真空包装機
真空包装機は、食品の鮮度を保ち、保存期間を延ばすための強力なツールです。しかし、種類や機能が多岐にわたるため、最適な選択をするには、いくつかのポイントを押さえる必要があります。この記事では、真空包装機の種類と特徴、メリット、各種製品の比較、選び方の基準、そしておすすめのメーカーについて詳しく解説します。
4種類の真空包装機と特徴
真空包装機は、食品やその他の製品を保存するために使用される機器です。主に、包装内の空気を除去し、密封することによって、保存期間を延ばし、品質を保ちます。
真空包装機には、主に以下の4種類が挙げられます。
- チャンバー式真空包装機
- ノズル式真空包装機
- ハンドヘルド式真空シーラー
- 自動真空包装機
チャンバー式真空包装機
チャンバー式真空包装機は、食品や製品をチャンバー内に置き、全体を真空状態にするタイプの真空包装機です。液体の真空包装も可能で、主に商業用途や大量生産に使われることが多いです。
この機械の特徴は以下の通りです。
- 高い真空度と均一な包装が可能
- 包装プロセスにおける最高レベルの安全性と信頼性
- 高い真空度を実現でき、長期保存が可能
- 精密な排気と温度制御されたシーリング技術により、最高のパック品質を実現
これらの特徴のため、チャンバー式真空包装機は、液体の真空包装が可能で、大量生産に適しています。
ノズル式真空包装機
ノズル式真空包装機は、真空にしたいものを機械の外部に置き、吸引ポートを使って空気を除去するタイプの真空包装機です。比較的コンパクトな設計で、一般家庭や小規模な商業用途に適しています。
この機械の特徴は以下の通りです。
- 価格が安い
- ワークの大きさや形状に制限がない
- 脱気時間が短い
ノズル式真空包装機は、袋の開口部にノズルを挿し込み、スポンジで開口部を押さえ、ノズルと配管した真空ポンプから袋内の空気を脱気し、最後に密閉シールで塞ぐ方法です。短時間で真空ができますが、真空状態が弱いこともあります。
一方、チャンバー式真空包装機は、食品などをボックス(チャンバー)内に入れ、ボックス内部を真空にしてシールで塞ぐ方法です。液体の真空包装も可能で、主に商業用途や大量生産に使われますが、ワークの大きさや形状に制限があります。
ノズル式真空包装機は、比較的短期間保存しておきたい場合や、設置スペースにゆとりがない場合、あるいは大小様々な大きさのワークを密封保存したい場合に特に適しています。
ハンドヘルド式真空シーラー
ハンドヘルド式真空シーラーは、手のひらサイズのコンパクトな機器で、プラスチック製の袋に対応しているのが一般的です。日常生活でよく使用され、アウトドアなどの屋外活動でも便利に使われます。
この機械の特徴は以下の通りです。
- 手軽でコンパクト
- 持ち運びが容易
- 迅速な排気が可能で安定した性能を提供
ハンドヘルド式真空シーラーは、-50〜60キロパスカルの真空度を維持し、電動エアポンプにより迅速な排気が可能で、非常に安定して効率的です。また、高度な真空技術を活用し、食品を新鮮に保つ優れたシーリング効果を備えています。
自動真空包装機
自動真空包装機は、複数のプリセットやカスタム設定が備わっており、使いやすく効率的なタイプの真空包装機です。真空にしたい食品や製品をセットしてボタンを押すだけで、自動的に真空包装を行うことができます。また、自動化ラインと組み合わせることで、工場でのパック製品の大量生産にも利用されています。
この機械の特徴は以下の通りです。
- 自動化されたプロセスで包装作業を効率化
- 生産性の向上とコストや労力の削減
- 初心者でも簡単に操作可能
- 手作業に比べて速く大量の製品を包装可能
自動真空包装機は、ノズル式やチャンバー式の包装プロセスを自動化して、生産性を向上させたものです。小規模な食品工場では半自動の真空包装機が使用されることが多いですが、大規模な工場では完全自動の真空包装機が生産ラインに組み込まれて使用されます。
真空包装機のメリット・デメリット
真空包装機には、メリットだけでなく、認識しておくべきデメリットもあります。このセクションでは、真空包装機のメリットとデメリットをご紹介します。
メリット
真空包装機を活用する主なメリットとして、以下の3つの点が挙げられます。
- 食品の鮮度と品質保持
- 保存のしやすさ
- 衛生面の向上
食品の鮮度と品質保持
真空包装機で中の空気を取り除くことによって酸化が抑制され、色や風味が保たれて腐敗を防ぐことができます。食品以外では、金属部品や衣類などに使われることがありますが、この場合も食品と同様で空気に触れる機会を減らし、湿気などから製品を守ることが可能です。
例えば、レストランで真空包装機を使用すれば、食材を長期間新鮮に保つことができ、無駄なく使用することが可能になります。
保存のしやすさ
食品や製品を真空状態にすることで、コンパクトになり、収納スペースを節約することができます。また、食品に味付けをして真空袋に入れて保存することで、味がなじみやすくなり、調理時間の短縮にも繋がります。
この技術は、冷凍食品の保存に役立ち、食品をコンパクトに包装して冷凍庫のスペースを有効に利用することが可能です。
衛生面の向上
食品に真空包装機を使用することで、袋や容器の中が真空状態になり、微生物の繁殖が抑えられて衛生的な状態が保たれます。これにより、食中毒などのリスクを軽減することが可能です。
この技術は、以下のような場面で特に効果を発揮します。
- 食品工場での衛生管理
- 家庭での食材保存
食品工場の製造ラインでは、製品を衛生的な状態で包装し、安全性を確保するために真空包装機が使用されています。
デメリット
一方で、真空包装機には以下のようなデメリットもあるので、注意が必要です。
- 初期費用とランニングコスト
- ボツリヌス食中毒のリスク
初期費用とランニングコスト
真空包装機の導入には初期費用が必要で、さらに専用の袋や機械を稼働させるためのオイルなどランニングコストがかかります。
その一方で、真空包装機を導入することで、食品の鮮度保持や衛生管理の向上など、長期的な利益を見込むことができます。また、食材が安いときや余ったときに真空包装した上で冷凍保存しておけば、長期保存できコスト減や食材ロスの防止が可能です。そのため、初期費用とランニングコストは長期的に見れば十分に回収可能と考えられます。
ボツリヌス食中毒のリスク
真空包装で保存した食品には、ボツリヌス菌が増殖するリスクがあり、これがボツリヌス食中毒の原因となることがあります。
ボツリヌス菌は、3℃未満では増殖しないという特徴があるため、食材の低温保存が食中毒防止に効果的です。また、ボツリヌスの毒素を産生する芽胞を失活させるためには、80℃で20分間、または100℃で数分間の加熱が必要です。
これらの対策を講じることで、ボツリヌス食中毒のリスクを軽減することができます。また、真空パッキングした後にパックごと加熱して調理する「真空調理」という方法もあり、これによりボツリヌス菌を死滅させることが可能です。真空調理は、一般的には「レトルト食品」として広く用いられています。
5つの比較基準 | 真空包装機の選び方
真空包装機を選ぶ際は、以下の5つのポイントを抑える必要があります。
- 真空度
- 機械の種類
- 包装容量
- 操作のしやすさと機能性
- 価格と性能のバランス
真空度
真空度が高いと、食材の日持ち、味付け、菌の増殖度など、製品の品質保持に大きく影響します。真空度は、単位面積当たりの力で表され、パスカル(Pa)という単位で表します。
真空度が高いと食品の鮮度と品質が保たれ、腐敗の可能性が低くなります。例えば、商業用途や大量生産に使われるチャンバー式真空包装機がこれにあたります。
一方で、真空度が低いと短時間で真空できます。また、真空包装機のコストを下げることが可能です。
そのため、真空度が低いノズル式真空包装機などは一般家庭や小規模な商業用途に適しています。
機械の種類
真空包装機の性能や使用目的は、機械の種類によって異なります。
高性能な機械は、高い真空度と均一な包装が可能です。例えば、チャンバー式真空包装機がこれにあたり、商業用途や大量生産に適しています。
一方、比較的コンパクトな設計の機械はコストが低く、一般家庭や小規模な商業用途に適しています。ノズル式真空包装機がこれにあたります。
このように、使用目的や必要な性能に応じて適切な真空包装機を選ぶことが重要です。
包装容量
包装容量が大きいと、一度に多くの食品や製品を真空包装することができます。そのため、大量生産を行う場合には、高容量の機械が適しています。
例えば、チャンバー式真空包装機や自動真空包装機がこれにあたり、商業用途や大量生産に使用されます。
一方、家庭で使用する際には、包装容量が小さなものが適しています。家庭用のノズル式真空包装機がこれにあたり、少量の食品や製品の包装に適した選択肢です。
このように、使用目的に応じて適切な包装容量の真空包装機を選ぶことが重要です。
操作のしやすさと機能性
操作が簡単で機能性が高いと、真空包装機の使用が便利になります。自動センサー機能やプリセットモードなどの機能があると、さらに便利です。
例えば、操作性が良く機能性に優れているものとして、自動真空包装機がこれにあたります。これにより、初心者でも簡単に使用でき、操作ミスを減らすことが可能です。
一方、操作が簡単で必要な機能だけを持つ真空包装機は、価格が安く初心者にも使いやすいです。単純な機能を持っているものとして、ハンドヘルド式真空シーラーがこれにあたります。
このように、使用目的や予算に応じて適切な真空包装機を選ぶことが重要です。
価格と性能のバランス
価格と性能のバランスが取れていると、真空包装機の導入費用や運用コストが抑えられ、コストパフォーマンスが高くなります。例えば、家庭用の真空包装機や低価格のチャンバー式真空包装機がこれにあたります。
一方で、高性能な機械は、高い真空度と均一な包装が可能ですが、その分導入費用が高くなります。これらは業務用真空包装機に多く見られます。
このように、使用目的や予算に応じて適切な真空包装機を選ぶことが重要です。
真空包装機を製造するおすすめのメーカー
真空包装機を製造する主なメーカーとして、以下の会社が挙げられます。
※JET-Roboticsの問い合わせフォームに遷移します。
一部の会社とは正式な提携がない場合がありますが、皆さまに最適なご案内ができるよう努めています。
- トーセイ / TOSEI
- 富士インパルス / FUJIIMPULSE
- 古川製作所 / FURUKAWA MFG.
- イシダ / ISHIDA
- ホシザキ / HOSHIZAKI
※クリックで各メーカーの詳細に移動します。
トーセイ / TOSEI
会社名 | トーセイ / TOSEI |
設立年 | 1950年 |
本社 | 東京都品川区東五反田1丁目24番2号 JRE東五反田一丁目ビル2階 |
概要 | 業務用クリーニング機器と真空包装機の国産メーカー |
トーセイは、卓上〜据置・ベルト型までの広いラインナップと使いやすいタッチパネル、全国保守対応に強みがあります。
主な機種はTOSPACK V-392、V-393、V-955-500、V-480などです。食品・非食品まで対応範囲が広く、運用しやすいUIとメンテナンス性で現場定着を図りやすい点が特徴です。
導入例として、和食店「創作和料理 近藤」での仕込み効率化、EC出荷での厚み低減による配送コスト削減、ホテル・惣菜工場での真空調理と保存の標準化が挙げられます。
富士インパルス / FUJIIMPULSE
会社名 | 富士インパルス / FUJIIMPULSE |
設立年 | 1956年 |
本社 | 大阪府豊中市庄内栄町4-23-18 |
概要 | インパルスシーラー・真空ガス充填シーラーの専業メーカー |
富士インパルスは、ノズル式で脱気とガス置換に両対応し、温度制御による高品位シールを実現する点に強みがあります。
ラインナップはVG-602シリーズ、VG-402シリーズ、V-460などです。インパルス方式と温度制御の組み合わせで多様な包材・ワークに安定したシール品質を提供しやすい設計です。
活用分野として、製菓・製パンや麺類工場、医薬・文具、金属部品の防錆保管など幅広い現場で利用されています。
古川製作所 / FURUKAWA MFG
会社名 | 古川製作所 / FURUKAWA MFG |
設立年 | 1962年 |
本社 | 東京都品川区大井6丁目19-12 |
概要 | 真空包装機・自動袋詰シール機などの包装機械メーカー |
古川製作所は、ロータリー真空包装機を中心に高速・大型ラインへ対応しやすい機種群を展開する点に強みがあります。
主力はFVVシリーズ(高速ロータリー真空包装機)やFVB-UCシリーズです。高速連続包装とライン統合のしやすさにより、処理量と歩留まりの両立を目指しやすい構成です。
導入例として、スーパーマーケット・惣菜・精肉向けの真空包装ライン、レトルト・チルド食品工場での連続真空包装、医薬・工業用途の真空・ガス包装設備が紹介されています。
イシダ / ISHIDA
会社名 | イシダ / ISHIDA |
設立年 | 1948年 |
本社 | 京都市左京区聖護院山王町44番地 |
概要 | 計量・検査・包装システムの総合メーカー |
イシダは、計量・検査と一体で最適化できるトレーシール技術(MAP・スキン・真空)と高速処理に強みがあります。
代表機はQXシリーズ(QX-1100、QX-900 Flex、QX-775 など)です。真空(スキン)やMAPに対応するトレー包装と計量・検査の統合で、スループットと歩留まりを両立しやすい点が魅力です。
活用例として、惣菜・レディーミール工場でQX-1100による真空トレー包装や、欧州食品メーカーでのトレー真空・MAP包装ライン最適化が挙げられます。
ホシザキ / HOSHIZAKI
会社名 | ホシザキ / HOSHIZAKI |
設立年 | 1947年 |
本社 | 愛知県豊明市栄町南館3-16 |
概要 | 業務用厨房機器の大手メーカー |
ホシザキは、厨房向け卓上型での扱いやすさと衛生性に加え、ガス充填やホットパックなど実運用に直結する機能に強みがあります。
主なモデルはHPS-300B、HPS-300B-G(ガス充填仕様)、HPS-300B-HP(ホットパック仕様)などです。コンパクトなチャンバー機でメンテ性と多用途性を両立し、保存・テイクアウト・真空調理に素早く適合しやすい点が特徴でしょう。
飲食店での前倒し調理と真空保存による人手不足対策、テイクアウト・EC販売の品質保持と販路拡大、多店舗展開での集中仕込みから各店再加熱提供によるロス削減などの目的で多数の導入事例があります。