圧入ロボット

圧入ロボットのIC

近年、製造業における人手不足や品質要求の高度化、そして国際競争の激化を背景に、生産プロセスの自動化は重要な要素となっています。

「圧入ロボット」は、まさにこの自動化を力強く推進し、製造現場の変革を支えるキーテクノロジーの一つです。

しかし、圧入ロボットと聞いても、具体的にどのようなもので、どんな役割を果たしているのか、まだ詳しくご存じない方もいらっしゃるかもしれません。

本記事では、圧入ロボットの基礎知識から、具体的な活用例、種類ごとの特徴やおすすめメーカーまで網羅的に解説します。

貴社に生産性・品質向上をもたらす可能性がありますので、是非ご一読ください。

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目次

圧入ロボットとは? 基本知識や活用事例を解説

圧入ロボットとは?

本章では、そもそも「圧入」とは何かという基本から、圧入ロボットの定義、その具体的な役割、そして実際にどのような現場で活躍しているのかという活用事例まで、網羅的に、そして分かりやすく解説していきます。

そもそも「圧入」とは? 基本原理と特性

「圧入(あつにゅう)」とは、機械部品を組み立てる際の基本的な接合方法の一つです。

具体的には、一方の部品に設けられた穴に対し、その穴よりもわずかに大きい径を持つもう一方の部品(軸やピンなど)を、専用のプレス機や治具を用いて強い力で押し込み、固定する加工技術を指します。

この際、部品同士の間に生まれる摩擦力や、部材の弾性変形による押し広げようとする力(フープ応力)によって、強固な締結状態が得られます。

圧入の基本は、部品同士を強い力でしっかりとはめ合わせるシンプルな仕組みです。そして、この方法だからこそ得られる利点は多くあります。以下のリストから確認しましょう。

    【圧入の特性】

  • 高い締結強度と耐久性
    溶接や接着剤による接合とは異なり、部材そのものの機械的な力で結合するため、高い強度と優れた耐久性を持ちます。振動や衝撃が加わるような環境でも緩みにくいのが特徴です。
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  • 気密性・液密性の確保
    部品同士が隙間なく密着するため、高いシール効果を発揮し、気体や液体の漏れを防ぐことが求められる箇所に適しています。
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  • 部品点数の削減と設計の自由度向上
    ねじやボルト、ナットといった締結専用の部品が不要になるケースがあり、製品の部品点数削減や軽量化、コンパクト化に貢献します。
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  • 異種材料の接合の可能性
    金属同士はもちろんのこと、金属と樹脂、セラミックスなど、異なる素材の部品を組み合わせることも可能です。

これらの特性から、圧入は自動車のエンジンやトランスミッションの構成部品、モーターに使用されるベアリングやシャフト、電子部品のコネクタや端子、さらには家電製品や産業機械の軸受け部分など、広範な製品において、その性能と信頼性を支える重要な基盤技術として活用されています。

この精密な圧入作業を、いかに安定して高精度に行うかが、最終製品の品質を左右すると言っても過言ではありません。

圧入ロボットの定義と基本的な役割

「圧入ロボット」とは、前述した「圧入」作業を、プログラムに基づいて自動で行うために最適化された産業用ロボットシステムを指します。

このシステムは通常、高い位置決め精度を持つ多関節ロボットや直交ロボットなどのロボットアームと、その先端に取り付けられ実際に圧入を行うための専用ツール(サーボプレスユニット、油圧・空圧プレスヘッド、特殊な圧入エンドエフェクタなど)、そしてこれらを精密に制御するコントローラーやセンサー群から構成されます。

以下から、圧入ロボットの果たす役割を確認しましょう。

超精密な位置決めと安定した挿入動作

ロボットならではの高い繰り返し精度により、部品をミクロンオーダーで正確に位置決めし、定められた角度や速度でスムーズに挿入します。

これにより、部品のかじりや破損を防ぎ、一貫した組立品質を実現します。

緻密な加圧力・変位量コントロール

サーボプレスなどの制御技術と力覚センサーを組み合わせることで、圧入する部品の材質、形状、あるいは求められる締結強度に応じて、加える力や押し込む距離をリアルタイムで精密に調整・制御します。

これにより、過不足のない最適な圧入状態を確実に作り出します。

大幅な生産性向上と24時間連続稼働

人手による作業と比較して、はるかに高速かつ安定した連続作業が可能です。これにより、製品1個あたりのタクトタイムを短縮できるほか、夜間や休日を含めた24時間体制での自動運転も実現し、生産効率を向上させます。

作業者の負担軽減と安全な作業環境の実現

重量物の取り扱いや、大きな力を必要とする圧入作業、単調な繰り返し作業から作業者を解放し、身体的な負担を軽減します。

また、プレス作業に伴う潜在的な危険から作業者を隔離することで、工場全体の安全性を高めることにも貢献します。

多品種少量生産への高い柔軟性と迅速な段取り替え

事前に登録されたプログラムを呼び出すだけで、異なる種類の部品や圧入条件へも迅速かつ容易に対応できます。

これにより、近年ますます需要が高まっている多品種少量生産や変種変量生産といった、柔軟性が求められる製造ラインの構築を強力にサポートします。


このように、圧入ロボットは、手作業や従来の専用機では達成が難しかったレベルの精度、品質、生産性、そして柔軟性を同時に実現するための重要な解決策の一つです。

圧入ロボットの活用事例

圧入ロボットは、その高い精度、優れた力制御能力、そして柔軟性を活かして、現代の多様な製造業の現場で不可欠な存在となっています。ここでは、具体的な活用事例を業界別にご紹介します。

業界 主な用途・対象部品
自動車産業 エンジン・トランスミッション関連 : ベアリング、ピストンピン、バルブガイド、ギア、シャフト等

電動化部品(EV・ハイブリッド車): モーターシャフト、インバーター/バッテリーのブッシュ・端子等

その他車体・内装部品 : サスペンションブッシュ、ドアヒンジピン、内装クリップ等

電機・電子部品産業 各種モーター・ポンプ : 小型モーターのベアリング・シャフト、ポンプのインペラ・メカニカルシール等

コネクタ・スイッチ類 : ハウジングへの微細ピン・端子の圧入

プリント基板関連 : プレスフィットコネクタ、ピンヘッダ

一般機械・精密機械産業 ベアリング・軸受全般 : 各種機械のベアリング・軸受(ハウジング、シャフトへ)

ギア・プーリー・カップリング : ギア、プーリー、カップリング(シャフトへ)

油圧・空圧機器部品 : シリンダーのシール材・ロッドガイド等

家電製品・その他多様な分野 エアコン・冷蔵庫などの白物家電 : コンプレッサー部品、ファンモーター軸受等

医療機器 : 医療用微細部品

これらの事例は、圧入ロボットが活躍する現場のほんの一例に過ぎません。

共通して言えるのは、圧入ロボットが人手では難しい精密な力加減や位置決めを安定して繰り返し行い、製品の品質向上、生産コストの削減、そしてより安全な作業環境の構築に貢献しているという点です。

次の章では、圧入ロボットのメリット・デメリットを解説します。自社にとって最適な圧入ロボットを導入するためにも、ぜひご確認ください。

圧入ロボット導入のメリット・デメリットを確認

圧入ロボット導入のメリット・デメリット
圧入ロボットの導入は、製造現場に革命的な変化をもたらす可能性を秘めています。

生産性の向上、品質の安定化、コスト削減といった多くの恩恵が期待できる一方で、導入にあたっては慎重に検討すべき課題や注意点も存在します。

ここでは、圧入ロボットを導入することで得られる「メリット」と、事前に理解しておくべき「デメリット」の両側面を、主要なポイントに絞って詳しく解説します。これらの情報を比較検討し、貴社にとって最適な自動化戦略を立てるための一助としてください。

圧入ロボットのメリット

圧入ロボットの導入は、製造プロセス全体に質の高い変化をもたらし、企業の競争力強化に貢献します。主なメリットは以下の通りです。

圧入ロボットのメリット

  • 高速かつ24時間連続での安定稼働により、タクトタイムの短縮と生産量の増大が実現され、生産効率が向上します。
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  • プログラムに基づく均一で高精度な作業がヒューマンエラーを排除し、製品品質のバラつきを極小化して不良率を低減させ、品質の安定化と信頼性向上に貢献します。
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  • 重量物作業や単調作業、危険作業から作業者を解放して労働災害リスクを低減し、より安全で働きやすい職場環境を構築することで、作業環境の抜本的な改善と安全性の確保が図られます。
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  • 省人化による人件費の抑制、不良品削減による材料ロスや再加工コストの低減、そしてエネルギー効率の最適化などを通じ、長期的な視点でのコストダウンが実現され、トータルコストが削減されます。

圧入ロボット導入のメリットは、生産性と品質の両面における向上です。

ロボットによる高速かつ正確無比な作業は、24時間体制での安定生産を可能にし、これまで人の手に頼らざるを得なかった精密な圧入工程においても、品質の均一化と不良率の削減を実現します。

これにより、人件費の最適化や材料ロスの削減といった直接的なコストダウンにも繋がり、企業の収益改善に貢献します。

さらに、作業者を過酷な労働や危険な作業から解放することで、安全で働きやすい職場環境を整備できる点も、従業員の満足度向上や人材確保の観点からメリットと言えるでしょう。

これらのメリットは、多品種少量生産への柔軟な対応や、熟練技能のデータ化による技術伝承といった副次的な効果も生み出し、製造業の持続的な成長を支える力となります。

圧入ロボットのデメリット

多くのメリットをもたらす圧入ロボットですが、その導入と運用にはいくつかの課題や注意点も存在します。これらを事前に把握し、対策を講じることが成功の鍵となります。

圧入ロボットのデメリット

  • ロボット本体や関連装置、システム構築費用など導入には多額の初期コストが発生するため、高額な初期投資と投資回収期間を含めた慎重な費用対効果の吟味が不可欠となります。
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  • ロボットのティーチングやプログラミング、保守・メンテナンスには専門知識が必要なため、これらのスキルを持つ人材の確保や育成、あるいは外部委託といった継続的な運用体制の構築が課題です。
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  • ロボットシステムや安全柵の設置には相応のスペースが必要で既存ラインへのレイアウト変更を伴う場合もあり、自社に最適なシステムを構築するためのSIer選定と連携の難しさも、設置スペースの制約とシステムインテグレーションにおける課題と言えます。
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  • プログラムされていないイレギュラーな事態への対応や人間の感覚的な微調整が必要な作業は苦手とするため、全ての作業に対応できるわけではない柔軟性の限界を理解し、導入対象とする作業の選定が重要です。

圧入ロボット導入を検討する上でハードルとなるのが、高額な初期投資です。

ロボット本体だけでなく、プレスユニット、安全柵、周辺装置、そしてシステム全体の設計・構築にかかる費用は決して小さくありません。

そのため、導入効果を具体的に試算し、投資回収計画を綿密に立てることが求められます。

また、導入後にはロボットを運用・保守するための専門知識を持った人材が必要不可欠となり、その育成や確保、あるいは外部への継続的な委託コストも考慮しなければなりません。

物理的な設置スペースの確保や、既存ラインへの組み込みに伴うレイアウト変更、そして自社に最適なシステムを構築してくれる信頼できるシステムインテグレーターを見極める難しさも、事前に認識しておくべき課題です。

さらに、プログラムされた作業以外のイレギュラーな事態への対応や、人間の持つ高度な柔軟性や判断力には及ばない点も理解しておく必要があります。

これらのデメリットを克服するためには、十分な準備期間を設け、専門家と連携しながら慎重に導入計画を進めることが重要です。

種類ごとに圧入ロボットの特徴を解説

圧入ロボットの種類

圧入ロボットと一言で言っても、その心臓部である動力源によっていくつかの種類に分類され、それぞれが異なる特徴を持っています。

最適な圧入ロボットを選定するためには、これらの動力源の違いが、加圧力、制御性、速度、コスト、そしてメンテナンス性といった要素にどのような影響を与えるのかを深く理解することが不可欠です。

誤った選定は、期待した性能が得られないばかりか、無駄なコスト発生にも繋がりかねません。

本章では、圧入ロボットの代表的な動力源である「空気圧式」「油圧式」「電動式(サーボプレス)」の3種類を取り上げ、それぞれの基本的な仕組み、メリット・デメリット、そしてどのような用途に適しているのかを詳しく解説していきます。

各方式の特徴を把握し、貴社の製品や生産プロセスに合致した圧入ロボット選びの参考にしてください。

空気圧式圧入ロボット

空気圧式圧入ロボットは、圧縮空気を動力源としてシリンダーを駆動させ、その力で圧入作業を行うロボットシステムです。工場内に既にエア配管設備があれば比較的導入しやすく、シンプルな構造が特徴です。

空気圧式圧入ロボットのメリット

  • 構造が比較的単純なため初期導入コストを抑えやすい傾向があります。
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  • 空気の応答性を活かしたシリンダーの高速な往復運動が可能で、サイクルタイム短縮に貢献します。
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  • 作動流体が空気のため油漏れの心配がなくクリーンな環境での作業に適しています。
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  • 多くの工場に整備された既存のエアコンプレッサーやエア配管を活用できる場合があります。

空気圧式圧入ロボットのデメリット

  • 空気の圧縮性により加圧力や速度の精密なコントロールが難しく、圧入途中の細かな調整が苦手です。
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  • 高い圧力を得るためには大型シリンダーが必要で、現実的に出せる力には限界があります。
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  • エア消費量が多くコンプレッサーの運転に電力コストがかかり、エア漏れはエネルギーロスに直結します。
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  • 排気音など作動音が比較的大きい場合があります。

油圧式圧入ロボット

油圧式圧入ロボットは、作動油を油圧ポンプで加圧し、その油圧によってシリンダーやラムを駆動させ、強力な力で圧入作業を行うロボットシステムです。大きな力を必要とする場合に選ばれることが多い方式です。

油圧式圧入ロボットのメリット

  • 油が非圧縮性に近いため小さな動力で大きな加圧力を容易に得られ、重量部品や高強度材料の圧入に適しています。
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  • 一定の圧力を比較的安定して保持することが得意です。
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  • 高負荷に耐える堅牢な構造で耐久性に優れる傾向があります。

油圧式圧入ロボットのデメリット

  • 作動油の使用による油漏れリスクが常に伴い、クリーンルームでの使用が難しく環境負荷にも注意が必要です。
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  • 油圧ユニットが必要でシステム全体が大型化しやすく広い設置スペースを要します。
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  • 作動油の定期的な交換やフィルター清掃などのメンテナンスが不可欠で手間とコストがかかります。
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  • 油温変化が作動に影響し精密作業には油温管理が必要になる場合があります。
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  • アイドリング時もポンプが稼働する場合があり電動式に比べてエネルギー効率が劣る傾向があります。

電動式(サーボプレス)圧入ロボット

電動式圧入ロボットは、サーボモーターを動力源とし、ボールねじやギア機構を介して直線運動に変換し、圧入作業を行うロボットシステムです。「サーボプレス」とも呼ばれ、近年その高い制御性と多機能性から導入が進んでいます。

電動式(サーボプレス)圧入ロボットのメリット

  • サーボモーターの特性を活かし加圧力や速度、位置などをプログラムで精密に制御でき、複雑な圧入プロファイルも容易に実現可能です。
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  • 圧入中の荷重や変位量をリアルタイムで検知・記録・分析でき、圧入不良の判定や品質管理、トレーサビリティ確保が容易です。
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  • 油やエアを使用せず作動油の飛散やエア漏れの心配がないためクリーンな作業環境を維持でき、作動音も小さく静かです。
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  • 必要な時だけモーターを駆動するため待機電力が少なく、他方式に比べエネルギー効率に優れています。
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  • 大型付帯設備が不要で比較的コンパクトにシステムを構成でき、機械的な摩耗部品が少なくメンテナンスの手間や頻度を低減できます。

電動式(サーボプレス)圧入ロボットのデメリット

  • 高機能なサーボモーターや制御システムなどを使用するため、他方式に比べ初期導入コストが高くなる傾向があります。
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  • 大きな加圧力を出す場合は大型で高価な部品が必要となり、コストや設置スペースで油圧式に劣る場合があります。
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  • 多彩な制御が可能な反面、高度な設定やプログラミングに専門知識が求められる場合があります。

さて、ここまで圧入ロボットの主な動力源である空気圧式、油圧式、そして電動式(サーボプレス)の3種類について、それぞれの基本的な仕組み、メリット・デメリット、そして適した用途を詳しく見てきました。

各方式が持つ独自の強みや特性を確認した次には、具体的な圧入ロボットの選び方を解説します。

貴社に最適な圧入ロボットの選び方を解説

圧入ロボットの選び方

圧入ロボットの導入は、製造ラインの自動化と品質向上に貢献しますが、その選定は一般的な産業用ロボットとは異なる、特有の視点が求められます。

単に部品を搬送したり組み立てたりするロボットと異なり、圧入ロボットは精密な「力」と「変位」を制御し、高品質な「はめあい」を実現することが核心的な役割です。

そのため、動力源の特性、力制御の精度、そして圧入品質そのものをどう管理するかが、選定における極めて重要なポイントとなります。

ここでは、数ある圧入ロボットの中から貴社に最適な一台を選び抜き、その性能を最大限に引き出すために、3つの選定ポイントを詳しく解説していきます。

ポイント1:「圧入力とストローク制御」の精度と柔軟性を見極める

圧入ロボット選定において重要なのは、作業の核となる「力」と「深さ(ストローク)」をいかに精密かつ柔軟に制御できるかです。

部品の材質や形状、求められる締結力によって最適な力の加え方や速度、圧入中の力の変化(圧入プロファイル)は異なり、この制御性能が製品品質に直結するため、徹底的な見極めが不可欠です。

最適な制御性能を持つロボットを選ぶためには、特に以下の4つの要素を詳細に確認しましょう。

  • 要求圧入力と分解能の確認
    ワークに必要な最大圧入力と、それを細かく調整できる分解能が、軽圧入から高荷重圧入までの要求範囲を確実にカバーできるかを確認します。
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  • 圧入プロファイルのプログラム柔軟性
    圧入中の力や速度を複雑に変化させる制御(圧入プロファイル ※1)を柔軟にプログラムできるかと、その設定が直感的かつ容易であることにより、ワークへの負荷軽減や品質安定化が期待できるかを確認します。
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  • 搭載センサー(荷重・変位)の性能評価
    精密な圧入の土台となるため、加える力を検知する荷重センサーと圧入した深さや位置を検知する変位センサーの精度、応答性、信頼性は、カタログスペックだけでなく実機でも確認することが推奨されます。
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  • 動力源による制御特性の理解
    ロボットの動力源によって力とストロークの制御特性が異なるため、高精度かつ柔軟な荷重・位置制御が可能な電動式(サーボプレス、フィードバック制御※2に優れる)、大きな力を出力できるものの精密なプロファイル制御の難易度が上がる油圧式、そして応答性は高いが精密な力制御や中間動作が苦手な空気圧式といった、各々の特徴を把握することが重要です。

ポイント2:「圧入品質管理機能」とトレーサビリティ体制を評価する

圧入作業は完了後に内部状態の目視確認が難しいため、プロセス中のデータに基づき品質を保証する仕組みが重要です。

最適な圧入ロボットは、品質をリアルタイムで監視・判定し、問題検知や記録管理を行う能力を備え、不良品の流出防止と製造履歴確保に貢献します。

貴社の品質保証体制に必要な機能を備えているか、次の点を中心に評価しましょう。

まず、圧入中の荷重や変位データから異常を検知する機能(設定した上下限値からの逸脱、圧入時間の異常など)の有無と、その判定精度を確認します。

次に、より詳細な品質状態把握に有効な圧入波形(荷重-変位グラフ)のモニタリング機能や、自社の基準に合わせたOK/NG判定ロジックのカスタマイズ性も重要な評価ポイントです。

さらに、各作業の圧入データを記録・保存し、必要に応じて出力できる機能は、製造記録の追跡性を確保する上で不可欠です。統計的工程管理(SPC)との連携も視野に入れると、より高度な品質改善に繋がります。

ポイント3:「動力源の特性と圧入ヘッド・治具」の最適マッチングを追求する

圧入ロボットの性能を最大限に引き出すためには、ロボット本体の能力だけでなく、動力源の特性、圧入ヘッド(実際にワークと接触する部分)、そして治具(ワークを正確に保持する装置)という3つの要素が最適に組み合わさることが不可欠です。

これら三者は一体となって圧入品質と生産効率を左右するため、個々の部品の性能だけでなく、システム全体としての調和(マッチング)を追求することが極めて重要になります。

これらの要素を総合的に検討し、最適な組み合わせを見つけるためのポイントを表にまとめると、以下のようになります。

検討要素 主な検討・評価・考慮ポイント
動力源の選定 ・必要な圧入力
・求められる制御性(ポイント1参照)
・目標とするサイクルタイム
・エネルギーコスト
・作業環境(クリーン度、騒音レベルなど)
圧入ヘッドの適合性 ・ワーク形状へのアクセスしやすさ
・圧入方向の適切性
・ヘッド材質の耐久性
・特殊な圧入工法への対応可否
治具設計の最適化 ・ワークを確実かつ正確に位置決め・固定できる剛性
・圧入時に発生する反力への耐性
・多品種生産を行う場合の段取り替えの容易さ

次の章では、圧入ロボットを導入する際の注意点を解説します。

圧入ロボットを導入する際の注意点を解説

圧入ロボットの注意点

これまで圧入ロボットの基礎知識や選定のポイントを解説しました。本章では、これらの知識を基に、導入時の注意点を解説します。

効果的な導入を実現するために、是非ご確認ください。

圧入プロセスの「見える化」と徹底した事前検証の重要性

圧入は部品が組み合わさった後の内部品質が問われるため、加工中の「力」と「変位(深さ)」の関係性を正確に把握(見える化)することが重要です。

導入検討時には、実際のワークを用いたテスト加工やPoC(Proof of Concept:概念実証)を徹底的に行いましょう。

これにより、最適な圧入条件(力、速度、時間など)や、良否判定の基準となるデータ(圧入波形など)を事前に見極めることができます。

この検証作業を通じて、必要なセンサーの仕様やデータ収集・分析システムの要件も明確になり、導入後のトラブルを未然に防ぐことに繋がります。

専用ツール(圧入ヘッド・治具)の最適設計と運用性の吟味

汎用的なロボットハンドと異なり、圧入ロボットの先端に取り付ける圧入ヘッドや、ワークを確実に固定する治具は、多くの場合、対象ワークや圧入条件に合わせて専用設計・製作されます。

これらの専用ツールの設計自由度、材質選定による耐久性、そして長期運用を見据えたメンテナンス性を十分に検討しましょう。

特に多品種のワークに対応する場合は、ツールの交換作業の容易さや段取り時間も生産効率に影響します。ロボット本体、センサー、周辺装置との物理的な干渉がないかなど、システム全体での整合性も設計段階で確認が必要です。

高加圧作業特有の安全対策とリスクアセスメントの徹底

圧入作業は、時には大きな力を発生させるため、一般的なロボットシステム以上に作業者の安全確保とリスク管理が重要となります。

安全柵やライトカーテン、ドアスイッチといった基本的な安全装置の設置はもちろんのこと、圧入動作中の予期せぬ荷重増加やワーク破損・飛散といった事態を想定したリスクアセスメントを徹底的に実施しましょう。

その上で、異常検知時の緊急停止ロジック、治具の堅牢な固定とワークの確実な保持、そして万が一の事態に備えた作業手順の策定など、圧入作業特有のリスクに対応した多角的な安全対策を講じることが不可欠です。


この章では、圧入ロボット導入時の注意点を解説しました。最後に、圧入ロボットの製造・販売を行っているおすすめメーカーを紹介します。

JET-Globalがおすすめす圧入ロボットメーカーを紹介

圧入ロボットのメーカー

ここからは、圧入ロボットの分野で特に注目されるメーカーをご紹介します。各社の特徴を比較検討しながら、自社に最適な圧入ロボット選定のためご参考ください。

ファナック(FANUC)

メーカー名 ファナック(FANUC)
設立年 1956年
本拠地 山梨県南都留郡
概要 自動化機器や産業用ロボットの製造メーカー

ファナックは、1956年に設立され、山梨県南都留郡に本拠地を構える自動化機器や産業用ロボットの製造メーカーです。

特に産業用ロボットとCNC(数値制御)機器において、高精度で信頼性の高い技術を提供しており、無人化や高効率化を実現する製品開発には高い評価を得ています。

同社の圧入ロボット「CR-7iA」は、協働ロボット(コボット)として設計されており、人とロボットが安全に同じ作業エリアで働ける特徴があります。

他のメーカーの圧入ロボットと比較した際、ファナックの「CR-7iA」はその協働性の高さが特徴です。人との共同作業が安全に行えるため、ラインの柔軟性が増し、作業の効率化と安全性向上に貢献しています。

CR-7iAは、自動車産業をはじめ、家電や電子機器、医療機器などの製造業に広く導入されています。

安川電機(YASKAWA Electric)

メーカー名 安川電機(YASKAWA Electric)
設立年 1915年
本拠地 福岡県北九州市
概要 ロボット、モーションコントロール機器、電機機器の製造メーカー

安川電機は、1915年に設立され、福岡県北九州市に本拠地を置く企業で、ロボットやモーションコントロール技術に強みを持っています。

特に高精度で高信頼性を誇る製品と、顧客のニーズに合わせた柔軟なカスタマイズ対応が特徴です。

同社の圧入ロボット「MOTOMAN-HP20D」は、精密なモーションコントロールを実現し、圧入作業を高い精度で行います。

他のメーカーと比較した際、安川電機のロボットは、モーションコントロール技術が優れており、圧入作業において高精度での動作が可能です。そのため、精密な圧入作業を求める環境で優れたパフォーマンスを発揮します。

MOTOMAN-HP20Dは、自動車、電子機器、医療機器の製造業界で広く導入されています。

三菱電機(Mitsubishi Electric)

メーカー名 三菱電機(Mitsubishi Electric)
設立年 1921年
本拠地 東京都千代田区
概要 電機機器、産業用ロボット、エネルギー関連機器の製造メーカー

三菱電機は、1921年に設立され、東京都千代田区に本拠地を置く電機機器と産業用ロボットの製造メーカーです。

高度な自動化技術とロボット制御技術に強みを持ち、特に自動車や電子機器産業における導入実績が豊富です。

同社の圧入ロボット「RV-Fシリーズ」は、精密な圧入制御を行い、高精度な作業が求められる環境において優れた性能を発揮します。

他のメーカーの圧入ロボットと比較した際、「RV-Fシリーズ」は、その高精度な圧入制御が最大の強みです。精密な動作が求められる圧入作業において、確実かつ精密に作業を進めることができます。

RV-Fシリーズは、自動車業界や電子機器業界において広く使用されています。

川崎重工業(Kawasaki Heavy Industries)

メーカー名 川崎重工業(Kawasaki Heavy Industries)
設立年 1896年
本拠地 兵庫県神戸市
概要 重工業製品、産業用ロボット、航空宇宙機器などの製造メーカー

川崎重工業は、1896年に設立され、兵庫県神戸市に本拠地を置く重工業製品や産業用ロボットの製造メーカーです。

特に自動車や航空機などの精密な組み立てに強みを持ち、機械工学とロボット工学の融合により幅広い産業ニーズに対応しています。

同社の圧入ロボット「RSシリーズ(RS007N)」は、柔軟な設計とカスタマイズ性が特徴です。特定の圧入作業や組み立てに特化した仕様を提供でき、各業界のニーズに適応します。

RSシリーズ(RS007N)は、その柔軟性とカスタマイズ性が強みです。特定の作業に最適な設計が可能であり、さまざまな業界のニーズに柔軟に対応できます。

また、自動車産業や航空機製造、電子機器の組み立てなどで使用されています。

デンソー(DENSO)

メーカー名 デンソー(DENSO)
設立年 1949年
本拠地 愛知県刈谷市
概要 自動車部品の製造およびロボット技術の提供メーカー

デンソーは、1949年に設立され、愛知県刈谷市に本拠地を構える自動車部品の製造およびロボット技術の提供メーカーです。

特に自動車産業向けの高度な電子機器や部品を手掛ける企業として、ロボット技術においても高い技術力を誇ります。

同社の圧入ロボット「VP-6242」は、小型で高い柔軟性を持ち、狭い作業スペースでも効率的に使用できます。

VP-6242は、小型でありながら高い柔軟性を持っており、狭い作業スペースでも使用可能で、効率的に圧入作業を行うことが可能です。

デンソーの圧入ロボットは、主に自動車産業で導入されています。自動車部品の組み立てや車両の組み立てラインで、圧入作業や自動化作業に広く利用されています。

また、ご不明点がございましたら、以下からお気軽にお問い合わせください。

※JET-Globalの問い合わせフォームに遷移します。