オフィスロボット

オフィスロボット

オフィスロボットとは、業務効率化や人手不足の解消を目的に、清掃・案内・搬送などの作業を自動化する最新のロボット技術です。

「人の仕事がオフィスロボットに置き換わるって本当に可能なの?」「どのオフィスロボットを選べば自社に合うのかわからない…」そんな不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、オフィスロボットの基礎知識から種類別の特徴、導入メリット、懸念される課題、そして失敗しない選び方やおすすめのメーカーまで、幅広くかつ丁寧に解説します。

これから導入を検討する方も、すでに活用を始めている方も、この記事を読むことでより効果的なオフィスロボット活用のヒントを得られるはずです。

ぜひ最後までご覧いただき、自社の業務改革にお役立てください。

目次

オフィスロボットとは? 基本情報や実際の事例も紹介

オフィスロボットとは? 基本情報や実際の事例も紹介

オフィスロボットとは、オフィス環境において、人間が行っていた定型的・反復的な業務や、特定の専門業務を代行・補助する目的で導入される自律型または半自律型のロボットを指します。

製造業で使われる産業用ロボットとは異なり、人が働く空間で安全に共存し、業務効率化、コスト削減、従業員の負担軽減、サービス品質向上が目的です。

具体的には、資料の運搬を行う搬送ロボット、受付業務を担う案内ロボット、社内の清掃を行う清掃ロボット、などその形態と用途は多岐にわたります。

実際の事例としては、羽田空港では清掃ロボットWhizが約4,000㎡を毎日自律清掃し、床バキューム作業を削減しました。

また、松下記念病院では搬送ロボットHOSPIが薬剤やリネンを病棟へ無人搬送し、看護師工数約4時間/日を削減(院内発表)しました。

このように、オフィスロボットは単なる近未来的なガジェットではなく、実際に業務改善効果を上げる実用的なツールとなりつつあります。

次は、こうしたオフィスロボットにはどのような種類があるのかを詳しく解説します。

種類ごとにオフィスロボットを解説

種類ごとにオフィスロボットを解説

オフィスロボットには、業務内容や導入目的に応じてさまざまな種類が存在します。ここでは代表的な種類を取り上げ、それぞれの特徴と他との違いを明らかにしていきます。

テレプレゼンスロボット

テレプレゼンスロボットは、遠隔地にいるユーザーがロボットを通じてオフィス内を移動したり、音声や映像で双方向にコミュニケーションを取ったりできるオフィスロボットです。

主にリモートワーカーや遠隔地の取引先、海外支社のマネジメント層が、現場との距離を埋める手段として活用されています。

メリット

  • 物理的にオフィス内を移動しながら対話ができ、臨場感がある
  • リモート社員との対話機会を増やしやすい
  • 出張コストや時間の削減につながる

デメリット

  • 通信遅延や障害物でスムーズな移動が妨げられる
  • ネットワークや機器環境の整備が必須
  • 社員によっては操作や存在に違和感を覚える場合がある

テレプレゼンスロボットについて詳しく知りたい方は以下の記事をご参考ください。

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搬送ロボット

オフィス内で書類や備品などを自動で運搬するオフィスロボットです。決まったルートを移動するモデルや、SLAM技術を使って障害物を避けながら自律移動する高性能タイプまであります。

メリット

  • 重い荷物を運ぶ業務の人手を削減できる
  • 部署間の移動が多い職場では効率化効果が期待できる
  • 自律移動タイプはフレキシブルに対応可能

デメリット

  • レイアウト大幅変更時にはルートの再設定が必要になる場合がある
  • 狭いオフィスでは稼働が制限される
  • 初期費用が比較的高額になりがち

受付ロボット

受付ロボットは、来訪者へのあいさつ、受付対応、担当者への通知、オフィス内の簡易な案内などを自動で行うオフィスロボットです。

企業のエントランスや共用ロビーに設置されることが多く、近年は顔認識や音声対話機能を備える機種も一般的になっています。

メリット

  • 定型的な来訪者対応を無人で自動化できる
  • 人手の省力化とセキュリティの向上を両立できる
  • 先進的な印象を与えやすい

デメリット

  • 対話精度や顔認識の精度が場所や環境に依存する
  • 複雑な来客対応には対応しきれない場合がある
  • 設備連携(通門システムなど)の設定にコストがかかる

清掃ロボット

オフィス内の床清掃などを自動で行うオフィスロボットで、特に定時運用が可能な点から日常清掃の自動化に効果を発揮します。AIによるルート最適化機能を持つ機種もあります。

メリット

  • 夜間や人が少ない時間帯にも稼働可能
  • 外部業者への清掃委託コストを削減できる可能性がある
  • 衛生管理の徹底に貢献する

デメリット

  • 障害物が多い空間では効果が薄い
  • 定期的なメンテナンスが不可欠
  • トイレやデスク上の清掃は不向き

それぞれの種類に特性と用途があり、職場の課題に応じた選定が重要です。次に、オフィスロボットの導入によって得られるメリットを見ていきましょう.

導入によって期待されるオフィスロボットのメリット

導入によって期待されるオフィスロボットのメリット

オフィスロボットには、オフィス特有の課題を解決できる独自の利点があります。代表的なメリットを三つ挙げると、次のとおりです。

メリット

  • グループウェア連携で業務フローを自動化
    API 連携に対応したロボット管理プラットフォームが登場しており、備品配送・清掃指示・受付登録などをシステム側からロボットへ自動発行できる仕組みが整いつつあります。人が入力する手間を減らし、バックオフィス全体の効率化が期待されます。
  • 営業時間外の夜間稼働で業務を中断せず自動化
    清掃や資料搬送を夜間に完了させることで勤務時間中の動線を妨げず、外部委託費や残業コストを抑制できる可能性があります。
  • リアルタイム環境センシングによる空間最適化
    走行時に取得した人流データや温湿度情報をビル管理システムへ送信し、空調・照明を自動制御することで快適性を保ちながらエネルギーコストを削減できる可能性があります。

それでは次に、オフィスロボット導入に際して発生しうる課題や注意点を確認しておきましょう。

オフィスロボット導入時の課題

オフィスロボット導入時の課題

オフィスでは空間の流動性や機密情報の取り扱いが独特であり、ロボット導入時には工場や倉庫とは異なる課題が浮上します。代表的な課題を三つ挙げると、次のとおりです。

課題

  • フリーアドレスで変わる動線への対応負荷
    デスクやパーティションを日替わりで動かすオフィスでは、ロボット走行ルートの再学習が頻繁に発生し、都度の再設定コストが増加する恐れがあります。
  • 知的労働者の心理的バリアと情報漏えい懸念
    ホワイトカラーの会話や相談内容がロボットのマイクに拾われる不安があり、機密会議室の前では運用を一時停止するなど細かな運用ルールの策定が必要です。
  • 机上資料・ホワイトボード映り込みによる機密流出リスク
    カメラ搭載ロボットが移動中に未発表資料や設計図を撮影しクラウドへ送信する恐れがあり、画像マスキングやオフライン運用ポリシーの整備が不可欠です。

このような課題を事前に整理し、導入計画を綿密に立てることで、ロボット活用の成功確率は格段に高まるでしょう。

オフィスロボットの選び方で失敗しないための3つの視点

オフィスロボットの選び方で失敗しないための3つの視点

オフィスロボットを導入する際には、多くの機能や仕様の中から何を重視するべきか迷うことが多いです。ここでは選定時に見逃してはならない重要な3つの視点について解説します。

変化するレイアウトに対応するための「稼働環境マッピング機能」の有無

1つ目のオフィスロボットの選定ポイントは、オフィスレイアウトを自動でスキャンし経路を自律生成できる「稼働環境マッピング機能」の有無を確認することです。

この機能の必要性は、フリーアドレス制の導入や可動式パーティションなど、レイアウトが頻繁に変更される職場環境において高まります。

もしこの機能が搭載されていない場合、通路の変更や席替えがあるたびに人の手でルートを再設定しなければならず、オフィスロボットの稼働が一時停止するばかりか、都度の作業コストが増加する恐れがあります

ダイナミックに配置が変わるオフィスでは、こうした機能を備えたオフィスロボットを選ぶことが重要です。

初期設定やレイアウト変更時のダウンタイムを最小化し、運用コストを長期的に削減できる可能性があります。

業務システムと連携できるAPI/通信プロトコル対応状況

次に重視したいのは、社内グループウェア・設備予約システムと双方向で連携できるAPI/通信プロトコルの対応状況を確認するという視点です。

この選び方の重要性は、Microsoft 365やGoogle Workspace、あるいは自社開発のシステムなど、すでに稼働しているIT基盤の種類や柔軟性によって左右されます。

対応が限定されているロボットを選んでしまうと、業務タスクの入力をすべて手作業で行う必要が生じ、ロボットの活用効率が低下したり、情報の二重管理が発生して非効率な運用に陥る可能性があります。

すでにペーパーレス化やワークフロー管理が整備されているDX推進企業では、システム連携のしやすさが特に重要です。

会議室清掃や備品配送の指示をワークフローから自動発行できれば、バックオフィス業務まで一気通貫で自動化が期待できます

利用者に合わせた使いやすさの適合度

三つ目の視点は、多言語音声・タッチディスプレイ・ジェスチャー認識など使いやすさの適合度を確認することです。

この判断軸は、利用者のITリテラシーの差や、多言語話者・聴覚障がい者など多様な従業員・来訪者が在籍するかどうかといった職場環境の要素によって左右されます。

もし操作方法が一部の利用者に合わなかった場合、問い合わせ対応が増加し、ロボットそのものが「使いにくい存在」として敬遠されてしまう恐れがあります。

特に、多国籍なチームや受付対応が頻繁に発生する職場では、誰でも扱えるUIの採用が肝心です。

直感的に使えるUIを備えた機種を選ぶことで導入への心理的抵抗が減り、利用率の向上とROI改善が期待できます(効果測定は別途必要)。

ここまで、選定で失敗しないための3つの視点を紹介しました。

オフィスロボットの将来展望と技術革新

オフィスロボットの将来展望と技術革新

国際ロボット連盟(IFR)の最新レポートによれば、2023 年のプロフェッショナルサービスロボット出荷台数は前年から 30%増の 20 万台超に達し、現在も増加傾向です。

将来の性能向上をけん引する主要要因の一つは AI です。深層学習を活用した動的経路計画や自己位置推定(SLAM)は、障害物や人流が変化するオフィス内でもリアルタイムに最短ルートを再計算できる水準に達しています。

また 5G/次世代通信の実証では、1〜3 ms 程度の往復遅延(サブ 10 ms)でロボット間を同期し、クラウドを介さない分散制御により協調作業を行う手法が報告されています。

これにより複数台が同一フロアで役割分担しつつ衝突を回避する協調型ロボットの実環境適用が進められており、業務効率の向上が期待されているのです。

稼働時間を制限してきた電源面でも進展があります。LiFePO4 バッテリーを採用したモバイルプラットフォームは約 12 時間の連続走行を実現し、従来比で充電頻度を削減しています。

これらの技術は、受付応対や情報提供を個々の利用者に合わせて最適化するための重要な要素です。

このように AI・通信・バッテリー・インタラクション各分野の実証データが示すとおり、オフィスロボットは単なる補助ツールから業務基盤へと移行が進みつつあります。

次章では、こうした技術を製品化する主要メーカーを取り上げます。

おすすめのオフィスロボットメーカーを厳選して紹介!

オフィスロボットを検討する際、信頼できるメーカー選びは重要です。ここでは、導入実績や技術力に優れた代表的な5社を紹介します。

※JET-Globalの問い合わせフォームに遷移します。
※一部メーカーとは提携がない場合がありますが、ユーザー様に最適なご案内ができるよう努めています。

パナソニック / Panasonic

メーカー名 パナソニック / Panasonic
設立年 1935年
本拠地 大阪府門真市大字門真1006番地
概要 自律搬送ロボットと電子機器の総合メーカー

パナソニックは大阪・門真を拠点に、自律搬送ロボットHOSPIシリーズを展開しています。

医療・介護現場を想定した安全制御に強みを持ち、薬剤搬送用の施錠トレイエレベーター自動連携により、上下階を無改造で搬送可能です。

Signage HOSPIは搬送機能にデジタルサイネージを組み合わせ、案内や広告配信にも対応し、医薬品搬送と情報提供を一台で両立できます。

導入実績は松下記念病院成田空港など複数病院・公共施設で公表されています。

オムロン / OMRON

メーカー名 オムロン / OMRON Corporation
設立年 1948年(創業1933年)
本拠地 京都市下京区塩小路通堀川東入
概要 センサ・制御技術を核とする自律移動・複合サービスロボットメーカー

オムロンは産業制御で培ったセンサフュージョン技術をベースに、自律移動ロボットLD/HDシリーズを開発しています。

さらに清掃・案内・警備を統合した複合サービスロボットToritossを展開しています。同製品の特徴は一台で24時間多目的稼働できる高い稼働効率を実現する点です。

導入先にはBunkamuraザ・ミュージアム豊洲スマートシティ実証ビルなどがあり、複雑な公共空間での実績を重ねています。

ZMP / ゼットエムピー

メーカー名 ZMP / ゼットエムピー
設立年 2001年
本拠地 東京都中央区晴海1-8-8 晴海アイランドトリトンスクエアW棟14F
概要 自律走行配送・物流支援ロボット専業メーカー

ゼットエムピーは自動運転技術を応用した配送ロボット専業メーカーで、追従・自律台車CarriRo FD/ADや宅配ロボットCarriRo Deliを提供しています。

ビルのエレベーターと連携し屋内外をシームレスに移動できる点が特徴です。

導入実績としてコクヨロジテム移転作業品川港南エリアでの公道・ビル内実証、さらには大手文具メーカーの物流支援実証などが公表されています。

日立製作所 / Hitachi

メーカー名 日立製作所 / Hitachi, Ltd.
設立年 1910年
本拠地 東京都千代田区丸の内1-6-6
概要 社会インフラからサービスロボットまで手掛ける総合電機メーカー

日立製作所はクラウド連携型のロボティクスITプラットフォーム(遠隔“リモートブレイン”)で複数拠点のロボットを遠隔支援します。

主力のコミュニケーションロボットEMIEW314マイクロホンアレイを備え、騒音下でも人の声を分離して認識でき、日本語・英語・中国語など複数言語で案内が可能です。

導入例にはノジマ横須賀店横浜ランドマークタワー展望フロアなどがあり、商業施設や交通ハブで活躍しています。