クリーンルームロボット

クリーンルームロボット

クリーンルームロボットは、汚染物質を排除した清潔な作業環境を提供するために、クリーンルーム内で重要な役割を果たす自律的なロボットです。精密機器の製造や医薬品開発、半導体の製造など、高度な清浄度が求められる現場で活躍しています。

しかし、どの製品が自社に最適かを選ぶのは簡単ではありません。この記事では、クリーンルームロボットの基本的な特徴や原理、構造を解説し、さらにはクリーンレベル別の種類や選び方、活用方法について詳しく紹介します。

また、記事後半では、クリーンルームロボットのおすすめメーカー情報の比較も行います。

自社のニーズにぴったりのクリーンルームロボットを見つけ、作業効率と品質向上を実現するための第一歩を踏み出しましょう。

クリーンルームロボットとは?特徴や原理・構造などを解説

クリーンルームロボットとは?特徴や原理・構造などを解説

クリーンルームロボットは、主にクリーンルーム内で稼働する自律的なロボットで、ホコリや汚染物質の少ない環境での作業を前提に製造されています。

クリーンルームとは、微細な粒子や汚染物質が極力排除された作業空間を指し、クリーンルームロボットは、精密機器の製造や研究開発の現場で重要な役割を果たしています。

クリーンルームロボットの構造は、汚染物質の発生を最小限に抑えるために設計が特殊です。例えば、クリーンルームロボット自体の素材が低発塵性であったり、動作中にホコリを生じないように内部の機構が密閉されていることが多いです。

また、動作範囲も限られた空間内での効率的な移動ができるように、位置情報の追跡や障害物を避ける機能が組み込まれています。

クリーンルームロボットの原理は、主に自律的なナビゲーションシステムとセンサー技術に基づいています。

これにより、クリーンルームロボットは作業を正確かつ効率的に行うことができます。また、動作は事前にプログラムされたスケジュールに基づき、24時間体制で活動可能な点も特徴の1つです。

クリーンルームロボットの基本的な情報が分かったところで、次章ではクリーンルームロボットを種類分けします。

自社に合う種類の目星をつけておきましょう。

ISOクラス別で分類して種類ごとに紹介

クリーンレベル別で分類して種類ごとに紹介

クリーンルームロボットが稼働するクリーンルームには、空気中に存在する粒子(汚染物質)の数を基準にした、クリーンレベルが設定されています。

これはISO 14644-1という国際規格に基づいた「ISOクラス」と呼ばれ、Classが小さいほど、よりきれいな部屋になります。

以下では、各クリーンレベルに応じたロボットの特徴を紹介するので、ぜひご一読ください。

Class 1~3: 超高清浄度対応クリーンルームロボット

Class 1~3のクリーンルームは、非常に高い浄度を要求するため、これらに対応するクリーンルームロボットは極限まで低い発塵性が求められます。これらのクリーンルームロボットは、ほとんどの部品において金属や特殊素材を使用し、さらに精密なエアフィルタリングシステムを備えています。

超高清浄度対応クリーンルームロボットのメリット

  • 最も高い浄度を維持し、厳密なクリーンルーム基準を満たす
  • 高度なセンサー技術と制御システムで効率的な作業ができる

超高清浄度対応クリーンルームロボットのデメリット

  • 高コストで、初期投資が大きい
  • 非常に高い精度を必要とするため、メンテナンスが頻繁に必要
  • 高精度ゆえに、導入までの期間が長くなることがある

Class 4~5: 高清浄度対応クリーンルームロボット

Class 4~5のクリーンルームに対応するクリーンルームロボットは、ホコリや汚染物質の発生を最低限に抑えつつ、Class1~3の製品より少し緩い基準でも問題なく作業ができます。これらのクリーンルームロボットは、工場や研究所など、常にクリーンな環境を維持することが求められる場面で活用されます。

高清浄度対応クリーンルームロボットのメリット

  • 比較的高い浄度を確保し、効率的な作業ができる
  • コストパフォーマンスが高く、比較的導入しやすい

高清浄度対応クリーンルームロボットのデメリット

  • 超高清浄度のロボットに比べて、細かな汚染物質の排除が難しい
  • 一部の高精度な作業には向かないことがある

Class 6~7: 中程度の清浄度対応クリーンルームロボット

Class 6~7のクリーンルームロボットは、中程度のクリーンルームに対応しており、比較的広い範囲で活用されます。これらのクリーンルームロボットは、簡単な清掃作業や補助的な作業に特化しており、低価格で導入しやすい点が特徴です。

中程度の清浄度対応クリーンルームロボットのメリット

  • コストが低く、導入が比較的簡単
  • 中程度の浄度要求に適しており、広範囲で使用可能
  • シンプルな構造でメンテナンスが容易

中程度の清浄度対応クリーンルームロボットのデメリット

  • クリーンルームの基準が低いため、精密機器の製造には不向き
  • 汚染物質が完全に排除されない場合がある

Class 8~9: 比較的低い清浄度対応クリーンルームロボット

Class 8~9のクリーンルームロボットは、比較的低い清浄度が求められるクリーンルームでの使用が一般的です。このクラスのクリーンルームロボットは、主に簡単な清掃作業や物品運搬など、他の高クリーン度のロボットに比べて要求される精度が低い作業を得意としています。

比較的低い清浄度対応クリーンルームロボットのメリット

  • 最も低コストで、導入が容易
  • 比較的簡単な清掃作業や運搬作業に適している

比較的低い清浄度対応クリーンルームロボットのデメリット

  • 高い浄度の作業には不向き
  • 精密な作業が求められる環境には対応できない
  • 汚染物質の発生を完全に防ぐことが難しい

自社がどの種類のクリーンルームロボットを選べばよいか検討はついたでしょうか?

次章からは、クリーンルームロボットと他の産業ロボットの違いや、クリーンルームロボットの活用用途を紹介します。ご興味ある方はぜひご覧ください。

他の産業ロボットの違いを解説

クリーンルームロボットと他の産業ロボットの違いを解説

クリーンルームロボットと他の産業ロボットの主な違いは、使用される環境と求められる清浄度にあります。クリーンルームロボットは、清浄度が厳格に管理されたクリーンルーム内で使用されることが多く、そのため、ホコリや汚染物質の発生を極限まで抑える設計が求められます。

一般的な産業ロボットは、汚染の影響が比較的小さい作業環境で使用されることが多いため、清浄度の管理に関してはクリーンルームロボットほど厳しくありません。

また、クリーンルームロボットは動作中に微細な粒子を発生させないための特殊な構造や素材が採用されているのに対し、他の産業ロボットはそのような仕様を持たないことが一般的です。

そして、クリーンルームロボットは、特に精密機器の製造や医薬品の研究など、微細な汚染物質の影響を最小限に抑える必要がある分野で重要な役割を果たします。

一方で、他の産業ロボットは、多様な作業を高速かつ効率的に行うことが求められ、特に大量生産や部品組み立てなどで広く使用されています。

クリーンルームロボットの活用用途を紹介

クリーンルームロボットの活用用途を紹介

クリーンルームロボットの活用用途は広範囲にわたります。以下に代表的な用途を紹介します。

クリーンルームロボットの活用用途

  • 電子機器や半導体の製造
  • これらの製品は高精度で製造されるので、微細なホコリや汚染物質が製品に影響を及ぼすことを防ぐため、クリーンルームロボットが必須です。

  • 医薬品の研究開発や製造
  • 薬剤やワクチンの製造には、微細な汚染物質を排除することが重要であり、クリーンルームロボットの高い清浄度維持能力が活躍します。

  • 食品業界
  • 特に高度な清浄度が求められる製品の製造ラインでは、クリーンルームロボットが効率的に清掃作業を行い、品質を保証します。

このように、クリーンルームロボットはさまざまな産業で使用され、作業効率の向上とともに、清浄度を維持するために欠かせない存在となっています。

ここまで、クリーンルームロボットについて網羅的に解説しましたが、実際に製品を選ぶときにはどの様に選定するのが良いのでしょうか?

次章では、そんな疑問に答えるべく、クリーンルームロボットの選び方を解説します。

各社に合わせたクリーンルームロボットを導入するための選び方を解説

各社に合わせたクリーンルームロボットを導入するための選び方を解説

クリーンルームロボットは、自社に適したものを選べないと、生産効率を下げるどころか、そもそも使えないという可能性もあります。そのため、本章を読み、自社に合ったクリーンルームロボットを選べるようにしてください。

クリーンレベルに適した製品を選定する

まず解説するクリーンルームロボットを選ぶ際の基本的な選定ポイントは、対象となるクリーンルームのクリーンレベルに適したロボットを選定することです。

この選び方は、クリーンルームで求められる清浄度や作業内容に加え、クリーンルームロボットが備える清浄性能、例えばHEPAフィルターの有無などの要素によって左右されます。

仮に適合しないクリーンルームロボットを導入してしまうと、発塵などによって汚染リスクが高まり、製品や研究プロセスの品質が損なわれる可能性があります。

特に高度な清浄度が求められる半導体製造や医薬品開発などの現場では、この選び方の重要性が高くなるでしょう。

適正なクリーンルームロボットを選ぶことで、清浄度を確保しながら高品質な製品を維持することができ、作業環境全体の安全性や信頼性を高めることにつながります。

耐久性とメンテナンス性を考慮して選定する

クリーンルームロボットの選定ポイントとして、使用環境における耐久性や日常的なメンテナンスのしやすさも大切です。

この点は、ロボット本体の材質や設計、使用されている部品の耐久性、そしてメンテナンス作業の手間に直結する構造などが影響します。

もし、メンテナンス性の低いクリーンルームロボットを選んでしまうと、稼働中のトラブルや故障が頻発し、結果としてクリーンルームの清浄状態を維持できなくなるリスクがあります。

定期的な運用が求められる製造現場や、長時間稼働させるクリーンルーム環境では、特にこの選び方が業務の継続性に直結するでしょう。

日常的なメンテナンスがしやすいクリーンルームロボットを選ぶことで、運用上のダウンタイムを最小限に抑えつつ、長期的な安定稼働とコスト削減を両立することができます。

自動化機能を備えた製品を選ぶ

クリーンルームロボットの選び方として、自動充電や自己診断などの自動化機能を備えているかどうかを評価することも有効な判断基準です。

これは、作業の自動化に対する現場のニーズや、ロボットに搭載されたAI、センサー、通信機能といったスマート技術の実装度によって左右されます。

仮にこうした自動化機能が不十分なクリーンルームロボットを選んでしまうと、オペレーターが都度操作や監視を行う必要があり、人的リソースの浪費や作業効率の低下につながります。

特に、複数のクリーンルームを並行して運用している場合や、人手が限られている現場では、自動化の有無が業務効率に影響を与えるでしょう。

自動化機能に優れたクリーンルームロボットを選ぶことで、オペレーターの負担を軽減し、作業の一貫性やミスの低減、ひいては生産性の向上を実現することが可能になります。

次章では、クリーンルームロボットのおすすめメーカー情報を比較します。貴社のメーカー選びの参考にして下さい。

おすすめのクリーンルームロボットメーカーを比較!各社の強みも解説

おすすめのクリーンルームロボットメーカーを比較!各社の強みも解説

本章では、代表的なクリーンルームロボットメーカーの中でも、当編集部おすすめの5社をピックアップして比較します。

不二越 / NACHI-FUJIKOSHI

メーカー名 不二越 / NACHI-FUJIKOSHI
設立年 1928年
本拠地 東京都港区
概要 総合機械メーカー

不二越は、1928年設立の東京都港区に本拠を置く総合機械メーカーであり、機械工具やロボット、機能部品など幅広い製品を手掛けています。材料から製品までを一貫して生産できる体制を強みとしており、特殊鋼の高品質化や自動化技術に基づく独自開発力が高く評価されています。

同社のクリーンルームロボットには「ST-C/SC-Cシリーズ」や「SJシリーズ」などがあり、いずれも発塵抑制技術に優れた設計が施されています。

特にフラットパネルディスプレイ製造など、極めて高い清浄度が要求される環境での使用を前提としており、他社のクリーンルームロボットと比較しても清浄性と高精度搬送の両立に優れています。

半導体製造業やフラットパネルディスプレイ製造業において導入が進んでおり、高精度かつクリーンな搬送が求められる工程で活躍しています。

安川電機 / Yaskawa Electric

メーカー名 安川電機 / Yaskawa Electric
設立年 1915年
本拠地 福岡県北九州市
概要 産業用ロボット・自動化機器メーカー

安川電機は、1915年設立の福岡県北九州市に本社を構える産業用ロボットおよびモーションコントロール技術に強みを持つ自動化機器メーカーです。内製化された部品による高性能かつ柔軟なカスタマイズ性を特徴としており、多様なニーズに対応できる製品ラインナップを展開しています。

クリーンルームロボットとしては「SEMISTAR-GEKKO MD124D」シリーズを展開しており、DDモータを採用することで振動を抑えつつ減速機不要の高精度搬送を実現しています。

他メーカーのクリーンルームロボットと比べ、ウェハ搬送や精密工程における制御性能と安定性に優れている点が特長です。

主に半導体製造業に導入されており、ウェハの搬送から成膜・エッチング工程まで幅広く対応可能で、近年では医療分野や食品製造業への展開も進んでいます。

ヤマハ発動機 / Yamaha Motor

メーカー名 ヤマハ発動機 / Yamaha Motor
設立年 1955年
本拠地 静岡県磐田市
概要 輸送機器・産業用ロボットメーカー

ヤマハ発動機は、1955年設立、静岡県磐田市に本社を構える輸送機器と産業用ロボットを手掛けるメーカーで、高い技術力とモビリティ技術を活かした独自のソリューションに強みがあります。

同社のクリーンルームロボットとしては「YK-XEC」シリーズがあり、ISO Class4の清浄度に対応した設計で、精密な環境においても安定した動作が可能です。

クリーン度と可搬性能のバランスに優れており、特に医療機器や半導体製造のような高い精度とクリーン性が求められる分野で信頼性の高い選択肢となっています。

導入先としては、半導体やハードディスク製造、食品業界、医療機器関連工場など多岐にわたり、省人化や品質管理の強化といった効果が実証されています。

デンソーウェーブ / DENSO WAVE

メーカー名 デンソーウェーブ / DENSO WAVE
設立年 1976年
本拠地 愛知県知多郡
概要 産業用機器・ロボットメーカー

デンソーウェーブは1976年に設立され、愛知県知多郡に本社を構える産業用ロボットと制御機器の専門メーカーです。自動車業界で培った高品質基準と信頼性を製品設計に反映しており、厳しい環境下でも安定稼働が可能なロボット開発力に定評があります。

代表的なクリーンルームロボットには「VSシリーズ」や「VP-G2」があり、ISO Class5対応に加えて過酸化水素ガスやUV照射といった滅菌環境下でも使用可能な設計が施されています。

他社製品と比較して滅菌耐性に優れており、クリーン性と耐薬品性を両立したクリーンルームロボットとして、医療・製薬業界での採用が進んでいます。

調剤や創薬といった工程のほか、食品業界や自動車部品製造でも導入されており、作業の効率化と異物混入・作業者被曝リスクの軽減に貢献しています。

ジェーイーエル / JEL

メーカー名 ジェーイーエル / JEL
設立年 1993年
本拠地 広島県福山市
概要 半導体搬送ロボットメーカー

ジェーイーエル(JEL)は1993年に設立され、広島県福山市に本社を置く半導体および液晶ガラス基板搬送ロボットに特化したメーカーです。これまでに蓄積された豊富なノウハウと実績により、精密搬送分野において高い専門性を誇ります。

同社が提供するクリーンルームロボットには「SCRシリーズ」や「FTVHRシリーズ」があり、真空環境下でも安定した高精度搬送が可能な設計が特徴です。

特に真空対応技術に優れており、他のメーカーのクリーンルームロボットに比べてクリーンルーム内での精密搬送用途における適応力に優れています。

半導体製造や液晶パネル製造など、微細な粒子管理と精密な搬送が同時に求められる現場で多数採用されており、プロセス全体の品質向上に貢献しています。