放電加工機
放電加工機は、金属加工の分野で不可欠な存在です。選び方や比較ポイントを押さえた上で、最適な機種を選ぶことが重要です。
本記事では、5種類の放電加工機の特徴を詳しく解説し、それぞれのメリットとデメリットを比較します。また、主要なメーカーについても触れ、どのメーカーがどのような強みを持っているのかを紹介します。
5種類の放電加工機と特徴
放電加工機とは、水や油などの液体の中で、向かい合った金属の間に電気による火花を起こすことにより生じた熱で金属を溶かして加工する工作機械のことです。放電加工機は、電気を通す材質であれば、硬さに関係なく加工できる特徴を持ち、高精度で微細な加工が可能です。
放電加工機の主な種類として、以下の5つが挙げられます。
- ワイヤー放電加工機
- 型彫り放電加工機
- 細穴放電加工機
- NC放電加工機
- 小型放電加工機
ワイヤー放電加工機
ワイヤー放電加工機とは、ワイヤー線に電流を流して火花放電を起こし、工作物を溶かして切断する工作機械です。緻密な作業が可能で、電気伝導体であればどんなに硬い材料でも加工が可能なので、超精密なプレス機などに適した切断加工です。
ワイヤー放電加工機の強みは、以下のような点が挙げられます。
- 導電体であればどんなに硬い材料でも加工可能
- 様々な形状の加工が可能で、特に緻密な作業が得意
- マシニングセンタなどに比べて経済的
型彫り放電加工機
型彫り放電加工機とは、電極の形状をワークに転写する放電加工機です。型彫り放電加工は、彫りたい形に加工された電極を対象の材料に近づけて放電させ、1秒間に1000から10万回火花を飛ばすことで、材料を少しずつ溶かし理想の形に加工します。
型彫り放電加工機の強みは、以下のような点が挙げられます。
- 導電体であればどんなに硬い材料でも加工可能
- 高精度で複雑な形状の加工が可能
- 底付けやポケット形状の加工が可能
電極の形状に合わせて工作物に凹部分を作る加工方法で、立体的な形状の加工に適しています。
細穴放電加工機
細穴放電加工機とは、棒状もしくはパイプ状の銅や真鍮などを電極として用い、対象となる金属に電極を近づけて放電することで、微細な穴を開けることができる放電加工機です。
細穴放電加工機の強みは、以下のような点が挙げられます。
- 高硬度の焼入れ鋼や超硬合金、難削材も高精度に加工可能
- 最小直径は0.1ミリメートル以下で、メーカーによっては0.02ミリメートルという微細な穴の加工が可能
- 斜面や曲面にも穴を開けることが可能
電極の先端に細い穴を開け、加工液を噴射しながら工作物に穴を開ける加工方法で、微細な穴の加工に適しています。
NC放電加工機
NC放電加工機とは、数値制御(NC)装置によって電極の動きを制御し、放電加工を行う機械です。型彫り放電加工機の場合、目的の加工を実現させるため、事前に工具電極を加工しておく必要がありますが、NC放電加工機では、物体に対して加工機が自ら移動して放電加工を行うため、数値制御を行うことで、より精度の高い加工が可能です。
NC放電加工機の強みは、以下のような点が挙げられます。
- 加工プログラムによって高精度で複雑な形状の加工が可能
- 電極の形状を変える必要がなく加工時間やコストを削減
- 人手による操作や誤差を減らし安全性や生産性を向上
小型放電加工機
小型放電加工機とは、重量約4~5キログラムのコンパクトな放電加工機です。手に持って運ぶことができるため、どこでも簡単に持ち運びできる利便性があります。一般的に小型放電加工機は、超音波振動を利用して金属を加工する機械を指す場合が多いです。
小型放電加工機の強みは、以下のような点が挙げられます。
- 小さくて軽いので場所を選ばずに使用可能
- 電源や加工液の供給が不要で簡単に操作可能
- 硬度の高い金属や曲面の加工も可能
放電加工機のメリット・デメリット
放電加工機には、メリットとデメリットの両方があります。このセクションでは、両方紹介します。
メリット
放電加工機の主なメリットとして、以下のメリットがあります。
- 硬さや熱処理の有無に関係なく加工可能
- 工作物に負担がかからない
- 高精度で複雑な形状の加工が可能
硬さや熱処理の有無に関係なく加工可能
放電加工機は、その非接触加工という特徴から、従来の切削工具では加工が困難だった材料や形状の加工を可能にしました。特に、航空機や自動車部品など、高精度かつ複雑な形状が要求される部品の製造に広く利用されています。
工作物に負担がかからない
放電加工機は、非接触加工のため、工作物に物理的な負担をかけにくい加工法です。そのため、精密部品や形状が複雑な部品の加工に適しており、特に金型や医療機器の製造分野で広く利用されています。
高精度で複雑な形状の加工が可能
放電加工機は、高精度かつ複雑な形状の加工が可能です。特に、金型や精密部品の製造において、その高い精度と自由度の高さから、幅広く利用されています。
デメリット
一方で、放電加工機には以下のようなデメリットもあります。
- 大量生産に不向き
- 電極や加工液などの消耗品が多い
- 電気を通さない素材は加工できない
大量生産に不向き
放電加工機は、高精度な加工が可能な反面、加工速度やコスト、自動化の制限など、大量生産には課題を抱えています。
電極や加工液などの消耗品が多い
放電加工機は、高い精度が要求される分野でその性能を発揮しますが、消耗品が多いという点は、導入を検討する上で考慮すべき重要な要素です。近年では、長寿命の電極や、環境負荷の少ない加工液の開発が進められており、これらの課題解決に向けた取り組みが活発化しています。
電気を通さない素材は加工できない
放電加工機は、高い精度と複雑な形状の加工が可能な一方で、加工可能な素材が電気を通すものに限定されるという大きな制約があります。そのため、非金属材料の加工が必要な場合は、他の加工方法を検討する必要があります。
4つの比較基準 | 放電加工機の選び方
放電加工機を選定する際は、以下のポイントを押さえる必要があります。
- 放電エネルギー
- 加工電流
- 電極と被加工物の間隔(ギャップ)
- 電極の移動速度
放電エネルギー
放電エネルギーとは、放電加工において電極と被加工物との間で発生するアーク放電のエネルギー量のことです。放電エネルギーが変動すると、加工速度や加工面の粗さ、加工屑の除去に影響を与えます。
放電エネルギーが高いと、加工速度が速くなる一方で、加工屑の除去が容易になるというメリットがあります。
逆に、放電エネルギーが低いと、加工面が滑らかになり、電極の消耗も小さくなるため、表面品質が向上します。
加工電流
加工電流が変動すると、放電の発生頻度や強度が変わります。
加工電流が多いと、放電が強くなり、加工速度が上がる一方で、表面粗さが悪化するリスクがあります。逆に、加工電流が少ないと、放電が弱くなり、加工速度が下がるが、表面粗さが改善可能です。
加工電流が多い時のメリットは、加工時間を短縮できる点です。加工電流が多いと、放電によって工作物が溶ける量が多くなり、加工速度が上がります。
逆に、加工電流が少ない時のメリットは、表面品質が向上する点である。加工電流が少ないと、放電によって工作物の表面に発生する凹凸やクラックが小さくなり、表面粗さが改善できます。
電極と被加工物の間隔(ギャップ)
ギャップが変動すると、放電の発生条件や放電エネルギーが変わります。
ギャップが大きいと、放電が起こりにくくなり、加工速度が下がる一方で、表面粗さも改善されます。逆に、ギャップが小さいと、放電が起こりやすくなり、加工速度が上がるが、表面粗さが悪化するリスクがあります。
ギャップが大きい時のメリットは、表面品質が向上する点です。ギャップが大きいと、放電によって工作物の表面に発生する凹凸やクラックが小さくなり、表面粗さが改善されます。
逆に、ギャップが小さい時のメリットは、加工時間を短縮できる点です。ギャップが小さいと、放電によって工作物が溶ける量が多くなり、加工速度が上がります。
電極の移動速度
電極の移動速度が変動すると、加工形状や精度、加工時間に影響を与えます。
電極の移動速度が速い時のメリットは、加工形状が滑らかになり、加工時間が短くなる点です。加工形状が滑らかになると、工作物の表面品質が向上し、摩擦や摩耗が減少します。加工時間が短くなると、生産性や経済性が向上します。
逆に、電極の移動速度が遅い時のメリットは、加工精度が向上し、電極の消耗が遅くなる点です。加工精度が向上すると、工作物の寸法や形状が設計通りになり、品質や信頼性が向上します。電極の消耗が遅くなると、電極の交換や補正が少なくて済み、加工コストが低くなります。
放電加工機を製造するメーカー
放電加工機を製造する主なメーカーには、以下のメーカーが挙げられます。
※JET-Globalの問い合わせフォームに遷移します。
一部の会社とは正式な提携がない場合がありますが、皆さまに最適なご案内ができるよう努めています。
- 牧野フライス製作所 / Makino
- ソディック / Sodick
- 三菱電機 / Mitsubishi Electric
- ファナック / FANUC
※クリックで各メーカーの詳細へ移動します。
牧野フライス製作所 / Makino Milling Machine
会社名 | 牧野フライス製作所 / Makino |
設立年 | 1937年 |
本社 | 東京都目黒区中根2-3-19 |
概要 | 工作機械の大手メーカー |
牧野フライス製作所は、高精度かつ高品位面にこだわった加工技術とH.E.A.T.などの高速化技術、Hyper-i制御、周辺機と連携する自動化の提案力が強みです。
主な機種はワイヤ放電のU6 H.E.A.T.・U3、形彫放電のEDAF2/EDAF3・EDNC22です。高精度と面品位を両立しつつ、電極加工機や搬送まで一体で構築しやすいシステム提案力が魅力です。
導入例としてEDNC22の実加工動画を公開する金型メーカー、U6 H.E.A.T.で厚物の高精度加工に挑む支援事例、自動化で稼働率を高めたユーザー事例などが挙げられます。
ソディック / Sodick
会社名 | ソディック / Sodick |
設立年 | 1976年 |
本社 | 神奈川県横浜市都筑区仲町台3-12-1 |
概要 | 工作機械・放電加工機・金属3Dプリンタメーカー |
ソディックは、全軸リニアモータ駆動と独自発振・制御(Digital HF、LN Pro AI等)、ワイヤ回転機構i-Grooveで均一仕上げと省エネを実現します。
ラインアップはAL400G i Groove + Edition、AL600G i Groove + Edition、ALN400G iGE+などです。全軸リニア×最新制御×i-Grooveの組み合わせにより、高応答・高精度・消耗低減をトータルでねらえる点が特徴です。
導入例では電子部品金型でのALシリーズ活用や、工場内FMSで測定機連携を含む自動化運用が報告されています。
三菱電機 / Mitsubishi Electric
会社名 | 三菱電機 / Mitsubishi Electric |
設立年 | 1921年 |
本社 | 東京都千代田区丸の内2-7-3 東京ビル |
概要 | インフラ、自動車機器、ロボット, 半導体、ビル、家電などのメーカー |
三菱電機は、安定稼働と全国保守網、M8系CNC制御、低ランニングコスト設計に強みがあり、油仕様の超精密機も展開します。
代表機はワイヤ放電のMV2400R・MP2400や、油ワイヤのMX600です。長期運用での総保有コストと信頼性、さらに油仕様機での微細・高精度加工適合性の高さが評価されています。
導入例として自動化と合わせたMPクラスの稼働最適化や、MVシリーズの更新導入で歩留まりと段取り時間を改善したケースが公式サイトで紹介されています。
ファナック / FANUC
会社名 | ファナック/FANUC |
設立年 | 1972年 |
本社 | 山梨県南都留郡忍野村忍草3580 |
概要 | FA機器、ロボットのメーカー |
ファナックは、CNC・サーボ技術に基づく安定性と、ロボドリル/ロボショット等との一体的な自動化、グローバルなサービス網が特徴です。
機種はROBOCUT α-C400iC・α-C600iC・α-C800iCを展開します。CNC・ロボット・ロボマシンを自社技術で統合しやすく、ライン連携と操作性の両面で導入効果を出しやすいです。
導入例では中小~中堅の金型・部品加工現場でのROBOCUT更新導入や、自動化セル構築による夜間無人稼働の実現が多数見られます。
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