レゾルバ

レゾルバ

「レゾルバって何?どんな原理?」「種類が多すぎて違いがわからない」「コストや導入先の環境に合うかどうか心配」という悩みを抱えている方は多いでしょう。

モーターや制御の現場で活用されるレゾルバですが、その仕組みや種類、導入のポイントを正しく理解することが大切です。

本記事では、レゾルバの基本情報からメリット・デメリット、選び方、さらに有力メーカー11社の特徴までを徹底解説します。

精密機器や自動車産業、ロボット制御など多彩な分野に活用されるレゾルバの魅力を知ることで、導入前の不安を解消し、自社に最適な製品を選べるようになるでしょう。

とりあえず話を聞きながら考えたい方やすぐにメーカーへ問い合わせをしたい方は、以下のボタンからお問い合わせください。担当者におつなぎいたします。

目次

まずはレゾルバの基本情報を確認しよう

まずはレゾルバの基本情報を確認しよう

そもそもレゾルバとはどんなもので、どんな原理・構造になっているかをご存じでしょうか?本章では、まずレゾルバの基本情報を確認します。

そもそもレゾルバとは?

レゾルバとは、トランスの原理を応用してモーターの回転角度を検出するセンサーです。これにより、回転速度や回転位置を正確に測定し、制御系に送り返すことでモーターの効率を高めます。

エンコーダと比べるとやや精度は劣る面もありますが、それを補う高い耐久性や振動・温度変化への強さがあるため、航空機や軍事用途、重工業などでも重宝されています。

また、電気自動車では、モーターを効率的に運用するための重要な要素として欠かせません。

レゾルバの仕組み・原理や構造を確認

レゾルバはローターとステーター、そして両者の間で電気信号をやり取りするトランスによって構成されています。

ローターの回転によってステーター側に流れる信号の変化量を測定することで、アナログ信号として回転角を検出します。この原理を利用することで、温度や振動の厳しい環境下でも安定した回転角度情報を得られる点が特長です。

加えて、ロータリーエンコーダに比べるとアナログ的な測定であるため過酷な条件に強く、モーター制御において信頼性の高いセンサーとして利用されています。

10種類のレゾルバを比較して、それぞれの特徴や強みを紹介

10種類のレゾルバを比較して、それぞれの特徴や強みを紹介

レゾルバには励磁方式や出力の違い、ブラシ有無などさまざまなバリエーションが存在し、それぞれ異なる強みを持っています。本章では、レゾルバは10種類に分けて、それぞれの強みや特徴を紹介します。

1.2相励磁1相出力レゾルバ

2相励磁1相出力レゾルバは、2つの励磁信号を入力し、1つの出力信号を生成する仕組みを持っています。励磁信号の位相差を厳密に管理することで、高い精度で回転角度を検出できる点が強みです。

主に電気自動車やハイブリッド車のモーター制御、産業用ロボットの位置決め、さらに航空宇宙分野など、過酷な動作条件下での角度検出に活用されています。高精度かつ安定した制御が必要とされる場面で信頼性を発揮します。

2.1相励磁2相出力レゾルバ

1相励磁2相出力レゾルバは、1相の励磁信号から2つの出力信号を得るため、出力の位相差を利用して回転角度を正確に読み取ることが可能です。単一の励磁系をベースとしつつ、2相出力ならではの精度と応答性を持っています。

このタイプのレゾルバは、電気自動車やハイブリッド車のモーターをはじめ、産業用ロボットの位置決めや医療機器の精密制御など、高度な精度が求められる分野で導入されています。

3.ブラシレスレゾルバ

.ブラシレスレゾルバは、ブラシを用いない構造によって、摩耗がほとんど発生しにくい点が特徴です。メンテナンス頻度が少なく、過酷な環境下でも長期間安定して動作するというメリットがあります。

また、ブラシが不要なため、車載用モーターのように振動や温度変化の激しい環境でも高い信頼性を保ちます。電気自動車や産業用ロボット、航空宇宙など、可動部品の少なさが重視される分野で幅広く採用されています。

4.VR型レゾルバ(可変リアクタンス型レゾルバ)

VR型レゾルバ(可変リアクタンス型レゾルバ)は、可変リアクタンスの原理を応用し、構造を比較的シンプルにまとめつつ高い検出精度を実現します。トランスのような複雑な構造を必要としない分、コスト面でもメリットがあります。

電気自動車のモーター制御や産業用ロボットのほか、建設機械にも使われることがあり、部品点数を抑えつつ優れた性能を発揮するため、安定性とコストパフォーマンスの両方を重視する用途向きです。

5.高温対応レゾルバ

高温対応レゾルバは、高温環境下で安定動作するように設計され、耐熱性の高い材料を使用しています。一般的なレゾルバでは性能が低下しやすい高温領域でも精度を損なわずに角度検出が可能です。

特に、航空宇宙分野のエンジン周辺や産業用ロボットが稼働する高熱の現場、電気自動車のパワートレイン周りなど、厳しい温度条件下で活躍しており、過酷な温度帯でも安定を保つ信頼性が強みです。

6.低温対応レゾルバ

低温対応レゾルバは、極寒環境でも動作するよう耐寒性を強化しており、低温下での素材収縮や結露などの問題を抑制する設計が施されています。これは、通常のレゾルバでは難しい温度領域でも正確な角度検出を行えます。

このタイプは、航空宇宙分野の高空領域や低温倉庫内の産業用ロボットなど、マイナス環境が当たり前の場所で用いられます。電気自動車の寒冷地使用などにも適しており、冷却に伴うリスクを低減可能です。

7.防水レゾルバ

防水レゾルバは、内部構造を防水仕様として設計し、水や湿気が多い環境でも問題なく動作する点が特徴です。濡れによる漏電や腐食を防ぐため、封止技術や耐水素材が採用されています。

船舶のエンジン制御システムや海洋調査機器、湿度の高い生産ラインを抱える産業用ロボットなど、水分が多い現場でも安定した角度検出を可能にするため、トラブルを最小限に抑えます。

8.耐振動レゾルバ

耐振動レゾルバは、振動が激しい現場でも性能を落とさないよう、堅牢な構造体と耐振動設計を備えています。内部のセンサー部分が衝撃を受けにくい配置になっており、誤差を抑制可能です。

そのため、建設機械のエンジン制御や産業用ロボットの振動が多い工程、自動車の走行中振動にも強いので、電気自動車やハイブリッド車の駆動系にも活用されています。

9.高精度レゾルバ

高精度レゾルバは、高精度センサー技術を用いて、細かい回転角度まで正確に測定することを重視しています。制御性能の向上はもちろん、機器の省エネや高効率化にも役立つ点が特徴です。

例えば、電気自動車のモーター制御で一層効率を高めたい場合や、産業用ロボットのミリ単位の精度制御、医療機器の安全性向上など、正確さが最重要視される用途で採用されています。

10.小型レゾルバ

小型レゾルバは、小型設計を追求しており、狭いスペースへの組み込みや軽量化が求められる機器に適しています。サイズを小さくしても角度検出のクオリティを維持できるよう設計されている点が強みです。

コンパクトな電気自動車のモーターや省スペース型の産業用ロボット、医療機器の微細な制御など、設置場所に余裕がない場面で高いパフォーマンスを発揮します。

導入する際に知っておきたいメリット・デメリットを解説

導入する際に知っておきたいメリット・デメリットを解説

レゾルバは、高精度な角度検出が可能であることや耐環境性の高さなど、モーター制御において優れた特徴を持つ一方で、導入コストやデジタル変換の複雑さなどの課題もあります。ここでは、レゾルバを導入する際に考慮すべきメリットとデメリットを整理し、それぞれの概要や活用方法、注意点を説明します。

レゾルバのメリット

高精度な角度検出

レゾルバは高速回転下でも正確な角度検出を行えるため、モーターの回転位置や速度を高精度で把握可能です。

高精度化により効率のよい制御が可能となり、特に電気自動車やハイブリッド車のモーター制御で求められる細かな調整に対応できます。

そして、精密な角度情報をもとに制御することで、エネルギーロスを最小限に抑え、システム全体のパフォーマンスを向上させるでしょう。

耐環境性の高さ

構造がシンプルなため、低温から高温まで幅広い温度帯に適応し、振動や油、ノイズなどの厳しい環境下でも安定動作する点がメリットです。

建設機械や航空機といった過酷な条件下での利用が必要な場面でも性能を発揮します。大きな外的ストレスがかかる場面でも動作を維持するため、定期点検の頻度を低減し、耐久性と信頼性の面でのメリットになるでしょう。

長距離伝送が可能

レゾルバはアナログ信号を扱いつつも、配線や組み込みをコンパクトに行える設計が可能であり、離れた場所からでも精度を落とさずに角度情報を伝送できるというメリットもあります。

そのため、風力発電のタービンや大型の産業用ロボットなど、モーターと制御装置の距離が離れているシステムでも、正確な計測結果を得られる点が強みです。

レゾルバのデメリット

コストの高さ

レゾルバは、高精度な計測を実現するために精密加工や高品質な材料が必要となるため、製造コストが上昇し、導入時の初期費用が高くなる傾向があります。

量産効果によって一台あたりのコストを抑える方法や、用途に見合ったグレードを選ぶことによって、この負担をある程度軽減することが可能です。

デジタル変換の複雑さ

レゾルバはアナログ信号を出力するため、デジタルシステムと連携する際には変換処理が必要になります。専用の変換回路やICを用いない場合、システム設計が複雑化し、開発コストや時間も増える恐れがあります。

そのため、専用モジュールを活用したり、変換プロセスを自動化することで、設計や開発の負担を減らすことが可能です。

環境条件への依存

レゾルバ自体は耐環境性が高いものの、極端な温度変化や振動、衝撃が連続する状況下では性能が低下するリスクもあります。

防塵・防水構造や振動を吸収するダンパーなどの保護措置を講じることで、長期的に安定した動作を実現しやすくなります。加えて、環境に応じた対策や定期的なメンテナンスを行うことで、レゾルバの寿命と精度を維持することができます。

導入の目的に合ったレゾルバの選び方を解説

導入の目的に合ったレゾルバの選び方を解説

レゾルバを導入する際には、機器の目的や使用環境に合わせた性能や特性を見極めることが重要です。以下では、レゾルバ選定時にチェックしておきたい選び方のポイントを解説します。

精度

レゾルバの精度は、温度変化や振動、電磁ノイズといった外的要因の影響を受けて変動します。

精度が不十分な場合、モーター制御や機械動作の正確性に悪影響を及ぼすため、高精度を求める精密機器や医療機器などでは優先的に検討する必要があります。

適切な精度のレゾルバを選べば、システムの信頼性が高まり効率向上にもつながるでしょう。

耐環境性

温度や湿度、振動、衝撃などの厳しい環境下で使用する場合は、レゾルバの耐環境性が重要となります。

耐環境性が低いと故障や性能低下を招きやすくなるため、過酷な使用条件を想定している場合は必ず確認すべき項目です。逆に耐環境性をしっかり確保したレゾルバを導入すれば、長期間安定した動作を期待できます。

サイズと重量

設置スペースや機械の設計上の制約により、レゾルバのサイズや重量が重要になるケースがあります。

大型のレゾルバは高性能でも、スペースが限られる環境では取り付けが難しいことがあるため、十分なスペースが確保できない場合は小型軽量設計を優先し、設置の柔軟性を高めるのが良いでしょう。

応答速度

信号処理速度や機械的特性によって左右されるレゾルバの応答速度は、高速制御が求められるアプリケーションで特に大切です。

応答が遅いと制御に遅延が生じ、システム全体の動作に影響を及ぼします。特に、高速回転や瞬時の変更が多い場面では、応答速度を重視することで制御性能の向上が見込めます。

信号出力形式

アナログかデジタルかといった出力形式は、既存システムや周辺機器との互換性に直結します。

デジタル化が進む一方で、アナログ制御が中心のラインも存在するため、自社のシステムがどの形式に対応しているかを確認し、スムーズな統合を可能にするレゾルバを選択することが大切です。

温度範囲

極端な高温や低温の環境下で使用する場合は、対応可能な温度範囲を事前にチェックしておく必要があります。

温度条件を満たさないレゾルバを導入すると故障リスクが高まるため、環境条件に適合する温度性能を備えた製品を選ぶことで安定稼働を実現しやすくなります。

メンテナンス性

メンテナンス性の高いレゾルバは、保守作業が効率的に行えるため、運用コストを抑えられる利点があります。

長期間使用する前提であれば、点検や交換が容易な設計を持つ製品を選ぶことで、稼働停止リスクを減らしながら安定稼働を継続できます。

【特徴比較】おすすめのレゾルバメーカーを紹介

本章では、おすすめのレゾルバメーカーを紹介します。各社の強みや特徴を説明するので、興味のある会社があれば問い合わせしてみましょう。

1.株式会社一宮電機

株式会社一宮電機は1960年創業の日本企業で、兵庫県に本社を構えています。バリアブルリラクタンス型レゾルバを主力とし、振動や温度変化に強い高い耐環境性が評価されています。

自動車産業や航空宇宙産業など、過酷な条件下で信頼性が求められる場面で導入が進んでおり、安定した性能を発揮する点が特徴です。

2.日本ハネウェル株式会社

日本ハネウェル株式会社は2004年に設立され、東京都を拠点としています。Hawk(TM) 1インチシリーズなどのレゾルバを手がけており、360度非接触の角度検知や精度の高さを実現する独自構成が強みです。

特に、自動車や産業機械の高度な制御に導入されており、高い汎用性と精密な動作が求められる現場で活用されています。

3.多摩川精機株式会社

多摩川精機株式会社は1938年創業で長野県に本社を構え、VR型やブラシレスレゾルバなど幅広い製品を展開しています。

超薄型でありながら高温や振動、衝撃にも強い設計が魅力で、自動車・航空宇宙・産業用ロボットなど要求の厳しい分野でも信頼を得ています。加えて、組み込みスペースを最小化できる点も利用シーンを広げる要因です。

4.ミネベアミツミ株式会社

ミネベアミツミ株式会社は1951年創業で長野県に本社を構えており、高い精度と信頼性を備えたVRレゾルバを製造しています。

ボールベアリングや精密小型モーターの開発によって培われた技術をレゾルバに応用しており、自動車の電動パワーステアリングや電気自動車など幅広い分野で採用されています。

5.シチズンマイクロ株式会社

シチズンマイクロ株式会社は1963年に設立され、埼玉県に本社を置く企業です。

高精度な角度検出を実現するロータリーエンコーダを主力製品とし、産業用ロボットや自動車の制御系でも安定したパフォーマンスを提供しています。そのため、高精度と安定動作を求める生産ラインや車載用途で評価を得ています。

6.エクストコム株式会社

エクストコム株式会社は神奈川県に本社を構え、変調波レゾルバを中心に開発を行っています。高周波励磁によるアブソリュートセンサーが特徴で、コイルの巻数を抑えながら検出感度を高めている点が強みです。

また、JAXAとの共同開発テーマにも選定されるなど、宇宙利用を見据えた高環境耐性を有する製品を展開しています。

7.サンテスト株式会社

サンテスト株式会社は大阪府に本社を置き、ARR STD/MTDセンサーなどのメカトロニクス機器を開発・製造しています。

VR型レゾルバに加えて1回転や多回転のアブソリュート検出に対応した製品が特長で、アナログ出力も一体化している点が強みです。特に、産業用ロボットや自動車など、制御精度が求められるシーンで導入が進んでいます。

8.フォーティブICGジャパン株式会社

フォーティブICGジャパン株式会社はアメリカに本社を置くグローバル企業で、日本拠点を通じてさまざまなレゾルバを提供しています。

環境や用途に合わせてフレームハウジングの有無を選べる点が特長で、重工業仕様から高精度仕様まで幅広いバリエーションが用意されています。世界50カ国以上に事業を展開していることが信頼性の高さを示しています。

9.株式会社小野測器

株式会社小野測器は東京都に本社を置く企業で、各種計測機器を得意としています。高精度な角度検出を重視したレゾルバを提供しており、自動車産業や産業用ロボットの制御に数多く採用されています。

正確な計測技術を背景にした設計が支持され、安定稼働に寄与する点が特長です。

10.株式会社関東パルス

株式会社関東パルスは東京都に拠点を持ち、高精度レゾルバの研究・開発を行っています。角度検出の精度にこだわった設計が多く、制御系へのスムーズな統合が可能です。

産業用ロボットや自動車をはじめ、多様な制御ニーズに応えられる製品ラインアップが特徴となっています。

11.株式会社緑測器

株式会社緑測器は東京都に本社を構える企業で、高精度の角度検出が求められるシステム向けのレゾルバを扱っています。

産業用ロボットや自動車産業など、稼働率が重視される制御領域で広く活用されており、繊細な調整が必要なシーンでも安定したパフォーマンスを発揮しています。