塗装ロボット

塗装ロボット

塗装ロボットは、自動車や家電、金属部品など多様な業界で活用されており、塗装精度の向上、塗料使用量の削減、人件費圧縮、安全性の確保といった導入メリットは多岐にわたります。

本記事では、塗装ロボットの基本構造から、回転霧化方式・静電霧化方式といった塗装方式の比較、導入先の業界別活用例までを網羅。また、ABB・安川電機・ファナックなど代表的なメーカーの特徴を紹介し、自社に最適なおすすめ機種を選ぶための選び方も詳しく解説します。

塗装ロボット導入を検討している企業にとって、失敗のない設備選定を行うための前提情報が記載されています。ぜひ参考にしてください。

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目次

塗装ロボットとは? 特徴や活用例などを解説

塗装ロボットとは?
塗装ロボットは、自動車や家電、機械部品などの製造業において、塗装作業を効率化するために用いられる産業用ロボットの一種です。従来の手作業に代わり、高精度で均一な塗装を短時間で行うことができます。また、人件費や作業時間の削減、作業者の安全確保が実現され、品質の安定化にも貢献できる点が特徴です。

一般的には、塗装ロボットは、特に自動車業界において広く利用されており、塗料の無駄を減らすことができるため、環境面でもメリットがあります。危険な化学物質を扱う際にも、安全に作業を進めるための重要なツールです。

塗装方式によって分けられる塗装ロボットの種類を解説

方式によって分けられる塗装ロボットの種類
塗装ロボットはロボットアームにノズルを装備した製品ですが、ノズルによる塗装方式によって種類が分かれます。以下では回転霧化方式と静電霧化方式の2種類について解説します。

回転霧化方式

回転霧化方式は、塗装ロボットにおいて最も一般的に使用される方式、特に自動車業界など大量生産品で主流の方式です。この方式では、塗料を回転させることによって霧状にし、物体に均等に塗布することができます。回転するノズルを使用することにより、塗料の飛散を抑え、均一な仕上がりを実現します。

回転霧化方式のメリット

  • 均一な塗装が可能
  • 大量生産品で主流の方式

回転霧化方式のデメリット

  • リワークが難しい
  • 初期調整に時間がかかることがある

静電霧化方式

静電霧化方式は、塗料に静電気を帯びさせ、塗装面との間に引力を利用して塗料を付着させる方法です。この技術により、塗料が効率的にターゲット表面に吸着し、無駄な飛散を抑制します。静電霧化方式は特に自動車の塗装や家電製品の塗装などに効果的です。

静電霧化方式のメリット

  • 塗料の飛散を抑制
  • 塗料の使用量を減少

静電霧化方式のデメリット

  • 特定の素材や形状には塗装が難しいことがある
  • 静電気の影響を受けやすい

ここまで、塗装方式によって分けられる2種類の塗装ロボットについて紹介しました。どのような製品を使用するにしても、ロボットにはティーチングという動作を覚えさせる作業が必要になります。塗装ロボットもその例外ではありません。次の章では、塗装ロボットのティーチングについて解説します。

動作設定の方法は? 塗装ロボットのティーチングについて

塗装ロボットのティーチング
塗装ロボットのティーチングは、そのロボットに正確な動作パターンを記憶させる作業です。ティーチングを行うことで、塗装作業の精度が向上し、繰り返し作業が可能になります。ティーチングには手動と自動(センサー活用など)の2つの方法があり、それぞれの方法には利点と注意点があります。

手動ティーチング

手動ティーチングは、オペレーターがロボットアームを手で動かし、その動作を記録させる方法です。この方法は直感的で簡単に行えますが、動作の精度や反復性に限界があります。また、手動で行うため、作業時間が長くなる可能性があります。

自動ティーチング

自動ティーチングは、ロボットが自ら動作を記録する方式です。カメラやセンサーを使用して周囲の環境を認識し、自動的に塗装パターンを学習します。手動ティーチングよりも高精度な動作が可能となり、複雑な作業にも対応できます。ただし、設定に一定の時間がかかる場合があります。

ここまで、塗装ロボットのティーチングについて説明しました。次の章では、塗装ロボットの選び方について、ポイントを絞って解説します。

導入を検討する際に考えるとよいポイント

塗装ロボットの導入するときのポイント
塗装ロボットの導入を進めるにあたり、多くの企業ではSIerや販売代理店に相談するところからスタートするのが一般的です。ただし、最初からすべてを任せきりにするのではなく、導入の目的や求める仕様を自社内で整理し、あらかじめ基本的な情報を把握しておくことが、スムーズな導入に繋がります。

ここでは、塗装ロボットを導入するうえで押さえておきたい重要な視点を3つに絞り、比較検討の際に注目すべき具体的なポイントをわかりやすく解説します。

ロボットの精度や可動範囲が要件に合っているか

塗装ロボットを選ぶ際には、対象となる部品の形状やサイズ、使う塗料の種類、作業環境の温度や湿度などを総合的に考慮しながら、ロボットの精度や可動範囲が要件に合っているかを確認することが大切です。加えて、塗装対象や塗料の性質、採用する塗装方法、生産ラインの柔軟性など、周辺の要素も選定に大きく影響します。

十分に以上の項目を踏まえずにロボットを導入してしまうと、塗装ムラや塗料の使いすぎといったトラブルが起こりやすくなります。結果として仕上がりの品質にバラつきが出たり、生産効率が落ちてしまったりするリスクがあるため、慎重な見極めが必要です。

条件に合ったロボットを選定することで、塗装の品質が安定し、塗料の使用量も抑えることが可能です。また、メンテナンスの手間やコストも軽減できるため、業務全体の効率化につながります。こうした観点は、特殊塗料の使用や、高い塗装精度が求められる製品を扱う現場で、特に重視されます。

要件を満たせる性能と安全性か

塗料の性質、どれくらいの速さで作業するかなどを踏まえたうえで、その条件に対応できる性能や、安全面に配慮された機種を選ぶことも基本です。特に、塗料の特性や作業環境の温度・湿度、対象物の形状、生産ラインの自動化の進み具合などが、選ぶうえでの重要な要素になります。

導入に失敗すると、塗装にムラが出たり、仕上がりの耐久性にばらつきが出たりすることがあります。製品の品質にばらつきが出てしまい、長期的には信頼性にも影響しかねません。

最適な塗装ロボットであれば、塗装品質の安定だけでなく、作業のスピードアップや安全性の確保にもつながります。スピードと精度の両立が求められる現場や、安全性が特に重視される作業環境では、とくに意識しておきたいポイントです。

将来の変動に対応する柔軟性

将来のライン変更や製品追加などに備えて塗装ロボットを選ぶ場合は、アームの長さや可動範囲に余裕があり、複数の塗装方式にも対応できるタイプを検討するのが現実的です。このことには、今あるライン構成だけでなく、今後の生産変動、日々のメンテナンスのしやすさ、部品の入手しやすさなども関係してきます。

拡張性や柔軟性を考慮しない場合、後からラインを変更したり、新しい工程を追加したくなったときに、ロボットが対応できず、余計なコストや時間がかかってしまうことになります。製品の種類が増える可能性のある現場では、この点の見落としが大きな支障になることがあります。

将来的な拡張などを見越して導入の計画を立てることで、設備の切り替えもスムーズになり、日々の運用も効率よく進めることができます。製造ラインの構成が頻繁に見直される現場や、新製品の投入が定期的にあるような環境では、意識しておきたいポイントです。

ここまで、塗装ロボットを導入する際に気にしたいポイントを解説しました。次の章では、塗装ロボットの製造に関わっている代表的なメーカーを紹介します。

塗装ロボットを開発・製造している代表的なメーカーを紹介

塗装ロボットの代表的なメーカー
塗装ロボットの導入を検討する際、どのメーカーがどのような特徴を持っているのかを知っておくことは重要です。ここでは、この分野で実績のある主要メーカーをまとめました。特に初めて塗装ロボットの導入を検討している方は、各メーカーの比較用途などでご参照ください。

ABB / エービービー

会社名 エービービー / ABB
設立年 1988年
本社 スイス チューリッヒ
概要 産業用ロボットおよび自動化ソリューションを提供するグローバルメーカー

エービービーは、独自の Integrated Process System(IPS)でロボット動作と塗装プロセスを一体制御し塗料ロスを最小化するとともに、業界最大級の作業域と高速性能を備えたラインアップを武器に、高品質かつ高効率な塗装自動化を世界中へ提供できることを強みとする塗装ロボットメーカーです。

同社の塗装ロボットである「FlexPainter IRB 5500」は、壁掛け7軸構造で最大級のワークエンベロープを確保し、ポンプやカラー-チェンジ弁を手首 15 cm 以内に内蔵する IPSによりカラー変更時の塗料・溶剤ロスをほぼゼロに抑えつつロボット台数とブースサイズも削減できる点が特徴です。

同製品は、自動車車体やバンパーなどの外装・内装塗装を中心に、建設機械・風力タービンなど大型構造物、さらにコンピューターや家電を含む3C電子機器まで幅広い産業の塗装ラインに導入されています。

川崎重工業 / Kawasaki Heavy Industries

会社名 川崎重工業 / Kawasaki Heavy Industries
設立年 1896年
本社 東京都港区海岸1丁目14-5
概要 総合重工業メーカー

川崎重工業は、総合的な技術力と幅広いロボット製品群、そしてバランスの取れたラインナップに強みを持っています。

「Kシリーズ(例:KJ264)」という塗装ロボットを取り扱っています。このKシリーズは、多彩なサイズや用途に対応できる柔軟性があります。また、総合的なシステム提案力を有している点や、幅広い産業分野に適応できる対応力、そして長年にわたる導入実績があることが強みです。

導入実績のある分野は、自動車、一般製造業、船舶、鉄道などです。

ファナック / FANUC

会社名 ファナック / FANUC
設立年 1972年
本社 山梨県南都留郡忍野村忍草3580
概要 工作機械・ロボットメーカー

ファナックは、40年以上にわたり塗装自動化の業界標準を担い、アルミ製中空リストを備えたATEX防爆構造の Pシリーズなど幅広い塗装ロボット群で配管を完全内蔵しつつ広い作業域と高スループットを実現できる点を強みとする塗装ロボットメーカーです。

同社の塗装ロボットである「P-250iB/15」は、15 kg 可搬・2.8 mリーチの6軸構造に加え、床・壁・天吊りなど多彩な設置に対応する柔軟性と、特許取得の中空リストによる配管内蔵/ATEX適合で塗装品質とブース省スペース化を両立できる点が特徴です。

同製品は、自動車車体・バンパーの塗装をはじめ、大型鋳物など重工部品や木製製品の塗装ラインといった幅広い業界に導入されています。

KUKA / クーカ

会社名 クーカ / KUKA
設立年 1898年
本社 ドイツ アウクスブルク
概要 産業用ロボットメーカー

クーカはDürr との ready2_spray などロボット制御と塗装プロセスを一体化したソリューションと、ATEX 防爆対応 KR AGILUS EXシリーズに代表される高速・高精度かつあらゆる設置姿勢に対応する柔軟性を武器に、多業界の塗装自動化を実現することを強みとする塗装ロボットメーカーです。

同社の塗装ロボットである「KR 10 R1100 EX」は、10 kg 可搬・最大 1,101 mm リーチの小型6軸モデルながら、ATEX 準拠の防爆構造と IP65/67の防じん防滴性を備え、床・壁・天吊りを含む自在な設置に対応しつつ高軸速度と滑らかな軌跡制御で狭所でも均一塗膜を実現できる点が特徴です。

同製品は、自動車のバンパー・リム、家電や電子機器の筐体、家具など木工製品、プラスチック成形品といった多様なワークを扱う 自動車・電子機器・木工・プラスチック産業の塗装ラインに幅広く導入されています。


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