穴あけロボット
製造業では効率化や人手不足が課題です。特に穴あけ工程の自動化ニーズは高く、ロボット導入に期待が寄せられています。
しかし、情報不足では最適なロボットを選定できず、導入が失敗に終わるリスクがあります。
そこで本記事では、ロボットの基本から選定ポイント、信頼できるメーカーまで網羅的に解説。
読了後には、貴社に最適な一台を見つけ、生産性向上とコスト削減への具体的な道筋が見える可能性が向上するでしょう。
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目次
穴あけロボットとは? 特徴や活用例などを解説
穴あけロボットとは、切削ロボットの一種で、産業用ロボットのアーム先端にドリルユニットやスピンドルなどの工具を取り付け、プログラムに基づいて自動で対象物(ワーク)に穴をあけるシステム全般を指します。
切削ロボットについて詳しく知りたい方は以下の記事をご確認ください。切削ロボットの導入を検討している方に向けて、定義や具体的な種類分け、活用事例、選び方などを網羅的に解説ています。

主に以下のような要素で構成されています。
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ロボット本体(マニピュレータ)
穴あけ工具を動かすアーム部分です。垂直多関節ロボットや直交ロボットなど、作業範囲や設置スペース、求められる精度に応じて様々なタイプが選ばれます。 -
穴あけユニット(エンドエフェクタ)
ドリル、タップ、リーマなどの工具を装着し、回転させて実際に穴をあける部分です。自動で工具を交換するATC(オートツールチェンジャー)を備えたものもあります。 -
制御装置(コントローラ)
ロボットの動作や穴あけの条件(位置、深さ、回転数、送り速度など)をプログラムし、制御する頭脳部分です。 -
周辺装置
ワークを固定する治具、位置決めを行うセンサー、安全柵などもシステムの一部として重要です。
これらの組み合わせによって、単純な穴あけから複雑なパターンの連続穴あけまで、幅広いニーズに対応します。
穴あけロボットの導入メリット
穴あけロボットを導入することで、製造現場は多岐にわたる恩恵を受けることができます。ここでは、その主要なメリットを具体的に解説します。
次に、穴あけロボットがどのような産業分野で活躍しているのかを紹介します。
活用例を紹介
穴あけロボットは主に、以下の5つの産業で活躍しています。
- 自動車産業
- 航空宇宙産業
- 建設機械・農業機械
- 建築・建材分野
- 電気・電子部品製造
上記以外にも、船舶、鉄道車両、金属家具、樹脂製品、木工製品など、穴あけ加工が必要とされるあらゆる製造現場で、穴あけロボットの導入が進んでいます。
このように、穴あけロボットは製造業における自動化のキーテクノロジーとして、今後ますますその重要性を増していくと考えられます。
穴あけロボットの基本的な役割とメリットをご理解いただけたでしょうか。
次に、具体的にどのような種類の穴あけロボットが存在し、それぞれどのような特徴を持っているのかを詳しく見ていきましょう。これにより、あなたの用途に最適なロボットの姿がより明確になるはずです。
種類ごとに穴あけロボットを解説
穴あけロボットの性能や得意とする加工は、先端に取り付けられる「穴あけユニット」の種類によって大きく左右されます。ここでは代表的なユニットの種類と、それぞれの特徴、メリット・デメリットを解説します。
エアドリルユニット搭載型
圧縮空気を動力源とするドリルユニットです。シンプルな構造で、小型軽量なものが多いのが特徴です。
電気スピンドルユニット搭載型
電気モーターでドリルを駆動するユニットです。回転数やトルクなどを精密に制御でき、高品質な加工が可能です。
自動工具交換装置(ATC)付き
複数の工具を自動で交換し連続加工を実現するユニットです。ドリルやタップなど多種の工具に対応します。
周辺機器の役割や選定ポイントを解説
穴あけロボットを導入する際には、ロボット本体の性能だけでなく、その能力を最大限に引き出すための周辺機器の選定やシステム全体の構築が重要です。適切な周辺機器とシステムインテグレーションにより、加工精度、生産効率、安全性が向上します。
穴あけ精度と品質を高める主要な周辺機器
ロボットによる穴あけ加工の品質と効率は、使用する周辺機器によって左右されます。ここでは、特に重要な周辺機器とその役割や選考時に考慮したいポイントを解説します。
ドリルユニット(スピンドルユニット)
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役割と重要性
ロボットアームの先端に取り付けられ、ドリルなどの切削工具を回転させて実際に穴をあける、穴あけ加工の心臓部です。このユニットの性能が、加工精度、効率、そして対応できる加工範囲に直接影響します。 -
選定時に考慮したいポイント
・加工する材質(鉄、アルミ、樹脂など)、穴の径や深さ、求められる精度に応じた十分な回転数、トルク、送り速度を発揮できるか。・ より精密な制御が可能なサーボ制御スピンドルや、高速加工に適した高周波スピンドルの必要性。
・工具の冷却方式(例えば、工具先端からクーラントを供給する内部給油に対応しているか)や、異常発生時の監視・安全機能。
ATC(自動工具交換装置)
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役割と重要性
異なる径の穴あけ、下穴加工後のタップ(ねじ切り)加工、面取り加工など、一連の工程で複数の工具を使い分ける必要がある場合に、これらの工具をプログラム指令に基づき自動で交換する装置です。 -
選定時に考慮したいポイント
・格納できる工具の本数、工具の最大径・長さ・重量。・工具交換に要する時間(サイクルタイムへの影響)。
・交換時の繰り返し位置決め精度、システムの信頼性や耐久性。
クーラント供給システムと切粉処理装置
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役割と重要性
穴あけ加工時には、工具とワーク間の摩擦熱により工具が早期に摩耗したり、ワークが熱変形したりするのを防ぐため、クーラント(切削油)による冷却と潤滑が不可欠です。
また、発生する切粉を適切に排出しなければ、加工不良や機械故障の原因、作業環境の悪化を招きます。 -
選定時に考慮したいポイント
・クーラント:加工材質に適した種類(水溶性、油性)、供給方法(外部ノズル、工具内部給油)、必要な供給圧や流量、ろ過システムの性能。・切粉処理:切粉の材質や形状(長い、短い、粉状など)に応じた排出・回収方法(吸引式、コンベア式、フィルター式など)、処理能力とメンテナンスの容易さ。
ワーク固定治具とセンサー技術
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役割と重要性
加工対象物(ワーク)を正確な位置に、かつ加工中の力に耐えうるよう強固に固定するための治具は、最終的な穴あけ精度を保証する上で極めて重要です。加えて、各種センサー技術を活用することで、システムの知能化を図り、より高度な品質管理と自動化を実現します。 -
選定時に考慮したいポイント
・治具:高い位置決め精度と繰り返し精度、十分なクランプ剛性、段取り替えの容易さ(手動クランプか自動クランプかなど)、ワーク形状への対応力(専用治具か汎用治具か)。・センサー:画像センサー(ワークの位置決め補正、品種判別)、力覚センサー(加工負荷の異常検知、工具衝突防止)、変位センサー(工具長測定、工具摩耗の検知)、温度センサーなど、目的に応じた適切なセンサーの選定と配置。
穴あけロボットの性能を最大限に引き出すための周辺機器とシステム構築のポイントについてご理解いただけたでしょうか。これらの要素を総合的に検討することで、より効果的な自動化が実現できます。
さて、ここまで穴あけロボットの基本情報について学んできましたが、次に、実際に自社に導入するロボットを選ぶ際に、どのような点に注目すべきか、具体的な選定方法について解説していきます。
穴あけロボットの選び方を解説
穴あけロボットの導入を成功させるためには、自社の加工対象や生産体制に最適な機種を選定することが不可欠です。ここでは、3つの重要な選定ポイントを解説します。これらのポイントを押さえることで、導入後のミスマッチを防ぎ、期待通りの効果を得ることができるでしょう。
対象ワークの材質に最適なドリル方式の選定
穴あけロボットを選定する上で非常に重要なポイントの一つは、対象ワークの材質(金属、樹脂、複合材など)に最適なドリル方式を選定することです。
この選定は、加工対象の素材特性(硬度、熱伝導性、破断性)や必要とされる穴の精度によって変動します。
材質に合わないドリル方式を選んでしまうと、バリの発生や穴の精度不良、工具摩耗の早期化といった問題が発生し、生産効率の低下やコスト増につながる可能性があり、多品種少量生産で異なる材質のワークに対応する必要がある場合は、この選定が生産ラインの柔軟性を大きく左右します。
適切なドリル方式を選定することで、ワーク破損のリスクが低減し、工具寿命と加工品質を安定させることができ、結果として高品質な製品を効率的に生産できる可能性が向上するでしょう。
必要な穴径公差やピッチ精度に応じたロボットの仕様確認
次に重要な選定ポイントとして、必要な穴径公差やピッチ精度に応じて、ロボットの位置決め精度と剛性の仕様を確認することが挙げられます。
この選定は、製品設計上の穴位置精度要求や、後工程との位置整合性といった要因によって決まります。
もし、要求される精度要件を満たさないロボットを選んでしまうと、穴ズレや品質不良が頻発し、手戻りや廃棄品の増加につながる恐れがあり、治具レスで複数の穴を正確に加工する必要がある場面では、ロボット本体の精度と剛性が直接製品品質に影響を与えるため、この確認は不可欠です。
ロボットの位置決め精度と剛性を適切に検討し、仕様を満たす機種を選定することで、測定・手直し工程が減り、製品歩留まりと品質保証レベルが向上し、信頼性の高い生産体制を構築できることを期待できます。
深穴加工や多段穴加工への対応力確認
最後に考慮すべき選定ポイントは、深穴加工や多段穴加工を行う場合に、ロボットのZ軸制御精度や切粉排出機構の有無を確認することです。
この選定は、加工する穴の深さ、加工頻度、内部給油の有無や切粉の排出ルートの設計といった要因によって左右されます。
これらの確認を怠ると、切粉の詰まりや過剰な掘り込みにより、工具の破損やワークの損傷が発生する可能性があり、アルミや銅など切粉が排出しづらい素材での深穴加工がある場合には、切粉処理が加工の成否を分ける重要な要素となります。
Z軸制御精度や切粉排出機構を適切に検討することで、メンテナンス工数の削減と長時間連続運転の実現が可能になり、安定した生産と工具寿命の延長といった理想的な運用が期待できるでしょう。
これらの選定ポイントを踏まえて穴あけロボットを選ぶことで、より効果的な自動化投資が実現できるはずです。
基本情報と選び方を理解したところで、次に、市場で信頼されている穴あけロボットのおすすめメーカーとその代表的な製品についてご紹介します。具体的な製品情報を通じて、あなたのニーズに合った一台を見つける手助けとなれば幸いです。
穴あけロボットのおすすめメーカー5選を紹介
穴あけロボットの選定において、メーカー選びは非常に重要です。各メーカーは独自の技術や強みを持ち、特定の用途や業界に特化した製品ラインナップを展開しています。ここでは、実績と信頼性のある代表的な穴あけロボットメーカーを5社厳選し、それぞれの特徴や代表機種をご紹介します。
※本稿で紹介する5社は、多くの場合「穴あけ専用ロボット」ではなく、汎用多関節ロボットに穴あけユニットや専用制御を組み合わせて導入されています。
ファナック / FANUC
メーカー名 | ファナック / FANUC |
設立年 | 1972年 |
本拠地 | 山梨県南都留郡 |
概要 | 産業用ロボット・CNC・FAシステムの世界的リーディングメーカー |
ファナックは、1972年に設立され、山梨県南都留郡に本拠を置く、産業用ロボット、CNC(コンピュータ数値制御装置)、FA(ファクトリーオートメーション)システムの世界的リーディングメーカーです。
世界最多の累計75万台超というロボット納入実績を誇り、自社製のCNC、サーボモーター、ロボットをワンブランドで統合することによる高い信頼性と保守性、そして充実したグローバルサービス拠点網による稼働率の高さが強みです。
同社の穴あけ用途に適したロボットとしては、「M-900iB/700」などが挙げられます。この「M-900iB/700」は、高剛性ボディと第2エンコーダ制御(オプション)により、大きな推力と安定した荷重でのドリリング加工が可能です。
これにより、他のメーカーの同クラスロボットと比較しても、特に剛性が求められる加工において優れた性能を発揮します。航空機部品、自動車・EV関連部品、再生可能エネルギー関連設備など、高い信頼性と耐久性が求められる業界で広く導入されています。
安川電機 / YASKAWA Electric
メーカー名 | 安川電機 / YASKAWA Electric |
設立年 | 1915年 |
本拠地 | 福岡県北九州市 |
概要 | サーボモータ・インバータから産業用ロボット「MOTOMAN」まで一貫開発する モーションコントロール/FA総合メーカー |
安川電機は、1915年設立の歴史ある企業で、福岡県北九州市に本社を構えています。同社はサーボモータやインバータといった基幹部品から、世界的に有名な産業用ロボット「MOTOMAN」シリーズまでを一貫して開発・生産する、モーションコントロールおよびFAの総合メーカーです。
世界累計50万台を超えるロボット納入実績と、自社製サーボモータによる高いモーション性能が同社の大きな強みです。
穴あけ加工に対応する代表的なロボットとしては、「MOTOMAN-GG250」などがあります。この「MOTOMAN-GG250」は、新開発の制御技術と絶対精度補正機能により、繰り返し精度および軌跡精度が大幅に向上しており、精密な穴あけ加工が求められる用途でのパフォーマンスが高いです。
同製品は、自動車およびEV関連、電池・エネルギー分野、そして汎用的な機械加工など、幅広い産業分野での導入実績があります。
川崎重工業 / Kawasaki Heavy Industries
メーカー名 | 川崎重工業 / Kawasaki Heavy Industries |
設立年 | 1896 年 |
本拠地 | 兵庫県神戸市 |
概要 | 産業用ロボットから航空宇宙・船舶・鉄道車両まで手がける総合重工メーカー |
川崎重工業は、1896年創業という長い歴史を持ち、兵庫県神戸市に本社を置く、日本を代表する総合重工メーカーです。産業用ロボット事業に加え、航空宇宙、船舶、鉄道車両といった幅広い分野で高い技術力を有しています。
特に、航空機製造とロボット事業を併営している強みを活かし、自社の航空技術とロボット技術を融合させた高精度な加工ソリューションを開発・提供している点が特徴です。
同社の穴あけロボットは、特に大型ワークや高負荷加工に対応可能な「MG10HL」です。この「MG10HL」は、1トンという高い可搬能力と15kNの反力に対応できる高剛性ボールねじ、そして並列リンク構造を採用することにより、例えば厚さ75mmにも及ぶ航空機パネルへ大径穴を高トルクで加工する際にも、姿勢のズレを最小限に抑えることができます。
その特性から、主に航空機産業やエネルギー関連分野など、大型で高精度な穴あけ加工が求められる現場で活躍しています。
不二越 / NACHI-FUJIKOSHI
メーカー名 | 不二越 / NACHI-FUJIKOSHI |
設立年 | 1928 年 |
本拠地 | 東京都港区 |
概要 | 特殊鋼 → 切削工具 → 産業用ロボットまで一貫生産する総合機械メーカー |
不二越は、1928年に設立され、東京都港区に本社を置く総合機械メーカーです。
特殊鋼の製造から始まり、切削工具、ベアリング、そして産業用ロボットに至るまで、素材から製品までを一貫して生産できる体制を整えているのが大きな特徴です。この「素材一貫」の開発体制により、各工程に最適化されたソリューションをパッケージとして丸ごと提案できる総合力が強みです。
同社の穴あけに適したロボットとしては、高速・高精度な動作が可能な「MZ07F / MZ07LF」シリーズが挙げられます。
これらのロボットは、世界最速クラスの0.31秒というサイクルタイムと±0.02mmという高い繰り返し精度を両立しており、アルミ筐体や電子部品のような多数の精密な穴あけ作業を最短タクトでこなすことが可能です。同クラスの他社製ロボットと比較して、15~30%もの時間短縮を実現するケースもあります。
自動車のエンジン部品やEV関連部品、電子部品、精密金型といった、高速かつ精密な穴あけが求められる分野で高い評価を得ています。
デンソーウェーブ / DENSO WAVE
メーカー名 | デンソーウェーブ / DENSO WAVE |
設立年 | 2001 年 |
本拠地 | 愛知県知多郡 |
概要 | QRコードを発明した 自動認識機器&小型高速産業用ロボットのリーディングカンパニー |
デンソーウェーブは、2001年に設立され、愛知県知多郡に拠点を置く企業です。世界的に普及しているQRコードを発明したことで知られ、自動認識機器と小型・高速な産業用ロボットの分野で業界をリードしています。
QRコード開発で培った高度なセンシング技術やソフトウェア技術と、0.31秒という世界最速クラスのサイクルタイムを誇る6軸ロボット「VSシリーズ」を両立させている点が大きな強みです。これにより、小型精密加工や検査セルを「ワンブランド」で完結できるソリューションを提供。
同社は「穴あけ専用」のモデル名を設けていませんが、「VS-068/VS-087」といったVSシリーズや協働ロボットCOBOTTA PROに高回転スピンドルを組み合わせることで、穴あけ用途に対応する公式事例や研究事例があります。
これらのロボットは、世界最速クラスのサイクルタイム(0.31秒)を活かし、多点ピッチ穴あけにおいて、同程度の可搬重量を持つ他社製ロボットと比較してタクトタイムを15~30%短縮し、この高速性、高精度、小型という特性から、特に電子部品や精密金属加工における「微細穴ドリリング」の分野で強みを発揮します。
電子部品や半導体関連、自動車部品、さらには研究機関など、微細かつ高速な穴あけ加工が求められる現場で活用されています。
ご紹介した5社以外にも、優れた穴あけロボットを提供するメーカーは多数存在します。本記事が、あなたのビジネスに最適な穴あけロボットとメーカーを見つけるための一助となれば幸いです。
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