コンクリート床仕上げロボット
建設現場の人手不足や作業の効率化が求められる中、コンクリート床仕上げロボットは次世代の施工を担う注目の技術です。
「ロボットで本当に仕上がりがきれいになるの?」「導入コストや選び方がわからない」——そんな不安や疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
本記事では、コンクリート床仕上げロボットの基本から、導入によるメリット、課題、選び方、そしておすすめメーカーまで、初めての方にも分かりやすく網羅的に解説しています。
さらに、最新の技術動向や今後の展望までを深掘りしており、現場導入を検討している方にとって、実践的な知識が得られる内容となっています。
目次
コンクリート床仕上げロボットとは? 特徴と歴史を解説
コンクリート床仕上げロボットとは、建築現場で打設されたコンクリートの床面を、自動的に「均し(ならし)」や「締め固め(しめかため)」などの仕上げ作業を行うために設計された施工用ロボットのことです。
従来は職人が手作業や手押し機械で行っていた工程を、コンクリート床仕上げロボットが自律的にまたは半自動的にこなすことで、仕上がりの均一性を保ちながら作業時間を短縮できる点が特徴です。
コンクリート床仕上げロボットは、物流倉庫・工場・商業施設・橋梁の床版施工など、広範囲にわたるフラットなコンクリート床が求められる現場で活用されています。
近年は、レーザーセンサーやGPS、AI制御などの技術が組み合わさることで、より高精度で安定した施工が可能になり、省人化や現場の生産性向上を支える重要なツールとして注目を集めています。
コンクリート床仕上げロボットの歴史
コンクリート床仕上げロボットは、コンクリート打設後の仕上げ工程を自動化するために開発された専門性の高い建築ロボットです。
その原型となる考え方は、1980年代後半に試作された自走型床仕上げロボット(例:住友建機の SURF ROBO)に端を発し、1990年代には乗用型パワートロウェルや自走型スクリードマシンといった機械化施工機が普及して作業効率化が進みました。
さらに、AI 制御やレーザーガイドを備えた完全自律動作のロボットとしての進化は 2010年代に本格化し、大成建設の「T-iROBO® Slab Finisher」(2016 年公開)などが商用導入されています。
特に海外では、アメリカや欧州を中心に、物流施設や大型倉庫など、広大な床面積のコンクリート仕上げが求められるプロジェクトで、人手不足や品質の安定化のニーズから、コンクリート床仕上げロボットの実用化が進みました。
代表的な機種としては、レーザーガイド付きの自動スクリードロボットや、センサーで床面高さを検出しながら作業する走行型ロボットなどが登場しています。
日本においては、2010年代後半から複数の建設会社や機械メーカーがコンクリート床仕上げロボットの導入・開発に取り組み始めました。
現場での省人化や技能継承の課題を背景に、国内で独自設計されたモデルも登場し、2020年代に入ると、現場実証・本格導入のフェーズへと移行しています。
国土交通省のi-Construction施策の一環としても注目されるなど、ICT建機と連携した施工モデルの中で、コンクリート床仕上げロボットは今後ますます重要性を増していくでしょう。
このように、コンクリート床仕上げロボットは、単なる施工機械の延長ではなく、「精密な床仕上げ」と「現場自動化」という2つのニーズを同時に満たす新しい施工ロボットとして進化を続けています。
コンクリート床仕上げロボットの特徴
現在のコンクリート床仕上げロボットは、自動走行・水平検知・スクリード仕上げといった複数の機能を搭載し、プログラムやセンサーによって施工精度を保ちながら作業を進めることができます。
また、モデルによってはレーザーガイドやGPS、さらには自動補正機能が組み込まれており、大規模な施設や高精度が要求される現場で高い評価を得ています。
最新モデルではAI制御や遠隔操作システムとの連携も進んでおり、現場のデジタル施工(DX)と統合された運用が可能です。
これにより、より高い品質と効率を両立する次世代の施工技術として注目されています。
このように、コンクリート床仕上げロボットは現代建設業のニーズに応える先進技術として進化を続けています。
次は、その導入によって得られる具体的なメリットについて見ていきましょう。
導入によって期待されるコンクリート床仕上げロボットのメリット
コンクリート床仕上げロボットの導入は、施工現場に多くのメリットをもたらします。
魅力の一つとして挙げられるのは「作業の効率化」と「品質の安定化」です。
また、重労働を機械が担うことで、作業者の身体的負担が軽減され、現場の安全性も向上します。
データを活用することで施工の履歴管理も確保され、品質保証にも寄与します。
このように、施工現場全体の生産性と働き方を改善する手段として、導入効果は大きいと言えるでしょう。
ただし、注意すべき課題もいくつかあります。
次のセクションでは、コンクリート床仕上げロボットの課題について解説します。
コンクリート床仕上げロボットの課題
コンクリート床仕上げロボットの導入には、いくつかの課題も存在します。
特に初期導入コストや運用ノウハウの不足がハードルです。
また、故障やトラブルが発生した際の対応体制や、既存の施工フローとの整合性も無視できません。
特に中小規模の建設会社では導入に踏み切れないケースも多く見られます。
これらの課題にどう対処していくかが、今後の普及拡大における鍵となるでしょう。
3つのポイントを解説! コンクリート床仕上げロボットの選び方
コンクリート床仕上げロボットを導入する際には、プロジェクトの内容や現場の条件に応じて最適なモデルを選定する必要があります。
ここでは、選定時にとくに意識すべき3つのポイントを紹介します。
床面の仕上げ精度に応じたロボット選定
コンクリート床仕上げロボットの選定ポイントの1つ目は、床面の仕上げ精度に応じたロボット選定です。
この選定は、コンクリートの打設状態や、求められる作業精度に応じてコンクリート床仕上げロボットの性能を見極める必要があります。
精度が低いコンクリート床仕上げロボットを選んでしまうと、床面が不均一になり、見た目だけでなく構造的にも問題が生じる恐れがあります。
とくに高精度が求められる施設や、床仕上げの美観が重視される現場では、この点を重視するべきでしょう。
精度の高いコンクリート床仕上げロボットを選ぶことで、均一で美しい床面仕上げが実現し、作業の品質が向上するため、全体の施工精度に寄与します。
作業環境に適したコンクリート床仕上げロボットの選定
次に注目すべき選定ポイントは、作業環境に適したコンクリート床仕上げロボットの選定です。
現場の広さ、障害物の有無、通路の幅など、施工環境によって適したロボットの形状や機動性は変わります。
環境に合っていないコンクリート床仕上げロボットを使用すると、狭い場所での取り回しが難しくなり、結果的に作業効率が落ちてしまうことがあります。
とくに広い敷地での作業や、柱や壁などの障害物が多い現場では、この要素が重要です。
環境に適したコンクリート床仕上げロボットを選ぶことで、作業の効率化が進み、現場のスムーズな進行が可能となるため、全体の工期短縮にも貢献します。
メンテナンスのしやすさを重視した選定
もう一つの重要な観点は、メンテナンスのしやすさを重視した選定です。
コンクリート床仕上げロボットの構造やパーツの取り外しやすさ、さらにはメーカーのサポート体制などが、メンテナンス性に影響を与える要素です。
もしメンテナンスが複雑だったり、修理が困難なモデルを選んでしまうと、故障発生時に長期間の稼働停止を余儀なくされることがあります。
特に、ロボットを継続的に使用する中長期のプロジェクトでは、メンテナンス性の良し悪しが施工計画に直接響きます。
メンテナンスの容易なコンクリート床仕上げロボットを選ぶことで、ダウンタイムを最小限に抑え、長期間安定した運用が可能になるため、現場管理者にとっても安心材料となるでしょう。
以上のように、選定時には現場条件や運用体制を総合的に考慮し、目的に合致したコンクリート床仕上げロボットを選ぶことが成功への第一歩です。
次に、技術の進化と業界の変革を中心に、コンクリート床仕上げロボットの未来展望を見ていきます。
コンクリート床仕上げロボットの未来展望
今後、コンクリート床仕上げロボットは AI やIoTといった最先端技術と融合し、さらなる進化を遂げると期待されています。
施工現場のスマート化・自動化が進む中で、ロボットは重要な役割を担う存在になるでしょう。
AI・IoT 技術との融合
AI と IoT を活用して現場データ(温度・強度・位置情報など)をリアルタイムに取得・分析し、施工判断を高度化する研究・試験導入が進んでいます。
例えば無線マチュリティセンサーSmartRock® や ConcreteDNA は、コンクリートの温度・成熟度をクラウドへ送信し、AI が強度を即時推定する仕組みを商用提供しています。
現状の限界
取得した硬化データを直接トリガーにして床仕上げロボットが自律的に起動する商用システムは、2025年時点では報告されておらず、大学・企業による研究段階にとどまっています。
完全自律連動は「今後の開発テーマ」と位置づけるのが正確です。
スマート施工の拡大と役割変化
大手ゼネコンのスマート生産ビジョンでは、コンクリート床仕上げロボットNEW コテキング®(AI 制御搭載)をはじめとするロボット群を中核技術 として位置づけ、人・ロボット協働による生産性向上を掲げています。
また、国際的な調査でも「施工自動化は今後10年で主流技術になる」と分析されており、建設業界全体で採用が加速する見込みです。
技術者の職域シフト
コンクリート床仕上げロボットの導入が進むと、現場技術者は作業からマネジメント/設定・運用といった知的労働へ役割が移行すると指摘されています。
高負荷作業の軽減と、デジタル技術による技能継承が並行して進むことが期待されます。
ここまでで、コンクリート床仕上げロボットの将来像を概観しました。次は、主要なコンクリート床仕上げロボットメーカーについて詳しく解説しますので、引き続きご覧ください。
おすすめのコンクリート床仕上げメーカーを紹介
コンクリート床仕上げは、技能者不足を補いながら高品質な床面を確保できる建設技術です。ユーザーが比較検討しやすいよう、主要なメーカーの特徴と導入事例を整理します。
※JET-Globalの問い合わせフォームに遷移します。
※一部メーカーとは提携がない場合がありますが、ユーザー様に最適なご案内ができるよう努めています。
大成建設 / Taisei Corporation
メーカー名 | 大成建設 / Taisei Corporation |
設立年 | 1917年 |
本拠地 | 東京都新宿区西新宿1-25-1 |
概要 | 総合建設会社 |
大成建設は、1917年設立の老舗ゼネコンで東京都新宿区に本社を構える総合建設会社です。
同社は建築ロボットの旗艦ブランド「T-iROBO®」シリーズを軸に現場実証を重ね、省人化と品質向上を両立させる技術を蓄積します。
代表機種T-iROBO® Slab Finisherは遠隔リモコンとバッテリー駆動を採用し、コテ回転数20-150 rpmや角度可変機能でアマ出しから最終仕上げまでを1台でこなします。
このコンクリート床仕上げロボット重量約100 kgの軽量ボディと17 %のCO₂削減効果で、屋内外問わず柔軟に活躍できる点が特徴です。
複数の建設現場で導入が進み、床仕上げ作業の省力化に寄与しています。
鹿島建設 / Kajima
メーカー名 | 鹿島建設 / Kajima |
設立年 | 1930年(創業1840年) |
本拠地 | 東京都港区元赤坂1-3-1 |
概要 | 総合建設会社 |
鹿島建設は、1930年に設立された東京都港区に本社を置く大手ゼネコンです。
ICTとロボットの融合に注力し、土間工の負担軽減を目的とした自動化技術を研究します。
同社のコンクリート床仕上げロボットの製品はNEW コテキングといい、タブレットに面積を入力するだけでクローラ走行による全自動仕上げが可能です。
同製品の特徴は、最大700 m²/時の処理能力とバッテリー3時間連続稼働で大面積床にも対応する点です。
徳島県の四国横断自動車道吉野川大橋工事ヤードで実用化され、省力化効果を確認しています。
三和機材 / Sanwa Kizai
メーカー名 | 三和機材 / Sanwa Kizai |
設立年 | 1955年 |
本拠地 | 東京都中央区八丁堀1-9-8 |
概要 | 建設用産業機械メーカー |
三和機材は1955年設立の建設機械メーカーで、東京・八丁堀に本社を構えます。
基礎機械で培った設計力を活かし、床仕上げ作業を自動化するロボットシリーズを提供します。
代表機種Surf Robot/DB Robot/Screed Robotは逆回転コテやレーザー基準制御を搭載し、ならし・締固め・打設を分担して効率を高める点が特徴です。
このコンクリート床仕上げロボットは 低騒音設計と連続仕上げ機構により屋内施設でも安定した品質を確保します。
同製品は、倉庫や工場を含む広面積コンクリート床の施工を想定して開発されており、レーザー基準制御や逆回転コテ機構によって熟練職人に頼らず高品質かつ省力化施工を目指しています。
フロアエージェント / Floor Agent
メーカー名 | フロアエージェント / Floor Agent |
設立年 | 2006年 |
本拠地 | 東京都足立区六町4-7-3 |
概要 | 床施工・ロボット開発 |
フロアエージェントは2006年設立の床施工会社で、足立区を拠点に機械化施工を推進します。
現場起点の開発姿勢から、再振動締固めを自動化する独自技術を確立します。
主力のコンクリート床仕上げロボットである、リバイブロボはボタン一つで均しと締固めを行う126 kgの電動タンパー型ロボットです。
同製品は3倍振動数と軽量モジュール構造で省エネかつ高機動な施工を実現します。
物流倉庫(海老名市)や工場(ふじみ野市)など全国のLCS工法現場で導入されています。
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