ロボット架台
産業用ロボットの高精度な動作や安全な運用を支えるロボット架台は、自動化ラインの性能を左右する重要な構成要素です。
「本当に必要なのか」「選び方はどうすればいいのか」など、導入を検討する際にはさまざまな疑問が浮かぶでしょう。
本記事では、ロボット架台の基本から種類別の特徴、選定ポイント、さらにおすすめの国内メーカーの情報を解説します。
ロボット導入の土台づくりにおいて、導入を成功に導くためのヒントになる情報を掲載しているので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
ロボット架台とは? 定義や役割を徹底解説
ロボット架台とは、産業用ロボットを正確かつ安定的に稼働させるための基盤となる土台です。ロボットの動作精度を高め、稼働中の振動やズレを防ぐために不可欠な存在であり、工場や倉庫などの自動化現場で幅広く活用されています。
架台の主な役割は、ロボット本体の設置と固定ですが、実はそれだけではありません。制御装置や電源機器を内部に格納できる設計もあり、配線処理をスムーズにしたり、保守点検の効率化に寄与したりもします。
また、ロボットアームの可動範囲を確保するための高さ調整機構も備えていることが多く、作業空間全体の設計に影響を与える大切な要素です。
さらにロボット架台は、現場環境の安全性や作業効率の確保にもつながるため、単なる「土台」ではなく、システム全体のパフォーマンスに直結する設計部品と言えます。
次章で、ロボット架台にはどのような種類があるのかを具体的に解説します。
ロボット架台を設置方法によって4種類に分けて解説
ロボット架台には、設置環境に応じてさまざまなタイプが存在します。ここでは代表的な4種類について、それぞれの特徴と、他のタイプと比較した際のメリット・デメリットを解説します。
床置き型
床に直接設置する最も一般的なタイプで、重量のある産業用ロボットにも対応できる堅牢な構造が特徴です。
天吊り型
天井構造に取り付けてロボットを吊るす方式で、床面を最大限に活用できるため、狭小空間やクリーン環境での使用に適しています。
棚置き型
小型ロボット向けに設計された棚置き型は、省スペースかつ仮設にも対応できる柔軟性が魅力です。
壁掛け型
壁面を活用することで、ロボットの設置スペースを最小限に抑えられるタイプです。作業範囲が限定される用途に適しています。
このように、ロボット架台は作業内容や設置環境に応じて多様な形式が存在します。では、なぜロボット架台はそもそも必要とされるのでしょうか。そのメリットについて詳しく見ていきましょう。
そもそもロボット架台は必要? 活用によるメリットを紹介
結論、ロボット架台は必要です。自社の環境に適切なロボット架台を設置することで、ラインやシステム全体の設計を最適化し、生産効率を上げたり安全性を向上させたりできます。
具体的には、ロボット架台の設置によって以下のようなメリットが享受できます。
ロボット架台がない場合、ロボットの動作精度が低下し、工程ミスやトラブルの原因となる可能性があります。特に精密な組立や検査作業を行う現場では、安定したロボット架台が不可欠です。
また、ロボット架台を設置しないと、振動や傾きにより本体が損傷するリスクが高まり、安全性にも悪影響を及ぼします。架台の適切な選定と設計により、こうしたリスクを事前に排除可能です。
加えて、ロボット架台は、配線処理や制御盤の設置を想定した設計がされていることが多く、作業効率や保守性の面でもメリットをもたらします。設置や保守にかかる人的・時間的コストの削減にもつながり、長期的な運用において差が表れるでしょう。
このように、ロボット架台はロボットシステムの要とも言える存在です。続いては、ロボット架台を導入する際に失敗しないための選定ポイントについて詳しく解説します。
ロボット架台を選ぶときのポイントを解説
先述したようにロボット架台は単なる設置台ではなく、ロボットの性能を最大限に引き出すための重要な要素です。ここでは、選定時に特に重視すべき3つのポイントを詳しく解説します。
剛性と強度
ロボット架台の選定ポイントとしてまずは、ロボットの可搬質量や動作時の負荷に耐えられる十分な剛性と強度を持つ製品を選ぶことが重要です。
この観点は、ロボット本体の重量やアームの長さ、動作スピードや姿勢といった複数の要素がロボット架台にかかる力を左右するため、状況に応じた最適な構造を見極める必要があります。
仮に剛性が不足している場合、動作中に架台がたわんで振動が発生し、位置決め精度の低下や制御ミスの原因となるでしょう。特に、高精度な位置決めが求められる溶接や組立など、繊細な動作を行う工程ではこの選定が重要になります。
必要な剛性を確保したロボット架台を使えば、精度を保ちながら高速動作にも対応でき、生産効率が上がる可能性を高められるでしょう。
防振・制振性能
次に考慮すべきは、設置場所の構造や周囲からの振動の影響を考慮し、防振・制振性能を備えたロボット架台を選ぶことです。
設置場所の床・壁・天井の剛性、周辺設備の稼働による衝撃、ロボットの動作周波数などが振動の発生や共振リスクに影響を与えます。
振動対策が不十分な場合、ロボットが共振を起こして制御異常や不安定動作を引き起こし、生産の中断や品質低下を招いてしまうかもしれません。特に、限られたスペースで壁面や上部にロボットを設置するケースや、振動源の多い環境ではこの選定項目が大切です。
防振構造の架台を選べば、床置きだけでなく壁掛けや天吊りでも安定した動作を実現できるでしょう。
配線・制御機器との接続性
最後に押さえるべきは、配線や制御盤の収納スペースなど、周辺機器との接続性や保守のしやすさを考慮した設計のロボット架台を選ぶことです。
I/Oの数やエア配管の有無、将来的な機器構成やレイアウト変更の可能性などが、接続性の要件を決定します。
もし配線処理が適切でないと、ケーブルの断線や誤接続といったトラブルが発生し、ロボットが停止してしまうリスクが高まります。
そのため、多品種少量生産を行っている現場や、ロボットセルを頻繁に移設・再構築する必要がある工場では、特にこの観点を重視しましょう。
配線や制御機器をスマートにまとめられるロボット架台を使えば、メンテナンスがしやすく変更対応にも柔軟に対応できるでしょう。
このように、ロボット架台を選ぶ際は、構造面・性能面・保守面の3つの観点から慎重に検討する必要があります。次は、実際に導入を検討する際に参考となる、おすすめのロボット架台メーカーを紹介します。
【当編集部ピックアップ】おすすめのロボット架台メーカーを紹介
本章では、当編集部がピックアップしたおすすめのロボット架台メーカーを紹介します。
※JET-Globalの問い合わせフォームに遷移します。
※一部メーカーとは提携がない場合がありますが、ユーザー様に最適なご案内ができるよう努めています。
エヌアイシ・オートテック / NIC Autotec
メーカー名 | エヌアイシ・オートテック / NIC Autotec |
設立年 | 1971年 |
本拠地 | 東京都江東区 |
概要 | アルミフレーム構造材メーカー |
エヌアイシ・オートテックは、1971年に設立された東京都江東区本社のアルミフレーム構造材メーカーです。同社は、モジュール構造を可能にする「ALFA FRAME」により、設計自由度と短納期対応を両立した生産体制を構築しています。
小型ロボット専用架台である「AK-Rシリーズ」を展開しており、軽量かつ高い加工性を持つアルミ素材を活かした構成が強みです。
同製品は、軽量で加工性に優れたアルミ素材を標準化し、最短2日で出荷できる体制により、スピードと柔軟性を重視する現場で支持されています。
半導体・自動車・食品など多様な製造ライン向けに導入実績があり、幅広い業種で活躍しています。
鍋屋バイテック / Nabeya Bi-tech
メーカー名 | 鍋屋バイテック / Nabeya Bi-tech |
設立年 | 1940年 |
本拠地 | 岐阜県関市 |
概要 | 鋳鉄製機械部品メーカー |
鍋屋バイテックは、1940年に設立された岐阜県関市に本社を構える鋳鉄製機械部品メーカーです。振動減衰性の高い鋳鉄素材を活用し、主要ロボットメーカーに対応した標準設計の製品群を展開しています。
代表製品は「RSA-FA/RSBシリーズ」で、小型〜中型ロボットの安定動作を支える堅牢なロボット架台です。
鋳鉄の高い剛性と減衰性により、振動影響を抑えた安定動作が可能で、精度と耐久性が求められる現場で重宝されています。
公式サイトでは多岐にわたる適合ロボットメーカーが公開されており、組立セルなどへの採用が想定されています。
レオンアルミ / Rheon Alumi
メーカー名 | レオンアルミ / Rheon Alumi |
設立年 | 1985年 |
本拠地 | 栃木県下野市 |
概要 | アルミ鋳物技術に強みを持つメーカー |
レオンアルミは、1985年設立の栃木県に本社を置く、アルミ鋳物技術に特化したロボット架台メーカーです。異物混入のリスクを抑える無塗装対応や、振動吸収性に優れた素材設計で、クリーンで高性能な製品群を提供しています。
主力製品はアルミ鋳物ロボットベース「トール/ミディアム/ミニ」シリーズで、業種に応じたサイズ展開が可能です。
高い減衰性で衛生的な素材を活かし、食品・医薬分野に強みを持っている点が魅力です。
食品包装機や医薬充填ラインで採用されており、安全性と性能が同時に求められる現場で活躍しています。
津島鉄工所 / Tsushima Iron Works
メーカー名 | 津島鉄工所 / Tsushima Iron Works |
設立年 | 1969年 |
本拠地 | 京都府城陽市 |
概要 | 精密機械部品メーカー |
津島鉄工所は、1969年設立の京都府に本拠を構える精密機械部品メーカーです。鉄・ステンレス・アルミといった多様な材料を扱い、一貫体制による受注生産と短納期対応を強みとしています。
展開製品はSS/SUS製ロボット架台(特注)で、用途に応じた完全オーダーメイドに対応可能です。
鉄・ステンレス・アルミを使い分けた設計と、受注生産の柔軟性が、特注ニーズの高い現場で評価されています。
液晶パネルや航空部品関連設備での採用実績あり、精密かつ重量級の設備を支えています。
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