遠心分離機
固体と固体、固体と液体を効率的に分離する遠心分離機は、医療・食品・工業製品などさまざまな業界で活用されてきました。
市場に出回っている遠心分離機には各々特徴がありますが、特徴を理解していなければ、効果を最大限に発揮することは困難です。
そこで、本記事では遠心分離機の原理や仕組み、選び方などを解説します。さらに、遠心分離機を取り扱っているおすすめのメーカーを紹介するのでぜひご覧ください。
とりあえず話を聞きながら考えたい方やすぐにメーカーへ問い合わせをしたい方は、以下のボタンからお問い合わせください。担当者におつなぎいたします。
遠心分離機とは?
遠心分離機は、異なる比重の固体や液体を遠心力を利用して分離する装置です。
身近な例では「洗濯機」も、液体(水)と固体(洗濯物)を分離する遠心分離機のひとつです。簡単な機構にも関わらず高い成果が出せることから、工業・医療・研究など幅広い分野で利用されています。
遠心分離機の原理・分離方法
遠心分離機では水と油のような液体同士の分離(液液分離)や、固体と液体の分離(固液分離)をおこないます。液液分離・固液分離でも遠心力や重力などの「力」によって分離します。
本章では、3種類の分離方法を解説します。
遠心沈降
「遠心力」を利用して、比重差のある液体・固体を分離する方法です。
遠心力により外力を加え、回転力が高いほど分離能力は高くなります。自然に分離させるよりも効率的に分離可能です。
遠心濾過(ろか)
遠心分離に濾過の機能を追加した方法です。
装置には回転体の外側(力がかかる方向)に濾材やフィルターが設置してあります。遠心力により液体が外側に排出されて、固体が装置内に残る仕組みです。
主に固液分離で使われます。
重力沈降
外力を重力だけに頼り、固体と液体、液体同士を分離する最も原始的な方法です。
たとえば、食品業界では上澄み液と固形物を分離する場合に用いられます。
ローターの種類を3つ紹介
ローターとは、遠心分離機でサンプルを保持する部品です。ローターの種類や大きさにより設置の可否や分離条件が異なるため、目的に合わせて選定してください。
連続ローター
ローター内にサンプルを流しながら分離するローターを、連続ローターといいます。大量の処理を一度におこなえるメリットがあり、生産性が重視される工業系の現場で主に使われます。
アングルローター
アングルローターは、回転軸に対して一定の角度を持つローターです。サンプルを入れるプラスチック製の試験管(チューブ)が固定されているため、高回転で遠心力をかけられます。
スイングローター
チューブが水平方向に回転するローターをスイングローターと呼び、密度勾配遠心法で分離能が高い特徴があります。密度勾配遠心法とは遠心分離法のひとつで、処理液同士の粒子や密度に大きな差がない場合に用いられる方法です。
遠心分離機をメジャーな12種類に分けてそれぞれの特徴を解説
現在の分離技術は、さまざまな遠心分離機によって成り立っています。ここでは、市場で流通している遠心分離機について紹介します。
自動排出型遠心分離機
分離した固体を自動で排出できる遠心分離機を「自動排出型遠心分離機」と呼びます。
連続して液体の分離と、固体の自動排出ができることがメリットです。具体的には、製薬・化成品液中の不純物の除去や、粒子径の異なる固形分の分級に使われています。
ノズル型遠心分離機
固液分離で液体と固体を連続的に取り出せる遠心分離機が「ノズル型遠心分離機」です。
固体を濃縮液として連続的吐出するため、処理液の固体成分の比率が多くても安定して処理できるメリットがあります。高濃度培養の乳酸菌濃縮、パン酵母の濃縮洗浄などに使われています。
手洗い型遠心分離機
「手洗い型遠心分離機」は、固液分離をおこなう遠心分離機です。
分離した固体分は手動で取り出して設備を洗浄する手間がありますが、構造がシンプルで安価なことが大きなメリットでしょう。研究室などの処理量が少ない場合に適しています。
液液分離機
「液液分離機」は、連続して液液分離をおこなう遠心分離機です。装置内に設置された数百枚の分離版により、軽液と重液を分離します。
分離された液体は、内蔵ポンプにより連続的に吐出できます。化成品の2液の分離、化成品の不要成分液の除去などに特化した遠心分離機です。
液液固分離機
処理液を、軽液と重液と固体分に分離する装置が「液液固分離機」です。
固体分は自動に取り出されるため、3種の成分を含んだ処理液を大量分離する場合に重宝します。具体的な使用例は、生乳のクリーム・脱脂乳・夾雑物の分離、植物油・動物油の精製・CIP(定置洗浄)などです。
デカンタ型遠心分離機
「デカンタ型遠心分離機」は、横型の遠心分離機で大容量のスラリー処理に適しています。
連続稼働で大量の固液分離ができることがメリットです。工業用排水処理、下水汚泥の処理、炭酸カルシウムの分離で活用されています。
バスケット型遠心分離機
回転するバスケット内で固液分離をおこなう遠心分離機を「バスケット型遠心分離機」と呼びます。
幅広い素材に対応し連続稼働できるため、汎用性の高さが人気です。樹脂ペレットの脱水、結晶の脱水、粒子が大きめの製品の分離に用いられています。
超遠心分離機
通常の遠心分離機は3,000〜5,000rpm程度の回転数ですが「超遠心分離機」は数万回転で分離をおこないます。
強烈な遠心力がかかることから、分離能力が非常に高い特徴があります。主にウイルスやDNAなど生化学の分野の分離に利用されています。
高速冷却遠心分離機
高速で回転しながらも冷却機能を搭載した「高速冷却遠心分離機」は、バケットの温度上昇を抑えながら強い遠心力をかけて処理液を分離できます。
分離能力が高く、処理液にダメージを与えないことがメリットです。細胞の分離、血液成分の分離、生体試料の分離に用いられています。
低速遠心分離機
回転数1,000〜3,000rpm程度の低速で遠心分離する装置が「低速遠心分離機」です。
遠心力がかかりにくいため大きな粒子(血液成分など)の分離など、特定の作業に特化しています。血液成分の分離、細胞の分離、食品試験の分離に活用されています。
恒温遠心分離機
一定の温度を保ちながら分離をおこなえるのが「恒温遠心分離機」の特徴です。
温度の影響を受けやすい処理液を分離するのであれば、温度制御が必要になります。主に生化学の分野で仕様され、造血幹細胞の遺伝子導入、温度に敏感な化学試料の分離、生体試料の分離などに使われます。
フィルター型遠心分離機
「フィルター型遠心分離機」は、固液分離を得意とした遠心分離機です。
バケットの壁面に設置された濾材・金網・スクリーン等により、固体成分はフィルターに濾し取られます。構造もシンプルで扱いやすく、医薬品の製造、化粧品の製造、食品の清澄化などで幅広く用いられている遠心分離機です。
導入によって得られる遠心分離機のメリットを紹介
遠心分離機を導入すれば、さまざまなメリットがあります。どのようなメリットがあるか紹介します。
効率的な分離が可能
重力だけでふたつの物質を分離する場合、膨大な時間がかかります。遠心力を利用すれば、短時間で効率的に分離が可能です。生産性向上が見込め、省人化ができるかもしれません。
高精度の分離
高精度の分離も遠心分離機を導入するメリットです。遠心力により、液体と固体を確実に分離できます。遠心分離機によっては、非常に細かい粒子や微量成分の分離にも対応可能です。
多用途性
作業性が高い遠心分離機は、清澄・洗浄・脱水・脱油・分級・抽出など、さまざまな分離処理に対応できます。最近の遠心分離機は制御系統も改善され、扱いやすいことが特徴です。
遠心分離機の選び方を解説
分離条件を理解すれば、自社や研究室に必要な遠心分離機がわかるようになります。ここでは、遠心分離機の選び方を紹介します。
回転速度
回転速度が高いほど遠心力が強くなり、分離効率が向上します。
ただし、大型のバケットを高速で回転させると事故につながる可能性も無視できません。装置のサイズが大きくなったり、堅牢な設計になったりして導入コストが高くなります。
自動化機能
製造ラインに導入する場合には、自動化機能は必須の要素でしょう。自動化機能が搭載されている遠心分離機は、構造や電気回路が専用になっています。
あとから改造するのは手間がかかり、コストもかかってしまうので、使い方をイメージして自動化が必要か判断してください。
冷却機能
処理液の成分が熱によって、成分が破壊されてしまう処理液も少なからずあります。
遠心分離中にサンプルの温度上昇を抑えるには、装置に冷却水を流す必要があるでしょう。取り扱う物質の特性を事前に調べてください。
分離精度
分離には、設備仕様・分離条件・処理液などさまざまな要素が絡みます。
導入後に「分離ができずに作業効率が改悪した」ということがないように事前準備が必要です。必要な分離精度を把握した上で導入を検討しましょう。
容量
バケットの容量が大きいほど、一度に処理できるサンプル量が増えます。生産ラインでは、歩留や能率・直行率が重要です。
効率的な作業は、原価低減にもつながります。用途に合わせた容量の遠心分離機を選んでください。
ローターの種類
遠心条件を細かく制御したい場合には、適したローターを選ぶことがおすすめです。
各メーカーで用途に適したローターをアクセサリとして販売している場合があります。検討時にメーカーに問い合わせてください。
設備のサイズ
設置場所や稼働時の安全を考慮して、設備サイズを決めることも重要です。あらかじめ設置場所のレイアウトを検討してから、遠心分離機を選びましょう。
遠心分離機を販売するメーカー
遠心分離機は歴史が古く、創業100年以上の老舗メーカーが数多くあります。高い技術力によって製造された多彩な遠心分離機や、実機によるテストなどのサービスを提供しています。
本章では、遠心分離機を製造しているおすすめのメーカーを15社紹介します。
エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ株式会社
「エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ」はドイツに本社を持つエッペンドルフ社の日本法人で、ライフサイエンス分野に特化した機器を提供しています。
50年以上にも渡り、遠心分離機の開発・製造・販売をおこなってきたメーカーです。研究用から工業用まで幅広いラインアップが特徴です。
月島機械株式会社
「月島機械」は、水処理設備や化学プラントの設計・施工を手掛けるメーカーです。
工業用の大型遠心分離機の製造・販売をおこなっています。テスト設備もあるため、導入前に月島機械の遠心分離機が必要な能力を確保しているか確認可能です。
株式会社佐久間製作所
「佐久間製作所」は遠心分離機や遠心濃縮機などを取り扱うメーカーです。
冷却や冷凍機能を備えた遠心分離機を取り扱っていることが特徴です。最低マイナス20℃の状況下でも分離をおこなえます。
松本機械販売株式会社
「松本機械」は1938年に創業したメーカーで、工業用・研究用の遠心分離機の開発・製造をおこなっています。
80年以上の経験を持ち、高い提案力と技術力を持っていることが特徴です。さまざまなニーズに応えられる遠心分離機やシステムを提供しています。
GEAジャパン株式会社
「GEAジャパン」は創業130年以上の歴史を持つメーカーで、遠心分離機に対して深い経験とノウハウを持ち合わせています。
ラインアップは小型から大型まであり、多種多様な遠心分離機を取り扱っているため、多くの悩みに応えられるでしょう。また、国内にサービスセンターがあるため、関連部品も素早く購入できます。
三菱化工機株式会社
「三菱化工機」は三菱グループのひとつで、遠心分離機以外にも化学プラントや産業機械の製造をおこなっています。
船舶エンジンの燃料油・潤滑油の清浄、医薬、食品分野などの遠心分離機を数多く取り扱っていることが特徴です。
巴工業株式会社
「巴工業」は大容量処理のデカンタ型遠心分離機で世界的なシェアを獲得しています。
食品工業、鋼・鉱業、エネルギー、紙パルプ、バイオ、下水、し尿、ゴミ処理など、幅広い分野へ遠心分離機の納入実績があります。
アルファ・ラバル株式会社
スウェーデンに本社を構え、創業130年以上の技術革新とノウハウを積み上げてきた「アルファ・ラバル」は、遠心分離機のパイオニアといえるでしょう。
基本的な遠心分離から非常に複雑な分離まで対応できる遠心分離機を販売しています。長年の経験を活かし、適切な技術や機器の選定など的確なサポートができるでしょう。
関西遠心分離機製作所
関西地域を拠点に遠心分離機の設計・製造をおこなう「関西遠心分離機製作所」。
1918年の創業以来、遠心分離機に特化した事業展開をおこなってきました。バスケット型遠心分離機・デカンタ型遠心分離機を主力とし、長年培ったノウハウで多彩なニーズに応えます。
タナベウィルテック株式会社
「タナベウィルテック」は、多様な機種を取り扱う分離・乾燥の総合メーカーです。
遠心分離機では、バスケット型や横型のラインアップが豊富です。長年の経験を活かし、利用者の課題に合わせた遠心分離機のカスタマイズをおこなっています。
チカラエンジニアリング株式会社
創業1973年以来、遠心分離機の部品供給及び修理部門を手掛けてきた「チカラエンジニアリング」。
現在では新機種の開発、機器の改良研究をおこなうメーカーになりました。サニタリー仕様にこだわり、洗浄性を高めた遠心分離機に力を入れています。
コクサン株式会社
「コクサン」は、医療機器や研究機器の製造をおこなうメーカーです。
遠心分離機では、医薬品用の卓上遠心分離機、フロア型遠心分離機を主力としています。医薬品医療機器総合機構への届出をおこなっている機種で、機能に加えて安全性や信頼性が高いことが特徴です。
斎藤遠心機工業株式会社
「斎藤遠心機工業」は、遠心分離機のリーディングカンパニーです。
創業80年以上の実績があり、設計から製造・組立まで一貫して遠心分離機に携わっています。卓越したノウハウを持っていることが特徴です。多彩なニーズに対応したオーダーメイドマシンも受け付けています。
久保田商事株式会社
「久保田商事」は、医療機器・理化学機器の販売・メンテナンスをおこなっているメーカーです。
理化学機器では、主に遠心分離機を取り扱っています。コンパクトな遠心分離機が特徴で、多彩なラインアップがあります。
株式会社トミー精工
「トミー精工」は、バイオテクノロジーの基礎研究用の遠心分離機や滅菌器を製造・販売するメーカーです。
卓上型遠心分離機・冷却遠心分離機で、医療用から多目的用まで幅広い遠心分離機を取り扱っています。高速回転と大容量を兼ね備えたフラッグシップシリーズ「Suprema」が人気です。
まとめ
取り扱う処理液の特性を知り、遠心分離の原理を正しく理解すれば選定する遠心分離機がわかるようになります。
多種多様な遠心分離機が各メーカーより販売されています。目的に応じた遠心分離機を選定し、事業や研究室の作業効率を向上させ、精度が高い分離をおこないましょう。
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