AUV(自律型無人潜水機)

AUV

AUV(自律型無人潜水機)は、深海や水中での観測・調査・点検を効率化するテクノロジーとして近年注目を集めています。

とはいえ、実際に導入を検討するとなると、選び方や運用方法など不明点が多く戸惑う方も多いでしょう。

そこで本記事では、AUVとは何かやメリット・デメリット、具体的な選定ポイント、さらにはおすすめメーカー情報の比較までを網羅的に解説します。

とりあえず話を聞きながら考えたい方やすぐにメーカーへ問い合わせをしたい方は、以下のボタンからお問い合わせください。担当者におつなぎいたします。

目次

AUVとは? 特徴や活用例などを紹介

AUVとは? 特徴や活用例などを紹介

AUV(Autonomous Underwater Vehicle)とは、自立制御によって水中を観測・調査・点検できる無人潜水機です。

一般的な遠隔操作型のROV(Remotely Operated Vehicle)とは異なり、あらかじめプログラムされたミッションを自動で実行できる点が特徴といえます。

主な活用例としては、海底資源の探索や環境モニタリング、海底パイプライン・インフラの点検などです。

人が潜りにくい深海や危険エリアを観測・調査・点検できる反面、深海での厳しい水圧対策や通信の難しさなど、開発・運用コストが高額になりがちなデメリットも存在します。

次章では、AUVを種類ごとに解説していきます。

形状ごとにAUVの種類を分けてメリット・デメリットを解説

形状ごとにAUVの種類を分けてメリット・デメリットを解説

AUVとひと口に言っても、形状やサイズ、搭載機器などによってさまざまなタイプがあります。代表的な種類をいくつか取り上げ、それぞれのメリット・デメリットを比較しながらご紹介します。

魚雷型AUV

魚雷型は、その名の通り魚雷のような流線型形状をもつAUVです。電力消費と水中での抵抗を最小限に抑えるためにこのような形状となっています。

魚雷型AUVのメリット

  • 流体抵抗が少なく燃費効率が高い
  • 直線性が高く安定した走行がしやすい

魚雷型AUVのデメリット

  • 大型のセンサやカメラを搭載しにくい
  • 詳細な近接作業が難しい場合がある

海底資源の大規模探査など、広いエリアをカバーしたい場面に有効ですが、ホバリングしての精密作業などには不向きです。

水中グライダー型AUV

水中グライダー型は、浮力制御と翼の揚力を組み合わせてゆっくりと浮沈を行いながら、長時間にわたる調査を可能とするAUVです。省エネルギー性が高く、広範囲・長時間の観測に向いています。

水中グライダー型AUVのメリット

  • バッテリー消耗が少なく長時間運用が可能
  • 広域の海洋観測・環境調査が得意
  • シンプルな構造でメンテナンス負荷が比較的低い

水中グライダー型AUVのデメリット

  • 高速航行には向いていない
  • 急激な姿勢変更や低速での精密操作が苦手
  • 搭載可能なセンサや機器が制限される場合がある

持続的な海洋モニタリングには強みがありますが、ピンポイントの調査や素早い移動にはやや不向きです。

多用途型大型AUV

多用途型大型は、大型のセンサやカメラ、ロボットアームなどを装備できる汎用性重視のAUVです。大きな機体に多彩な機器を搭載できるため、海底作業から精密調査まで幅広く対応します。

メリット

  • 比較的高出力なものが多い
  • 深海にも対応しやすい
  • 他種のAUVと比較して複雑な作業をこなせる

デメリット

  • 機体コストが高くなりがち
  • 大型のため回収・メンテナンスに大掛かりな設備が必要
  • 運用には熟練した技術者が求められる

比較的複雑なタスクが求められるケースで力を発揮する一方、導入コストや運用ハードルも相応に高くなる点が課題です。

次章では、内閣府が推進する社会実装に向けたAUV戦略について見ていきましょう。

内閣府が推進する社会実装に向けたAUV戦略とは?

内閣府が推進する社会実装に向けたAUV戦略とは?

2023年12月、内閣府の総合海洋政策本部は「自律型無人探査機(AUV)の社会実装に向けた戦略」を策定しました。この戦略は、海洋開発の省人化や海中の可視化を促進し、国産AUV産業の育成と海外展開を目指すものです。

AUVの開発は「高度な自律性能を持つ大型AUV」「特定用途に特化した実用的なAUV」「コスト効率の高い小型AUV」の三つの類型に分類し、それぞれの特性に応じた技術開発を進めます。

また、産学官連携による開発、実証試験環境の整備、共通基盤技術の構築、運用ガイドラインの策定などを通じて実用化を支援します。

2030年までに、国産AUV産業の確立、海外市場への展開、洋上風力発電や海洋環境モニタリング分野での実用化を目指し、日本の海洋技術分野での国際的な競争力を強化する方針です。

AUVとROVの違いを解説

AUVとROVの違いを解説

AUVは自律航行型で、あらかじめ設定したミッションに沿って自動制御で動くのに対し、ROVは遠隔操作で動かす無人潜水機です。

AUVは通信が届きにくい深海などでも活動を続行できるメリットがある一方、リアルタイムでの操作が難しいというデメリットがあります。

一方、ROVはケーブル経由などで操作を行うため、即時的な制御が可能で精密作業向きです。ただし、ケーブルや通信範囲に制約があるため、遠方の海域や長距離移動には不向きという面もあります。

用途に応じてAUVとROVを使い分けることで、海洋調査・作業の効率や安全性が高まるでしょう。

AUVを選定する際の選び方のポイントを解説

AUVを選定する際の選び方のポイントを解説

AUVの導入時には、運用水深からバッテリー性能、搭載可能なセンサの互換性など、多角的な視点で機種を選定する必要があります。ここでは、特に重要な3つの選び方のポイントを紹介します。

実際の運用深度に対応する耐圧構造と潜航性能

AUVの選び方として、実際の運用深度に対応できる耐圧構造と潜航性能が挙げられます。運用海域の水深や水圧条件、ミッションで求められる深度によって必要とされる構造や性能は変わってくるでしょう。

これを見誤ると、深海での調査中にAUVが破損し、安全性を損なうリスクが高まります。特に、深海生態系の観察や地形調査など、深い海域がメインとなる場合は要注意です。

きちんと耐圧性能を満たしたAUVを選べば、高圧下でも安定した動作を期待でき、結果的に深海調査の成功率を引き上げられるでしょう。

搭載可能なセンサや拡張機器の種類と互換性

続いてAUV選びで重要なのが、搭載できるセンサや拡張機器の種類・互換性です。計測したいデータの精度や種類、使用する研究機関の機器との連携などによって、最適なセンサ構成は変動します。

この点を考慮せずに導入すると、必要な測定ができずに調査の目的を果たせない恐れもあるでしょう。海洋資源探査や環境モニタリングなど、多方面のデータ収集が必要な現場では、特にセンサの互換性チェックが大事です。

適切にセンサを組み込めるAUVを選ぶことで、研究成果の向上や、より精密な海洋データの取得が実現しやすくなります。

バッテリー容量や推進効率など、長時間自律航行できる性能

バッテリー容量や推進効率といった長時間自律航行できる性能も見逃せません。大規模海域の調査や長時間の連続運用が求められるケースでは、航続時間の不足が致命的になるからです。

この点を軽視すると、任務途中で電力が切れて浮上や回収に追われ、予定していた調査が完遂できなくなります。特に充電や補給が簡単にできない遠洋や深海では、AUVのバッテリー性能は優先的に検討すべきです。

逆に十分な稼働時間を確保できるAUVを選べば、一度の出航で広範囲なマッピングや長期的な環境観測がスムーズに行えるでしょう。

AUVの代表的なおすすめメーカー5社を紹介! 各社の特徴を比較して強みを解説

AUVの代表的なおすすめメーカー5社を紹介! 各社の特徴を比較して強みを解説

ここからは、当編集部おすすめのAUVメーカーを5社厳選し、それぞれの特徴や強みを比較します。運用したい環境や目的に応じて、ぜひメーカー選びの参考にしてみてください。

川崎重工業/Kawasaki Heavy Industries

メーカー名 川崎重工業/Kawasaki Heavy Industries
設立念 1896年
本拠地 神戸本社:神戸市中央区東川崎町1-1-3
東京本社:東京都港区海岸1-14-5
概要 船舶、航空宇宙、鉄道車両、エネルギー・環境関連機械などの総合重機メーカー

川崎重工業は1896年創業、神戸市と東京都港区に拠点を構えるメーカーです。潜水艦や深海救難艇の建造などで培われた水中技術が強みとして挙げられます。

同社が開発したAUVに「SPICE(Subsea Precise Inspector with Close Eyes)」があります。

世界初のロボットアーム付きAUVとして海底パイプラインの近接検査ができるのが特長で、他社のAUVと比べ高度な自律制御能力や高い耐環境性能が魅力です。

実際に英国のパイプライン検査会社MODUSへの納入実績があり、仏国のTotalEnergiesと共同で海底パイプライン防食電位計測の実証試験にも成功しています。

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IHI/IHI

メーカー名 IHI/IHI
設立念 1853年
本拠地 東京都江東区豊洲3丁目1-1 豊洲IHIビル
概要 船舶、航空宇宙、エネルギー・環境関連機械などの総合重工業メーカー

IHIは1853年創業、東京都豊洲に本社を持つメーカーで、1990年代からAUVの研究開発に取り組んできた長年の実績があります。

社内試験機として開発したAUVでは、高度な自律航走制御技術と障害物回避機能を実装。他社機種に比べ、豊富なセンサーを搭載した実用的な運用システムが強みです。

防衛省や海上保安庁への納入実績があり、海洋インフラや海底地形の調査など、多岐にわたる業務で利用されています。

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三井E&S造船/Mitsui Engineering & Shipbuilding

メーカー名 三井E&S造船/Mitsui Engineering & Shipbuilding
設立念 1937年
本拠地 東京都港区台場二丁目3番2号
概要 設計エンジニアリングサービス、舶用機器、操船システム、DX・モニタリング、技術支援など」

三井E&S造船は1937年に設立され、東京都台場に本社を構えるメーカーです。海底ケーブルの敷設ルート調査など、AUVを活用した豊富な実績を持っています。

同社が手がけるAUV「r2D4」は、長時間航行や完全無人化の着揚収作業などを視野に入れた先進的な技術開発が特徴的です。

他社と比べて航行時間の延伸や機体の堅牢性に力を入れており、深海での長期的な探査やハードな海洋環境にも対応しやすいでしょう。

海底資源探査から海底パイプラインやケーブル敷設の調査まで幅広く導入されており、海洋インフラの維持管理に貢献しています。

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国立研究開発法人海洋研究開発機構/JAMSTEC

メーカー名 国立研究開発法人海洋研究開発機構/JAMSTEC
設立念 2004年
本拠地 神奈川県横須賀市夏島町2-15
概要 海洋・深海に関する総合研究開発機関

国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、2004年に設立された海洋分野の研究開発機関です。深海探査から海洋生物研究まで多岐にわたるプロジェクトを推進しています。

代表的なAUVは、「うらしま」「ゆめいるか」「じんべい」「おとひめ」です。

「じんべい」は小回りが利き、起伏のある海底熱水鉱床近傍での資源調査が可能で、「うらしま」は高周波音響による高解像度の地形データ取得が可能など、用途に合わせたラインナップが展開されています。

海底資源探査や熱水鉱床調査、海洋環境モニタリングといった学術・産業両面での実績が豊富で、国内外の研究機関とも広く連携しています。

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FullDepth/FullDepth

メーカー名 FullDepth/FullDepth
設立念 2014年
本拠地 茨城県つくば市1-1-1 筑波大学産学リエゾン共同研究センター棟
概要 産業用水中ドローン(ROV/AUV)の開発・製造・販売メーカー

FullDepthは2014年に設立された、水中ドローン(ROV/AUV)技術を中心に事業を展開するスタートアップ企業です。筑波大学発のベンチャーとして誕生し、日本国内の水中ドローン事業をリードしてきました。

同社はROV「DiveUnit300」に自動操縦機能を搭載し、AUVへの進化を目指しています。

比較的軽量で分解しての運搬も可能なため、可搬性に優れているだけでなく、サポートやメンテナンスサービスが優れいている点が特徴です。

ダムや防波堤などの点検業務で導入されており、水中構造物の維持管理や災害対策を支える存在として期待されています。

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