塗布ロボット

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塗布ロボットとは、接着剤やシーラント、潤滑剤などの液体・粘性材料を高精度で塗布する産業用ロボットです。自動車・電子部品・家電など幅広い業界で導入が進み、各工程に応じた選び方が重要とされています。

本記事では、塗布ロボットの特徴や活用事例を踏まえ、用途別のおすすめ機種やメーカーを比較しながら解説。さらに、卓上型と据付型の違いや、導入時に知っておきたいメリット・デメリットも詳しく紹介します。

塗布工程の品質向上や自動化を検討する方に向けた塗布ロボットの選び方ガイドなので、特に今回初めて塗布ロボットの導入を検討されている方はぜひご一読ください。

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目次

塗布ロボットとは? 特徴や活用例などを解説

塗布ロボットとは?

塗布ロボットとは、液体や粘性材料を目的の形状や位置に正確に塗布するために設計された産業用ロボットです。主に自動車部品のシールや家電・OA機器の接着、パッケージ分野での封止工程など、多種多様な分野において活用されます。

近年では高精度化や多軸制御技術の進歩により、より微細な塗布ラインや厳密な吐出量コントロールが可能になってきています。

塗布ロボットの特徴のひとつは、塗布する材料の粘度や性質に合わせてノズルやディスペンサーを柔軟に組み替えられる点です。多関節ロボットやXYZロボット、スカラロボットなど様々なロボットと組み合わせることで、特定の工程や製品形状に合わせた最適解を導くことができます。

活用例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 自動車ドアやガラス、各種パネルへのシーリング工程
  • 電子部品基板への接着剤や封止材の塗布
  • 樹脂パーツ、メカ部品の潤滑工程
  • 家電・OA機器の防水シールや接着工程

より高度な塗布ニーズに応えるため、ロボットメーカーやディスペンサーメーカー各社が新技術の開発を進めています。

次の章では、塗布ロボットを塗布する液体・粘性材料ごとに分類し、それぞれの特徴と注意点を詳しく解説します。

塗布する液体・粘性材料ごとに塗布ロボットの種類を解説

粘性材料ごとに塗布ロボットの種類を解説

塗布ロボットは、使用する材料によって求められる制御や構造が異なります。粘度や硬化時間、塗布パターンなどの要求仕様に合わせて、どのロボットと組み合わせるかを検討することが重要です。ここでは代表的な液体・粘性材料である接着剤、シーラント、潤滑剤に焦点をあて、それぞれの塗布ロボットの特徴を紹介します。

接着剤塗布ロボット

接着剤塗布ロボットは、エレクトロニクス分野の基板や小型部品、家電の筐体など、狭いスペースへの高精度塗布が求められる場面で活躍します。接着剤の粘度や硬化特性によって糸引きやムラが発生しやすいため、吐出量や塗布速度の制御が重要です。

一般的にはXYZロボットやスカラロボットなど、比較的狭いエリアを高速・精密に動作できるタイプと組み合わせることが多いです。多関節ロボットを使用するケースもありますが、基板やフラットなワークが中心の場合は水平面の動作が得意なロボットが選ばれやすい傾向にあります。

接着剤塗布ロボットの特徴

  • 繰り返し精度が高く、狭い箇所への塗布が容易
  • 硬化条件に合わせて塗布速度を調整しやすい
  • はみ出しやムラを極力抑え、製品品質を高められる

接着剤塗布ロボットの注意点

  • 高粘度接着剤の場合、ノズルや駆動部の詰まりに注意が必要
  • 糸引きの発生対策や温度管理など、周辺装置が必要
  • 基材や接着剤の種類によっては洗浄や硬化時間に制約がある

シーラント塗布ロボット

シーラント塗布ロボットは、自動車の車体やドア、建築資材の防水加工、家電部品のシール工程など、大面積で高粘度な材料を扱う場面で用いられます。シーラントは弾性が強く、高粘度である一方で厚みを均一に保つ必要があるため、ディスペンサーの圧力制御技術と安定したロボット動作が不可欠です。

複雑な曲面や大型ワークに対応するため、多関節ロボットを組み合わせるケースがよく見られます。湾曲部分や高さ方向の変化が大きい場合でも、関節数が多いロボットであればスムーズに塗布可能です。

シーラント塗布ロボットの特徴

  • 粘度の高い材料でも一定ライン幅の塗布が可能
  • 湾曲面や凹凸がある大型ワークでも隙間なくシールしやすい
  • 塗布厚みを均一にでき、製品の性能(防水・気密)を向上

シーラント塗布ロボットの注意点

  • 材料の粘度管理やノズル詰まり対策が必要
  • 多関節ロボットを使う場合、システムコストが高くなる
  • 塗布後の硬化時間や表面仕上がりを考慮する工程設計が必要

潤滑剤塗布ロボット

潤滑剤塗布ロボットは、機械部品や駆動ユニットへのオイルやグリースを精密に塗布する用途で使われます。部品同士の摩耗を防ぎ、製品寿命を延ばすことが目的ですが、塗布点が多岐にわたる場合にはロボットによる自動化が効果的です。

潤滑剤は飛散しやすいものから高粘度のグリースまで様々な種類があり、ノズルや吐出制御が重要になります。狭いスペースや多点塗布が必要な場合はスカラロボットやXYZロボットが選ばれやすく、大型機構部品では多関節ロボットを用いることもあります。

潤滑剤塗布ロボットの特徴

  • 微量吐出の制御がしやすく、過剰塗布や塗布漏れを防止
  • 多点に渡る注油でも位置ズレしにくい
  • ノズル交換などで各種粘度に対応可能

潤滑剤塗布ロボットの注意点

  • 粘度や油の種類ごとにノズルや吐出条件の最適化が必要
  • 装置が狭い場合、可動範囲に制限が出る
  • 飛散しやすい潤滑剤の場合、環境対策が必要

これらの材料特性を理解し、それに応じたロボットと周辺機器を選ぶことで安定した塗布が期待できます。

次の章では、塗布ロボットと卓上塗布ロボットの違いをさらに詳しく見ていきます。

塗布ロボットにおける据付型と卓上型の違い

据付型と卓上型塗布ロボットの違い

塗布ロボットには、多関節ロボットなどの産業用ロボットへの据付型と、卓上型に分けることができます。目的・塗布材料・ワークサイズを踏まえ、適切な選定が重要となります。

卓上型塗布ロボットの特徴

卓上型型塗布ロボットは、小型・軽量な構造で作業台に設置可能な塗布装置です。主にXYZ型の小型モデルが使われ、小さな部品や少量多品種の製品に対する精密塗布に適しています。

適用例としては、電子部品やセンサ、微細な筐体部品への接着剤・シール材の点塗布があります。研究開発、試作、修理部門など、柔軟性と簡易性が求められる現場でよく使用されます。

据付型塗布ロボットの特徴

据付型の塗布ロボットは、多関節型や大型XYZ型、スカラ型などが含まれ、生産ラインへの組み込みを前提としています。大型製品や複雑な形状への塗布に適しており、工程自動化や高い再現性を実現できます。

塗布範囲が広い、または多角度からの塗布が必要な場面で採用されることが多く、シーラントの塗布や車載部品への防水加工などが代表的な用途です。

比較と使い分けのポイント

卓上型は省スペースかつ柔軟な運用が可能で、導入コストも比較的抑えられますが、ワークサイズや塗布範囲に制約があります。

一方、多関節ロボットなどへの据付型は高精度・高粘度材料の塗布にも対応できますが、初期コストやシステム構築の負荷が高くなります。

ここまで、据付型と卓上型の違いについて言及しました。次の章では、これらの違いを踏まえたうえでの「塗布ロボットの選び方」について解説します。

塗布ロボットの選び方ガイド|工程トラブルを防ぐ3つの視点

塗布ロボットの選び方

塗布ロボットを導入・検討する際、製品仕様や価格だけで選んでしまうと、工程トラブルや歩留まり悪化につながるリスクがあります。ここでは、製造現場の目的や課題に応じて最適なロボットを選定するための3つの重要な視点をご紹介します。

材料粘度に適した吐出方式の選定が精度と効率を左右する

塗布ロボットの選定において、まず押さえるべきポイントは、使用する材料の粘度帯に適した吐出方式(ニードル点滴・ジェット・エアスプレーなど)を選ぶことです。

この選定は、材料の粘度変動幅や要求される膜厚の許容差、さらには目標とする塗布スピードといった要因に左右されます。

もしこの選定を誤ると、シミの発生や未充填といった不具合が頻発し、再塗布や手直しが常態化してしまいます。特に、高粘度接着剤と低粘度の溶剤系を同じラインで取り扱う多品種生産の現場では、この選定が工程の安定性に直結します。

適切な方式を選ぶことで、一度の塗布で規格通りの膜厚を再現できるようになり、試作回数や材料のロスを削減できるというメリットが得られるでしょう。

硬化性材料には自動ノズル洗浄機構が必須

硬化性材料を扱う塗布工程においては、自動ノズル洗浄やクイック交換機構を備えたロボットの選定が重要なポイントとなります。

この選定は、使用する樹脂の硬化時間や装置の連続稼働時間、さらには夜間の無人運転の有無といった運用条件によって左右されます。

こうした機構が備わっていないロボットを使ってしまうと、ノズルの固着が原因でラインが停止し、結果として緊急保全が頻発してしまいます。特に、UV硬化型や瞬間接着剤を24時間体制で塗布する電子部品の生産工程では、停止リスクがそのまま生産性の低下につながるため、事前の対策が不可欠です。

自動洗浄機構付きのロボットを導入することで、夜間の無人シフト中でも安定した稼働が可能となり、設備全体の稼働率を高い水準で維持することができます。

微細な塗布には温湿度制御付きエンクロージャがカギを握る

塗布精度が重要な製造工程では、温度・湿度制御付きのエンクロージャ一体型ロボットを選定することが成功のカギとなります。

この選び方は、材料の温度依存性や季節ごとの温度差、さらにミクロン単位でのライン幅の精度が求められる製品仕様によって決まります。

もし環境制御が不十分な状態で運用すると、粘度の変動によって塗布幅がズレやすくなり、それが原因でマスクの位置ずれや短絡といった重大な品質トラブルを招く恐れがあります。特に、クリーンルーム内で微細なコーティングを行う半導体パッケージングのような工程では、こうした環境の安定性が不可欠です。

温湿度制御付きのロボットを導入することで、一年を通じて常に一定の条件下で塗布が可能となり、検査工程でのNG品流出を抑えることができるようになります。

ここまで、工程トラブルを防ぐために塗布ロボット導入前に確認しておいた方がよい3点を解説しました。次の章では、塗布ロボットを提供している有力メーカーを紹介します。

塗布ロボットの有力なメーカー

本章では、製品特徴や導入実績を交えて、有力メーカーを紹介します。自社の要件に合ったロボットを選ぶうえで、メーカーごとの比較は欠かせないため、ぜひご一読ください。

安川電機 / YASKAWA Electric

メーカー名 安川電機 / YASKAWA Electric
設立年 1915年
本拠地 福岡県北九州市
概要 産業用ロボット、サーボモータ、インバータなどメカトロニクス製品の総合メーカー

安川電機は、1915年に設立され、福岡県北九州市に本拠地を置く産業用ロボットやサーボモータ、インバータなどを扱う総合メカトロニクスメーカーです。サーボモータや制御技術で世界トップシェアを誇る点が強みとなっています。

「MOTOMAN-GPシリーズ」は、塗布ロボットとしても運用されることの多い産業用ロボットのひとつです。高い精度とスピードでの塗布が可能なモデルとして評価されています。自社開発のサーボモータ・制御技術を活用することで、塗布量やロボットの軌跡を高精度に制御できる点も特徴です。

実際に自動車産業や電子・半導体産業など、幅広い分野で導入されており、塗布ロボットメーカーを探す際のおすすめ候補のひとつと言えます。

KUKA / クーカ

メーカー名 KUKA / クーカ
設立年 1898年
本拠地 ドイツ・バイエルン州
概要 自動化ソリューションと産業用ロボットの世界的リーディングカンパニー

クーカは1898年設立の、ドイツのバイエルン州に本拠地を構える自動化ソリューションと産業用ロボットのリーディングカンパニーです。世界有数の垂直多関節ロボットを多彩にラインナップしており、高いカスタマイズ性が強みとなっています。

据付型塗布ロボットとして使用される産業用ロボットは「KR AGILUSシリーズ」が代表的で、狭いスペースでも柔軟に動作できるのが特徴です。Dürr社との共同開発による塗装装置一体型のパッケージ「ready2_sprayソリューション」は、短期間での導入が可能となり、迅速な立ち上げに寄与する点が魅力です。

自動車産業、電子機器、木工など、多種多様な分野で導入が進んでおり、塗布ロボットメーカーの比較検討をする際におすすめの企業と言えるでしょう。

川崎重工業 / Kawasaki Heavy Industries

メーカー名 川崎重工業 / Kawasaki Heavy Industries
設立年 1896年
本拠地 兵庫県神戸市
概要 陸・海・空の輸送機器から産業ロボットまで手掛ける総合重工業メーカー

川崎重工業は、1896年設立の総合重工業メーカーで、兵庫県神戸市を拠点に陸・海・空の輸送機器や産業機械などを幅広く展開しています。各事業部門で培った技術を統合できる総合力と高い技術力が魅力です。

塗布ロボットに使用される産業用ロボットには「BUシリーズ」が挙げられます。7軸構造やロングリーチ設計により、広範囲かつ複雑な塗布作業を実現できる点が特徴です。

主に自動車産業や電機・電子分野で活用されており、塗布ロボットメーカーを探す際には押さえておきたいおすすめ企業のひとつです。

以上、おすすめの塗布ロボットメーカーを紹介しました。ここまで読み進めて、さらに詳しいことを知りたい方は以下のボタンよりJET-Globalに問い合わせてみてください。専門家にお繋ぎします。

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