半自動溶接機

半自動溶接機

半自動溶接機を導入することで溶接の効率や品質を向上させられる一方、どんな機種を選べばよいのか分からず悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、半自動溶接機の基本情報や仕組みの解説、さらに種類別の強みやメリット・デメリットの比較、選び方のポイント、そしておすすめメーカーの情報まで一挙にご紹介します。

半自動溶接機の導入を検討している方や、半自動溶接機について網羅的に知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください

とりあえず話を聞きながら考えたい方やすぐにメーカーへ問い合わせをしたい方は、以下のボタンからお問い合わせください。担当者におつなぎいたします。

目次

半自動溶接機の基本情報を解説

半自動溶接機の基本情報を解説

本章では、半自動溶接機の概要を説明します。具体的には、そもそも半自動溶接機とは?、仕組み、構造の順に説明していきます。

そもそも半自動溶接機とは?

半自動溶接機とは、ワイヤを自動で送り出す機能とトーチ操作を組み合わせることで、溶接の作業効率を高める装置です。

操作者はトーチの移動や角度に集中できるため、均一で安定した溶接ビードを形成しやすいメリットがあります。

また、溶接ワイヤがリールに巻かれた状態で保持され、ワイヤフィーダーが指定した速度で供給してくれるため、長いスパンでの連続溶接にも向いています。

半自動溶接機はどんな仕組み?

半自動溶接機の仕組みは、電源ユニットが溶接に必要な電流と電圧を供給し、ワイヤフィーダーが溶接ワイヤを自動的に送給する点にあります。

トーチのトリガーを引くとアークが発生してワイヤが母材と溶融結合し、同時にシールドガスが溶接部を保護します。

こうした自動送給と保護ガスの供給により、溶接不良のリスクを抑えつつスムーズな作業が実現可能です。

仕組みを踏まえて構造を解説

半自動溶接機の構造は大きく分けて電源ユニット、制御パネル、ワイヤ供給装置、溶接トーチ、シールドガス供給システム、接地クリップなどです。

電源ユニットは溶接に必要な電流を生み出し、制御パネルはワイヤ送給速度や電圧を調整するための設定箇所です。

ワイヤ供給装置にはワイヤフィーダーや送給モーターが組み込まれ、リールからワイヤを適切な速度で送り出します。

トーチ部分ではアークが発生し、シールドガスがノズルを通って溶接部を保護します。

全体として、自動的にワイヤが供給されることで作業効率を高めつつ、操作者の手動操作による細かなコントロールが可能となるよう設計されているのが半自動溶接機の特徴です。

半自動溶接機の種類|9タイプに分けて解説

半自動溶接機の種類|9タイプに分けて解説

半自動溶接機には様々な種類が存在し、使用するガスやワイヤ、電源制御方式によって得意とする分野や仕上がりが異なります。ここでは代表的な9種類の半自動溶接機の特徴や強みを紹介するので、用途や目的に合わせて最適な機種を検討してください。

CO2溶接機

CO2溶接機は、炭酸ガスをシールドガスとして使用する半自動溶接機です。

鉄の溶接に向いており、ランニングコストが比較的低いことが特徴となります。非鉄金属にはあまり適さないため、鉄を中心に溶接する場合に選ばれることが多いです。

MAG溶接機

MAG溶接機は、アルゴン80%と炭酸ガス20%の混合ガスをシールドガスとして使用します。

スパッタの発生が少なく仕上がりが美しい点が強みで、特に鉄やステンレスなどを美観重視で溶接する際に選ばれることが多いです。

MIG溶接機

MIG溶接機は、アルゴンやヘリウムなどの不活性ガスを使用するため、スパッタが少なく光沢のあるビードが得られる半自動溶接機です。

アルミやステンレスなど非鉄金属の溶接で特に力を発揮し、美しい仕上がりを求める作業に適しています。

フラックスコア溶接機

フラックスコア溶接機は、内部にフラックスを含むワイヤを使用し、シールドガスを別途用意しなくても溶接が可能です。

風の強い屋外での作業や、ガス供給が難しい環境での溶接に向いており、設備コストを抑えながら手軽に使えるのが魅力です。

パルスMIG溶接機

パルスMIG溶接機は、パルス電流を利用することで熱入力を抑えつつビードを形成できます。

薄板の溶接や高精度が求められる箇所で品質を維持しやすく、歪みを軽減したい場合に選ばれることが多い溶接機です。

TIG溶接機

TIG溶接機は、タングステン電極を使用して不活性ガスで溶接部をシールドする方式で、高い品質と美しい仕上がりが得られます。

半自動溶接機の範疇に含められることもあり、特に非鉄金属やステンレスの溶接で高い精度と強度を実現したい場合に活用されています。

サブマージアーク溶接機

サブマージアーク溶接機は、溶接部をフラックスで覆うようにしてアークを形成する方式の半自動溶接機です。

厚板の溶接に向いており、高い生産性と深い溶け込みが得られるのが特徴で、大量生産や長尺の溶接が必要な現場で採用されるケースが多いです。

インバータ半自動溶接機

インバータ半自動溶接機は、電力を効率的に制御できるインバータ技術を搭載しており、軽量で持ち運びやすい点が魅力です。

薄板などの溶接条件を細かく調整しやすく、エネルギー消費を抑えつつ高品質な溶接を行いたい現場に適しています。

ノンガス半自動溶接機

ノンガス半自動溶接機は、フラックスコアワイヤを使ってガスを発生させる仕組みのため、シールドガスが不要です。

屋外での溶接作業やガスボンベの準備が難しい環境で使いやすく、ガスのコストを抑えたい場合にも有効な選択肢となります。

他の溶接機と比較した際のメリット・デメリットを解説

他の溶接機と比較した際のメリット・デメリットを解説

ここでは、他の溶接機と比較した際に把握しておきたい半自動溶接機のメリットとデメリットを解説するので、導入を検討する際の参考にしてください。

半自動溶接機のメリット

半自動溶接機のメリットは以下の3つです。

操作が比較的簡単

半自動溶接機はワイヤが自動で供給されるため、作業者はトーチの動きに集中できます。

初心者でも比較的スムーズに溶接を始められることから、小規模な修理や教育現場でも取り入れやすい点が特徴です。

溶接速度が速い

半自動溶接機は連続的にワイヤを供給することで、高い溶接速度を実現します。

大量生産の現場や緊急の修理作業など、短時間で多くの溶接箇所に対応しなければならないケースで役立ちます。

さまざまな金属に対応可能

使用するシールドガスやワイヤを切り替えることで、鉄だけでなくステンレスやアルミニウムなど、多様な素材の溶接に柔軟に対応できます。

多品種少量生産の現場や修理業務では、1台の半自動溶接機で幅広い素材を扱える利点が重宝されます。

半自動溶接機のデメリット

半自動溶接機のデメリットは以下の3つです。

ヒュームやスパッタの発生

半自動溶接機は、溶接時にヒュームやスパッタが多く発生しがちです。

作業環境を清潔に保つために換気設備を整え、防塵マスクや防護メガネなどの個人防護具を使用しましょう。

風の影響を受けやすい

シールドガスを利用するため、屋外で風が強い環境ではガスが流され、溶接品質が低下する恐れがあります。

防風対策としてシートやつい立てを設置し、可能であれば屋内作業を優先するなど工夫が必要です。

初期投資が高い

半自動溶接機は高性能な分だけ初期投資がかさむ場合があります。

新規購入が負担に感じる場合は、リースやレンタルを活用することで費用を分散させる方法も検討できます。また、状態の良い中古機器を選ぶことで導入コストを抑えることも可能です。

半自動溶接機の選び方を解説

半自動溶接機の選び方を解説

ここでは、電流、電圧、ワイヤ送給速度、シールドガスの種類と流量、トーチの冷却性能に着目して半自動溶接機の選び方のポイントを解説します。

電流

電流が高い半自動溶接機は、厚板の溶接に適しており、溶け込みを深くして作業効率を高めたいケースに向いています。

一方で、電流が低めの半自動溶接機は薄板を扱う際に過度な熱が加わるのを防ぎ、変形リスクを抑えられることが特徴です。

製造や修理の対象となる材質の厚みを考慮して、使用する電流の上限や調整範囲を確認することをおすすめします。

電圧

電圧が高い半自動溶接機は、安定したアークを得やすく、ビード幅を広めに形成できます。安定した品質を重視する作業や、大きめの溶接箇所を一度に仕上げたいケースでメリットを発揮します。

一方、電圧が低い半自動溶接機はエネルギー消費を抑えられるため、コスト削減が求められる現場に有効です。作業内容に合わせて、設定の幅を確かめながら機種を選びましょう。

ワイヤ送給速度

ワイヤ送給速度が速いと溶接速度が上がり、大型製品や大量生産で効率的に作業を進められます。

逆に、速度が遅い半自動溶接機はビードの形成を丁寧にコントロールできるため、細部にこだわる精密な溶接に向いています。製品の大きさや仕上がりの美観など、求める品質と生産量を考慮して最適な送給速度を選択してください。

シールドガスの種類と流量

シールドガスには、主に炭酸ガス、混合ガス、不活性ガスなどがあり、扱う素材や求める仕上がりによって選択が変わります。

ガスの流量が適切であれば溶接部の酸化を防ぎ、品質を向上させることができますが、ガスコストも高くなる場合があります。

コストと品質のバランスを意識しながら、自社の用途に合ったガス種と流量設定が可能な半自動溶接機を選びましょう。

トーチの冷却性能

連続稼働が多い現場では、トーチの冷却性能が高い半自動溶接機が有利です。長時間の使用による過熱を抑えて作業効率を維持できるため、大量生産に力を入れる企業にとっては重要なポイントになります。

一方、比較的短時間の使用が中心の場合や予算を抑えたい場合は、冷却性能が低めでも問題になりにくく、導入コストも抑えやすいです。溶接時間や稼働率を考慮して検討することが大切です。

おすすめの半自動溶接機メーカー12社を紹介

半自動溶接機の選び方を解説

半自動溶接機は、メーカーごとに開発コンセプトや得意分野が異なるため、比較検討することで最適な機種を選びやすくなります。

ここでは、半自動溶接機メーカーのおすすめ12社を取り上げ、それぞれの特徴をご紹介します。自社の用途や予算に合わせて検討する際の参考にしてください。

育良精機株式会社

育良精機株式会社は2007年に創業し、インバータ制御の半自動溶接機を主力として展開しています。

建築業界や自動車修理業界など幅広い現場に納入実績があり、持ち運びのしやすさや操作性を重視した機種を開発していることが特徴です。

株式会社ダイヘン

株式会社ダイヘンは1919年創業の大手溶接機器メーカーで、CO2やMAGなどの半自動溶接機を多く取りそろえています。

自動車製造業や造船業への納入実績が豊富で、生産現場のニーズに合わせた高品質な溶接機の開発に注力しています。

パナソニック株式会社

パナソニック株式会社は1935年創業の総合電機メーカーで、CO2やMAGに対応する半自動溶接機を提供しています。

家電製造業や建設業でも導入が進んでおり、アフターサービスやメンテナンス体制の充実度も評価されています。

京セラインダストリアルツールズ株式会社

京セラインダストリアルツールズ株式会社は、インバータノンガス半自動溶接機などを製造しており、金属加工業や機械製造業からの支持を得ています。

ノンガスで使いやすいモデルを展開しており、屋外作業やガス管理が難しい現場でも活躍しています。

エイフク株式会社

エイフク株式会社は溶接機器の製造・販売を手がけ、インバータ半自動溶接機を中心に展開しています。

自動車修理業や建築業に納入実績があり、省エネ性や高精度を重視した機種開発を行っていることが特徴です。

スター電器製造株式会社

スター電器製造株式会社はノンガス半自動溶接機を取り扱い、自動車修理業や金属加工業に広く導入されています。

ガスを用いずに溶接できるため、屋外作業や移動の多い作業現場にも適したラインナップをそろえています。

株式会社WELDTOOL

株式会社WELDTOOLはMIGやMAGに対応した半自動溶接機を取り扱っています。

建築業や製造業に納入されるケースが多く、ビードの仕上がりと作業効率の両立を目指した機種を企画・開発しています。

大同興業株式会社

大同興業株式会社は一体型のMIGやMAG半自動溶接機を展開し、建築業や造船業で利用されています。

一体型設計による省スペース化や安定したアーク性能が特徴で、大型構造物の溶接を効率よく行いたい企業から高い評価を得ています。

デンヨー株式会社

デンヨー株式会社は1948年創業の発電機・溶接機メーカーで、CO2溶接機をラインナップしています。

建設業やインフラ整備業での導入例が多く、発電機の技術を応用した安定供給と長時間稼働を強みとしています。

デンゲン株式会社

デンゲン株式会社は1969年に創業し、インバータ溶接機を数多く販売しています。

自動車修理業や製造業において、軽量で操作性の良い機種が選ばれやすく、初めて半自動溶接機を導入する現場でも扱いやすい製品を提供しています。

OBARA株式会社

OBARA株式会社は2011年創業の溶接機器メーカーで、サブマージアーク溶接機を扱っています。

自動車製造業や金属加工業で利用され、厚板の大量生産や長尺の溶接が求められる場合に力を発揮するため、大型構造物を取り扱う現場に向いています。

日酸TANAKA株式会社

日酸TANAKA株式会社は1917年創業の老舗メーカーで、半自動TIG溶接システムを開発しています。

造船業や航空宇宙産業で導入されており、高い技術力による精密な溶接が求められる現場で活躍しています。