SLAM
SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)は、ロボットやドローンが自律的に環境を認識しながら動き回るうえで不可欠な技術です。
とはいえ、「どんな仕組みなのか」「何を基準に選んだらいいのか」「どの企業が提供しているものを選べばいいのか」など、疑問は尽きませんよね。
この記事では、そんな疑問を解消すべく、SLAMとは何かや仕組み、さらに選び方からおすすめメーカーまで総合的に解説します。
ぜひ最後までご覧いただき、自社の目的に合ったのSLAMを見極めるヒントをつかんでください。
とりあえず話を聞きながら考えたい方やすぐにメーカーへ問い合わせをしたい方は、以下のボタンからお問い合わせください。担当者におつなぎいたします。
SLAMとは? 特徴や活用例などを解説
SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)とは、移動体(ロボットやドローンなど)が周辺環境の地図を生成(Mapping)しながら、自らの位置を推定(Localization)する技術の総称です。
例えば倉庫内の自律搬送ロボットが、自分の通るルートを常に地図化して把握しながら走行するのはSLAMがあるからこそ実現できる機能といえます。
カメラやLiDARセンサーなどを組み合わせて、高精度な地図を生成を生成し、動的な環境でも自己位置を見失わずにいられる点が特徴です。
また、SLAMはロボット工学だけでなく、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)、自動運転やドローンによる測量など、多方面で活用が進んでいます。
リアルタイムに自己位置を推定しつつ地図を作り上げるため計算負荷が高いというデメリットはありますが、動作環境に合わせたカスタマイズが可能な汎用性の高さを持ち合わせています。
ここまででSLAMの概要や特徴がざっくりイメージできたかと思います。次は、SLAMの代表的な種類を見ていきましょう。
代表的な3種類のSLAM技術のメリット・デメリットを整理
一口にSLAMといっても、使用するセンサーやアルゴリズムにより複数の種類に分類されます。ここでは代表的なものを3つ紹介し、それぞれのメリットとデメリットを整理していきます。
Visual SLAM
Visual SLAMはカメラ(モノクロカメラやRGBカメラ)を用いて周辺環境を撮影し、画像認識技術で特徴点を捉えながら自己位置を推定・地図を生成する方法です。
安価なカメラでも導入が可能なため、コストメリットが大きいのが特徴です。
LiDAR SLAM
LiDAR SLAMはLiDARセンサーを用いて周辺環境の3次元構造をリアルタイムで取得し、自己位置推定を行う方式です。
光の反射時間を計測して距離を割り出すため、暗所や視界不良の場所でも比較的安定した精度を得られる点が強みといえます。
Depth SLAM
Depth SLAMは、RGB-Dカメラ(例:KinectやIntel RealSense)、ToF(Time-of-Flight)カメラ、ステレオカメラなど、深度情報を取得できるセンサーを活用して周辺環境の3次元情報を計測し、自己位置推定と地図生成を行う方式です。
深度データを直接取得することで、カメラだけのVisual SLAMよりも正確なスケール感や3次元構造を把握しやすく、障害物検知などにも応用しやすい点が魅力です。
ここまでで代表的なSLAMの種類とそれぞれの特徴が理解できたかと思います。次は、SLAMの仕組みやアルゴリズムの流れを見ていきましょう。
SLAMの仕組みやアルゴリズムは? LiDARセンサーやカメラを使った自己位置推定
SLAMの基本的な仕組みは、センサーやカメラから得られる情報をもとに移動体の位置を推定し、同時に環境地図を更新し続ける流れで構成されます。
LiDARセンサーを使ったLiDAR SLAMでは、LiDARが取得する3次元の点群データから障害物の位置や形状を高精度に把握し、過去の観測データと照合しながら位置を修正し続けます。
さらに近年ではグラフベースの最適化アルゴリズムと組み合わせることが一般化し、ループクロージャ(同じ場所を再度通った際の再検出)を効率よく処理することで、誤差を低減する手法が広く用いられています。
一方、カメラを用いたVisual SLAMでは、画像からエッジやコーナーなどの特徴点を抽出し、それらの対応関係をフレーム間や事前に構築された地図との間で求めることで、移動体の位置や姿勢を推定すると同時に環境地図を生成していきます。
Visual SLAMには大きく分けて、画像中のキーポイントを抽出しカメラの動きや3次元構造を推定する特徴点ベース方式と、ピクセルの明るさや色などを直接利用して最適化を行う直接法があります。
続いては、実際にSLAMを導入する際の選び方をみてみましょう。
SLAMを導入する際の選び方を解説
SLAMを導入する場合、目的や運用環境によって最適なアプローチが異なります。ここでは、センサー選定、地図形式の決定、そしてアルゴリズム選択の3つに分けて、その重要性を解説します。
利用環境や予算に応じた種類の選定
SLAMの選び方としてまず挙げられるのが、屋内か屋外か、また光量や障害物の状況といった利用環境や自社の予算に合わせたSLAMの種類の選定です。
もし環境や予算に適さない種類を導入すると、自己位置推定の精度が著しく低下して地図が破綻したり、運用コストが膨れ上がり最大限活用できなかったりといったトラブルに繋がりやすくなります。
夜間や複雑な障害物がある現場や中小企業で予算が限られている場合には、特に重要度が増すでしょう。
自社に合った種類のSLAMを選べば、大規模施設や暗所など多様な現場でも安定した地図構築と自己位置推定が可能となるだけでなく、想定内のコストで運用できるため経営的な安心感にもつながる可能性があります。
運用目的に合わせた地図形式の選定
SLAMの選定ポイントとして、マップの表現形式を運用目的に応じて決めることも重要です。
これは、必要とされるマップ解像度やロボットの自由度、さらには複数ロボットを同時運用するかどうかといった条件によって左右されます。
もし地図形式が運用目的に合っていないと、経路計画や障害物回避に不具合が生じ、結果的に作業効率が低下しかねません。
また、複数台のロボットを運用する、あるいは障害物密度が高いエリアを細かくモデル化する必要がある場合は、マップ形式の選択が特に大切です。
適切に地図形式を選んでおけば、異なる種類のロボットとも連携しやすく、追加センサーや機能拡張にもスムーズに対応できるようになるでしょう。
運用要件に合ったアルゴリズム選択
アルゴリズム(フィーチャベース方式、直接法、グラフ最適化、EKFなど)を運用要件に合わせて選ぶことも大事な選び方の一つです。
リアルタイム性や計算リソース、精度、そして再ローカライズの頻度などが、適切なアルゴリズムを決める主な要因になります。
もし要件を無視してアルゴリズムを決定してしまうと、トラッキングロストや収束の遅れが頻発し、結果としてロボットが誤作動を起こす可能性が高まります。
特に人や障害物の往来が多い作業現場やトラッキングが乱されやすい環境ではアルゴリズムを確認しておきましょう。
要件に合致したアルゴリズムを採用すれば、高精度な地図をリアルタイムに生成し続けられるだけでなく、万が一の位置ロストからの再検出もスムーズに行えるため、運用が止まるリスクを抑えられる可能性が高いです。
ここまででSLAMを導入する際の大まかな選定ポイントを整理しました。では次に、具体的にどのようなメーカーがSLAM技術を提供しているのか、その特徴を比較してみましょう。
【特徴比較】SLAM技術を提供するおすすめの企業・メーカーを5社紹介
SLAM技術を扱うメーカーは国内外に数多く存在します。ここでは特に注目度の高いおすすめの5社を取り上げ、それぞれの製品や強みを比較してみます。
Kudan / Kudan
メーカー名 | Kudan / Kudan |
設立念 | 2014年 |
本拠地 | 東京都渋谷区神南一丁目23番14号 |
概要 | 人工知覚(AP)技術の研究開発・ソフトウェアライセンスを行う企業 |
Kudanは2014年に設立され、東京都渋谷区を拠点とする人工知覚(AP)技術の研究開発・ソフトウェアライセンスを行う企業です。
イギリスやアメリカ、ドイツといったグローバルな拠点を持つ点が強みで、SLAM領域のリーディングカンパニーとして注目を集めています。
同社が提供しているSLAMにはVisual SLAMと3D-LiDAR SLAMがあります。
点群データの特定箇所のみを記憶する特殊なアルゴリズムを用いて、処理データ量を他のアルゴリズムの約100分の1に圧縮できることが魅力といえるでしょう。
実際にIntel社の半導体プラットフォームや物流倉庫での自律走行システム、さらにテラドローンのUAVレーザー製品など、多彩な領域で導入実績を持っています。
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キヤノン / CANON
メーカー名 | キヤノン / CANON |
設立念 | 1937年 |
本拠地 | 東京都大田区下丸子3-30-2 |
概要 | カメラや映像機器、事務機器などを製造する大手精密機器メーカー |
キヤノンは1937年に創業され、東京都大田区に本拠地を構える大手精密機器メーカーです。
創業当初から培ってきた光学技術と映像技術を強みに、カメラやオフィス機器など幅広い製品を展開しています。
同社が提供するSLAMはVision-based Navigation Software (VNS)と呼ばれています。
水平面や垂直面を幅広い画角で撮影し、レイアウト変更があっても高精度に位置姿勢を計測できる点が特長です。
実際には工場や建設現場、さらにはホテルやレストランなど、施設内での自律移動ロボットをサポートする用途で広く導入されています。
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北陽電機 / HOKUYO AUTOMATIC
メーカー名 | 北陽電機 / HOKUYO AUTOMATIC |
設立念 | 1946年 |
本拠地 | 大阪府大阪市西区江戸堀一丁目9番6号 肥後橋ユニオンビル9F |
概要 | 業務用・産業用センサーのメーカー |
北陽電機は1946年創業で、大阪市に本拠を置く業務用・産業用センサーの専門メーカーです。
レーザ分野において世界的に高い評価を得ており、2005年の愛知万博では出品ロボットの半数以上が同社のセンサーを採用するなど、多くの実績を誇ります。
同社はLiDAR SLAMを提供しており、カメラによる画像処理と比較して、高精度に空間認識が行える点が強みです。
実際にはサービスロボット、自動運転支援システム、そして工場内の自律移動ロボットなど、多彩な領域で活用されています。
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Guide Robotics / GUIDE ROBOTICS
メーカー名 | Guide Robotics / GUIDE ROBOTICS |
設立念 | 2020年 |
本拠地 | 東京都千代田区丸の内2丁目3番2号郵船ビルディング1階 |
概要 | 屋内測位システム(IPS)とロボット自律移動技術を提供する企業 |
Guide Roboticsは2020年に創立され、東京都千代田区に拠点を置く、屋内測位システム(IPS)とロボット自律移動技術を提供する企業です。
米国SRI Internationalからスピンオフした初のベンチャー企業として、その革新的な研究開発力が注目されています。
同社のSLAMはGuideNS™(Visual-Inertial SLAMベースのナビゲーションシステム)と呼ばれます。
SRIが10年以上にわたり開発とフィールドテストを重ねてきた技術が土台にあるため、信頼性の高いSLAMを実装できるのが特徴です。
物流倉庫でのフォークリフトや製造工場での自律移動ロボットなど、安定稼働が求められる業務領域で主に採用されています。
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テラドローン / Terra Drone
メーカー名 | テラドローン / Terra Drone |
設立念 | 2016年 |
本拠地 | 東京都渋谷区渋谷2丁目12-19 東建インターナショナルビル3F |
概要 | ドローンソリューションプロバイダー |
テラドローンは2016年に創立され、東京都渋谷区に本社を置くドローンソリューションプロバイダーです。
累計3,500件以上の測量実績を誇り、空撮や測量を中心としたサービス領域で高い評価を得ています。
同社のSLAMはTerra SLAM RTKと呼ばれる製品です。わずか5センチ精度で高密度な点群データを取得できるため、他社のSLAMと比較しても測量業務での正確性が強みです。
建設業界や農地・山林の計測、さらには災害現場での緊急測量など、多様なシーンで導入されており、ドローンの専門技術と組み合わせることで現場のDXを促進しています。
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