リニア搬送システム
「生産ラインを効率化したい」「従来のコンベヤでは作業が追いつかない」と悩んでいませんか?
リニア搬送システムは、搬送工程を高速化すると同時に、省スペース化・複雑なレイアウトへの対応など、さまざまなニーズを満たせる移送方式として注目を集めています。とはいえ「種類が多くてわからない」「原理はどうなっているの?」といった疑問もあるでしょう。
そこで本記事では、リニア搬送システムの基本から具体的な種類、さらにシステム選定のポイントやおすすめメーカーまでを網羅的に解説します。現場環境や生産計画に合った選択のヒントを得たい方は、ぜひ続きをご覧ください。
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目次
リニア搬送システムとは? 特徴や活用例などを解説
リニア搬送システムとは、モータなどの直線運動を利用して製品や部品を搬送する方式のことです。ベルトやチェーンなどの回転軸を用いる通常のコンベヤと異なり、リニアモータやローラーでダイレクトに制御するため、高速・高精度かつ多彩なレイアウトに対応できるという特徴があります。
たとえば、電子部品の組立ラインでは、高速タクトと高精度位置決めが求められる場面で非常に効果を発揮可能です。また、自動車業界や医療・製薬分野などでも、工程間の搬送時間を短縮するために導入されるケースが増えています。
リニア搬送システムを導入することで、従来では難しいカーブや合流、合流後の再分岐などもスムーズに実現でき、作業効率が格段に向上する可能性があります。
リニア搬送システムの概要を押さえたところで、次は具体的な種類について見ていきましょう。
リニア以外も含めて搬送システムを種類ごとに解説
搬送システムにはさまざまな種類があります。代表的なものとしてはリニアモータ式、ローラー式、ベルト駆動式などが挙げられ、いずれも搬送対象物や生産ラインの要件に合わせて選ばれる傾向があります。それぞれの特徴を把握すると、自社のラインにとって最適な方式が見えてくるでしょう。
以下では、代表的な3種類の搬送システムを取り上げて、そのメリットとデメリットを比較しながら解説します。
リニア搬送システム
リニアモータ式は、リニアモータを直接搬送部に組み込む方式です。高精度かつ高速な移動が可能で、停止位置の制御も非常に正確に行えます。複雑なレイアウトや工程変更への対応も比較的容易であり、ハイエンドな生産ラインで多く採用されています。
ローラー式搬送システム
ローラー式は、複数のローラーを回転させることで対象物を搬送する方式です。比較的シンプルな構造で導入が容易というメリットがあります。高速性や精度面ではリニアモータ式にやや劣るものの、機構が単純なため生産ラインに合わせたカスタマイズもしやすい特徴を持っています。
ベルト駆動式搬送システム
ベルト駆動式は、ベルトをモータで回転させてワークを移動させる仕組みです。比較的リーズナブルな価格帯で導入でき、軽量ワークを大量に搬送するケースなどで活躍します。高速搬送にも対応可能ですが、ベルトの伸びや張り具合によって位置精度に影響が出る場合があります。
各方式のメリット・デメリットを比較すると、導入環境や求める性能によって最適解が異なることが分かります。続いて、リニア搬送システムの原理や仕組みをもう少し深堀りして解説していきましょう。
原理と仕組みからリニア搬送システムを理解する
リニア搬送システムは、モータを直線的に配置し、磁場の反発・吸引力やローラーの物理的な回転力を利用して搬送する仕組みです。リニアモータ式の場合、ステーター(固定子)とムーバー(可動子)を一直線上に配置し、電流の制御によって精密な位置合わせと高速移動を実現します。
同じリニアモータを用いている場合でも、駆動制御のアルゴリズムやエンコーダの分解能などによって、最終的な搬送精度や速度が変わります。また、LSM(Linear Synchronous Motor)技術や放熱設計、制御盤との通信などを総合的に行うため、導入時には各社の技術力が大きく問われるポイントとなるでしょう。
仕組みを深く理解すれば、設備投資の際にどの部分に注目すべきかが明確になります。次に、ほかの搬送システムと比べたときにリニア搬送システムが持つメリットを確認してみましょう。
ほかの搬送システムと比較したときのリニア搬送システムのメリット
リニア搬送システムを従来のチェーンやベルトなどの搬送システムと比較した際の大きなメリットは、高い位置精度とレイアウトの自由度、そして速度性能です。レイアウトの自由度が高いことで、工程間のスペースをより効率的に活用でき、複数の製品を同時に流すなどの工夫も可能になります。
また、リニアモータ式のシステムであれば、1つのライン上で異なるピッチのワークを搬送することも容易です。高い精度での制御が可能なので、工程ごとに要求される停止位置の誤差を極限まで小さくでき、生産品質の向上にも寄与します。さらに高速駆動によるタクトタイムの短縮で、大量生産ラインの生産性向上にも期待が持てるでしょう。
リニア搬送システムならではのメリットを把握できたところで、次に選定のポイントについて詳しく確認していきます。
リニア搬送システムの選び方
リニア搬送システムの導入を検討するうえで重要になるのが、ラインの規模や搬送物の特性、そして将来的な拡張性です。以下では、特に押さえておきたい3つのポイントを挙げます。
トラック構造
リニア搬送システムの選定ポイントとして、直線だけでなくカーブや合流など複雑なレイアウトにも対応できるトラック構造を選ぶ必要があります。工程数やレイアウトの自由度によって最適な軌道形状や駆動方式が変化するためです。
もし事前に検討をしないと、想定外の搬送ルートが増えたときに補助システムが必要となってしまいます。特に製品バリエーションが多く、短期でレイアウトを組み替える必要があるラインでは、このポイントを重視すると良いでしょう。
適切な構造を選択できれば、モジュール単位でラインを連結したり拡張したりしやすくなり、将来的な工程変更にも柔軟に対応できる可能性が高まります。
駆動方式
リニア搬送システムの選定ポイントとして、要求される高速搬送やタクトに合わせてリニアモータ駆動など高加減速が可能な方式を選ぶという考え方があります。搬送物の質量や目標タクトタイムに応じて適切な駆動仕様を決定する必要があるからです。
重要なのにもかかわらず検討を忘れると、搬送速度が追いつかずサイクルタイムが伸びてしまい、生産効率の大幅な低下を招きかねません。大量生産や短いタクトが求められる組立ラインでは特に、高い搬送速度を確保することが重要です。
十分に見合った駆動方式を選択すれば、ステーション間の移動時間を大幅に短縮でき、ライン全体の処理速度を向上させることができるでしょう。
エンコーダ・ガイド機構
リニア搬送システムの選定ポイントとして、高精度位置決めが求められる場合にはエンコーダやガイド機構が優れた方式を選定することが挙げられます。製品の公差や組立工程の許容誤差などに合わせて、搬送時の位置精度を確保する必要があるためです。
検討していない場合、位置ズレやアライメント不良が頻発して品質問題に直結し、歩留まりの低下を引き起こします。極小部品の組立や検査を同一ラインで行う場合には特に、このポイントを重視することが重要です。
適切な方式を選択できれば、各ステーションでの位置合わせが確実となり、複数の微細工程を一貫して高精度かつ高速に処理することを期待できるでしょう。
リニア搬送システムの選び方を理解できたところで、次はおすすめメーカーとそれぞれの特徴を紹介します。
JET-Global編集部おすすめのリニア搬送システムメーカー
最後に、リニア搬送システムを検討するうえでおすすめしたいメーカーを紹介します。それぞれのメーカーが手がけるリニア搬送システムの強みや、導入実績から見えてくる活用例をまとめましたので、比較の参考にしてみてください。
三菱電機 / Mitsubishi Electric
メーカー名 | 三菱電機 / Mitsubishi Electric |
設立年 | 1921年 |
本拠地 | 東京都千代田区 |
概要 | 総合電機メーカー |
三菱電機は1921年に設立され、東京都千代田区に本拠地を置く総合電機メーカーです。社会インフラからFAシステムまで幅広い技術を手掛け、高い信頼性を誇る点が強みといえます。
三菱電機が製造・提供するリニア搬送システムの名称は「リニアトラックシステム」です。
国内メーカーとして初めて曲線型リニア搬送システムを実現した実績があり、制御技術の蓄積やサポート体制の充実度は他社と比較しても大きなアドバンテージとなっています。
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ベッコフオートメーション / Beckhoff Automation
メーカー名 | ベッコフオートメーション / Beckhoff Automation |
設立年 | 1980年 |
本拠地 | ドイツのヴェストファーレン |
概要 | オートメーション機器メーカー |
ベッコフオートメーション(Beckhoff Automation)は1980年に設立され、ドイツのヴェストファーレンに本拠地を構えるオートメーション機器メーカーです。PCベースのオープンな自動制御技術と、ハードウェア・ソフトウェア・磁力などの専門知識を組み合わせ、独自の技術開発を行う体制が強みとなっています。
このメーカーのリニア搬送システムとして有名なのが「XTS (eXtended Transport System)」です。
非接触給電とリアルタイムデータ通信を実現するNCT(No Cable Technology)技術を搭載しており、他社のリニア搬送システムと比較しても高い拡張性と柔軟性が魅力です。
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ロックウェル オートメーション / Rockwell Automation
メーカー名 | ロックウェル オートメーション / Rockwell Automation |
創業年 | 1903年 |
本拠地 | アメリカのウィスコンシン州 |
概要 | 産業用オートメーションおよびデジタルトランスフォーメーション |
ロックウェルオートメーション(Rockwell Automation)1903年創業でアメリカのウィスコンシン州に本拠地を構える、産業用オートメーションとデジタルトランスフォーメーションを得意とするメーカーです。世界100カ国以上に営業拠点を持ち、約29,000名のサポート要員がグローバルに対応できる点が強みとなっています。
開発・展開しているリニア搬送システムは「iTRAK 5750」という名称です。
最高速度5m/秒の高速搬送を誇るうえに、最大128個のムーバーを制御可能という大規模システムへの対応力が魅力です。他社と比較しても、高い拡張性と大規模ラインへの適応力が際立っています。
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