ピッキングロボット

ピッキングロボット
人手不足や業務効率化が求められる今、注目を集めているのが「ピッキングロボット」です。

ピッキングロボットとは、物流倉庫や食品工場などで物品の選別・搬送を自動化するロボットで、作業精度の向上や人件費削減といった効果が期待されています。

本記事では、ピッキングロボットのメリット・デメリット、構造別の特徴や導入事例、選び方のポイント、さらにはおすすめメーカーまで網羅的に解説します。導入を検討中の方は必見です。

目次

ピッキングロボットとは?特徴や活用例などを解説

ピッキングロボット

ピッキングロボットとは、生産現場や物流倉庫などで特定の物品を選び出し、搬送または整列させる作業を自動で行うロボットのことを指します。

主に工場の組立ライン、食品加工、医薬品包装、EC物流センターなどで活用されており、人手不足の解消や作業の精度・効率向上を目的に導入が進んでいます。

従来、人手で行っていたピッキング作業を機械化することで、作業者の負担を軽減し、工程の安定化を図ることが可能になります。

ピッキングロボットを種類ごとに解説

ピッキングロボット

本章では、ピッキングロボットを3種類解説します。それぞれ精度や動作の複雑性などが異なります。

スカラロボット型

スカラロボットは、高速かつ高精度の水平動作に強みを持ち、電子部品の組立や軽量物のピッキングに多く用いられます。

主に定位置での反復作業に向いており、工程の短縮や品質の均一化に貢献します。

メリット

  • 高速・高精度な水平動作が可能
  • 定型作業における稼働安定性が高い
  • 省スペースに設置可能
  • デメリット

  • 上下方向の動作範囲が狭い
  • 複雑な形状のワークには不向き
  • 導入対象が限定的になりやすい
  • 多関節ロボット型ピッキングロボット

    多関節ロボットは、自由度が高く、複雑な動作が可能なため、製品が不定形・不規則に配置されている工程に適しています。

    柔軟な動きが求められる現場や多品種少量生産において重宝されます。

    メリット

  • 自由度の高い動作が可能
  • 不規則な配置物にも対応できる
  • 複数作業を一台でこなせる
  • デメリット

  • 動作速度はスカラロボットに劣る
  • 導入コストが高い傾向
  • 設置スペースの確保が必要
  • パラレルリンクロボット型ピッキングロボット

    パラレルリンク型は、高速・高精度にピッキングを繰り返すのに最適で、食品や軽量物の搬送で活用されます。

    特にコンベアトラッキングと組み合わせることで、流れてくるワークをリアルタイムでピッキング可能です。

    メリット

  • 高精度なピッキングが可能
  • 軽量物に特化した高い効率性
  • コンベア連動に適している
  • デメリット

  • 対応重量に限界がある
  • 構造上の可動範囲に制限がある
  • 大型ワークには不向き
  • 導入時の課題となるポイント3つ

    ピッキングロボット

    本章では、ピッキングロボットを導入する際に課題となる、3つのハードルについて解説します。

    ここに示されているハードルと、導入した際のリターンを正確にとらえることで、貴社に導入すべきかを判断することができます。

    初期投資コストの大きさ

    ピッキングロボットの導入には、高額なロボット本体だけでなく、周辺機器、センサー、制御システムの構築費用が必要になります。特に中小企業にとっては大きな負担となる可能性があります。

    ROI(投資対効果)を正確に見積もった上で、段階的な導入や補助金活用を検討することが重要です。

    既存設備との整合性

    ロボットの導入には、既存の設備や作業フローとの整合性も考慮しなければなりません。特に古い設備と最新ロボットとの間でインターフェースの問題が発生することがあります。

    導入前には、事前の設備診断や現場での実証実験が効果的です。

    スキルと人材不足

    ピッキングロボットを運用・保守するには、専門的な知識や技術を持った人材が必要です。しかし、製造業ではIT・ロボット分野に精通した人材が不足しているのが現状です。

    外部パートナーとの連携や、社内人材のスキルアップ施策を同時に進めることが求められます。

    本章では、ピッキングロボットを導入する際に課題となる、3つのハードルについて解説しました。

    このハードルを理解したうえで、導入を検討されている方は次章で具体的なピッキングロボットの選び方を解説していますので、どうぞご覧ください。

    ピッキングロボットを導入後、効果的に活用するためのポイント

    ピッキングロボット

    設備・環境条件との整合性の確認

    導入現場のレイアウトやスペース制約、床の強度、照明条件、電源容量などの設備要件も見逃せないポイントです。

    特にロボットアームの可動域や安全柵の設置スペース、AGV型の場合は走行ルートの確保など、現場に適合した設計が求められます。

    また、安全装置(センサーや非常停止ボタン)の設置義務があるケースもあるため、安全基準も含めた全体設計を行うことが重要です。

    他システムとの連携性の確認

    ピッキングロボットは単体では完結せず、多くの場合、WMS(倉庫管理システム)やPLC(制御システム)と連携して動作します。

    そのため、導入するロボットが既存のシステム環境と通信できるか、インターフェースが整っているかを確認しておく必要があります。

    データの受け渡しや自動制御の精度は、生産性に直結するため、IT部門やベンダーとの連携も重要になります。

    メンテナンスと教育体制の整備

    導入後も安定的に稼働させるためには、定期的な点検とトラブル時の対応体制が不可欠です。

    ロボットメーカーによるサポート体制の有無や、現場スタッフへの操作教育・保守教育が提供されるかどうかも重要な選定ポイントとなります。

    教育不足のまま運用を開始してしまうと、誤操作によるトラブルや生産停止のリスクが高まります。

    3つの選び方|ピッキングロボットの最適な選び方

    ピッキングロボット

    ピッキングロボットを導入する際の選び方には重要な点が3つあります。それはグリッパ、ビジョンシステム、可動範囲です。

    この選び方をもとに、あなたの会社に適したロボットの特徴を把握しましょう。

    ピッキング対象物に応じたグリッパの選定が重要

    ピッキングロボットの選定ポイントとして、対象物に応じたグリッパ(吸着・把持方式)の選定は重要です。

    対象物の形状や重量、材質が異なると、ロボットが確実に掴むために必要なグリッパの種類も変わります。

    袋物や箱物、金属、ガラスのように多様なアイテムが扱われる現場では、特にその適応力が重要です。

    もしこの選定が適切でない場合、ロボットが対象物をうまく掴めず、落下や破損が発生してしまい、製品の不良やライン停止といったトラブルに繋がるリスクがあります。

    こうしたリスクは、多品種少量生産で異なる形状や材質の製品を1台でピッキングするような現場において、より深刻になります。

    適切なグリッパを選定できれば、対象物を安定して扱えるようになり、ロボットの動作ミスや破損リスクを最小限に抑えることが可能です。

    認識精度に優れたビジョンシステムの選定が鍵

    ピッキングロボットの選定において、対象物の位置を認識するビジョンシステムの選定は見逃せない要素です。

    対象物の置かれ方がランダムであったり、周囲の照明や背景の影響を受けやすい場合には、2D/3DカメラやAIビジョンなど、精度とスピードのバランスを考慮した方式を選ぶ必要があります。

    適切な認識方式を選ばないと、ピッキング位置のズレによって製品を取りこぼしたり、間違った場所に投入してしまうなどのトラブルが起こる可能性があります。

    このようなリスクは、製品がトレイやコンベア上に無秩序に配置されるような環境で特に注意すべきポイントです。

    正確なビジョンシステムを導入すれば、認識ミスによる不良の流出を防ぎ、後工程との連携もスムーズになり、ライン全体の品質と生産性が向上します。

    ロボットの可動範囲と到達距離の確認が不可欠

    ピッキングロボットを選ぶ際には、ロボットの可動範囲やアームの到達距離が、実際のピッキングポイントや搬送先に適しているかを確認しなくてはいけません。

    作業スペースの広さやパレット・トレイの配置、さらには他の設備との干渉といった要因によって、ロボットの動作可能な領域は大きく左右されます。

    これらを考慮せずに導入すると、ロボットが目標地点まで届かず、ピッキング作業が成立しないという問題に直面することになります。

    特に、限られたスペースに複数の設備が密集しているようなレイアウトでは、ロボットの動作範囲を慎重な検討が必要です。

    可動範囲と到達距離を正しく見極めてロボットを選定すれば、導入後に再配置する手間がなく、既存の工程へスムーズに統合することができます。

    本章では、ピッキングロボットを導入する際の選び方について解説しました。

    次章では、実際にピッキングロボットを製造する企業5社を紹介しますので、ここでご紹介した基準を元に適したメーカーを選んでください。

    ピッキングロボットを製造する企業5社を紹介

    ピッキングロボット

    ピッキングロボットを製造する企業の中から以下の5社の特徴を解説します。

    オカムラ/Okamura

    メーカー名 オカムラ / Okamura
    設立年 1946年
    本拠地 〒220-0004 神奈川県横浜市西区北幸1丁目4番1号 天理ビル19階
    概要 オフィス家具、物流システム、商環境製品を手掛ける総合メーカー

    オカムラは、1946年設立、神奈川県横浜市に本拠を構える、オフィス家具や物流システムなどを手がける総合メーカーです。

    金属加工技術に裏打ちされた一貫生産体制と、高品質を担保する独自基準「OIS」によって、堅実かつ柔軟な製品開発を行っています。

    同社が展開するピッキングロボット「PROGRESS ONE」は、ロボット単体ではなく物流全体を最適化する統合型ソリューションが特長です。

    GROUND株式会社との提携により、AIと先端技術を活用した次世代型物流ソリューションとして、工場や物流センター、小売業などでの導入実績があります。

    Mujin / ムジン

    メーカー名 Mujin / ムジン
    設立年 2011年
    本拠地 東京都江東区辰巳3-8-5
    概要 知能ロボットコントローラや物流自動化ソリューションを提供するメーカー

    ムジンは、2011年設立、東京都江東区に拠点を置く、知能ロボットと自動化ソリューションの先進メーカーです。

    ティーチレス技術や自社開発のMujinOSを活用し、環境変化への柔軟な対応と高効率なロボット制御を実現しています。

    「PickWorker」シリーズは、ティーチング不要で即戦力となる点が大きな魅力です。

    複雑形状や多品種にも対応でき、JD.comやSUBARU、医療物流現場など、幅広い業界で高い導入実績を誇ります。

    コグネックス / Cognex

    メーカー名 コグネックス / Cognex
    設立年 1981年
    本拠地 東京都文京区本駒込2丁目28番8号 文京グリーンコート23階
    概要 画像処理装置および外観検査機器のメーカー

    コグネックスは、1981年創業、画像認識と検査技術に特化した米国発のグローバル企業です。

    独自のPatMax RedLine技術や1,000件を超える画像処理特許により、高精度なマシンビジョン分野を牽引しています。

    同社の「ビジョンガイドロボット」は、対象物の形状や向きを問わず正確なピッキングを実現

    食品や半導体、自動車業界などで、複数ロボットの同時制御を活かした高効率な工程自動化に活用されています。

    川崎重工業 / Kawasaki Heavy Industries

    メーカー名 川崎重工業 / Kawasaki Heavy Industries
    設立年 1896年
    本拠地 東京都港区海岸1丁目14番5号 / 兵庫県神戸市中央区東川崎町1丁目3番1号
    概要 総合エンジニアリングメーカー

    川崎重工業は、1896年創業の老舗メーカーで、航空宇宙からロボティクスまで多岐にわたる分野を手がけています。

    日本初の産業用ロボット開発を手掛けた技術力と、100年以上にわたる信頼の積み重ねが魅力です。

    ピッキングロボットとしては「picKstar」や「YFシリーズ」があり、高速性能と衛生環境への対応が大きな強みです

    食品や医薬品、航空部品の現場など、スピードと清潔性が求められる現場で多数導入されています。

    ラピュタロボティクス / Rapyuta Robotics

    メーカー名 ラピュタロボティクス / Rapyuta Robotics
    設立年 2014年
    本拠地 東京都江東区平野4丁目10番5号
    概要 クラウドロボティクスと物流AMRのメーカー

    ラピュタロボティクスは、2014年設立、クラウド制御技術に強みを持つロボットベンチャーです。

    独自の「rapyuta.io」プラットフォームを活用し、異種ロボットの連携制御や柔軟な導入を実現しています。

    同社のピッキングアシストロボット「ラピュタPA-AMR」は、人とロボットが協働することで作業効率を飛躍的に向上させます。

    アスクルや佐川グローバルロジスティクスなどの物流倉庫で導入されており、特に倉庫レイアウトが頻繁に変わる現場で効果を発揮しています。