ボーリングマシン
ボーリングマシンは、地面に穴を開ける用途で温泉や地質の調査などに使われることの多い機械です。
しかし、ボーリングマシンにはいくつかの種類があり、特徴が異なっています。そのため、目的や現場に合わせた機械を選ぶことが重要です。
この記事では、一般的なボーリングマシンの特徴と価格帯、構造の解説から、種類別のメリット・デメリット、選定基準、そして主要なメーカー一覧までを紹介します。
導入検討前に情報を整理しておくことで、最適な機械選びが可能となるので、ぜひ最後までご一読ください。
ボーリングマシンとは?特徴・仕組みと価格帯を紹介
ボーリングマシンとは、土壌汚染などの地質調査や、井戸や揚水設備の設置などを行うさく井工事のために、地面に穴を開ける機械のことです。
基本的な特徴・仕組み
ボーリングマシンは、エンジンの回転力や打撃力を利用して、先端に取り付けたドリル(ビット)で地面を掘削します。
掘削した地質は、コアチューブという機具で所定の場所に収納され、分析のために取り出すことができるようになっています。
また、穴の状態を保つために、ケーシングパイプという管を穴に入れることがあります。ほかにも、掘削するに当たって求められる土壌の条件を満たすために添加剤を用いたり、ビットの冷却や潤滑のために掘削液が使用されたりもします。
注意点としては、地中に埋まっている埋設管や構造物に損傷を与えないよう、事前に確認する必要がある点です。また、エンジン駆動部への服の巻き込み事故も起こりやすいため、注意が必要です。
ボーリングマシンの価格帯
ボーリングマシンの値段は、種類や性能によって大きく異なりますが、一般的には数百万円から数千万円の範囲で購入ができます。
例えば、価格帯を次の三区分にわけることが可能です。
ボーリングマシンの価格帯
例)オーガーボーリングマシンなど
例)スピンドルボーリングマシンなど
例)ロータリーボーリングマシン、ロータリーパーカッションドリル、ダイヤモンドコアボーリングマシンなど
ここまで、ボーリングマシンの基本的な特徴・仕組みと価格帯について説明しました。次の章では、ボーリングマシンの構造を解説します。
基本的な特徴と仕組みを押さえて構造を理解することで、種類別の特徴が理解しやすくなります。ぜひ続けてお読みください。
ボーリングマシンの基本構造を解説
ここでは、ボーリングマシンの構造を解説します。ボーリングマシンは、以下の構成要素から成り立っています。
- ボーリングビット
- コアチューブ
- ボーリングロッド
- ケーシングパイプ
それぞれの機能は以下の通りです。
ボーリングビット
ボーリングビットは、岩石や土壌を物理的に切削して穴を掘る部分です。ビットの種類はいくつかあります。例えば、回転式ドリルビット、ダイアモンドビット、カーバイドビットなどです。ビットは、掘削する地質の種類によって選択されます。
コアチューブ
コアチューブは、岩石や土壌のサンプルを採取するための円筒形の容器です。ボーリングビットが岩石を切削すると、コア(サンプル)はコアチューブ内に保持されます。サンプルが表面に引き上げられる際に保護されるように設計されています。
ボーリングロッド
ボーリングロッドは、ボーリングビットを地下深くに導くための長い金属製の棒を指します。作業の進行に応じてセクションごとに接続され、必要な深さまでボーリングビットを延長することができます。力を伝えたり、ボーリング用の水を届けます。
ケーシングパイプ
ケーシングパイプは、掘削された穴の周囲に配管される管のことです。穴の壁を安定させ、崩落を防ぐために使用されます。また、掘削中に地下水が入り込むのを防ぐ役割も持っています。軟弱な地質の所では、これが欠かせません。
以上、ボーリングマシンの構造について解説しました。ボーリングマシンの基本構造はこれで押さえられましたが、構造項目の特徴の違いによって、ボーリングマシンの種類が変わってきます。次の章では、その5種類を確認し、各メリットとデメリットを説明します。
各種の特徴は? 5種類のボーリングマシンのメリット・デメリット
ここでは、ボーリングマシンの種類とそれぞれのメリット、デメリットについて解説します。ボーリングマシンには、次の5種類が存在します。
ロータリーボーリングマシン
ロータリーボーリングマシンは、ケーシングに回転と押え込み力を与えて地盤を掘削する機械です。
メリット
振動を最小限に押さえ、振動や騒音公害の低減が必要な地域での使用に最適です。また、多様な掘削ツールを使用できるのもメリットです。
デメリット
掘削速度が遅く、掘削深度が限られていることがあります。また、掘削穴の直径が大きくなってしまうこともデメリットです。
軟弱な地盤から硬い岩盤まで、様々な地盤を掘削することができるため、地質調査やさく井工事などの幅広い用途で使用されます。
ロータリーパーカッションドリル
ロータリーパーカッションドリルとは、ケーシングに回転と空気圧・油圧による打撃を加えて穴を開ける機械です。
メリット
高速回転と高打撃出力のドリルヘッドにより、大口径掘削を容易にし、穿穴(せんこう)速度を高めることができます。ドリルロッドの切り離し作業が簡便なため、作業効率も良いのがメリットです。
デメリット
掘削中に地下水やガスの流出に注意する必要があります。また、掘削深度が限られます。振動や騒音が大きく、冷却水が必要な点もデメリットです。
硬い岩盤に対して穿穴するのに適しているため、アンカーボルトや土木杭用の穴あけや地質調査、さく井工事で用いられます。
オーガーボーリングマシン
オーガーボーリングマシンは、地中にオーガーと呼ばれる切削機具を回転圧入させて、土を切削しながら穴を開ける機械です。人力のものと機械式のものがあります。
メリット
簡易で安価であること、振動や騒音が少ないことがメリットです。また、コアチューブで掘削したコアを回収できるため、例えば、コンクリートの構造検査にも使用できます。
デメリット
礫(つぶて)を含む土、硬い土、地下水面下で飽和状態にある砂、極めて軟弱な土には適用は難しいのがデメリットです。
深度が浅く、砂岩や泥岩など比較的柔らかい岩質に用いる機械なので、試料採取や探査に使用されることが多いです。
スピンドルボーリングマシン
スピンドルボーリングマシンは、ドリルに回転力と打撃力を加えて、切削破砕しながら削穴する機械です。
メリット
振動や騒音が少なく、環境に配慮した掘削が可能です。小口径、高精度、綺麗な穴を開けることができます。また、コアチューブで掘削したコアを回収できます。
デメリット
自動で掘削深度を記録することができません。掘削トルクを計測することも困難なことがデメリットです。
深度が浅く、砂岩や泥岩など比較的柔らかい岩質に用いる機械なので、試料採取や探査に使用されます。また、小型・軽量で運搬・搬入が容易なため、地盤改良や住宅地盤沈下防止対策にも使用されます。
ダイヤモンドコアボーリングマシン
ダイヤモンドコアボーリングマシンは、刃先にダイヤモンド粒子を埋め込んだビットを高速回転させ、ダイヤモンドの切削力を利用して穿穴する機械です。
メリット
振動や騒音がほとんどなく、都市部などの活況に配慮した工事に最適です。高精度で綺麗な穴を開けることができます。また、コアチューブで掘削したコアを回収できます。
デメリット
冷却水が必要になります。掘削中には地下水やガスの流出に注意する必要があります。また、掘削深度も限られるのはデメリットです。
鉄筋コンクリートや煉瓦、石材などの硬い材質に対して穿穴するのに適しています。配管用穴あけや、アンカーボルト・土木杭用の穴あけ、レンガやセラミックなどの穿穴、コンクリート壁や床の開口部作りなどに用いられます。
ここまで、各ボーリングマシンの特徴とメリット・デメリットについて説明してきました。次の章では、実際に数多くあるボーリングマシンの中から、貴社に最適な機械を選ぶ際の基準を4つ解説します。選定基準を把握することが一番大切ですので、ぜひ続けてお読みください。
選定方法は? 4つの比較基準|ボーリングマシンの選び方
ここでは、ボーリングマシンを選ぶ際の選定基準を解説します。機械の導入に際して、検討すべき事項は以下の4点です。
掘削地盤の硬さ
掘削する地盤の硬さの変動によって、ボーリングマシンの種類やビットの形状、掘削水の量や添加剤の種類などが変わります。
地盤が硬いほど、高い回転力と打撃力が必要になります。また、地盤の種類によって特殊なビットやロッドを使用する必要があります。ただし、掘削中の地下水やガスなどの流出リスクは高くなる点は注意が必要です。
一方で、地盤が柔らかいほど、掘削するのが容易になるため、必要とされるボーリングマシンの性能やコストは低くなります。また、掘削中に地下水やガスなどの流出のリスクも低くなります。
穴の直径
求めている穴の直径が大きくなるほど、大きなビットやロッドが必要になります。また、穴の直径が大きいほど、掘削水の量や添加剤の種類も増えます。
穴の直径が大きければ、大きなコアを採取できるため、地質の詳細な観察や分析ができるようになります。しかし、ボーリングマシンの性能やコストは高くなります。掘削中に地下水やガスなどの流出のリスクも高まります。
一方で、穴の直径が小さいほど、必要となるボーリングマシンの性能は低くなり、コストは小さくなります。しかし、小さなコアを採取することになるため、地質の詳細な観察や分析はできないというデメリットもあります。
穴の深さ
求めている穴の深さが深いほど、ロッドの長さや数が増えます。また、穴の深さが深いほど、削水の量や添加剤の種類も増えます。
穴の深さが深いと、地下の深い部分の地質を確認できるため、地質の詳細な観察や分析ができますが、求められるボーリングマシンの性能も高くなり、コストも大きくなります。また、掘削中の地下水やガスなどの流出のリスクも高まる。
一方で、穴の深さが浅いほど、求められるボーリングマシンの性能は低くなり、コストも小さくなります。しかし、地下の浅い部分の地質しか確認できないということでもあり、地質の詳細な観察や分析は困難になります。
掘削速度
掘削速度は、掘削時間や掘削品質、掘削コストなどに影響を与えます。
掘削速度が速いと、掘削効率が上がるため、掘削時間を短縮できます。ただし、適切な掘削速度でないと、ビットやロッドの摩耗や損傷が早くなったり、地下水やガスなどの流出リスクが高まったりします。
また、適切な掘削速度でないと、掘削品質が低下する場合があります。例えば、コアの採取率が低くなったり、コアの破損や変形が起こったり、穴壁の安定性が損なわれたりするなどです。
一方で、掘削速度が遅いと、ビットやロッドの摩耗や損傷が遅くなったり、地下水やガスなどの流出のリスクが低くなります。また、掘削品質が向上する場合があります。例えば、コアの破損や変形が防げたり、孔壁の安定性が保たれるなどです。
ただし、掘削速度が遅いと、掘削効率も低下するため、掘削時間を長くするというデメリットもある点は注意が必要です。
以上、ボーリングマシンを選定する際の基準4点でした。次の章では、ボーリングマシンを製造するメーカーを一覧で紹介します。続けて読むと、貴社にとって適切なメーカーがわかりますので、ぜひご一読ください。
ボーリングマシンを製造している主要企業5社一覧
前章では、ボーリングマシンを選ぶ際に検討すべき4点を紹介しました。貴社の導入条件を整理し、4点を確認した後は、実際にボーリングマシンを製造している企業を探しましょう。
ボーリングマシンの代表的な企業5選
- 東邦地下工機(TOHO CHIKAKOKI)
- エヌエルシー(NLC)
- ワイビーエム(YBM)
- 鉱研工業(KOKEN BORING MACHINE)
- 東亜利根ボーリング(TOA-TONE BORING)
※クリックすると該当箇所へ飛びます
ロータリーボーリングマシン | ロータリーパーカッションドリル | オーガーボーリングマシン | スピンドルボーリングマシン | ダイヤモンドコアボーリングマシン | |
東邦地下工機 | ◎ | ‐ | ‐ | ◎ | ‐ |
エヌエルシー | ◎ | ‐ | ‐ | ◎ | ◎ |
ワイビーエム | ◎ | ◎ | ‐ | ◎ | ‐ |
鉱研工業 | ◎ | ◎ | ‐ | ◎ | ◎ |
東亜利根ボーリング | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ‐ |
東邦地下工機(TOHO CHIKAKOKI)
東邦地下工機は、1946年創業、福岡県福岡市に本社を置く建設工事・建設コンサルタント・地質調査の会社です。ボーリングマシンやボーリング関連機械も製造販売しています。
扱っている主なボーリングマシンの種類は、ロータリーボーリングマシンやスピンドルボーリングマシンなどがあります。
品質マネジメントシステム ISO 9001:2015 の認証を取得しており、ボーリング関連機械の製造において、高い品質基準を満たしています。また、ボーリングマシンの運転特別教育も開催しています。
橋脚基礎工事や地下鉄工事、地すべり対策工事のために建設業界、地下水開発や地熱開発、海底資源開発のために資源開発業界、そして地盤改良や汚染土壌の除去、廃棄物処理のために環境保全業界などでこの会社のボーリングマシンが使用されています。
エヌエルシー(NLC)
エヌエルシーは、ボーリングマシンなどの開発・販売を事業とする会社です。1983年に創業しました。東京都台東区に本社を置き、ボーリング業界の総合アドバイザーとして、機材選定から導入まで支援する会社です。
扱っているボーリングマシンは、ロータリーボーリングマシン、スピンドルボーリングマシン、全油圧駆動式ダイアモンドコアドリルマシーンなどがあります。
エヌエルシーの強みは、技術とノウハウによる高品質な製品と、国内外のボーリング作業の効率化を追求するサービスにあります。また、海外での需要が高い探査用ボーリングマシンや、学術的な研究開発のための特殊仕様の掘削機などの共同開発も行っています。
エネルギー及び資源探査、地盤改良、温泉開発、道路切削などの業界にボーリングマシンや関連商品を納入しています。
ワイビーエム(YBM)
ワイビーエムは、地質調査や地盤改良などに用いられるボーリングマシンやマッドポンプの製造・販売・レンタルを行う会社です。1946年に創業し、本社は佐賀県唐津市にあります。ほかにも、ファインバブル技術や土壌・水質汚染対策などの環境分野にも取り組んでいます。
ロータリーパーカッションドリル、スピンドルボーリングマシンなど、小型から大型までさまざまなボーリングマシンを取り扱っています。
ワイビーエムの強みは、高品質な製品と豊富な実績に基づく信頼性にあります。また、技術革新にも積極的に取り組んでおり、バイブロドリル搭載ハイパワードリルのHD-90Vsなどの先進的な製品を開発しています。
さく井、地質調査、地盤改良、温泉開発、資源探査、環境調査などの業界にボーリングマシンやマッドポンプを納入しています。製品は日本だけでなく、アジア、アフリカ、中東、ヨーロッパなどの海外でも使用されているのが特徴です。
鉱研工業(KOKEN BORING MACHINE)
鉱研工業は、1947年に設立された、ボーリング、グラウト機器のトップメーカーです。本社は東京都豊島区にあります。温泉、環境、施工、地下水開発などの分野で、国内外の社会基盤整備に貢献しています。また、再生可能エネルギーの分野にも積極的に取り組み、環境に配慮した事業展開を行っています。
扱っている主なボーリングマシンは、ロータリーボーリングマシンやダイヤモンドコアボーリングマシン、ドリルリグなどがあります。
鉱研工業の強みは、ボーリング技術の開発と工事施工の実績にあります。ボーリング機器の製造販売だけでなく、独自工法による工事施工も行っており、地下開発のエンジニアリングや施工のプロフェッショナルとして高い評価を得ているのが特徴です。
水道業界において、取水用スクリーンや水処理装置を納入した浄水場新設工事の井戸掘削にボーリングマシンを使用した実績や、新しい製造工場の建設にあたり、地盤改良や地中熱利用のためのボーリング工事を実施した実績があります。
東亜利根ボーリング(TOA-TONE BORING)
東亜利根ボーリングは、1917年創業のボーリング用機器・掘削機械の製造販売と土木工事を主な事業とする会社です。本社は東京都港区にあります。
扱っているボーリングマシンの種類は、ロータリーボーリングマシン、ロータリーパーカッションドリル、スピンドルボーリングマシン、オーガーボーリングマシンなどです。
ボーリング技術を核とした事業を展開、国内外の多くのプロジェクトに参画しているのが特徴です。特に、高速振動を利用したソニックドリルは、同社のオリジナル技術であり、高い評価を得ています。
地中熱や太陽光などの再生可能エネルギーの開発のため、掘削機や路面舗装型太陽光発電設備などを納入した実績があります。また、建設・測量:建設工事や測量調査に必要な掘削機や連続壁機などを納入しています。ほかに鉄道業界にも納入実績があります。
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