすすめ企業をご紹介
  • 最終更新日:2024年10月2日
水中ドローンとは、潜航が可能な有線式の小型水中ロボット(無人潜水機)の通称です。

操縦者は船上や陸上から遠隔操作により機体の操縦を行い、リアルタイムの水中映像を見ることができます。水中ドローンは、潜水士の目や手の代わりになり、水中の対象物の撮影や採取、点検や作業などに活用され、海洋資源の有効活用や海洋保全、インフラのメンテナンスなど、さまざまな分野での需要が高まっています。

今回の記事では水中ドローンとは何か、その種類と活用事例、正しい水中ドローンの選び方とおすすめのメーカーをご紹介します。

監修者プロフィール
巻俊宏

巻 俊宏(まき としひろ)
東京大学 准教授

2008年に東京大学大学院工学系研究科博士課程を修了後、東京大学生産技術研究所助教を経て、2010年より現職。「海に光を、ロボットに冒険を」をモットーに、AUVをはじめとする新たな海中探査プラットフォームの研究開発に従事。
NPO法人日本水中ロボネットの理事として、水中ロボット競技会の運営にも取り組んでいる。2023年より内閣府政策統括官(経済安全保障担当)付政策参与を兼務。
※本件の監修にあたり、特定の企業を推薦するものではありません。

HP画像 東京大学生産技術研究所 巻研究室 HP


水中ドローンとは

水中ドローンについて

水中ドローンとは、潜航が可能な有線式の小型水中ロボット(無人潜水機)の通称です。水中ドローンの機体は、以下のような部品から構成されています。

  • 制御装置
  • 操縦者の指示を受けてスラスターやセンサーを動かすコンピュータ。(空中)ドローン向けのフライトコントローラーが採用されることが多い

  • ジャイロコンパス
  • 機体の姿勢や方位、角速度を計測するセンサー

  • 圧力センサー
  • 水圧を計測するセンサー。水圧は深度に比例するので、機体の深度を求めることができる

  • スラスター
  • 機体を水中で移動させるための推進器。モーターとプロペラを組み合わせたもの

  • カメラ
  • 水中の映像を撮影するためのカメラ

  • ライト
  • 水中の暗い場所で撮影するためのライト

  • テザーケーブル
  • 機体とコントローラーを物理的に接続するためのケーブル


水中ドローンには、オプション機器として、ロボットアームやソナー、レーザースケーラー、ドップラー式対地速度計(DVL)などがあり、これらは、水中の物体の掴みや採取、障害物や地形の確認、物体のサイズの測定、機体の安定化などに役立ちます。

2種類の水中ロボットと水中ドローンの関係

水中ロボットと水中ドローンの関係

水中ドローンがどのようなものなのかは、水中ロボットとの関係を知ると深く理解することができます。水中ロボット(無人潜水機)には、以下の2種類があります。

  • ROV(Remotely Operated Vehicle)
  • AUV(Autonomous Underwater Vehicle)

ROV(Remotely Operated Vehicle)

ROVは、陸上や船上から遠隔操作によって水中で動かす水中ロボットです。

水中カメラやライト、ソナー、マニピュレータなどを搭載して、水中の撮影や観測、作業などに使われることが多いです。水中ドローンは小型のROVの通称です。

このタイプは給電式とバッテリー式があり、給電式はテザーケーブルを介して電力を送るためパワフルな作業や長時間の連続稼働が可能である反面、テザーケーブルの長さの制限や、ケーブルが太くなるため海流の影響を受けやすいという欠点もあります。

バッテリー式は電力を送る必要がないためテザーケーブルを長く細くでき、機動性が高いのが利点です。電力の制限があるためパワフルな作業や長時間の作業には向きませんが、近年のバッテリー技術の進化に伴い、海洋開発や環境保護、災害対策、海洋研究など、さまざまな分野で活用されています。

ROVの強みは、以下のとおりです。

ROVの強み

  • 潜水士に比べて安全性が高く、コスト削減や作業効率を向上
  • リアルタイムで水中の映像や情報を得ることができ、記録や分析にも活用可能
  • 様々なオプション機器を搭載することで、水中での作業の幅を広げられる

一方、ROVを使用する際は以下の点に注意する必要があります。

ROVの注意点

  • ケーブルに繋がっているため、最大深度や稼働範囲に制限がある
  • 水中の環境や潮流に影響されやすく、操作が難しい
  • 母船の動きが拘束される
  • ケーブルが水中で引っかかるとリカバリーが難しい

水中の様子をリアルタイムで見ながら、撮影や観測、作業などを行う場合に適しています。

AUV(Autonomous Underwater Vehicle)

AUVは、機器本体が自律的に状況を判断して、全自動で水中を航行する水中ロボットです。

搭載する観測機器(マルチビーム音響測深機、サイドスキャンソナーなどのソナーやカメラ、水質センサーなど)によって、海底地形や地質、海洋環境や生態などを観測できます。

テザーケーブルを必要としないため、バッテリー式ROVよりもさらに機動性が高く、ケーブルの長さに活動距離を制限されることもありません。しかし、バッテリー式なので稼働時間が限られる点には注意が必要です。

また、水中では安定した高速無線通信手段がないため、トラブル発生時も操縦者が介入することができず、複雑な環境への対応には限界があります。このため地形探査や水質調査、比較的平坦な海底の画像観測など、単純な作業に向いています。 海洋開発や環境保護、災害対策、海洋研究など、さまざまな分野での活用が期待されています。

AUVの強みは、以下のとおりです。

AUVの強み

  • 潜水士に比べて安全性が高く、コスト削減や作業効率の向上に貢献
  • ROVに比べて水深や潮流、波浪などによる影響が少なく、広範囲の安定した観測が可能
  • 事前に設定したコースやタスクに従って自律的に水中を航行可能
  • 母船が拘束されない(他の作業を並行して行うことも可能)

一方で、AUVを活用する際は以下の点に注意する必要があります。

AUVの注意点

  • 内部バッテリーのみで潜航するため、稼働時間や航続距離に制限がある
  • 水中での状況変化や故障に対して、対応能力が限定的
  • トラブルの際に機体を失う可能性がROVより高い
  • 観測結果をリアルタイムに確認することができない

水中の環境や地形の観測や探査などを行う場合に適しています。

以上をまとめると、ROV(Remotely Operated Vehicle)とAUV(Autonomous Underwater Vehicle)は、いずれも水中ロボットに分類されますが、違いもあります。ROVはテザーケーブルのついた状態で遠隔操作し、観測結果をリアルタイムに確認できるほか、試料採集などの作業も行えます。一方、AUVはテザーケーブル無しで全自動で行動し、ケーブルに依存せず広範囲の探査や観測を行えます。比較的単純なものの広域をカバーする必要のある観測や、定期的に行う観測に向いています。水中ドローンは小型ROVの通称です。

ROV
(Remotely Operated
Vehicle)
AUV
(Autonomous
Underwater Vehicle)
水中ドローン
(小型のROV)
操作方法 テザーケーブルを使用した
遠隔操作
自律型、ケーブルに
依存しない
テザーケーブルを使用した
遠隔操作
リアルタイム制御
(音響通信などのみ)
用途 水中での観測や作業
(リアルタイムでの映像やデータ収集)
広範囲の観測
(広い範囲でのデータ収集)
水中での観測や作業
(小規模での使用)

ここまで、水中ロボットと水中ドローンの関係について紹介しました。次のセクションでは、その水中ドローンが具体的にどのような場面で活躍しているのかを紹介します。

水中ドローンの活用例

水中ドローンの活躍場面

水中ドローンは、以下のような場面で活用されることが多いです。

  • 水中カメラ撮影
  • 水中測量

水中カメラ撮影

水中ドローンは、水中カメラ撮影で活用されることが多いです。

その理由には、以下の点が挙げられます。

  • 高画質や広角のカメラが多く使われ、水中の映像や情報を得ることができ、記録や分析にも活用可能
  • 様々なオプション機器を搭載することで、水中での作業の幅を広げられる

ただし、水中ドローンはケーブルに繋がっており、稼働範囲に制限があります。また、水中の環境や潮流に影響されやすく、操作が難しい場合があることに注意が必要です。

水中測量

水中ドローンは、水中測量でも活躍します。

水中測量は海底の地形や水中構造物の形状や位置などを調査する作業であり、そのデータは科学研究や環境保護、インフラの保守点検など多岐にわたる分野で利用されます。水中ドローンは、危険な環境やアクセス困難な場所での測量を安全かつ効率的に行うために、人間の潜水士に代わって使用されます。

水中ドローンを活用するメリット・注意点

水中ドローンの強みと弱み

水中ドローンは水中で大いに活躍しますが、導入する上で検討しておくべき注意点もあります。それぞれ、順番にご紹介します。

メリット

水中ドローンには、以下の強みがあります。

※クリックすると該当箇所まで飛びます

安全に使用できる

水中ドローンの最大の強みの一つは、人間の潜水士に代わって危険な環境や過酷な条件下で作業を行えることです。これにより、潜水士が直面する可能性のある危険や健康リスクを軽減し、水中での安全性を大幅に向上させることができます。

深海探査や沈没船の観測、環境モニタリングなど、人間には過酷すぎる環境での作業が可能となります。また、連続的な監視や長時間の観測が必要な場合にも、水中ドローンを使用することで、持続的でコスト効率の良い方法でこれらの作業を実行可能です。さらに、リアルタイムでのデータ収集と送信により、迅速な意思決定が可能となり、プロジェクトの効率性が向上します。

コスパが良い

水中ドローンは大型のROVやAUVより大幅に低コストで導入でき、コスパが良いです。給電式やバッテリー交換可能な機種を使えば長時間の作業にも対応できるため、効率的な資源使用が可能です。

また、潜水士を使う際に必要となる安全と健康に関わるコスト、例えば潜水病治療や高度な訓練にかかる費用を削減できます。また、一度に長時間の監視や観測が可能であるため、プロジェクトの時間効率が向上し、結果的に全体のプロジェクトコストが低減します。

小型で軽量であり、運用が容易

水中ドローンは小型かつ軽量であるため、携帯性と柔軟性が高いです。そのため手軽に運搬でき、投入や回収が容易です。また、狭いスペースや複雑な地形においても活動可能です。

この強みがもたらすメリットは多岐にわたります。一つは、遠隔地やアクセスが困難な場所への迅速な展開が可能になることです。これにより、緊急時の対応が速やかに行え、例えば油漏れ事故の初期評価などに活用できます。

また、一般的な乗り物で運搬できるため、クレーンなどの特別な運搬手段や高額な輸送コストが不要となります。さらに、使用の手軽さから、頻繁にかつ多様な環境での使用が促進され、より広範囲のデータ収集が実現し、科学調査や環境モニタリングの有効性が向上します。

注意点

一方で、水中ドローンを導入する上で以下の3つに注意する必要があります。


最大深度や可動範囲に制限がある

水中ドローンは最大深度や可動範囲に制限があります。

これは、ドローンが到達できる水深が制限されており、また、テザーケーブルの長さによってその運動範囲が決まるためです。これにより、非常に深い水域や広大な範囲を観測する場合、ドローンの使用が困難または不可能になることがあります。

このデメリットを回避するためには、いくつかの対策が考えられます。まず、より深い水域への対応が可能なモデルへの投資が挙げられます。こうした水中ドローンは高圧に耐えられる設計と強化された材料で作られています。

また、バッテリー式とすることで長いテザーケーブルを採用することができます。超音波や可視光による高速無線通信の技術開発も進められていますので、将来的にはテザーケーブルをなくすことができるかもしれません。

  • バッテリー式のモデルを選ぶこと
  • 深い水域への対応が可能なモデルを選ぶこと
  • 流れの影響を受けにくいような機体形状のモデルを選ぶこと

操作が難しい場合がある

3次元空間を動くため制御システムが複雑であることが多く、操作が難しいことがあります。また、水中環境の不確実性、水流の影響、視界の制限などが操作の難しさを増加させます。

このデメリットを回避するためには、以下の対策が有効です。

  • 水中ドローン導入時に直感的で理解しやすい操作システムのものを選ぶ
  • 操作者に対する定期的な訓練プログラムを提供し、水中ドローンの操作技術と環境認識力を向上させる
  • 人工知能(AI)を活用して、一部操作を自動化する

これらの対策を講じることで、水中ドローンの操作の難しさを低減し、より広範囲のユーザーにとって効果的なツールにすることが可能です。

適切なメンテナンスを行わないとすぐに劣化する

水中ドローンの機体は、使用後適切なメンテナンスを行わないとすぐに劣化してしまいます。

使用後には必ず真水中で動作させ、塩分を取り除く必要があります。また、水分を完全に乾かしてから収納することが重要です。さらに、圧力容器の開け閉めを行う際は、Oリングのグリスアップを適切に行う必要があります。これらの手順を守らないと、装置の寿命が短くなり、性能が著しく低下する可能性があります。

特に、塩分除去や乾燥は、装置の腐食を防ぐために欠かせない作業です。Oリングのグリスアップも水漏れを防ぐ重要なポイントとなります。

水漏れは故障の主要な原因となるばかりか、特に海水が漏れた場合は火災などの大きなトラブルの原因となるので、最大限の注意が必要です。

5つの比較ポイント | 水中ドローンの選び方

水中ドローンの選び方.

貴社に最適な水中ドローンを選定するには、以下の5点を検討しておく必要があります。


機体のサイズ

水中ドローンのサイズは、機体の搭載能力や機動性に影響します。小型で軽量な水中ドローンは、運用が容易で、狭い場所にも入りやすい一方で、出力や航続距離が不十分な場合があります。逆に、大型で重量のある水中ドローンは運用が困難で、広い場所での使用が適していますが、出力や航続距離が高いことがあります。

サイズが大きい場合のメリットは以下のとおりです。

機体サイズが大きい場合

  • 機体に多くのオプション機器を搭載できるため、水中での作業の幅が広がる
  • 機体の出力が高く航続距離が長いため、深海や潮流の強い環境でも安定した潜航が可能
  • 機体の重量があるため、水中での安定性が高い

一方で、サイズが大きいと機体の運用が困難で、専用の船やクレーンなどが必要になる場合があります。また、機体のコストが高くなりやすく、保険やメンテナンスなどにも費用がかかります。機体の機動性が低く、狭い場所や曲がりくねった場所に入りにくいこともあるので、注意が必要です。

サイズが小さいと、以下のようなメリットがあります。

機体サイズが小さい場合

  • 機体の運用が容易で、人間の手で持ち運べる場合もある
  • 機体のコストが低く、保険やメンテナンスなどにも費用がかかりにくい
  • 機体の機動性が高く、狭い場所や曲がりくねった場所にも入りやすい

その一方で、サイズが小さい水中ドローンはつけられるオプション機器が少ないので水中での作業の幅が狭くなったり、機体の出力の低さや航続距離の短さから深海や潮流の強い水中では潜航が困難になる場合があります。機体の重量も軽く、水中での安定性が低いので注意が必要です。

スラスターの数

水中ドローンのスラスターの数と強さは、その速力や制御性に大きく影響します。スラスターの数が多い場合、水中での姿勢制御やホバリングが容易になり、正確な位置合わせが可能ですが、電力消費が大きくなる傾向があります。一方で、スラスターの数が少ない場合は、電力消費を抑えることができますが、水中での機動性が低下することがあります。

スラスターの数が多い場合のメリットは以下の通りです。

スラスター数が多い場合

  • 水中での姿勢制御やホバリングが容易で、正確な位置合わせが可能
  • 波や流れの影響を受けにくく、安定した潜航が実現できる
  • 機動性が高く、狭い場所や曲がりくねった場所にも入りやすい

一方で、スラスターの数が多い水中ドローンは、機体が大型化し、運用が高コストになることがあります。また、機体のコストが高くなるほか、故障リスクも上がるので、保険やメンテナンスの費用が増加します。同時に、電力消費も大きくなるため、稼働時間や航続距離に制約が生じる可能性があり、注意が必要です。

スラスターの数が少ない水中ドローンは機体を小型軽量にでき故障リスクも下げることができますが、水中での姿勢制御やホバリングが困難で正確な位置合わせが難しい上、波や流れの影響を受けやすく、潜航が不安定になることがあります。この場合、機動性が低下し、狭い場所や曲がりくねった場所にアクセスすることが困難になります。

水中カメラやライトの性能

水中ドローンのカメラとライトは、水中での映像や情報取得に重要な役割を果たします。高機能なカメラとライトは、暗い環境でも高画質や広角撮影を可能にしますが、大きなコストと電力消費が伴います。一方で、基本的なカメラとライトでは、低いコストと電力消費で運用できるものの、画質や情報量が落ちるというトレードオフがあります。

カメラやライトの性能が高い場合のメリットは、以下の通りです。

カメラやライトの性能が高い場合

  • 詳細な映像や情報の取得が可能
  • 暗い場所でもクリアな映像が得られる

一方で、デメリットとしては、機体の重量やバランスへの影響、高コスト、電力消費の大きさによる稼働時間の制限が挙げられます。

カメラやライトの性能が必要最低限の場合のメリットには、以下のものが挙げられます。

カメラやライトの性能が必要最低限の場合

  • 機体の軽量化
  • 低コスト
  • 長い稼働時間と航続距離

その一方で、デメリットとしては、粗い映像や情報しか得られず、暗い場所ではほとんど情報を捉えることができないため、使用環境を選ぶ必要があります。

バッテリー容量

水中ドローンの電源の種類とその容量は、機体の稼働時間や航続距離、および全体的なパフォーマンスに大きな影響を与えます。給電式はケーブルを通じて電力を供給するため、強力なパワーを持続的に提供できますが、ケーブルの長さによる制限があります。一方、バッテリー式は内蔵バッテリーから電力を供給し、高い機動性が実現されますが、稼働時間が限られるという欠点があります。

電源の容量が大きい場合のメリットは以下の通りです。

電源容量が大きい場合

  • 機体の稼働時間や航続距離が長くなり、水中での作業や探査の時間が増加
  • 機体の出力や搭載能力が向上し、水中での作業や探査の幅が広がる

一方で、デメリットとしては、機体の重量やバランスに影響を与えることがあり、運用が困難になることがあります。また、機体のコストが増加し、保険やメンテナンスの費用も高くなります。さらに、大きなバッテリーは充電に時間がかかることがあります。

電源容量が小さい場合のメリットには、以下のものが挙げられます。

電源容量が小さい場合

  • 機体の重量やバランスに影響しないため、運用が容易
  • 機体のコストが低く抑えられ、保険やメンテナンスの費用が安くなる
  • バッテリーの充電時間が短い

しかし、デメリットとしては、稼働時間や航続距離が短くなることがあり、水中での作業や探査の時間と範囲が限られます。また、機体の出力や搭載能力が低下し、深海や潮流の強い水中での潜航が困難になることがあります。

価格

水中ドローンの価格は水中ドローンの性能と強い関係があります。また、選定にあたっては調達価格だけでなく、維持費用も考慮することが重要です

高価な水中ドローンのメリットは、深海に対応していたり、高機能なセンサーや先進的な技術を備えている点です。これにより、深い水深での作業や高解像度のイメージング、精密な測位が可能になります。さらに、堅牢な構造により過酷な環境下でも長期間にわたる運用が可能で、メーカーによる広範な技術サポートと長期保証が提供され、トラブル時のリスクが低減されます。

一方、価格が安い水中ドローンのメリットは、低コストでの導入が可能であることです。予算が限られている場合や、試験的な使用に最適で、機器の故障や性能不足による金銭的リスクも低く抑えられます。また、低価格帯の製品は選択肢が豊富で、特定のニーズに最適なモデルを見つけやすくなります。

貴社の予算に合わせた水中ドローンを選ぶには、必要な機能を明確に特定し、複数のメーカーやモデルを比較してコストパフォーマンスの高い製品を選ぶことが重要です。また、予算が限られている場合は中古品の購入や、必要な期間だけのレンタルやリースも視野に入れても良いかもしれません。

専門家コメント

巻俊宏

巻 俊宏(まき としひろ)
東京大学 准教授

ご自身の使用目的のために必要な機能(最大深度、観測能力、運動性、サイズなど)を備えた機種のなかから、維持費用や将来の拡張性を踏まえて検討すると良いでしょう。


水中ドローンを製造するメーカー5社

水中ドローンを製造する会社の選び方

水中ドローンを製造するメーカーはいくつかありますが、この記事では以下の5社をご紹介します。

  • FullDepth(フルデプス)
  • 広和(KOWA)
  • キュー・アイ(Q・I)
  • QYSEA(キューワイシー)
  • Blue Robotics(ブルーロボティクス)

FullDepth(フルデプス)

フルデプスは、深海探査に水中ドローンによる技術革新をもたらし、地球最後の秘境である深海をより身近にするために設立された筑波大学発のスタートアップ企業です。日本の水中ドローンメーカーで、小型ながら水深1000mの深海でも使用できる「DiveUnit300」や独自のクラウドサービスなどを提供しています。水中ドローンの自社開発、製造、販売を行っています。

広和(KOWA)

広和は日本の水中ドローンメーカーで、1952年に創業した潤滑・給油装置や海洋関係事業などを手がける企業です。マリンシステム部では、1985年から水中TVカメラロボット(ROV)の開発・製造・販売を行っており、浅海から大深度の深海11,000メートルまで対応する機体を提供しています。

キュー・アイ(Q・I)

キュー・アイは、1971年に神奈川県の横浜市に設立された、水中、管内、耐放射線テレビカメラ・ロボットの開発・製造・販売ならびに輸出入を行う企業です。光ネットワーク伝送式水中テレビロボット「DELTA-200.net」のほかに、水中ドローンは「RDQ-101」という製品を開発・販売しています。フルハイビジョンカメラ、高輝度LED搭載の上、リチウムバッテリー2個搭載など、高品質で長時間の操作に優れた機体を提供しています。

QYSEA(キューワイシー)

キューワイシーは2016年に中国の深圳で設立された水中ドローンの開発・製造・販売を行う企業です。水中ドローンのブランドとして「FIFISH」シリーズを展開しており、360度全方向に移動できる水中ドローンや4K・60FPSのカメラやマルチツール統合を備えた水中ドローンなどを提供しています。

Blue Robotics(ブルー・ロボティクス)

ブルー・ロボティクスは、2014年にアメリカのカリフォルニアで設立された水中ドローンの開発・製造・販売を行う企業です。水中ドローンのブランドとして「BlueROV2」を展開しており、低価格でカスタマイズ性に優れていることが特徴です。また、水中ドローンの部品やセンサーなども提供しており、従来のROVよりも小型・低コストな機体、いわゆる「水中ドローン」の可能性を切り開いたパイオニア、そしてマーケットリーダーとして知られています。