ロボットトラクター

ロボットトラクター

近年、スマート農業の中核として注目されるロボットトラクター。無人運転や自動制御によって効率化を図る新たな選択肢として導入が進んでいます。

しかし「本当に自分の圃場に合うのか」「価格や性能の違いが分かりにくい」といった不安を抱える方も多いのではないでしょうか。

本記事では、ロボットトラクターの導入を検討するうえで押さえておくべき基本情報から、選び方のポイント、主要メーカーの特徴や導入事例までを体系的に解説しています。

各メーカーの強みや実績も解説し、比較検討に役立つ実践的な情報を提供します。ロボットトラクター導入検討中の方はもちろん、関心を持っている段階の方にとっても、有益な判断材料となる内容です。

目次

ロボットトラクターとは? できることや仕組みを分かりやすく解説

ロボットトラクターとは? できることや仕組みを分かりやすく解説

ロボットトラクターとは、農業の現場で人の代わりに自律的に走行し、耕うんや代掻き、肥料散布などの作業を自動で行う農業ロボットの一種です。

主にGPSやGNSSといった位置情報技術とセンサーを組み合わせることで、圃場内を数cm単位で正確に移動し、作業を実行できます。

多くのロボットトラクターは、遠隔操作用のタブレットやクラウドシステムと連携しており、作業計画の登録や運行状況のリアルタイム確認も可能です。

また、障害物検知や自動停止機能など安全対策も備わっており、有人操作と同等またはそれ以上の精度で作業が行えるものもあります。

ロボットトラクターに搭載される主な機能には、以下のようなものがあります。

  • 自動直進・自動旋回機能
  • 作業エリアの自動マッピング
  • 複数台のトラクターの同時制御(協調作業)
  • クラウド上での作業記録の保存と分析

これらの機能により、従来は熟練者の手作業に依存していた農作業が、精度・効率ともに向上することが期待されています。

次章では、ロボットトラクターの種類を解説します。各種類のメリット・デメリットも紹介するので、自分が導入するべきなのはどの種類なのかを確認しましょう。

ロボットトラクターを2種類に分けて紹介

ロボットトラクターを2種類に分けて紹介

ロボットトラクターには有人運転と無人運転の2種類があります。本章では、各種類の概要と、種類を比較した際のメリット・デメリットを解説します。

有人運転型

有人運転型ロボットトラクターは、運転席に作業者が乗って操作を行いながら、GPSや各種センサーを活用して作業の自動化を支援する方式です。

代表的な機能としては、自動直進やUターン支援、耕うん幅の自動設定などがあり、農作業の熟練度に関わらず作業精度を高められます。無人運転型に比べて導入コストが抑えられ、段階的なスマート農業への移行に適しています。

無人運転と比較した際のメリット

  • 導入コストが比較的安価
  • 現場の操作感を残しながら効率化できる

無人運転と比較した際のデメリット

  • 無人運転に比べて人手が必要

無人運転型

無人運転型は、作業者が運転席に乗らずとも、事前に設定した作業経路に従ってロボットトラクターが自律的に運転するタイプです。

タブレットなどから操作指示を行い、障害物検知や停止、安全確認などを含めた完全自動化が実現されており、大規模農場や省人化が求められる現場で活用が進んでいます。

有人運転型と比べて技術的ハードルは高いものの、作業者の拘束時間を削減できるのが特徴です。

有人運転と比較した際のメリット

  • 作業者が不要で省人化に直結
  • 夜間や遠隔地での連続稼働が可能

有人運転と比較した際のデメリット

  • 導入コスト・技術支援が必要

導入したい種類の目安はついたでしょうか?次章では、多くの方が気になっているであろう、ロボットトラクターの価格相場を紹介します。

本体価格以外も紹介するので、大体いくらくらいで導入できそうか、イメージをつけておきましょう。

いくらで導入できる? ロボットトラクターの価格を確認

いくらで導入できる? ロボットトラクターの価格を確認

ロボットトラクターの価格は、馬力や自動運転の有無によって異なるため、導入時には目的と作業規模に応じた価格帯の把握が重要です。

価格帯の相場としては、以下のように分類されます。

  • 有人支援型(50〜70馬力)
  • 900万〜1,200万円

  • 中馬力無人型(80〜120馬力)
  • 1,200万〜2,000万円

  • 高馬力無人型(120馬力超)
  • 2,000万〜2,400万円

個別の製品例としては、以下のような価格帯が公開されています。

  • クボタ Agri Robo SL60A
  • 970万円〜1,100万円

  • ヤンマー YT488R Robot
  • 1,300〜1,500 万円

  • クボタ Agri Robo MR1000AH
  • 1,500〜1,900 万円

  • 井関 TJW1233‑R
  • 2,000万円〜2,300万円

またロボットトラクターは、本体価格以外にも、導入には以下のような周辺コストが必要です。

  • RTK基地局
  • 100万〜200万円(圃場全域で1 cm級測位を行う場合)

  • 作業機(ロータリ、ハローなど)
  • 50万〜300万円/台

  • 通信料・クラウド利用料
  • 0~数万円/年

こうした費用負担を軽減する手段として、国や自治体による補助金やリース支援制度の活用がおすすめです。

国の「スマート農業機械等導入支援事業」では、ロボットトラクター本体や基地局などの購入費用の2分の1(上限1,500万円)までが補助対象となっており、リース導入の場合も同様の支援が受けられます。

ただしロボットトラクター導入にあたっては、いくつか注意すべき点もあります。

まず、購入とリースでは初期負担や税務処理の方法が異なるため、事業計画に合った方式の選定が必要です。

また、補助金の対象となるには交付決定を受ける前に契約や発注を行わないことが条件となっており、申請から導入までのスケジュール管理が不可欠でしょう。

さらに、ロボットトラクター導入後には年間数十万円規模の保守契約費が発生するケースもあるため、導入費用だけでなく、長期運用にかかるコストも含めて総合的に見積もることが重要です。

このように、ロボットトラクターの導入にかかる価格は、時と場合によって大きく変動します。また、その価格が見合ったものになるかどうかも状況次第です。

そのため、まずはメーカーや代理店に問い合わせをして、話だけでも聞いてみるのが良いでしょう。

次章では、ロボットトラクターのメリット・デメリットを詳しく整理します。

ロボットトラクターを導入するメリット・デメリットを解説

ロボットトラクターを導入するメリット・デメリットを解説

先述したように、ロボットトラクターは導入にかなりのコストがかかります。そのため、導入する前に慎重にメリット・デメリットの両面から検討する必要があります。

本章では、ロボットトラクターのメリット・デメリットを詳しく解説するので、各々の状況に当てはめ、導入後のイメージをつけておきましょう。

導入によって得られるメリット

ロボットトラクターメリット

  • 人手不足に対応できる
  • 作業の精度と効率が向上する
  • 夜間作業や連続稼働が可能になる

ロボットトラクターの導入は、深刻な労働力不足に直面している農業分野に効果を発揮します。特に広大な圃場を管理する法人農家にとって、人員に頼らず作業を遂行できることは、生産体制の安定化につながるでしょう。

また、GPSを活用した自動直進や自動旋回、作業経路の最適化機能により、作業精度が均一化され、ムラのない仕上がりが期待できます。これは品質管理や工程改善の面でも有利に働き、収量や品質の向上に寄与する可能性があります。

さらに、夜間や早朝といった従来であれば作業困難だった時間帯においても、ロボットトラクターなら稼働可能です。これにより、天候リスクの回避や繁忙期の作業分散も図れるようになります。

導入前に確認したいデメリット

ロボットトラクターのデメリット

  • 初期投資が高額
  • 操作や設定に技術知識が必要
  • トラブル時の保守体制が重要

ロボットトラクターは高度なセンサー技術や通信機能を備えているため、一般的なトラクターに比べて初期費用が高くなる点は否めません。価格面だけでなく、導入後の運用コスト(通信料、保守契約料など)も含めたトータルコストでの比較が必要です。

また、設定や運用にはGPS測位、クラウドシステム、障害物検知センサーなどの技術的要素が多く含まれており、従来の農業機械とは異なるITリテラシーが求められます。そのため、現場での教育・習熟にも一定の期間と労力が必要でしょう。

さらに、トラブル発生時に迅速な復旧を図るためには、販売代理店やメーカーのアフターサポート体制の確認が重要です。

特に農繁期にロボットトラクターが停止すると生産スケジュールに影響を及ぼすため、導入前に保守契約の範囲や対応時間などを把握しておく必要があります。

以上がロボットトラクターのメリット・デメリットです。確かにデメリットはありますが、運用面や精度でカバーできれば、導入効果の期待できる投資になるでしょう。

次章では、ロボットトラクターの製品を選ぶ際に、重視したいポイントを3つに絞ってお伝えします。

ロボットトラクターの選び方で押さえておきたい3つのポイント

ロボットトラクターの選び方で押さえておきたい3つのポイント

本章では、実際にロボットトラクターの製品やメーカーを選んでいくことを想定して、その際に重視したいポイントを3つに絞って紹介します。

メーカーや代理店に相談する際にも以下の点をはっきりさせておくと相談がしやすいでしょう。

高精度GPSと境界登録の精度を確認する

ロボットトラクターの選定ポイントとしてまず挙げられるのが、高精度GPSによる直進性能や圃場境界のスムーズな登録ができるかどうかです。これはRTK方式などのGPS等級や、走行ルートの学習・修正機能の使いやすさによって左右されます。

もしこの精度が不足すれば、作業跡の重複や間隔の乱れが発生し、畝が不揃いになるだけでなく、燃料や肥料の浪費にもつながります。

特に長直線の多い大規模圃場や、夕方以降の作業継続を考えている場合には、この性能が作業効率に直結する重要な要素となるでしょう。

逆に、精度の高いロボットトラクターを選べば、人の手を介さずとも美しい作業跡を残すことができ、日照条件に左右されずに夜間でも正確に作業をこなせる可可能性が高いです。

作業機との自動連携性能を確認する

次に検討すべきは、ロボットトラクターとロータリーや施肥機などの作業機が自動連携し、適切なタイミングで動作を切り替えられるかという点です。

この連携が成立するかどうかは、ISO-BUSなどの共通規格への対応や、各種連動制御機能の有無に依存します。

連携が取れなければ、走行自体は正確でも、作業機が意図通りに動作せず、耕うんのムラや施肥の過不足が発生してしまいます。特に人手が限られ、多工程を同時並行で進めたい現場においては、こうした自動連携の有無が、作業の成否を分ける要因になり得るでしょう。

連携に対応しているロボットトラクターを選ぶことで、一度の走行で複数の作業を無人で完結でき、作業時間の短縮と精度の向上を同時に実現しやすくなります。

安全機能の種類と検知精度を確認する

最後に、ロボットトラクターの選定ポイントとして欠かせないのが、人や障害物を検知して自動停止できる安全機能の性能です。この点は、カメラやLiDARセンサーの搭載状況、検知範囲、反応速度、緊急停止装置の装備状況などによって性能が左右されます。

検知精度が不十分であれば、近づいた人や動物の存在に気づかず、接触事故や設備損傷といったリスクを招きかねません。特に住宅地に隣接する圃場や、人の出入りが頻繁な現場では、安全性の確保が重視されるポイントになります。

高性能なセーフティ機能を備えたモデルを選べば、作業者が一定距離離れていても安心して無人作業を続けることができ、現場全体の安全水準を高められるでしょう。

以上のポイントを押さえた上で選定に進み、それぞれ適したロボットトラクターを選べるようにしておきましょう。

貴社に必要な条件に合った製品、メーカーを知りたい方はこちらからご相談下さい。専門のスタッフがご対応いたします。

次章では、ロボットトラクターのおすすめメーカーを紹介します。各社の強みや実績も合わせて解説するので、ぜひご覧ください。

【実績や強みの比較も】おすすめのロボットトラクターメーカーを紹介!

【実績や強みの比較も】おすすめのロボットトラクターメーカーを紹介!

最後に当編集部がおすすめするロボットトラクターのメーカーを紹介します。各社のロボットトラクター製品や強み、実績も合わせて解説するので、興味のある会社があれば問い合わせをしてみましょう。

クボタ / Kubota

メーカー名 クボタ / Kubota
設立年 1890年
本拠地 大阪府大阪市
概要 総合農業機械・産業機械メーカー

クボタは、1890年に設立され、大阪府大阪市に本社を構える総合農業機械・産業機械メーカーです。ロボットトラクター分野では、日本国内で最も早く量産型を市場投入し、圧倒的な市販実績と走行データを保有しています。

代表的なロボットトラクターは「Agri Robo MR1000A」「SL60A」「KVTシリーズ」などです。

このロボットトラクターは、GNSSに加え、レーザースキャナやソナーを組み合わせた高精度自動走行と、全周囲の障害物検知機能を搭載しています。

また、タブレット1台で無人機と有人機を協調運転させることができるため、1人で2台の同時制御も可能です。

北海道芽室町の粟野農場では大規模圃場でロボットトラクターを遠隔運用しており、他にも全国の法人農家で夜間耕うんや代かき用途に幅広く活用されています。

ヤンマー / Yanmar

メーカー名 ヤンマー / Yanmar
設立年 1912年
本拠地 大阪府大阪市
概要 ディーゼルエンジン・農業機械の総合メーカー

ヤンマーは、1912年設立の大阪府大阪市に本社を構えるディーゼルエンジン・農業機械の総合メーカーです。ICTと農業機械を融合させたスマート農業の実装に注力しており、防塵防水のタブレットやクラウドサービスを活用した遠隔操作技術が強みです。

ロボットトラクターには「YT5113A」「YT488A」「YT5114R」などがあり、いずれもSMARTASSISTによる稼働管理と連携できます。

また、無人機と有人機の併走運転や自動転回まで含めた作業制御が可能で、省力化と作業の見える化を同時に実現可能です。

タイ・シラチャ農場での無人作業デモをはじめ、国内外での実証展開が進んでおり、農業法人による1人2台運用や夜間作業への導入実績も豊富です。

井関農機 / ISEKI

メーカー名 井関農機 / ISEKI
設立年 1926年
本拠地 愛媛県松山市
概要 総合農業機械メーカー

井関農機は、1926年設立の、愛媛県松山市に本社を構える総合農業機械メーカーです。ロボットトラクターの分野では、最大123馬力のモデルなど重作業対応機を揃え、大区画圃場での運用ニーズに応えています。

ロボットトラクター製品には「TJW1233-R」「TJV655R」「TJV755 M1/R3」などがあり、Network RTKによる高精度な無人走行を実現しています。

そして、協調運転機能により有人機との併走作業や、変形圃場での自動経路生成にも対応しており、多様な現場での運用が可能です。

docomoの高精度GNSSと連携した導入実証も進められており、中四国・東北エリアを中心とした法人農家での導入が進められています。

三菱マヒンドラ農機 / Mitsubishi Mahindra Agricultural Machinery

メーカー名 三菱マヒンドラ農機 / Mitsubishi Mahindra Agricultural Machinery
設立年 1945年
本拠地 島根県松江市
概要 農業機械・施設機械メーカー

三菱マヒンドラ農機は、1945年に設立された、島根県松江市を拠点とする農業機械・施設機械メーカーです。同社は独自に開発した画像解析式自動操舵「SMARTEYEDRIVE」により、後付け対応型の有人搭乗型自動操舵装置化を実現しています。

開発中の試作ロボットトラクターでは、GPS不要で±5cmの直進精度を実現し、通信環境に依存せず様々な圃場に対応できるのが強みです。

さらに、導入コストも他社に比べて抑えやすく、新規導入や試験導入を検討する農家にとって魅力的な選択肢でしょう。

農研機構との共同開発をはじめ、島根大学などで教育や実証試験としての運用も進められています。

以上がJET-Globalがおすすめするロボットトラクターのメーカーです。気になるメーカーがある場合は、以下のボタンからJET-Globalにお問い合わせください。

まずは、JET-Global担当者がヒアリングさせていただきます。