墨出しロボット

墨出しロボット

建設現場の効率化が求められる中、図面通りに正確なマーキングを行う「墨出し作業」の効率化に期待されているのが、墨出しロボットです。

「導入してみたいけれど、自社に合う種類や方式がわからない」「費用対効果や他のDX手法との違いを知りたい」と悩む方も多いのではないでしょうか。

本記事では、墨出しロボットの基礎知識から、種類・価格・他の手段との比較・選び方・おすすめメーカーまでを体系的に解説しています。

最後まで読むことで、自社の現場に本当に必要なロボットが何かを理解でき、よりよいロボット選びのお力になれたら幸いです。

目次

墨出しロボットとは? 種類や仕組み、構造を解説

墨出しロボットとは? 種類や仕組み、構造を解説

建築現場や内装工事において、図面通りの位置に正確なマーキング(墨出し)を行う作業は重要です。従来は職人の手作業に頼っていたこの工程に、「墨出しロボット」は新たな可能性を提案しました。

墨出しロボットとは、図面情報をもとに、自動で床面や壁面に墨線やポイントをマーキングするロボットのことです。建設現場の生産性向上や人手不足解消を目的として近年普及が進んでいます。

構造としては、主に本体(移動装置や描画装置)・制御ユニット・レーザー測定機構などで構成されており、図面データ(主にCAD)を読み込み、自己位置を認識しながら正確に墨出しを行います。

主に2種類があり、それぞれ用途や現場環境に応じて使い分けがされ、導入によって作業精度の均一化、作業スピードの短縮、属人性の排除が期待されるでしょう。

次は、墨出しロボット以外の墨出しDX手法と比べた際のメリット・デメリットを詳しく解説します。

墨出しロボットだけじゃない! 墨出しシステムやドローンなど他の墨出しDXと比較したメリット・デメリットを解説

墨出しロボットだけじゃない! 墨出しシステムやドローンなど他の墨出しDXと比較したメリット・デメリットを解説

墨出しのデジタル化・自動化は墨出しロボットだけに限られません。近年では、BIMと連動して、レーザーで墨出しする場所を教えてくれる墨出しシステム(実際の墨出しは人間が行う)や、3Dスキャナ付きのドローンによる空中マーキング支援など、さまざまな手法が登場しています。

それぞれの手法は、対応できる作業範囲・精度・スピード・初期投資の大きさなどのメリット・デメリットが異なり、現場によって適した方法は変わるでしょう。ここでは、墨出しロボット、墨出しシステム、ドローンなどの墨出しDXの種類とその特徴の比較を行います。

墨出しロボット

自律走行し床面に墨線を描きます。

メリット

  • 高精度な地上作業に適している
  • 精度・再現性に優れる

デメリット

  • 屋外や凹凸面には対応が限定される
  • 壁や天井は別途人間が作業する必要がある

墨出しシステム

レーザー投射で床・壁・天井に墨線を表示し、その位置を見て人が直接書くことで墨出しをします。

メリット

  • 床だけでなく壁や天井にも使える
  • 一人で墨出しが可能
  • BIM と統合でき施工全体を管理しやすい

デメリット

  • 壁裏などを作業するにはその都度移動・セットアップが必要
  •     

  • 完全に自動化はできない

ドローン

空中からGPSなどの制御により、墨出しをします。

メリット

  • 大規模構造物や屋根面など人が届きにくい箇所に対応可能

デメリット

  • 精度はやや劣る
  • まだ実証段階で量産は限定的

どの手法にも一長一短があるため、目的や作業環境に応じて最適な方法を選ぶことで墨出し作業のDXを進めていきましょう。

続いては、代表的な2種類の墨出しロボットのタイプについて詳しく見ていきましょう。

【種類を解説】2種類の墨出しロボットとは? 仕組みと特徴を解説

2種類の墨出しロボットとは? 仕組みと特徴を解説

墨出しロボットには、主に描画方法の違いにより大きく分けると、2つの種類があります。

それぞれの特徴を把握することで、現場に最適なロボットを選択する助けになるでしょう。

XYプロッター型

XYプロッター型は、図面データに基づいて、おおよその位置まで自律移動をして停止します。その後、X軸・Y軸方向にステージが動き、ペンまたはマーキングノズルで正確に線やポイントを描画するタイプです。

主にフラットな床面での高精度な作業に用いられます。

メリット

  • いったん停止してから XY ステージでペンを走らせるため、高精度な直線・曲線描写が可能
  • 消耗品はペン芯・チョークのみで低コスト。目詰まりリスクがなく保守が簡単。
  • 床に直接触れて描くため、床を傷つけるリスクがある。

デメリット

  • 停止動作が頻発するため、面積が広いほどトータル時間が伸びる。
  • 曲線・文字・QR など複雑形状はストロークを細かく区切る必要があり、特に時間がかかる。
  • 描画と移動を繰り返すため、長尺ラインでは“継ぎ目”が出ることも。

プリンター型

プリンター型は、ロボット自体が現場内を自律走行しながら、床面に直接マーキングを行う方式です。

走りながら引くことができるモデルもあり、比較的小型のため、可搬性と対応範囲の広さが挙げられます

メリット

  • 停止せず描画するため、長尺ラインや面積の大きい図形でも作業時間を短縮できる。
  • ロボット移動と同時に印字し継ぎ目が無い連続ラインを描ける
  • インクジェットで非接触で印字できるため、床を傷つけるリスクが低い

デメリット

  • 走行中の振動・加減速の影響で比較するとやや精度に劣る。(±2〜3 mm程度が一般的)
  • インク・清掃液などランニングコストもペン方式より割高。
  • インク吐出の目詰まりや湿度変化で濃度が不安定になり、定期メンテナンスが不可欠。

次の章では、実際に墨出しロボットを導入する際に気になる「価格」や「レンタル」について詳しく解説します。

墨出しロボットの価格を解説! レンタルという選択肢も

墨出しロボットの価格を解説! レンタルという選択肢も

墨出しロボットの導入を検討する際、まず気になるのが価格です。

一般的な価格帯は、ロボットの種類や搭載機能によって異なりますが、移動型やレーザー連携型になると例えばSumiROBOでは720万円とされています。

一方、短期的なプロジェクトや予算が限られる場合には、レンタルという選択肢も有効です。

レンタルの場合、月額30万円台から利用可能なので、初期投資を抑えながら最新の機種を利用できるメリットがあります。

また、レンタル業者によっては、初回設定やトレーニングが含まれているサービスもあり、導入のハードルを下げる工夫がされています。

ここまでで墨出しロボットの基礎知識、種類、他のDX手法との比較、価格まで網羅的にご紹介しました。

失敗しないために重要な3つの視点|墨出しロボットの選び方

墨出しロボットの選び方|失敗しないために重要な3つの視点

墨出しロボットを選定する際には、導入後の効果の大きさや現場へ適応できるかを左右する複数の判断軸があります。

ここでは、特に重要となる3つの視点について、それぞれ現場で想定される課題やリスク、そして最適な選定によって得られる成果までを詳しくみていきましょう。

測位方式は現場条件に合わせて選定

墨出しロボットの選定ポイントとして、測位方式(プリズム追尾型トータルステーション連携型かSLAMなどのセンサー型か)を現場条件に合わせて選定することが挙げられます。

この測位方式の選択は、天井遮蔽率や鉄骨柱の配置状況、プリズムを設置できるかどうかといった環境要因によって左右されます。

仮に現場に適していない測位方式を選んでしまうと、ロボットが自己位置を見失って墨線の位置が図面基準からずれてしまい、再施工の手間が発生する可能性があるため注意しましょう。

特に地下階や狭小フロアなど、プリズムを設置しにくい空間では慎重に検討すべきポイントです。

最適な測位方式を選べば、躯体構築の前後を問わずワンマンでの連続墨出しが可能となり、監督立会いの時間を大幅に削減できます。

床材と後工程を踏まえたマーキング方法の選定

次に注目すべきなのが、マーキング方法(ペン型、インクジェットプリンター印字)を床材と後工程の要求に合わせて選ぶという点です。

この選び方は、床の仕上げ前後の状態や表面水分量、日射条件、そして屋内外の別など、施工現場の環境要因によって左右されます。

誤ったマーキング方式を選ぶと、墨が剥がれてしまったり視認性が低くなることで、後工程の職人が位置を誤認し、結果として品質事故につながるおそれがあります。

特に、タイル直張りや高反射のシート防水など、仕上げ材が早期に施工される現場では、この選定が重要です。

適切なマーキング方式を選択することで、消えづらい安定した墨出しができ、また後工程における墨消し作業の手間を最小化できるため、結果としてクリーニングコストを抑えることにもつながるでしょう。

ロボットとシステム間のBIM/CADデータ互換性を確認

さらに見落とされがちですが、BIM/CADデータ互換性(IFC・DWG・DXF・クラウドCDE連携)をロボットと統合管理システム間で確保するという点も重要な選定基準です。

この互換性は、自社で使用しているCADソフトの形式や、元請けから指定されるCDE(共通データ環境)の仕様に依存します。

データ互換が不十分な場合、図面の手動変換作業が必要になり、図面の更新情報が現場に正確に反映されず、再測量や修正施工をしなければなりません。

特に、設計変更が頻発する大型改修工事のような後期工程では、この観点が非常に重要です。

BIM/CADデータとのシームレスな連携が実現できれば、設計変更が即座に現場に反映され、再測量の手間がなくなることで業務のスピードと精度を両立できます。

おすすめの墨出しロボットメーカーを厳選して紹介!

墨出しロボットの導入を検討する際には、信頼できるメーカーの製品を選ぶことが大切です。

ここでは、実績と技術力を備えたおすすめのメーカーをご紹介します。

※JET-Globalの問い合わせフォームに遷移します。
※一部メーカーとは提携がない場合がありますが、ユーザー様に最適なご案内ができるよう努めています。

日立チャネルソリューションズ / Hitachi Channel Solutions

メーカー名 日立チャネルソリューションズ / Hitachi Channel Solutions
設立年 2004年
本拠地 東京都品川区
概要 金融端末と産業ロボットを手掛けるメカトロニクスメーカー

日立チャネルソリューションズは、2004年に設立された東京都品川区のメカトロニクスメーカーです。

ATMで培った高信頼センシング・制御技術を応用し、建設向けロボット分野にも展開しています。

墨出しロボットとしてはSumiROBOを展開しており、誰でも扱える簡便な操作性が特長です。

測量機制御を内蔵し、スキルレスでも5時間連続運転できる点が最大の魅力です。

事例としては、東京都再開発ビルや京都の公共施設など、全国100件以上の現場で採用されています。

未来機械 / MiraiKikai

メーカー名 未来機械 / MiraiKikai
設立年 2004年
本拠地 香川県高松市
概要 自律清掃ロボや建設ロボを開発するロボット専業メーカー

未来機械は、香川県に拠点を構える2004年設立のロボット専業メーカーです。

独自の小型軽量プラットフォームを開発し、機動力に優れたロボット設計を実現しています。

同社の墨出しロボットSUMIDASは、竹中工務店、レンタルのニッケンの共同開発のロボットで、自走式かつ6時間の連続運転に対応し、夜間や無人運用にもてきしています。

夜間無人運転やレンタル向けの仕様で、海外展開も視野に入れた拡張性が魅力です。

事例としては竹中工務店のオフィス工事や、シンガポールの展示会「SWITCH 2023」でも活用され注目を集めました。

鹿島建設 / Kajima Corporation

メーカー名 鹿島建設 / Kajima Corporation
設立年 1840年
本拠地 東京都港区
概要 国内外で土木・建築を行うスーパーゼネコン

鹿島建設は、1840年創業の老舗ゼネコンで、東京都港区に本社を構える業界最大手の一角です。

独自開発のインクジェット技術を搭載した墨出しロボット開発にも注力しています。

その製品であるロボプリン®は、コンパクトな筐体ながら高精度で破線や文字の印字が可能です。

直径35cm・重量15kgという小型仕様で、限られたスペースでも精度の高い作図が可能です。

事例としては2024年には小田原での実証実験を行っており、現在は複数の現場で導入が進んでいます。