モーションコントローラ
高精度な位置決めや速度制御を実現するモーションコントローラは、産業機械やロボットなど幅広い分野で不可欠な存在になっています。
しかし、導入に際しては「どのタイプを選べばいいか」「メーカーによる違いをどう見極めるか」など、多くの疑問が生じることでしょう。
本記事では、基本知識や製品の種類、メリット・デメリット、選定時のポイント、さらに主要メーカーの強みについて詳しく解説します。
自社に最適なモーションコントローラを見つけて、生産効率の向上や品質改善につなげましょう。
とりあえず話を聞きながら考えたい方やすぐにメーカーへ問い合わせをしたい方は、以下のボタンからお問い合わせください。担当者におつなぎいたします。
目次
モーションコントローラの基本情報を解説
まず始めにモーションコントローラの基本情報を確認しましょう。
モーションコントローラとは何かを簡単に解説
モーションコントローラとは、産業用機械やロボット、CNC工作機械などの動きを高精度かつリアルタイムに制御するための装置を指します。
上位コントローラからの指令を受け取り、モータードライバやアンプへ適切な信号を送り出すことで、位置や速度を緻密に管理可能です。
高精度制御を可能とする点や、多軸を同期制御できる点が特徴であり、多様な産業分野の自動化や効率化を支えています。
また、PCやPLCとの連携がしやすいことから、さまざまな環境に導入しやすいのも利点です。
特に産業用途では、機器ごとに求められる制御要件が異なるため、適切なモーションコントローラの選定は生産性や品質の向上に直結する重要なプロセスと言えます。
モーションコントローラの原理・仕組みや構造
モーションコントローラの仕組みは、上位コントローラからの高レベルコマンドを受信し、それをモータードライバやアンプに適した低レベル信号へ変換するところから始まります。
さらに、軌跡ジェネレーターが動作して指令されたパラメーターをもとに最適なモーションパスを生成し、実際のモーター位置を監視しながら制御をリアルタイムで修正していきます。
また、構造としては、PCやPLCなどの上位コントローラが指令を行い、モーションコントローラが軸ごとの制御を行う中心的存在です。
そこからサーボドライバやステッピングモータドライバなどの駆動機器に信号を送り、最終的にモーターが動作します。
さらに、フィードバック用のセンサーやエンコーダがモーションコントローラに戻す情報を常時モニタリングし、指示どおりに動作しているか確認することで、安定性と精密性を高めることが可能です。
モーションコントローラを種類ごとに分けたうえで各タイプの特徴を紹介
モーションコントローラは用途や構造によって様々な種類に分けられます。本章では、モーションコントローラを種類ごとに紹介します。
PLC用モーション制御ユニット
PLC用モーション制御ユニットは、プログラマブルロジックコントローラに接続して使用するタイプであり、高速な同期制御が可能な点が強みです。
既存のPLCシステムに手軽に統合できるため、自動組立ラインやパッケージング機械などの現場で活用されています。
スタンドアロンモーションコントローラ
スタンドアロンモーションコントローラは、PCやPLCに依存せず独立して動作可能であることが強みです。
複雑な制御ロジックを内蔵できる柔軟性の高さが特徴であり、ロボットアームやCNC工作機械など、多岐にわたる装置に導入されやすいです。
産業用PC用モーションカード
産業用PC用モーションカードは、産業用PCの拡張スロットに差し込んで使用し、高速かつ高精度の制御を実現できる点が強みです。
カスタマイズ性にも優れており、半導体製造装置や3Dプリンターなどで活用されるケースが多いです。
サーボモーションコントローラ
サーボモーションコントローラは、サーボモーターの精密な位置決めや速度制御に特化しています。
高い制御精度を発揮できるため、精密加工機械や医療機器などの分野で重要な役割を担います。
ステッピングモーションコントローラ
ステッピングモーションコントローラは、ステッピングモーターの制御に最適化されており、比較的シンプルな構造でコストパフォーマンスが高い点が強みです。
プリンターや小型ロボットなど、低コストで動作が求められる分野で活用されています。
リニアモーションコントローラ
リニアモーションコントローラは、リニアモーターの直線運動を高速かつ高精度に制御可能です。
高速搬送や高精細な位置決めが重要となるリニアアクチュエーターや自動搬送システムで効果を発揮します。
マルチアクシスモーションコントローラ
マルチアクシスモーションコントローラは、複数の軸を同期させて同時に制御できる点が強みです。
ロボットシステムや自動車製造ラインなど、複雑な動作を要する装置に利用されます。
デジタルモーションコントローラ
デジタルモーションコントローラは、高速なデータ処理と緻密な制御を実現するデジタル信号を採用しています。
反応速度や処理精度が重要となる高速カメラシステムや精密計測装置などに導入されやすいです。
アナログモーションコントローラ
アナログモーションコントローラは、アナログ信号で制御を行うシンプルな設計が特徴であり、コストを抑えやすい強みを持ちます。
古典的な制御システムや基本的な自動化装置などにおいて、今でも有効活用されています。
ネットワークモーションコントローラ
ネットワークモーションコントローラは、ネットワーク経由で複数のデバイスを制御するため、分散制御とシステム拡張性が高いです。
スマートファクトリーのような大規模システムや遠隔操作システムに導入されることが多いです。
モーションキャプチャコントローラ
モーションキャプチャコントローラは、センサーやカメラを用いて人間の動きをデジタルデータとして取り込み、再現する仕組みに特化しています。
アニメーション制作やビデオゲームなどで実際の動きを精密に記録・再現するために利用されます。
モーショントラッキングコントローラ
モーショントラッキングコントローラは、内蔵センサーによってユーザーの動きをリアルタイムで追跡可能です。
VRシステムの操作やインタラクティブな展示では、ユーザーの姿勢や動きを正確に反映し没入感を高めるために用いられます。
ハイブリッドモーションコントローラ
ハイブリッドモーションコントローラは、デジタルとアナログの両方の制御方式を取り入れることで幅広い用途に対応できる柔軟性が強みです。
複数の制御要件が入り交じる複合機械システムや研究開発装置などで力を発揮します。
高速モーションコントローラ
高速モーションコントローラは、高速な動作制御と高精度な制御を両立させることに特化しています。
高速搬送システムや高速加工機械のように、生産性と正確さが求められる現場で多用されます。
精密モーションコントローラ
精密モーションコントローラは、ナノメートル単位の精度が求められる動作を実現できる点が強みです。
半導体製造装置や精密計測機器などの分野で、高い位置決め精度と安定性を提供可能です。
導入するとどんなメリット・デメリットがあるかを事前に知っておこう
モーションコントローラを導入するうえで、そのメリット・デメリットを事前に理解しておくことは大切です。そこで本章では、モーションコントローラのメリット・デメリットを確認します。
モーションコントローラのメリット
モーションコントローラのメリットとしてまず挙げられるのは、高精度な制御を実現できる点です。
位置や速度の微妙な変化を正確に捉え、ナノメートル単位の精度が求められる半導体製造装置や、極めて高い安全性と正確性が要求される医療機器などで活用されています。
加えて、生産効率を飛躍的に高められる点も見逃せません。自動車製造ラインではロボットによる組み立てや溶接を高速かつ正確に行い、食品包装機械では大量の製品を短時間で処理できるため、全体の生産性を向上させる効果が期待できるでしょう。
また、モーターからのフィードバック信号をリアルタイムで監視・制御するため、誤差を即座に補正できるのもメリットです。
ロボットアームやCNC工作機械などの高度な装置でも、作業中に制御が乱れることを抑えながら、高品質な製品づくりを可能にします。
モーションコントローラのデメリット
モーションコントローラには多くの利点がある一方で、導入コストの高さがデメリットとして挙げられます。
精密な制御を実現するには高度な技術や専用のハードウェアが不可欠であり、結果的に購入価格や設置費用が高くなる場合が多いです。
ただし、システムを段階的に導入したり、中古機器やリースを活用したりする方法で初期費用を分散し、負担を軽減できます。
設定やメンテナンスに専門的な知識が要求される点もデメリットになりうるでしょう。
トレーニングを定期的に行い、操作担当者のスキルを高めるほか、メーカーや専門業者とのサポート契約を活用することで、万が一のトラブルが起きた際も対応を早められます。
最後に通信遅延やノイズに弱いという技術的な課題も指摘されがちです。これに対しては、シールドケーブルの使用やリアルタイムOSの導入によって精度への悪影響を最小化できるため、利用環境に応じた対策を講じる必要があります。
どう選定すれば良い?モーションコントローラの選び方を解説
モーションコントローラは自社に適したものを導入できないと、逆に生産性を落としてしまいかねない製品です。そこで本章では、モーションコントローラの適切な選び方を解説します。
精度を確認する
モーションコントローラを検討する際、まず重視すべき要素が精度です。
高精度タイプを導入すれば、位置や速度をきわめて正確に制御できるため、半導体製造装置や医療機器など、ミスの許されない領域で威力を発揮します。
一方で、高精度になるほど導入コストが上昇しやすいため、あらかじめ必要な精度を見極めることが重要でしょう。
速度を考慮する
生産効率を左右する要素に速度があります。高速対応のモーションコントローラを選ぶことで、短時間で生産量を確保できるようになり、自動車製造ラインや食品包装機械などの高速作業が必要な場面で効果を発揮します。
ただし、速度を追求しすぎるとコストや制御の複雑さが増すため、用途に合わせた適度な速度を目指すことが大切です。
柔軟性を意識する
自社の製品ラインナップや将来の拡張計画を考慮し、柔軟性に優れたモーションコントローラを選ぶこともポイントです。
例えば、スタンドアロンタイプやハイブリッドタイプは、多岐にわたる装置や環境に対応しやすいため、長期的なシステム拡張が見込まれる現場に適しています。
反面、用途に特化したタイプのほうが導入・運用がシンプルになる場合もあるため、専用用途とのバランスを見極めましょう。
コストのバランスを考える
モーションコントローラの導入費用は、性能や機能が上がるにつれて高くなります。高性能なシステムを導入するほど多機能で安定性も高まるが、使用目的と見合わないほどコストをかけると投資回収が難しくなります。
逆に低コストモデルを導入すれば初期費用を抑えられるが、精度や速度面で物足りなさを感じる場合があるでしょう。
そのため、コストと機能のバランスを吟味し、自社の予算や運用計画に合う機種を選ぶことが大事です。
信頼性を優先するか
長期にわたって安定稼働が求められる現場では、信頼性が高いモーションコントローラを選定しましょう。
サーボモーションコントローラやマルチアクシスモーションコントローラなどは高度な制御と信頼性を兼ね備えている場合が多く、高度な生産ラインで重宝されます。
一方で、短期間や試験的な用途であれば、そこまで高い信頼性を必要とせず、初期費用を抑えられます。
拡張性を見極める
生産ラインの増設や機能追加の見通しがあるならば、拡張性の高いモーションコントローラを選ぶことを検討するとよいでしょう。
ネットワークモーションコントローラやスタンドアロンモーションコントローラはシステムの追加や変更に柔軟に対応しやすいため、将来的な投資を抑えながら長期運用を行いたい企業に向いています。
ただし、拡張性を重視しすぎるとコストが上がりやすい点に留意が必要です。
インターフェースの種類に注目する
連携したい機器やシステムが多岐にわたる場合は、対応するインターフェースの種類や数を確認しておく必要があります。
ハイブリッドモーションコントローラやネットワークモーションコントローラは、多様な入出力や通信規格を扱える点が魅力であり、外部デバイスとの連携がスムーズです。
一方、インターフェースが限定的なタイプは扱いやすい反面、拡張や連携に制約が生じることもあります。
プログラミングの容易さを考慮する
開発や保守にかかる手間を削減したい場合は、プログラミングの容易さも選定基準となります。
PLC用モーション制御ユニットやスタンドアロンモーションコントローラは、比較的わかりやすいプログラミング環境を提供することが多く、新規導入でもスムーズに運用を開始可能です。
一方で、産業用PC用モーションカードのようにカスタマイズ性が高い代わりに設定が複雑なタイプもあるため、目的と技術レベルに合う選択を行うことが望ましいでしょう。
メンテナンス性をチェック
稼働停止のリスクを回避したい場合は、メンテナンス性に配慮したモーションコントローラが適しています。
スタンドアロンタイプやPLC用モーション制御ユニットは、保守性を考慮した設計になっていることが多く、ダウンタイムを抑えながら安定運用しやすいです。
一方、簡易モーションコントローラは構造が単純で初期コストは低いが、細かなメンテナンスが難しいケースもあるため、運用スタイルに合わせた判断が求められるでしょう。
通信プロトコルを見極める
多様なシステムやデバイスとの接続が必要な場合は、対応する通信プロトコルの種類に注目することが大切です。
ネットワークモーションコントローラやハイブリッドモーションコントローラは、複数のプロトコルをサポートしている場合が多く、さまざまな設備やソフトウェアと連携しやすいです。
ただし、必要性のない機能にまで対応したモデルを選ぶと導入コストが増大するため、必要なプロトコルだけを絞って選定するのも一つの手段でしょう。
セキュリティへの配慮
ネットワークを介した制御が増えるにつれ、セキュリティリスクも高まりつつあります。
外部からのアクセスやデータ改ざんを防止するには、セキュリティ機能を強化したモーションコントローラを導入することが重要です。
スタンドアロンタイプやネットワークモーションコントローラの中には、セキュリティ対策を充実させたモデルが存在するため、外部接続の有無や機密性のレベルを考慮しながら慎重に選ぶとよいでしょう。
環境耐性の重要性
生産現場によっては、高温、多湿、粉塵、振動など過酷な条件が想定されるため、環境耐性の高さも選定基準となりえます。
産業用PC用モーションカードやスタンドアロンモーションコントローラは、厳しい環境下でも安定動作を確保する設計が施されている場合が多いです。
通常のオフィス環境でしか使用しないのであれば、より低コストの一般モデルでも十分運用可能であるため、実際の使用環境を十分に考慮して製品を選定することが大切でしょう。
【おすすめメーカー紹介】モーションコントローラを製造している会社
本章では、モーションコントローラのメーカーから当編集部おすすめの数社をピックアップして、簡単に特徴を解説します。
安川電機
安川電機は日本の大手電機メーカーであり、産業用ロボットやモーションコントローラを幅広く製造しています。
マシンコントローラやサーボシステムコントローラを扱い、自動車製造や半導体製造の現場で高い評価を受けています。
オムロン
オムロンは自動化制御機器や電子部品を提供する日本の企業で、多軸モーションコントローラやPLC用モーション制御ユニットに強みを持っています。
医療機器や食品包装などの分野で活用され、多様なニーズに応えられる製品ラインアップを整えています。
三菱電機
三菱電機は電機製品から産業機器まで幅広い製品を手がける大手企業で、CNC(数値制御装置)やサーボシステムコントローラを展開しています。
工作機械やエレクトロニクス製造で多く導入され、高い信頼性と安定した制御性能が特長です。
山洋電気
山洋電気はサーボモーターやファンなどの精密機器を製造しており、モーションコントローラやサーボドライバに定評があります。
精密機械や医療機器などの高度な制御が求められる環境で活躍し、高精度と静粛性を兼ね備えた製品を提供しています。
日本パルスモーター
日本パルスモーターはステッピングモーターとその関連ドライバの分野で強みを持ち、ユニットタイプのモーションコントローラも展開しています。
産業用ロボットや印刷機械などで採用され、コストパフォーマンスや扱いやすさに着目した製品を提供しています。
コスモテックス
コスモテックスはフィールドバスモーションコントローラなど、ネットワークを活用した制御技術を得意としています。
自動化装置や包装機械向けの導入事例が多く、拡張性や通信機能を重視する現場で選ばれやすいメーカーです。
プライムモーション
プライムモーションはスタンドアロンタイプのモーションコントローラを中心に展開しており、単独で高度な制御を実現できる点が特長です。
3DプリンターやCNC工作機械など、多岐にわたる装置への適用実績があります。
マイクロネット
マイクロネットはリアルタイムコントローラの分野で活躍し、精密加工機械や医療機器などの高い制御精度が求められる現場で導入されています。
リアルタイム制御による応答性や安定性の高さが評価されているメーカーです。
ファナック
ファナックはCNC制御装置や産業用ロボットで世界的に有名な日本の企業で、CNCやロボットコントローラを中心に幅広いラインアップを提供しています。
自動車製造やエレクトロニクス製造をはじめ、多彩な業界で導入され、高度な制御技術を支えています。
住友重機械工業
住友重機械工業は機械製造やエンジニアリング分野で長い歴史を持ち、モーションコントローラも手がけています。
建設機械や産業機械で培った技術力を生かし、大型設備でも安定した制御を実現できる点が特徴である。
日本ムーグ
日本ムーグは高性能サーボドライブやモーションコントローラを提供し、航空宇宙や医療機器など厳しい要求がある分野でも導入されています。
精密かつ安定した制御と高耐久性を兼ね備え、ハイエンド領域での実績が豊富です。
Galil Motion Control
Galil Motion Controlはアメリカの企業で、高性能モーションコントローラの開発に力を入れています。
半導体製造や医療機器での導入実績が多く、先端技術を取り入れた制御システムが評価されています。
Elmo Motion Control
Elmo Motion Controlはイスラエルの企業で、モーションコントローラとサーボドライバに特化した製品を展開しています。
産業用ロボットや精密機械など、高度な制御を必要とする分野での採用例が豊富であり、高い性能と小型化技術が強みです。
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